アフリカにおける紛争の原因と恒久的平和および持続可能な開発の促進 国連安全保障理事会に対する事務総長報告 1998年4月16日 (非公式訳) Published by the United Nations Department of Public Information New York,NY 10017 編者記: 以下の報告本文は、1998年4月16日に国連事務総長が安全保障理事会に提出し、総会議題10: 「国連の活動に関する事務総長報告」のもとに、総会の公式文書(A/52/871‐S/1998/318)として配布されたものである。 ISBN:92‐1‐100657‐0 United Nations Publication Sales No.E.98.I .15 Copyright  1998,United Nations ●目次    パラグラフ ページ T序文 1‐ 6 1 U紛争の源 7‐15 2 歴史的遺物 8‐11 2 内的要因 12 4 外的要因 13 4 経済的動機 14 5 特殊な状況 15 5 V紛争事態への対応 16‐70 6 平和創設 18‐28 6 外的主体の政策および行動の調和 21 7 調停努力拡散の回避 22‐23 7 和平努力への国際支援の動員 24 8 制裁の実効性改善 25‐26 8 武器拡散の防止 27‐28 9 平和維持 29‐46 9 これまでの教訓 31‐34 10 アフリカにおける国連平和維持活動の役割 35‐40 11 地域・小地域のイニシアチブ支援 41‐45 12 一貫性のあるアプローチ確保 46 14 人道援助 47‐62 14 人道上の義務 49‐57 15 人道援助の特別な課題 58‐61 18 緊急援助と復興・開発の関連 62 19 紛争後の平和建設 63‐70 19 紛争後の平和建設への移行 65 20 紛争後の平和建設の優先課題 66 20 復興の資金調達 67‐68 20 調整の取れた国際的対応 69‐70 21 W.恒久的平和の建設と経済成長の促進 71‐103 21 よい統治 71‐78 21 人権と法の支配尊重の確保 72‐74 22 行政における透明性と説明責任の促進 75 22 行政能力の向上 76 23 民主的統治の強化 77‐78 23 持続可能な開発 79‐103 24 投資と経済成長に好ましい環境の整備 81‐84 24 社会開発の重視 85‐89 25 国際援助の再編 90‐92 27 債務負担の軽減 93‐96 28 国際市場の開放 97‐99 29 地域協力・統合の支援 100‐102 30 現行の国際・二国間イニシアチブの調和 103 31 X.必要な政治的意思の結集 104‐106 32 Y.結論 107 33 T序文 1.1997年9月25日、安全保障理事会は、アフリカにおける平和と安全を促進するための協調的な国際努力の必要性を検討する外相級会合を開いた。安保理は、アフリカ諸国の一部には進展が見られるものの、同大陸における武力紛争は数的にも質的にも依然として憂慮すべき大問題であり、包括的な対応が必要とされるという現状認識を行った。安保理はアフリカにおける紛争の源、これら紛争の防止と対策の方法およびその解決に続いて恒久的平和と経済成長の基盤をいかにして整備するかについて報告するよう私に要請した。安保理の希望に従い、また、この課題が安全保障理事会の権限内に収まらないこともあり、私はここに、安全保障理事会だけでなく、総会およびブレトン・ウッズ機関をはじめ、アフリカに責任を有するその他の国連システム内機関に対しても、本報告書を提出するものである。 2.アフリカは近年、全体として、大幅な経済的、政治的進歩を遂げ始めているが、こうした進歩が紛争によって依然として脅威にさらされたり、妨げられたりすることも多い。武力紛争の防止は国連にとってもっとも高次の目標であり、もっとも深遠な誓約であり、かつ、もっとも大きな野心でもある。紛争の防止は人間の安全と人間の開発の促進をもって始まり、これをもって終わる。もっとも幅広い意味で、人間の安全確保は国連にとって最大の使命と言える。真の継続的な紛争防止は、この使命を達成するための手段である。 3.アフリカでの紛争は地球の平和、繁栄および万人の人権を確保しようとする国連の努力にとって大きな挑戦である。国連は国家間の紛争に取り組むことになってはいるものの、国内的な政情不安と紛争への対応を迫られることがますます多くなっている。こうした紛争においては、軍隊だけでなく、一般市民や民族集団全体の破壊が主目的となることが増えている。かかる紛争の防止は、もはや国家の防衛や同盟諸国の保護の問題ではない。それは人類自体の防衛という問題である。 4.1970年以降、アフリカで発生した戦争は30件を越えているが、そのほとんどは内戦に端を発している。1996年だけを見ても、アフリカ53カ国のうち実に14カ国が武力紛争の影響を受けており、そこでの戦争関連の死者は世界全体の戦争関連死者の半分以上を数え、また800万人を越える難民、帰還民および国内避難民が発生した。こうした紛争の結果、人々に長期的な安定と繁栄と平和を保障しようとするアフリカの努力は、根底から揺さぶられている。 5.こうした痛ましい人間の悲劇を回避できなかったことで、アフリカの指導者も、国際社会も、そして国連も、アフリカの人々を見捨てたことになった。紛争の原因に十分に対処しなかったことにより、平和を確保するために十分な努力を行わなかったことにより、また、持続可能な開発のための条件を再三にわたって整備できなかったことにより、私達は彼らを見捨てたのである。これがまさに最近のアフリカの現実である。アフリカの人々が求め、そして当然に与えられるべき安全と経済的機会を享受できるようにするためには、すべての関係者が、真摯かつ建設的に、この現実と対峙しなければならない。今日、アフリカの多くの国では、過去の因襲と決別する努力がようやく成功を収めつつある。 6.私は、この報告により、再び始まったアフリカの平和とより一層の繁栄の追求に弾みがつくことを期待している。本報告は、アフリカにおける紛争に、その現実を客観的に捉え、かつその根源において回答を模索する分析を加えることによって、また、これら紛争を完全に終結できないとしても、長期的にはこれを緩和できるような、現実的で達成可能な勧告を行うことによって、そのことを試みている。本報告の目的は、これほど明らかに行動が必要とされているこのときに、アフリカ人ばかりでなく、非アフリカ人の政治的意思も同様に結集することにある。この意思がなければ、いかに大きな援助を行おうとも、またいかに大きな希望を持とうとも、アフリカにおける戦争と平和の現実は変えられない。 U.紛争の源 7.アフリカは巨大で多様な大陸である。アフリカの国々は歴史と地理的条件、経済発展段階、公共政策の方針および国内交流、国際交流のパターンにおいてそれぞれ異なっている。アフリカにおける紛争の源は、この多様性と複雑性を反映している。その中には、純粋に国内的なものもあれば、特定の小地域の力学を反映するものもあり、また、重要な国際的側面を持つものもある。このような相違はあるものの、アフリカにおける紛争の源は、数多くの共通の主題と経験によって結びついている。 ○歴史的遺物 8.1885年のベルリン会議で、列強諸国はアフリカの領土分割を行った。アフリカの王国、国家およびコミュニティーは勝手に分割され、関係のない地域と民族がこれも勝手に統合された。1960年代、アフリカの新興独立国はこれら植民地時代の境界線とともに、歴史的遺物がその領土保全と国民統合の試みに対して提起する問題をも引き継いだ。この問題は、一部の新興国が引き継いだ植民地時代の法律と制度の枠組が、地方の分裂を克服することではなく、これを利用することを目的としていたという事実によってさらに複雑になっていた。よって、国家建設と国民建設という同時進行的任務がこれら新興独立国の中心的関心事となったことは、理解に難くない。この任務は、コンゴでの分離独立闘争勃発に続く出来事によって、新たな弾みを得ることになった。しかし、あまりにも多くの場合、必要とされる国民統合は、政治的、経済的権力の著しい集中と、政治的多元主義の抑圧を通じて模索された。予想通り、政治的独占は腐敗、縁故主義、自己満足および権力乱用を呼ぶことが多かった。1963年にアフリカ統一機構(OAU)が、植民地時代から継承したアフリカの国境線不可侵を決定したこともあり、アフリカにおける深刻な国境紛争の時代はほぼ終わりを告げた。しかし、多様でしばしば競合関係にあるコミュニティーから真の国民的一体性を形成するという課題は依然として残った。 9.植民地主義によって制度化された商業関係の性質も、アフリカの政治経済に長期的な歪みをもたらした。輸送網とこれに関連する物的インフラは、地元経済の均衡の取れた成長を支援することではなく、本国との貿易のニーズを満たすように作られていた。しばしば不利な交易条件が押し付けられたことに加え、経済活動が抽出産業と輸出向け一次産品に極度に傾斜していたことで、労働者の着実で幅広い技能、教育水準の向上に対する需要は、ほとんど刺激されなかった。この生産・交易パターンは、独立後のアフリカ諸国にも影響を及ぼした。政治的競争が存続しうる国民経済システムに根差したものではなかったため、一般的な動機づけの構造は、植民地経済の制度的遺産を獲得し、これを派閥的利益のために活用することを促すケースが多かった。 10.冷戦中、東西のイデオロギー対立は友好国および同盟諸国の間で秩序と安定を保つことを重視させたが、アンゴラその他における超大国間のせめぎ合いは、アフリカでもっとも長く陰惨ないくつかの紛争の火に油を注ぐことにもなった。アフリカ全体において、非民主的で抑圧的な体制が、競合する超大国により、その大局的目標の名の下に支援、維持されたが、冷戦の終結とともに、アフリカは突然見放されることになった。外部からの経済的、政治的支援を断ち切られた大半のアフリカ諸国の政権は、慣れ親しんだ経済的生活様式を続けることもできなければ、自らが当然に期待するようになっていた政治権力の恒久的支配を維持することもできなくなった。騒擾や暴動によって内部から揺さぶられる国が増えていく中で、世界は新たな地球的安全保障の枠組を模索した。 11.冷戦終結に続く短い期間、国際社会は、新たに獲得した集団的意思決定の能力を行使しようと躍起になった。1990年代はじめから、安全保障理事会はアフリカその他において、一連の野心的な平和維持、平和創設のイニシアチブを展開した。重要な成功は多くあったものの、ソマリアでは国連が平和を回復できなかったことから紛争介入に対する国際的な支持は萎え、国際社会は全世界での平和維持活動から急速に撤退することになった。この撤退の帰結がもっとも早く、直接的に露呈したのが、国連を含む国際社会がルワンダでジェノサイド防止に失敗したことである。この失敗は、アフリカにおいて特に深刻な影響をもたらした。国際社会の無関心にも近い状態が感じられたことで、アフリカ大陸全体に苦々しい思いが広がり、国連に対する信頼は依然として損なわれ続けてきた。 ○内的要因 12.アフリカ諸国の独立から30年以上を経た現在、アフリカ人自身の間には、紛争の原因をすべて植民地主義に求めることは止めようとする認識が広がりつつある。これまでにも増して、アフリカが自分自身を見つめるべき時が来ている。多くのアフリカ諸国における政治権力の性質は、権力の獲得および維持による現実的、理論的的帰結とともに、大陸全体の紛争に鍵を握る要因となっている。多くの場合、政治的な勝利は富と資源、利益誘導ならびに要職の名誉と特権という点で、「一人勝ち」の様相を呈している。コミュニティーの利益、不利益の感覚は、この現象としばしば密接に関連しており、中央集権的で極めて個人的な統治形態によって、これがさらに増幅されることも多い。指導者の説明責任が不十分であったり、政権の透明性が欠けていたり、抑制と均衡が十分でなかったり、法の支配が順守されていなかったり、指導者層を変更あるいは交替させる平和的手段がなかったり、さらには、人権が尊重されていなかったりする場合、政治的な支配は過剰な重要性を帯び、勝ち負けによる損得の開きは危険なほどに大きくなる。アフリカでよく見られるように、国家が主要な雇用提供者であり、政党が主として地域あるいは民族に基盤を置いている場合、事態はさらに悪化する。このような状況では、大半のアフリカ諸国が有する多民族的性質は、紛争の可能性を一層高め、民族性の暴力的政治化をもたらすことも多くなる。極端な場合、対立するコミュニティーは、その安全はもとより、おそらくその生存自体が、国家権力の支配によってのみ確保できると感じるようになることがある。こうなると紛争は事実上回避できない。 ○外的要因 13.冷戦中、アフリカの政府を支援あるいは転覆させようとする外部の努力は、大国間の競争でよく見られる特徴であった。冷戦の終結により、外部からの介入は減ったものの、完全になくなったとは言えない。アフリカの石油およびその他貴重な資源を求める競争では、アフリカにとって外部的な利益が、紛争の抑制においてもその継続においても、依然として大きな役割、そして時には決定的な役割を果たし続けている。しかし、外国による介入は、アフリカ以外の国からのものに限定されない。他国の国内で発生する紛争で必ず影響を受ける近隣国も、必ずしも善意とは言えない、重大な利害関係を有することがある。近年では、アフリカ諸国による平和維持および調停努力が目立つようになってきているが、近隣国での紛争を支援したり、時にはこれをけしかける上で、アフリカ諸国の政府が果たす役割も、正直に認めなければならない。 ○経済的動機 14.武力紛争が破壊をもたらすにもかかわらず、混乱と説明責任の欠如から利益を得る者、および、紛争を停止させることにほとんど、あるいはまったく関心を持たず、これを引き延ばすことに利益を見出す者も、数多く存在する。アフリカでの紛争から利益を得る者で真っ先に名前のあがるのは、国際的武器商人である。また、紛争当事者自身も重要な立場にある。リベリアでは、ダイヤモンド、木材およびその他原材料の支配と利用が、戦闘勢力の主要目標の一つとなった。様々な勢力は、これら資源に対する支配から資金を調達し、紛争続行の手段を獲得している。紛争当事者の多くが、紛争の継続に強い金銭的利益を見出していたことは明らかである。アンゴラについても同じことが言え、和平プロセスが長期的に難航したのは、同国のドル箱であるダイヤモンド鉱脈の支配と利用の重要性によるところが大きかった。シエラレオネでは、天然資源を略奪し、中央銀行の準備金を横領することが、1997年5月に民選政府から政権を奪取した者たちの、重要な動機であった。 ○特殊な状況 15.これまでに明らかになっているアフリカでの幅広い紛争の源に加え、特殊な状況や小地域においては、その他多くの要因が特に重要である。中部アフリカについては、人口稠密地域における土地および水資源の獲得競争があげられる。例えばルワンダでは、いくつかの世帯が同じ土地区画に対する権利を主張することが多い状況の中で、避難民が数次にわたって大量発生した。石油が採掘される場所では、地元の共同体が、かかる資源の利益を十分に受けていないか、自然環境悪化の影響を過剰に被っているという不満から、多くの紛争が発生している。北アフリカでは、社会と国家についてのまったく相反するビジョンの間の緊張状態が、一部の国における実際の紛争および潜在的紛争の深刻な源となっている。 V.紛争事態への対応 16.早期警戒メカニズムは紛争の防止に重要な役割を果たすものとして広く認められているが、早期の行動を伴わない早期警戒はほとんど役に立たない。国連の早期警戒能力は近年、著しく向上している。今日の最大の関心事は、もはや迫り来る危機の早期警戒不足ではなく、早期警戒を早期の効果的行動によってフォローアップする必要性である。その対応が外交努力を伴うものであれ、平和維持部隊の展開を伴うものであれ、また、人道的介入を伴うものであれ、より早期の行動はより高い効果をもたらす可能性が高い。 17.不満が生じた場合、政府と反体制勢力が即座に暴力に訴えるケースが余りにも多くなっているが、これは避けなければならない。暴力紛争が発生してしまった場合、かかる対立が激化する前に政治的選択肢を尽くす真の努力が必要となる。国際的行動が必要とされる前に、私は潜在的紛争あるいは実際の紛争に直面する政府に対し、対立が生じた源を調査し、信頼を醸成し、政治的解決策を勧告する特別調停人あるいは特別委員会の任命を検討することを促したい。このような努力には、アフリカ全土、あるいは国際社会全体から尊敬されている人物を関与させることもできよう。 ○平和創設 18.国内的なものであれ、国際的なものであれ、紛争の防止、封じ込めおよび解決を図る努力を行う際には、平和創設資源の展開が不可欠である。通常の場合、外交努力はもっとも費用効果的で、もっとも迅速に展開できるものである。これには交渉、調停、仲介、事実関係調査団および司法的解決を含めることもできる。その目標としては、対話の促進、緊張状態の緩和、国民的和解の促進、人権尊重の推進および平和の制度化があげられる。和平プロセスが必要となる場合、その確保を助けるのはOAUとともに国連の役割となる。プロセスの進展に支障が生じた場合、その除去を助けるのは私達の役目である。合意の基盤が存在する場合、その実現を助けるのも私達の役割である。 19.国際社会が、長期的和解のためにプラスとなる誘因を提供しながら短期的な安定を援助することができれば、当事者による協力と和平に向けて努力するその意思が醸成されることもある。このような誘因としては、地域のインフラおよび水道整備プロジェクト、小規模事業融資へのアクセス提供、基本的な医療等が含まれよう。紛争解決の道具としてこれらを効果的に活用するためには、人々の問題を詳細に至るまで十分理解し、いくつかのレベルで同時に、かつ一定の柔軟性を持って対応できることが必要である。このような努力に対し、国際的な支援を高めなければならない。 20.平和創設努力には十分な調整と準備が必要である。国連システム内に最近新設された政治問題担当事務次長が招集する「平和と安全保障に関する執行委員会」は、協力、政策の一貫性および情報共有の一層の強化を目的としたものである。同様に、アジスアベバのOAU本部に新設された国連連絡事務所は、両機関の協力の足固めを行うとともに、アフリカにおける紛争の予防、封じ込めおよび解決のために、協調的な政治努力の展開を促進することになろう。これはまた、国連事務総長とOAU事務局長が共同議長を務める国連・OAU両事務局担当官の年次会合の目標にもなっている。国連と、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、南部アフリカ開発協力機構および開発政府間機構等、それぞれの場所で平和と安全保障の問題に積極的に取り組む小地域機関との協力も、強化されつつある。 ・外的主体の政策および行動の調和 21.アフリカでもその他の地域でも、勃発し、あるいは継続中の危機に対して、主要な外部主体が共通の政治的アプローチを維持できないことが、多くの場合、解決に向けた進展の重要な阻害要因の一つになっている。近隣諸国が共通の姿勢を示すことは特に重要である。紛争の初期段階では、敵対勢力が同盟と支持を求める際は、近隣諸国が最初に打診を受ける可能性が高い。紛争を野放しにすれば、それが一人歩きを始めることは避けられないが、近隣諸国とその他の外部主体はそれでも敵対勢力に大きな影響力を行使する可能性が高い。紛争がさらに激化した場合でも、制裁などのより幅広い国際努力が成功できるのは、小地域全体からかかる措置に対する真の協力と支持が得られた場合のみである。アフリカ統一機構は、関係小地域機関とともに、かかる協力と支援を確保する上で指導的な役割を果たすべきである。南部アフリカでは、OAUの支援とともに小地域がとった早期の協調的政治行動が、レソトで発生しつつあった政治不安を封じ込める際に効果的に活用された。西アフリカでは、ECOWAS諸国がリベリアにおける政策と行動の調和を最終的に決定したことが、同国の和平プロセスに鍵を握る転換点となった。 ・調停努力拡散の回避 22.調停の枠組が確立された場合、国際主体が他の主体と対立あるいは競合する努力を行う誘惑を断ち切ることは、死活的な重要性を持っている。これは何も、政府や機関が、特定の危機を密接にフォローする特別の担当官を任命することに反対するものではない。むしろ、特使や特別代表の任命は、国際社会内での協議、情報共有および意思決定を大きく促進しうる。しかし、このことによって、敵対勢力が国際社会を分断し、また調停努力を互いの取引材料とするような機会を与えてはならない。このような結果になれば必ず混乱が生じ、努力は進展するどころか、遅延することになる。 23.このため、紛争状態における調停者の選択については極めて慎重に検討し、できる限り密接な協議によって行わなければならない。1997年の大湖地域担当国連・OAU合同特別代表の任命は、極めて画期的な出来事であり、その他の事態においても応用できる可能性がある。異なったものではあるが、同様に重要な協力構造確立の例としては、バカシ半島に関するトーゴの調停努力に対する国連の支援と、ブルンジに関するニエレレ元大統領の調停努力に対する支援の2件があげられる。 ・和平努力への国際支援の動員 24.和平努力に対して十分な国際支援がなければ、和平への弾みを維持することが不可能となる場合もある。「友好国」グループや、リベリアの場合のような特別会議など、関係国による接触グループの設置は、和平努力に対する国際支援の動員に効果を持ちうる。閣僚レベルで招集された「リベリアに関する特別会議」では、ECOWAS諸国、援助国および援助機関、ブレトン・ウッズ機関および国連システムのその他の関係機関が一堂に会した。その目的は、和平プロセスに対する国際的な政治支援を動員すること、鍵を握る外的政治主体の見解の調和を助けること、および、和平プロセスに不可欠な資源の把握と供出を確保することであった。特別会議が和平プロセスにおいて有用であったため、紛争後の平和建設というリベリアにとっての今後の課題に対処する上でも、このメカニズムを維持していこうとする提案が見られる。私は、類似の紛争および紛争後の状況においても、これと同等の機構を創設するよう訴えたい。 ・制裁の実効性改善 25.制裁は、予防措置あるいは懲罰措置として、有用な道具となる可能性を秘めている。多方面からの経済的孤立の脅威は政治的対話の促進に資すると同時に、強力な経済的、政治的制裁の適用によって、敵対勢力が長期的な戦闘に持ちこたえる能力を減少させることができる。特に武器禁輸措置は、兵器の取得をより困難かつ高価にすることにより、紛争継続に用いる兵器の入手可能性の低減に資する可能性がある。しかし、経済制裁は特に、その影響の適切な事前測定あるいはその目標の判定が不十分なまま行われれば、冷酷な手段となることも極めて多い。場合によっては、敵対勢力の行動に対して期待しうる影響に比して、一般市民に強いられる苦境があまりにも大きいことがある。制裁が意図された目的を達成するためには、その対象を絞る必要がある。個人や組織の資産の凍結や旅行の制限を含め、意思決定者とその家族にねらいを絞った制裁の利用を拡大すべきである。制裁の適用を求められている貧しい国が、重大な悪影響に直面する可能性が高い場合、制裁対象となる当事者との取引に依存する地域住民への影響を軽減すべく、十分な措置を講ずるべきである。 26.国際社会による制裁の実施を一層強化する必要性に注意を喚起することなしに、制裁の対象を絞る必要性を語ることはできない。武器禁輸措置が取られる場合、各国は、公的な取引を差し控えるばかりでなく、自国の国民あるいは法人について、制裁違反防止措置の導入を図る必要がある。国際的制裁体制の実効性を高めるため、私は個々の加盟国に対し、安全保障理事会の武器禁輸措置の違反を国内法上の刑事犯罪とする立法を採択するよう要請する。 ・武器拡散の防止 27.あらゆる国は自衛の権利と責任を有する。しかし、アフリカの切迫した開発の必要性からすれば、軍事目的への資源割当は最小限に抑えなければならない。アフリカ諸国は、不可侵条約および安全保障協力協定の署名、合同軍事演習およびパトロールへの参加、武器不正取引対策の調和など、軍事と安全保障の分野において透明性向上および信頼譲成措置を実施することにより、多額の軍事費の必要性を減少させることができる。1997年に国連通常兵器登録制度に情報を提供したアフリカ諸国は、8カ国にとどまった。私はすべてのアフリカ諸国に対し、地域および小地域の信頼醸成努力にプラスの貢献を行う目的で、この登録制度に参加することを促すものである。その具体的な方法には、通常兵器に関する小地域の追加的登録制度の設立が含まれよう。さらに、小型兵器の拡散がアフリカにもたらす脅威を極小化するため、私は武器・弾薬の購入をGDPの1.5%未満に抑えることに合意し、10年間にわたって国防予算に関しゼロ成長政策をとることを誓約するようアフリカ諸国に求めたい。 28.武器取引の監視あるいは規制を図る上で、アフリカに対する武器の供給源を明らかにすることが不可欠である。武器輸出国は、特にアフリカの紛争地帯あるいは緊張地帯に対する武器輸出を自制する責任がある。実際の紛争地域あるいは潜在的紛争地域への武器供給における民間武器商人の役割については、特に注意する必要がある。国際的な武器商人とその活動を公にするという目標はなかなか実現できないが、アフリカに対する不正な武器の流れはこれを取り巻く秘密性によって可能になっていることが多く、より有効なイニシアチブは他に存在しないと見られる。安全保障理事会は、かかる情報の収集、追跡および公表において国連が果たしうる役割を含め、緊急課題としてこの問題に取り組むべきである。 ○平和維持 29.歴史的に見て、国連はもっとも多くの平和維持活動をアフリカで展開してきた。国際的緊張の緩和を受けて、1989年にアンゴラとナミビアで展開された平和維持活動は、複雑な冷戦後における平和維持活動の新時代到来を告げるものであった。その後の13カ月間に発足した32件の国連平和維持活動のうち、13件がアフリカで展開された。しかし、国連がソマリアで被った深刻な打撃と、旧ユーゴスラビアにおける苦い経験を経て、国際社会は近年、平和維持活動の展開に関連する政治的、財政的負担の引受けに大きな難色を示した。この難色は、ソマリアでの教訓の域を越える大袈裟なものであり、特にアフリカに厳しい影響をもたらした。 30.ルワンダで払われた悲惨な代償に加え、この麻痺状態がもたらす幅広い対価は、特に大湖地域において、アフリカ問題に対する今後の政治的関与から国連を疎外しようとする一部のアフリカ諸国の対応となって現れている。アフリカにおける国連の信頼性は、行動を起こし、アフリカに平和と安全保障の目標を推進する新たな手段を模索する国際社会の意思に、大きく依存している。よって、アフリカにおける国連の経験を再検討し、将来の指針となりうる教訓を導き出すことが重要である。 ・これまでの教訓 31.国際社会の平和維持に対する考え方は、ソマリアでの国連の経験から大きな影響を受けている。この活動の記憶が、危機に迅速かつ決定的な対応を行う国連の能力を損ない続けている。ソマリアの一般市民は、飢餓の終焉を含め、国連の関与によって顕著な恩恵を得たが、国連ソマリア活動は、任務完了以前に安全保障理事会が撤退させた初の国連活動となった。安全保障理事会は、活動の人道的成果にもかかわらず、紛争の解決に関心を持たない主要なソマリア人勢力によるコミットメントの欠如により、政治的進展が何ら見られていないという事実に基づき、撤退の決定を下したのであった。 32.ソマリアからの撤退の帰結と、国際的な資源と政治的な資本を再び投入することに対する難色は、ルワンダで発生しつつあった悲劇への対処について、国際社会が苦悩する中に即座に明らかになった。国際社会の眼前で実施されたジェノサイドの過程で、数十万人の命が失われた。この経験は、紛争への迅速な介入および特に大惨事に直面して行動を起こす政治的意思がいかに重要であるかを浮き彫りにした。ルワンダの人々の恐るべき惨禍は、国際社会が二度とこのような不作為を容認してはならないという、明確で疑う余地のないメッセージを送ったのである。 33.国連モザンビーク活動からはプラスの教訓が得られた。同国において、国連の影響力は現地の当事者およびその他の国との継続的対話を通じて増大した。国連の活動は国際的な資源の供給経路と同様に、国際行動のための拘束的要素、すなわち、和平努力の焦点、象徴および媒介となったのである。モザンビークにおける国連の活動が示したのは、適切な状況のもとでは、平和維持活動がアフリカにおける紛争に対処する柔軟で独特な適応力に優れた手段を提供できるということであった。その成功は、平和のための中立かつ正当な主体として国連が果たすことのできる貢献を証明している。それはまた、放っておけば過失あるいは外部からの陰謀によって激化しかねない紛争において、国連が国際的な関与を強化、指揮する潜在的能力および目的の統一性と一貫した行動をとる意思が、国際社会の権威を強化できる程度を示したものと言える。 34.アンゴラで数次にわたって展開された国連活動は、もっとも劣悪な状況でも、和平プロセスを維持する上で国連が果たしうる死活的役割を示すとともに、現実的な和平合意の必要性と、依然として危険で不安定な状況の中で、平和維持活動が信頼できる抑止能力を備える重要性も明らかにした。さらに、紛争の継続的な危険性は、戦争当事者の資源に対するアクセスがどれほど暴力を助長するかを立証すると同時に、国際的な企業利益が和平努力の成否に与えうる影響を明るみにした。 ・アフリカにおける国連平和維持活動の役割 35.国連の平和維持活動は、アフリカおよびその他の地域においても、あらゆる問題に対して常に最善の答えとはならない。例えば、敵対勢力間の合意がなければ、現地で平和維持のために必要とされる協力と支援は得られない。このような状態での平和維持活動の展開は、より強制的な行動をとろうとするその他の努力を押しのけたり、単に紛争の影響を軽減するのではなく、紛争自体を終結させるために行動がとられているとの誤った印象を与えることで、望ましくない結果を生むものとなりかねない。しかし、条件が整えば、国連の平和維持活動は、アフリカにおける戦争と平和の現実を大きく変えることができる。最近の国連東スラボニア、バラニャおよび西スレム暫定機構の経験は、信頼できる抑止能力を持って展開され、適切な資源を装備し、十分な政治的意思によって裏打ちされれば、国連の平和維持活動はもっとも課題の多い環境の中でも十分な成果を確保できることを立証した。アフリカでは、紛争の終結を促進する上で、平和維持活動がすでに幅広い一連の役割を果たしている。こうした役割をすべて列挙することは不可能である。安全保障理事会は各々の課題を最初から検討し、特定の事態にもっとも適した対応策を講ずる必要がある。 36.敵対勢力の引離しとその行動の監視。この種の活動は、当事者間の限定的な合意あるいは了解に基づいて行われる。平和維持要員は停戦を監視するほか、そのプレゼンスによって戦闘員が互いに安全な距離まで引き下がることを可能にする。これによって感情的な高まりが冷め、話合いに有利な雰囲気が生まれることがある。このような活動は、困難な状況において不可欠な信頼譲成措置となりうる。 37.包括的な解決策の実施。国連はアフリカにおいて、幅広い文民要素を組み入れた複雑で多面的な平和維持活動を数多く展開させている。この種の活動の成功例としては、アンゴラ、モザンビークおよびナミビアにおける活動があげられる。紛争が包括的な解決に至った場合、多面的な平和維持活動の展開は平和を確立し、人権の尊重と市民的制度の回復に基づいた持続的開発の礎を築ける可能性がもっとも高いと言える。このような機会が訪れた場合、国際社会は支援を行い、目に見える方法で平和へのコミットメントを示すべきである。 38.予防展開。単に紛争に対応するだけでなく、その予防を図ることも重要である。時宜に適った行動は不可欠である。マケドニア旧ユーゴスラビア共和国では、紛争発生以前に国連が平和維持活動の展開に成功した。国連平和維持要員の予防展開はこれが初めてである。安心を与えるプレゼンスと一定の透明性により、予防展開は、暴力的紛争をもたらしうる誤算を防止し、不満を政治的手段で解決する時間を確保し、平和建設の諸制度の強化を可能にするとともに、平和のために不可欠な信頼醸成措置となりうる。 39.予防展開は、紛争の脅威に対する事前行動的対応である。その他の地域と同じく、アフリカでも予防展開は大きな効果を持ちうる。国際社会は現在、中央アフリカ共和国でこのような機会に直面している。同国では、アフリカ諸国の調停努力、現地でのたゆまぬ努力、および、フランスと国連開発計画の支援を受けたアフリカ諸国の治安部隊「バンギ協定実施を監視するアフリカ諸国ミッション」(MISAB)により、爆発寸前の状況が封じ込められている。MISABの活動期限が満了し、支援が打ち切られた場合、中央アフリカ共和国の安定を維持する実際的な手段は、国連平和維持活動の設立、展開をおいて他にない。同国内の全当事者とすべての大湖地域諸国は、信頼できる外国部隊の駐留がなければ暴動は再発するだろうとの見方で一致している。最近になって安全保障理事会がかかる部隊の展開を承認したことは、同地域およびアフリカ全体にとって、好ましい重要なシグナルである。 40.人道援助関係者の保護。人道援助機関は、どこであろうと、一般市民の戦争犠牲者を援助している。しかし、戦争当事者は、そのうちの何人かは非正規の民兵あるいは自称自治当局者であるが、こうした活動を困難あるいは不可能にしていることがあまりにも多い。これは戦争の必要性から仕方ないこともあるが、大半の場合は、特定住民に対する救援がいずれかの当事者の戦争目的に反するためである。戦闘員が救援物資を自らの利益のために流用する傾向も高まっている。人道援助活動員は、平和維持要員と協力して、また独自に、アクセスの交渉と人道原則の擁護を行っている。しかし、ソマリアと旧ユーゴスラビアでの活動から生じた過去に類を見ない諸困難は、すべての当事者の同意あるいは支持なしに敵対的環境で活動する平和維持要員および人道援助活動員にとっての課題と危険の規模を、如実に示している。 ・地域・小地域のイニシアチブ支援 41.国際の平和と安全保障という問題に関する国連の一義的な責任との関連において、アフリカにおける地域および小地域のイニシアチブに対する支援は必要であるばかりか、望ましいことと言える。このような支援が必要なのは、国連には、アフリカで発生しうるすべての問題に取り組む能力、資源およびノウハウが欠けているからである。また、これが望ましいのは、可能な場合常に、国際社会がアフリカの問題を解決しようとするアフリカ自身の努力を代位するのではなく、その補完を図るべきだからである。近年アフリカでは、長年にわたって特定地域を苦しめてきた紛争を解決したり、新たな紛争が拡大し、手がつけられなくなる前に、これに取り組もうとする新たなイニシアチブが数多く生まれてきている。こうした試みのすべてが成功しているわけではないが、アフリカの政治指導者たちはたゆまぬ努力を続けており、アフリカの人々は国際社会の支援を当然に受けるに値する。 42.武力行使の承認。権限系統の分断、一般市民の被害および民兵の関与という、現代の紛争に繰り返し見られる特徴により、平和推進のための介入には、武力を必要とし、大きな危険を伴いうる任務が多くなってきている。大規模な武力が必要となる可能性が高い場合において、安全保障理事会は近年、有志の加盟国あるいは国家連合による行動をしばしば承認している。アルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ハイチ、イラクおよびソマリアがその例である。武力行使に先立ち、安全保障理事会の承認を得る義務があることは明らかである。しかし、加盟国あるいは国家連合による武力行使の承認は、紛争状態に対する効果的な対応となりうる一方で、承認された活動を監視する安保理の能力を向上させる必要性をはじめ、今後について多くの課題を提起するものでもある。 43.地域、小地域あるいは多国籍軍との合同展開。リベリアでの活動は、多国籍軍の活動を監視しながら、和平プロセスのより幅広い側面に貢献できる手段の一つを示すものと言える。同国では、国連の小規模な非武装の軍事監視団が、ECOWAS監視団(ECOMOG)とともに展開されたが、その任務はこの小地域部隊と協力して和平合意を実施することにあった。和平合意によると、ECOMOGはその実施の確保に一義的な責任を負う一方で、国連リベリア監視団(UNOMIL)は実施手続を監視し、その中立的適用を検証する役割を担った。UNOMILには政治、人道および選挙支援の部門が設けられたほか、後には人権部門も追加された。 44.ECOMOGとの協力は、リベリアにおける平和の回復に資するものとなった。この事例は、国連と小地域機関の協力のモデルとして、その他の事態にも適用することができよう。しかし、アフリカにおいてもその他の地域においても、今後このような責任をすべて地域機関に全面的に委任できるという結論を下すべきではない。権限の委任は、平和維持活動が直面する困難な諸問題にとっての万能薬ではない。地域機関は政治面、構造面、財政面あるいは計画面で制約を受けることがある。場合によっては、歴史的理由、または、政治的あるいは経済的理由により、地域機関加盟国の中立性に疑念が生じうる。それでもリベリアにおける経験は、このような複雑な事態に対処する際に、ECOWAS等の小地域機関がもたらしうる貢献と、かかる努力を支援する上で国連が果たしうる重要な役割とを如実に示したものと言える。国連が地域、小地域あるいは多国籍軍との協力を行う場合には慎重な判断を行わなければならないが、積極的協力の可能性は引き続き模索すべきである。 45.アフリカの平和維持能力強化。アフリカ諸国が平和維持活動を行う能力を向上させることは、かかる活動が国連平和維持活動の枠組の中で行われるか、安全保障理事会の承認の下に地域機関あるいは国家グループによって行われるかにかかわらず、依然として重要な優先課題である。アフリカの平和維持能力を向上させる今後の戦略を考える上で、OAU職員との協議により作成され、私の前任者の報告(A/50/711‐S/1995/911)で示された提案は、依然として有効である。これらの提案は訓練支援、平和維持合同演習、国連待機軍取極へのアフリカ諸国の参加拡大、部隊装備を必要とする国と支援が可能な援助国のパートナーシップおよび国連とOAUの協力強化の分野において取りうる実際的な措置に関するものである。こうした努力はいかなる点においても国連憲章による国際社会全体の集団的義務を免除するものではなく、こうした責任の枠組において、アフリカ自身の貢献をより効果的にすることを意図したものである。この文脈において、私はすべての加盟国に対し、アフリカにおける紛争防止と平和維持への備えを向上させるために設置された国連およびOAUの信託基金への拠出を強く促すものである。 ・一貫性のあるアプローチ確保 46.安全保障理事会が平和維持活動の展開を支持する可能性が高いケースを判定するために、より明確な判断基準とより予見可能な基盤が緊急に必要である。アフリカにおける平和と人命に対する深刻な脅威を前にして行動を怠れば、平和と安全保障の分野だけでなく、その他の活動分野においても、国連の信頼性と正当性は脅かされることになる。さらに、紛争の防止あるいは封じ込めに対する国際社会のコミットメントが地域によって大きく異なっていることが、いずれの地域においても、安定的で公正な国際秩序を推進する国連の能力を損なっている。国連の存続可能性とその依って立つ原則を推進することはもちろん、これを堅持していくためにも、加盟国は政治的意思と実際的資源を伴った関与を行わなければならない。 ○人道援助 47.他の地域と同様にアフリカにおいても紛争の性質が変化していることから新たな対応が必要となっている。冷戦の間は、競合する二極間の利益によって特徴づけられた危機に対応するために政治的、人道的メカニズムをどのように利用できるかについては、ある程度の予見は可能であった。人道活動の現場では、国境を越えた難民を援助するため、標準的なアプローチが用いられていた。援助の提供は、難民キャンプや戦闘地域外の集落といった、比較的安全な場所で行われた。自然災害を主因とし、政治を副次的要因(その逆ではない)とすると考えられた飢饉の状態では、食糧不足と闘う人々を助けようとする勢いが生まれた。 48.特にアフリカにおいて、今日の危機は多くの側面を兼ね備え、かつ多くの主体が絡んでいるため、はるかに複雑なものとなっている。各国政府、国際機関、非政府機関および反政府勢力はすべて、人道状況に重要な影響を及ぼしており、人道援助活動もまた、政治、社会、経済および環境面で、重要な影響を与えうるものとなっている。人道上のニーズに取り組み、復興と再建のための一貫した効果的な戦略の策定を促進する上で、最善の手段は人道援助に対する信条と調整に基づくアプローチである。人道援助関係者および国際社会全体が、どのように、何のために人道援助を提供するのかについて深く考えなければならない時が来ている。 ・人道上の義務 49.紛争状態における一般市民の保護。すべての戦闘員は、普遍的な人道原則に従わなければならない。しかし残念なことに、この明確な原則は常に同様の明確性をもって受け入れられているわけではない。過去数十年間において、危機的状況における人道規範の順守レベルは、容認しがたい劇的な低下を遂げている。政府が反体制武装勢力とその支持者を無差別で冷酷な残忍性をもって処遇することも多くなっている。反政府勢力はしばしば、その目的達成のためにあらゆる手段を用いることも辞さない。これまで、一般市民は主として、敵対勢力間の戦闘の間接的犠牲者であった。今日、一般市民はしばしば主たる攻撃対象となっており、特に女性は数的にも過剰な犠牲者であるばかりでなく、組織的レイプや性的搾取といった残虐行為を受けることも多い。国連職員を含む援助活動員が直接的攻撃目標となるケースも増えている。かかる攻撃は、人道援助の基本的条件を根底から揺るがす非道行為である。 50.人権順守状況の監視と報告は国際社会の重大な責任である。全紛争当事者による国際的な人道、人権規範の順守は、執拗に求めなければならない。私はこれを、国連の活動における優先課題とするつもりである。自らの行為に対する紛争当事者の説明責任をさらに問うために、私は、一般市民が執拗な攻撃目標とされた場合、国際法にしたがい、戦闘員に被害者への金銭的賠償責任を負わせることを勧告する。私はさらに、違反者およびその指導者の資産を発見し、差し押さえる努力を促進するため、国際的司法機構の開発を提案する。 51.戦時の人権侵害の抑制を図る上で、人権調査団は重要な役割を果たしうる。これまで、特別の人権調査団が派遣される場合、その経費をまかなう十分な自発的拠出が得られなかったことから、私は、すべての人権特別調査団について、分担金からの資金調達を勧告する。すべての紛争当事者に対しては、武力紛争の状態において、援助活動員を含む一般市民の人権を尊重するよう、できるだけ強い国際的圧力を加えなければならない。 52.武力紛争における子どものニーズには、特に留意が必要である。最近になって、武力紛争が子供に与える影響に関する事務総長特別代表が任命されたことは、国際社会によるこの深刻な問題の重視を制度化する上で、重要な第一歩である。子どもを攻撃の対象としたり、民兵に編入するために徴用したり誘拐したりすることは由々しき犯罪であり、今後、戦争犯罪関連の規程あるいは訴追において、特別の取組みが必要である。私は、子どもを「平和地帯」とする考えに賛同し、この概念の普及を促すものである。例えば、戦争地帯の子どもに予防接種を行ったり、食糧物資の戦線通過を認めるための一時的停戦の話合いは、多くの紛争状況において効果をあげている。この慣行を格上げして、国際人道法の理念に盛り込むべきである。 53.難民の安全問題への取組み。迫害や戦争から逃れる人々には避難所と援助を提供すべきである。難民の安全は、多数の難民を抱える国、あるいは、国境付近に多数の難民が存在する国の安全保障とともに、ますます国際的な関心事項となってきた。戦闘員が混じった大量の難民移動によって、アフリカ諸国に生じる潜在的脅威を認識しなければならない。大湖地域では、大量のルワンダ難民の近隣国への移動がルワンダの新政府はもちろん、受入国にとっても不安定化の要因となった。私の前任者および国連難民高等弁務官からのアピールにもかかわらず、国際社会は、ルワンダとの国境地帯のザイール領に逃れた非戦闘員の難民から戦闘員を分離する努力への支援を怠った。その結果、これら難民の中に隠れた戦闘員は、現在でも地域全体の不安定化要因となっている。 54.国際的に認められた原則と手続にしたがい、すべての難民および国内避難民に十分な保護と援助を与えるあらゆる努力が行われなければならない。難民のキャンプおよび集落からは、武器弾薬を含め、あらゆる軍事的なプレゼンスや装備を排除しなければならない。避難場所を必要とする人々が大量に流入する場合、一般市民を正規兵および民兵から隔離する措置を即座に講じなければならない。戦闘員は別個に宿営させ、キャンプおよび集落の中立性と人道的性格を慎重に保つべきである。そうした状況における女性と子どもの特別なニーズと脆弱性に対処する行動も必要である。難民自身の安全とその故国の治安のために、OAU難民条約にしたがい、国境から合理的距離を置いた限定的規模のキャンプに難民を収容することを私は強く求めたい。受入国が難民のキャンプ収容を要求しない場合には、現地のコミュニティーに追加的支援を行うべきである。 55.難民の保護および大量の難民受入国の支援に関する要件の中には、人道援助提供者の能力を越えているものがある。その多くは、国際的な平和と安全保障の問題に関連するものであり、これについては安全保障理事会が一義的責任を負っている。よって私は、受入国による難民キャンプおよび集落の安全と中立性の維持を援助するため、国際的なメカニズムの設置を促すものである。このようなメカニズムには、訓練、兵站、資金援助、治安要員の提供および国内治安措置の監視を含めることができよう。国連難民高等弁務官は最近、タンザニア連合共和国内のブルンジ難民の治安問題に取り組むため、こうした目的を考慮した重要なイニシアチブに着手している。 56.受入国の社会および環境に対する難民の影響の緩和。国際社会は、大量の長期的難民の存在が多くのアフリカ諸国に及ぼしうる深刻な社会および環境面の影響を十分に考慮していないことがしばしばである。世界で国民一人あたりもっとも多くの難民を抱えるギニアでは、人口の実に10%が隣国のリベリアおよびシエラレオネからの難民であり、その多くは長年にわたって同国に滞在している。大量の難民の存在は、ギニアに深刻な影響を与えており、場所によっては森林が破壊されたり、地元コミュニティーの施設が酷使されていることも多い。多くの場所でストリート・チルドレンが増えていること、および、現地の経済が五体満足な者を労働力として吸収できていないことから、社会的緊張が高まっている。学校、病院、衛生設備等、現地のインフラの負担も大きくなっている。難民に元戦闘員が混じっているため、小型兵器の不正取引も広がっている。アフリカ諸国に難民の受入れと保護を奨励し続けるだけでなく、国際社会は、多くの国々が継続中の多大な努力を認識し、これを援助しなければならない。 57.人道援助の調整。性質を変化させつつある今日の複雑な紛争に対し、より効果的な対応を図ろうとする国際社会にとって、人道援助の調整は依然として最大の課題の一つとなっている。多数の主体(各々が独自の任務、資金、アプローチおよび課題を持つ)の間でコンセンサスを形成する必要性があるため、人道援助の調整は極めて困難である。さらに、これら主体の中には、ほぼ原則的に、調整メカニズムの設置に難色を示すものも見られる。私は国連の人道活動により幅広い国連の平和、開発活動との完全な一貫性を持たせ、かつ私達の人道活動の調整を図ることを決意している。最近設置された、人道問題担当事務次長と緊急援助調整官が招集する「人道問題執行委員会」は、この目標の達成を意図したものである。平和維持あるいは平和建設活動との関連において、現地の国連人道調整官は私の代表あるいは当該国における特別代表の全体的権限の下に活動し、人道問題に関する十分な情報を常時派遣団長に提供することになっている。 ・人道援助の特別な課題 58.援助は政治的不作為を助長しているか。紛争犠牲者に対する援助の提供は道義的な義務であり、国連システムの中核的役割の一つである。しかし、今日の人道援助は道徳、政治および活動の面において、しばしば困難な課題を提起している。これは一つには、人道援助が、紛争の原因ではなく、その影響だけに対処する緊急対応策であるからである。人道援助をもって紛争を止めさせることはできないばかりか、人道援助物資の流用や横領によって紛争が長引く可能性もある。特に懸念されるのは、人道援助が政治的行動を補完するものではなく、これを代替するものとして捉えられることがあるという事実である。場合によっては、現地の人道援助関係者の脆弱性が、必要な政治的行動をとらない第一の理由にあげられてきた。紛争状態においては、人道援助の目的とその限界を世論に理解させ、これを常に想起させることで、人道援助が政治的不作為の言い訳に使われないようにする必要がある。 59.援助は紛争の火に油を注いでいないか。人道援助活動員は不安定で危険な条件の下でアクセスの交渉を行うばかりでなく、人道援助を政治的目標達成の道具として利用したり、経済的利得を得たり、戦闘能力を維持しようとする政府、反体制派双方の試みを押し返さなければならないことが多くなっている。人道援助物資の横領が紛争を長期化させないようにすることは、今日の紛争で人道援助活動員が直面する最大の課題の一つである。人道援助用の物資および車両の略奪は、あまりにも頻繁に発生するようになっている。このことにより、戦闘員に存続の糧が与えられるばかりでなく、車両、現金およびその他貴重品の場合には、紛争を長期化あるいは激化させる追加的手段を与えることになりかねない。リベリアでは、1996年4月から5月にかけて発生した戦闘により、500台近くの車両を含む800万ドル相当以上の物資が国連および非政府機関の建物から略奪された。その直後の数日および数ヵ月にわたり、これら盗難車に乗った戦闘員の姿が目撃されたほか、同国では、国連およびその他の国際機関から盗んだ物資を売る闇市場が生まれ、活況を呈した。 60.その他重要な優先課題に必要な資源が削られていないか。特に受入国にとって重大な懸念は、人道援助経費により、その他の重要な国内の優先課題に使える資金プールが目減りしていないかという点である。大湖地域では近年、人道援助に巨額の資金が費やされているが、同地域の国々はしばしば、こうした援助が問題の核心部分にほとんど効果を与えていないと考えている。人道援助が根本的原因に取り組む努力を蔑ろにしていることを懸念する向きも多いが、こうした感情は、アルーシャの戦犯法廷にまつわる極度の資金難およびルワンダ政府が打ち出した数多くの復興、開発優先課題に対するこれまでの支援不足などによって、さらに強まっている。こうした懸念は、人道援助と開発援助の間で合理的資源配分を確保することの重要性を浮き彫りにしている。 61.援助の主体と任務が多岐にわたっていることで、効果的援助の提供が妨げられていないか。ある危機的状況において活動する人道援助の主体と任務が多岐にわたっていることは、現代の紛争の顕著な特徴の一つである。このことは、惨禍に対応しようとする人間の誇るべき欲求を反映するものではあるが、活動の重複もしばしば生じており、これによって競争や対立が生まれることもある。主体が多岐にわたり、活動あるいは目標に関してコンセンサスが達成できないことも多いため、人道援助の目標達成が推進されるどころか、むしろ阻害されるケースも生じている。人道援助の効果を最大限に上げるためには、人道援助主体間の協力と調整が必要であることが明らかである。 ・緊急援助と復興・開発の関連 62.紛争後に復興と開発がなければ、進歩や恒久的平和はほとんど期待できない。しかし、復興と再建のために、和平プロセスの完了を待つわけにはいかない。救援努力は開発に向けた一歩であり、長期的な開発目標を損なうことなく、これを促進する形で行わなければならない。復興努力を成功させるためには、現地の状況をよく知っている救援スタッフに適した即効的な活動や、スムーズに開発努力へと進展させる必要がある長期的活動など、様々な活動を適切に配合する必要がある。この段階で必要とされるのは、緊急援助から開発援助へのバトンタッチではなく、各々のグループが独自のノウハウと能力を持ち寄り、一貫した調整の取れた形で、復興問題の適切な部分に対処するパートナーシップである。 ○紛争後の平和建設 63.紛争後の平和建設という言葉によって私が意味するのは、平和を確固たるものにし、武力紛争の再発を防止するために紛争終結時にとられる行動である。これまでの経験によれば、紛争直後の平和の足固めには純粋な外交的、軍事的行動以上のものが必要であり、かつ紛争の原因となったり、その脅威を生み出すさまざまな要因に取り組むためには、総合的な平和建設努力が必要である。平和建設には、国内諸制度の創設あるいは強化、選挙の監視、人権の推進、社会的再統合・復帰プログラムの策定、および、開発再開のための条件整備が含まれうる。危機から立ち直りつつある国々での平和建設は、継続的な人道活動や開発活動に代わるものではない。それはむしろ、紛争再発の危険性を低め、和解、再建および復興にとって最善の条件の整備に貢献するような形で、かかる活動を積み重ねたり、追加したり、方向転換したりすることをねらいとしている。 64.紛争後の平和建設において不可欠となるのは、真の平和と基本的な社会施設へのアクセスという形で、一般の人々の安全を確保することである。こうした平和建設の目的を追求する上で、多くの要件が明らかとなっている。第一に、時間が本質であるということ。第二に、外交的、政治的および経済的要因をカバーする多面的アプローチを採用しなければならないこと。第三に、努力には十分な資金的裏付けが必要であること。そして第四に、多くの主体間でハイレベルの戦略、運営面の調整を行わなければならないことである。 ・紛争後の平和建設への移行 65.紛争後はスムーズかつ早期に平和建設へ移行することが重要であるため、私はリベリアのケースに類似した紛争後の平和建設支援機構の設置について、前向きに検討するよう安全保障理事会に強く求めたい。紛争の終結以前にも、紛争後の平和建設に鍵を握るニーズ、および、これを充足する方法について、明確な評価を行わなければならない。平和建設の要素は明示的かつ明確にし、平和維持活動の任務の中に組み込むべきである。平和維持活動を終了する場合には、その最後の任務として、紛争後の平和建設への移行期間に関する特定の勧告を含めるべきである。 ・紛争後の平和建設の優先課題 66.紛争から立ち直りつつある社会には特別なニーズがある。紛争の再発を防ぎながら、開発のための強固な基盤を築くためには、和解の奨励と人権尊重の指導、政治参加の推進と国民統合の促進、難民および国内避難民の安全でスムーズな早期の帰還と再定住の確保、元戦闘員その他の生産的社会への再統合、小型兵器の入手可能性削減、ならびに、復興および経済再建への国内、国際の資源の動員など、死活的な優先課題に重点を置かなければならない。これら優先課題は相互に関連しており、平和建設を成功させるためには、あらゆる面で協調と調整を伴った努力が必要である。 ・復興の資金調達 67.包括的な経済プログラムの策定、実施能力が紛争によって損なわれた国については、国際金融機関による通常の厳しい金融条件の緩和を検討しなければならない。紛争後の平和建設を含む紛争防止には、不安定な政治的移行期において脆弱な国家を支援するため、緊急の資金注入が必要とされることがある。和平プロセスに逆行する条件が課されたり、国民の支持を受けて和解の進め、あるいは和平合意実施の努力を誠実に行っている脆弱な政府に対しては、国際金融機関や援助国が資金の供給を停止させるような事態は特に避けなければならない。経済改革が必要な場合、いかにして「平和にやさしい」最善の構造調整プログラムを策定し、かつブレトン・ウッズ機関からの融資に通常適用される条件を緩和するかを検討しなければならない。 68.紛争が終結して間もない場合、二国間および多国間の開発機関は、所得創出活動の速やかな再興を促進する分野に援助を向けることにより、明確な貢献を行うことができる。特に元戦闘員、難民および国内避難民の地元コミュニティーへの再統合を促進する訓練およびその他の能力建設活動を含んだ即効性のある小規模プロジェクトにも、特別の注意を払わなければならない。コミュニティーの安定化が早ければ、その分だけ平和も持続的なものとなるからである。 ・調整の取れた国際的対応 69.紛争後の平和建設は多面的な性格を有しているため、効果的な調整が必要である。国際社会からの多大な支援を引き続き必要としているリベリアでは、国連平和建設支援事務所がはじめて設置された。同事務所の目的は、国連による紛争後の平和建設努力を強化、調整する一方で、同国の再建および復興に対する国際的な支援の動員をはかり、リベリア国民による和解と人権尊重の推進努力を助けることにある。事務総長代表は、国連システム全体による政策アプローチの一貫性確保の責任を負う。国連のリベリア駐在調整官は、事務総長代表の補佐として、国連システムが実施する開発活動の調整を引き続き担当する。駐在調整官は常時、事務総長代表に対し、国連の関連活動あるいはイニシアチブに関する情報を十分に提供するとともに、事務所の活動期間終了後もそれを継続する。 70.紛争あるいは紛争後の平和建設の状況によっては、当該国における国連システム全体の一貫した努力の基盤を提供するものとして、「戦略的枠組」アプローチが適切かもしれない。戦略的枠組は、恒久的平和と持続可能な開発を目指した政治、人権、人道および開発活動を特に支援するものである。このような努力には、ブレトン・ウッズ機関を含めた国連システムの全パートナーはもちろん、国内当局、援助機関および非政府機関も参加することになる。 W.恒久的平和の建設と経済成長の促進 ○よい統治 71.アフリカにおける国家と社会の困難な関係は、植民地統治の権威主義的遺産に多く起因している。植民地国家は、政治的正当性を求める必要をもたなかったため、国民の代表も参加も奨励しなかった。その結果、社会的、政治的分裂がしばしば生まれ、市民社会の弱体化や依存化が起こることもあった。アフリカ諸国には、中央集権的で極めて個人的な統治形態への依存を続けた国が多く、その中には腐敗、民族に基づく決定および人権侵害というパターンにはまり込んだ国もある。大半のアフリカ諸国で複数政党制の選挙が行われてはいるものの、個人が保護されていることを実感し、市民社会が繁栄でき、また、説明責任を確保するのに十分な制度的メカニズムをもって、政府がその責任を効果的かつ透明に実行する環境を整備するためには、さらなる努力が必要である。 ・人権と法の支配尊重の確保 72.平和を恒久的なものとするいかなる努力においても、人権の尊重と法の支配は必要な要素である。これらはよい統治の礎でもある。人権尊重を誓約することによって、政府は万人が自由に暮らせる社会を建設するとの約束を果たすことができる。OAU閣僚理事会は最近、人権および国民の権利に関するアフリカ裁判所の設立提案を支持したが、私はこれを歓迎する。私は、人権に関する国連やアフリカの文書を批准していないすべてのアフリカ諸国に対し、これを批准するとともに、優先課題として国内法でこれらの文書を具体化することを求める。 73.政府の行動はもっとも顕著な効果を持っているが、重要なシグナルを送ることも可能である。一つのシグナルとして、人権条約の批准推進、人権の十分な擁護を確保するための法律の見直しおよび修正、ならびに、裁判官、警察官、弁護士および刑務所職員の人権訓練の促進などを目指した、人権に関する国内行動計画の策定があげられよう。信頼できる、独立した中立的な国内人権機関の設立は、重要な信頼譲成措置となりうるものであり、現地の非政府人権機関を発展させることによってそれを補強すべきである。国連人権高等弁務官には人権に関する国内行動計画の策定、人権委員会の設置あるいは人権目標の実現について各国政府を援助する用意がある。政府、非政府機関、メディアその他による公民教育は重要であり、これを通じて国民に対し、その市民権と法的保護を周知させるとともに、市民の責任についても説明すべきである。 74.法律の公正で中立的な執行を保証することは、人権の擁護にとって不可欠である。そのためには、裁判所の自律性、全体性および独立性を尊重し、警察および国家治安当局による公正で中立的な法の執行を確保しなければならない。公務員を含め、個人や集団がその責任を問われず、処罰を逃れられるということになれば、一般市民は専断的な逮捕と拘留の恐怖に怯えなければならない。法律が選択的に適用され、一定の集団に対して厳しく運用されれば、不満が生じ、暴動の引き金となりかねない。国際社会がアフリカ諸国によるよい統治の推進を助ける上で、司法制度の強化は非常に重要な手段である。 ・行政における透明性と説明責任の促進 75.腐敗は世界中にはびこっているが、特にアフリカの発展を大きく損ない、歪曲させている。腐敗の問題に取り組むためには贈賄側、収賄側の双方を取り締まるべきである。経済協力開発機構は最近、援助資金による物資調達における腐敗を取り締まるイニシアチブを打ち出したが、私はこれを歓迎する。私はまた、締約国に贈収賄とその処罰を定める法律の制定を義務づける「国際商取引における外国公務員の贈収賄防止条約」の署名も歓迎する。これらは重要な第一歩ではあるが、さらに努力が必要である。特にアフリカ諸国の政府は、この問題への取組みを強化し、腐敗との闘いを真の意味で優先課題としなければならない。これを怠った場合の代償は資源の損失、外国投資の減少、意思決定の歪曲および国民からの信頼失墜など、膨大なものとなるからである。私は、同条約を実施する国々における迅速な立法措置のための期限に関する合意を求めるとともに、2000年までに、公務員の行動および行政の透明性に関する統一的アフリカ条約の策定をOAUに要請する。 ・行政能力の向上 76.よい統治には、資源の効果的な管理も必要である。よって、アフリカにおける公共部門の管理改善は、国連システムとアフリカ各国政府にとって再優先課題となり続けなければならない。現在の努力は多くの部門を対象とし、多くのレベルで行われている。特に、金融部門における公的機関の改革および透明な経済、規制手続と慣行の発展をはかるアフリカ諸国と協力していく上で、ブレトンウッズ機関は特別な役割を担うものである。強力な中央銀行の能力、効率的な税関当局および管理の徹底した政府規制機関は、安定したマクロ経済のパフォーマンスと投資家の信頼醸成にとって、必要不可欠な前提条件である。 ・民主的統治の強化 77.民主的な政府は政治的権利の保証、経済的自由の保護および平和と開発がかなえられる環境の整備に資するものである。今日、世界各国は過去にも増して、政治指導者が多数派の意思により所定の任期をもって選出され、法的限度内でその権限を行使するような、多元的統治制度の確立を図っている。これはアフリカの将来にとって明るい兆しをもたらす動きである。なぜなら、真に民主的な制度がなければ、対立する利害関係者は妥協ではなく、紛争を通じて問題の解決を図ろうとする可能性が高いからである。 78.民主化により、人々は社会参加の意義を得る。この重要性はいくら強調しても足りない。なぜなら、人々が社会参加に真の意義を見出さなければ恒久的な平和の実現は不可能であり、持続可能な開発も達成できないからである。人々が自らの社会の政治に代弁者を送っているという感覚を持たせることが不可欠である。アフリカには、この意味で望ましい機構と参加型の統治が伝統的に存在しており、民主化にこれを活用できることも多い。アフリカでもその他の地域でも、選挙は民主化努力に中心的な役割を担うものであり、これを引き続き重視していかなければならない。しかし選挙はまた、国内制度と民主的プロセスの強化につながる長期的努力の一環としても位置づけられなければならない。民主化プロセスの試金石となるのは、最初の選挙の実施ではなく、これら初回の選挙の後に、合意された選挙日程に従って引き続き選挙が行われるかどうかということである。 ○持続可能な開発 79.開発は一つの人権であると同時に、すべてのアフリカ諸国の主要な長期目標でもある。開発はまた、アフリカにおける紛争緩和にも中心的役割を担うものである。多くのアフリカ諸国は近年、持続可能な開発に向けて大きな進歩を遂げているが、依然として困難を極めている国もある。経済の不調やバランスを欠いた開発により、一部の国はほぼ恒常的な経済危機に陥っており、その結果国内の緊張状態が急激に高まる一方で、こうした緊張状態に対処する能力が大幅に低下している。アフリカでは、痛みを伴う構造調整プログラムにより社会支出が大幅に削減された国が多く、そのためもっとも基本的な社会サービスが多く切り捨てられている。特に、資源が先細っていく中で、一定の集団がその公正な分け前を得ていないと感じている場合、紛争の危険が生じることは明らかである。 80.経済成長は安定も満足も社会的平和も保証するものではないが、経済が成長しなければ、家計や政府支出についても、民間、公共資本の形成についても、保健、社会福祉についても、持続的な増大は期待できない。経済成長を通じて持続可能な開発を達成するための基本的戦略は、現在では十分に確立されている。この戦略の中核的要素としては、マクロ経済の安定と安定的な投資環境、国際経済への統合、経済成長の推進力としての民間部門への依存、特に輸出志向の活動を支援する長期的な外国直接投資、保健、教育などの人材育成部門への十分な投資、公正で信頼できる法的枠組、および、物理的な基礎インフラの維持があげられる。開発と経済成長をどのように図るべきかについては幅広いコンセンサスが見られるものの、多くのアフリカ諸国が推進してきた政策がこれまで失敗していること、および、全般的に困難な国際経済環境の中での努力を強いられていることにより、アフリカでは高度成長の達成が難しくなっている。 ・投資と経済成長に好ましい環境の整備 81.投資環境の整備。持続的経済成長を生み出すために、アフリカ諸国は投資環境の整備を行わなければならない。世界経済のシステムは市場競争を原則としているが、アフリカは近年、長期的な外国直接投資の誘致競争において疎外された存在となっている。中小企業は、アフリカにおける重要な雇用創出源であり、そのGDPにも大きく貢献していることから、これら企業に対する投資の重要性も強調すべきである。アフリカが世界経済に完全に参加するためには、政治および経済の改革を実行しなければならない。このような改革には予見可能な政策、経済の規制緩和、貿易に対する開放性、合理的な税制構造、十分なインフラ、透明性と説明責任および財産権の保護を含めなければならない。 82.必要とされる改革の実施。多くの政府は現在必要な改革を遂行中であり、その結果一部の国はすでに経済成長の加速を見ている。しかし、依然として苦闘を続ける国もあり、中には財政基盤の強化、民営化、規制緩和プログラム、貿易自由化および人的資本と経済インフラへの投資促進政策という、経済改革の第一段階さえ完了していない国もある。これらの改革は遅滞なく実施する必要がある。また、これと並行して汚職慣行を一掃し、政府の任務遂行能力を高めるその他の公務員制度改革を実施すべく、断固とした努力を行うべきである。 83.長期的成功が達成できるのは、アフリカ諸国政府が健全な経済政策を実施するだけでなく、強固な経済基盤が確立されるまで我慢強くその実施を続ける政治的意思を持っている場合のみである。このことは、必要とされる措置に対する世論の幅広い理解と、かかる措置に対する広範な政治的支持があってはじめて可能である。よって私は、大幅な調整が必要とされる国々において、構造調整の必要性とその様々な側面のありうる帰結を検討、説明するために、経済の再編および改革に関する国民会議の招集を促すものである。こうした会議により、現地の条件によって正当化される修正点を提案することも可能となろう。 84.進捗状況と新たな機会への注意喚起。進展が見られた場合、これを公に認めるべきである。事実、主要な投資ガイドにはアフリカに関する情報が含まれていない。私としては、OAU事務局長と協力して世界中の主要財界人と定期的な会合を開き、アフリカの成長促進部門へ大規模な長期的投資を誘致する方法について話合いを行っていく所存である。アフリカ経済共同体を設立するアブジャ条約が要求するところにしたがい、私は、複数国インフラ整備プロジェクトおよび共有天然資源開発プロジェクトを特に重視していこうと考えている。こうした協議に基づいて、私は各国政府、国連システムおよびその他の機関が行うべき適切なフォローアップについて勧告を行う予定である。 ・社会開発の重視 85.開発途上地域に暮らす人々の大半は開発の焦点としてではなく、その付帯物として見られることがあまりにも多い。究極的に、すべての開発戦略は大半の市民にもたらされる恩恵によって評価されるべきであり、特定の開発方針の価値は、この目的への貢献度をもって測られるべきである。各国政府は基本的な人的ニーズを重視し、貧困の緩和に重点を置きながら、その優先課題と分配の決定を見直すべきである。国際社会は、利用できるすべてのツールを用いて社会開発を図ることにより、社会開発問題の認識の高まりに呼応する形で、貧困対策および社会開発ニーズへの資金提供を増大させる必要がある。 86.人的資源への投資。物的資本への投資が経済成長に必要であるように、人的資源への投資も、単に経済成長の副産物としてではなく、開発の推進力として認識されなければならない。人間開発への投資は長期的な競争力への投資であり、社会の安定と進歩にとって必要な要素である。例えば教育は就職の幅と能力を広げるばかりでなく、各個人に対し、生活、健康および文化のあらゆる側面において、情報に基づいてその選択の幅を広げ、改善することを可能にする。技術、職業訓練は技能の習得と個人および社会のニーズの変化に応じたこれらの技能の更新、修正あるいは変更に必要な基盤を作り上げるものである。 87.公衆衛生上の優先課題。アフリカの直面する公衆衛生危機は深刻化しており、開発にも重大な影響を与えかねない。これは、マラリアなどの風土病の影響悪化に加え、結核、ポリオなどの病気の再来や、HIV/AIDSの流行による破壊的影響の継続によるものである。予防接種あるいは効果的な予防措置、ならびに、衛生設備改善および基本的医療への投資があれば、死亡を防ぐことができたケースも多い。HIV/AIDSについてみれば、全世界の感染者の3分の2がアフリカに存在する。HIVの母子感染の可能性を大幅に低下できる新治療法も利用できるが、感染予防法に関する教育の向上も大きな効果を持つことになろう。私はアフリカと国際社会に対し、治療と予防の可能な病気による死亡率の削減を改めて重視することを求めるとともに、この目的での緊急・人道援助資源の利用を検討することを促すものである。私は、乳児と子どもをはじめ、毎年アフリカで数百万人の死因となっているマラリアなどの病気について、新たな予防・治療技術の研究を大幅に強化することを要請する。私は医薬品業界に対し、アフリカ諸国および世界保健機関と協力し、HIV/AIDS治療薬を含め、アフリカにとってよりアクセス可能な救命薬、延命薬を開発するための日程表を作成するよう呼びかけたい。 88.社会的正義の重視。貧困の根絶には、経済的進歩の恩恵が一定の場所、部門あるいは国民集団に集中せず、できるだけ幅広く行き渡るような開発が必要である。経済成長はそれ自体、恩恵の衡平な配分も、貧困層および社会的弱者の保護も、また、機会の均等化も保証するものではない。開発と経済成長がプラスの成果を生み出し、社会がバランスの取れた成長を遂げるためには、社会的正義に留意することが不可欠である。数百万人が無教育で読み書きのできない状態にある中で、初等教育にほとんど教育資源を投じなかったり、数百万人が簡単に治療あるいは予防できる病気にかかっている中で、基礎的保健サービスにほとんど医療支出を向けなかったりすれば、開発は無意味も同然である。社会保障の対象が少数の都市住民に限られ、全体的なアクセスの不足が事実上の権利剥奪を意味する場合、開発は相対的な意味しか持たない。都市部が経済機会を独占する一方で、農村部が凋落・壊滅すれば、変革の代償として動乱や社会の崩壊が生ずることになる。開発および支出の優先課題は幅広く、衡平にかつ広く恩恵が行き渡る形で設定する必要がある。 89.女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃。女性の能力に投資し、選択権を行使する力を与えることは、経済、社会開発を進めるための不可欠かつ確実な方法である。男女間の権利、機会および資源へのアクセスの平等は、その根本的な要件である。女性および女児に対するあらゆる差別を撤廃すべく、措置を講じなければならない。平等の権利の行使を妨げている制度的障壁を明らかにし、包括的な政策改革を通じてこれを除去する必要がある。国によっては、既婚女性が依然として夫の恒久的な庇護下にあり、財産管理権がまったく与えられていない。特に財産、相続および離婚について、法の男女平等化を図ることは多くのアフリカ諸国にとって緊急の課題である。私は、「女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」を批准していないすべての国に対し、これを留保なしに批准することを強く促すものである。 ・国際援助の再編 90.アフリカでは、長期的な国際援助プログラムがその開発目標を達成できていない。アフリカに対する援助は近年、大幅な削減を見ている。こうした傾向は、アフリカ全体で継続中である困難な政治、経済改革の実施努力を助けるどころか、逆にこれを妨げている。適切で効果的な援助の水準を確定しなければならない。これとの関連で、効果の大きい分野および依存の低減を重視しながら、開発援助を再編する必要がある。援助提供の手段とその最終的目標の両方に注意を向けるべきである。例えば、都市部の水供給が農村部よりも優先されているために、水道、衛生設備に関する援助のうち、農村部あるいは低コストの大衆向けプログラムに向けられるのは、全体の20%に満たないことを指摘しておく必要があろう。また、初等教育よりも高等教育が優先されているため、教育に関する援助のうち、初等教育に割り当てられるのは20%未満である。さらに、都市部の病院がプライマリー・ヘルスケアよりも優遇されている結果、医療関係の援助のうち、基本的な保健サービス、施設に向けられるのは、全体の約30%に過ぎない。 91.技術援助の提供方法についても、きびしい再検討が必要である。当初考えられていた技術援助は知識、技能およびノウハウの移転を加速し、国内的な能力を向上させることにより、先進国、途上国間の技術能力格差を縮めることを目的としていた。これが成功したケースも見られるが、多くの場合、技術援助は国内の能力を解き放つどころか、これを抑制するというまったく正反対の効果を及ぼしている。技術援助プログラムの発足から40年以上を経た現在、多くの分野で国内の専門家が利用できるにもかかわらず、技術援助に費やされる年間120億ドルのうちの90%が依然として外国のノウハウ購入に当てられている。 92.上述の目標に沿って、私は、依存を低減し、きれいな飲料水、基本的な識字および医療などの一義的な社会開発目標を推進し、アフリカ経済の安定化と競争力強化に向けた努力を拡充するための最善の方法について、即座に検討するよう要請する。何よりもまず私は、すべての援助国に対し、アフリカに対するその援助の50%以上がアフリカ域内で使われることを確保し、援助資金の使途情報に対する一般のアクセスを改善すべく、努力を行うよう促すものである。道路・鉄道網、通信能力、コンピュータ・システムおよび港湾施設など、アフリカのインフラ整備向けの援助を増大させれば、目に見える効果が現れる一方で、アフリカ域内でも雇用、ノウハウおよび所得が創出されることになろう。 ・債務負担の軽減 93.持続不可能な債務負担。アフリカには、基本的な期待と根本的なニーズへの取組みに必要な資金を欠く国が多い。これはアフリカで最大の危機の一つであり、主としてアフリカの公共部門の債務問題に起因している。緊張状態が高まったり、紛争の脅威にさらされたりする中で、多くのアフリカ諸国は、死活的なニーズを充足する基本的な資源を持っていない。1995年現在、アフリカの対外債務は3,289億ドルに上っているが、その約45%は公的な二国間貸付、30%は公的な多国間貸付、25%は商業貸付によるものであった。この債務を完全に返済するとすれば、アフリカ諸国は、援助国および外国の商業金融機関に対し、その輸出所得1,423億ドルの60%以上(863億ドル)を支払わなければならなくなる。事実、アフリカ諸国全体として、輸出所得の17%以上(254億ドル)が援助国および外国の商業金融機関に支払われているにもかかわらず、延滞金の累積額は609億ドルに達している。 94.債務に関する追加的行動の必要性。持続不可能な債務負担がアフリカの経済的安全保障と長期的安定に与える脅威に取り組むためには、国際社会による包括的かつ決定的な行動が必要である。国際社会が債務軽減を認めることで、経済改革を促進、強化すべきである。債務軽減は、アフリカの今後の投資誘致能力を損なわずに過去の負担を現在の活動から排除することによってこの能力を高めるような形で行うべきである。最近の「重債務貧困国救済イニシアチブ」は、有望な措置である。このイニシアチブは、国際的に受け入れられた改革プログラムの実施を受けて、国際社会が経済成長と開発に支障のないレベルまで貧困国の債務負担軽減を行うという原則に基づいている。しかし、イニシアチブの成果は芳しくない。現在まで、この要件を満たしたアフリカ諸国は4カ国だけである。 95.アフリカの過剰な債務負担を大きく軽減させるには、最高レベルの協調的な政治行動が必要となる。開発の観点から見れば明らかに、これまで累積した債務負担から見て、アフリカの現状はあまりにもお粗末である。今日の債務問題に関して、アフリカはその責任を免れることはできないが、国際社会もこの問題を作り出した自らの責任を認める必要がある。冷戦中、二国間および多国間の貸付は、主として地政学的な優先度に結び付けられることが多く、超大国あるいはその主要同盟国が利害を有する地域の政治的な平和と安定を金で買う形で提供されていた。二国間の貸付が、アフリカ諸国による多額の軍事支出に用いられたことも多かった。場合によっては、アフリカ各国の政府が、必要でもなければ、生産的に利用もできない広範な借款の受入れを強制されたこともあった。多くの場合、貸し手には多額の資金の流用あるいは横領を疑う明らかな理由があったにもかかわらず、支出の説明責任を確保するための努力はほとんど、あるいは、まったく行われなかった。 96.債務に関する行動枠組。アフリカ統一機構は、合理的に短い期間で、かつアフリカの全般的経済改革との関連で、最貧国の累積債務を完全に免除する国際的な合意を求めている。私は、アフリカ諸国の債務の罠からの脱出に対する援助を求めるこのアピールを、もっとも真剣に検討するよう促すものである。私はまた、この目標のために2つの措置を即座に講ずるよう要請する。まず私は、すべての債権国に対し、アフリカ最貧国の公的二国間債務の全残額を無償資金供与に転換することを求める。第二に私は、国際金融機関に対し、最貧重債務国の貸付に対するアクセスを大幅に緩和、迅速化すること、および、大幅で持続的なペースの経済成長と社会開発を可能とするのに十分な資金を各国に提供することを要請する。 ・国際市場の開放 97.市場アクセス。今やあらゆる国が国際貿易システムの一部となっているが、中には統合の不完全な国やその不安定性に対して過度に脆弱な国もある。アフリカにおける長期の持続的な成長はアフリカが輸出を多様化し、一次産品の生産とともに製造業における輸出主導型の成長を達成する能力に大きく依存している。輸出主導型成長への移行を図るためには、マクロ経済の安定と債務軽減に裏打ちされた持続的な国内政策の改革だけでなく、先進国市場に対するアクセスの拡充および保証、ならびに、地域的南南協力の改善も必要となる。アフリカ製造業における競争力の一部は、農業関連産業や衣料・繊維産業など、先進国にとって政治的に慎重を要する産業に存在する。多角的貿易交渉のウルグアイ・ラウンドにより、アフリカの主要輸出品に対する平均関税率は引き下げられたものの、これをさらに推し進める必要がある。特に厄介なのは、一部の農業および天然資源関連製品に対する関税が、輸出前の加工度に応じて高くなるという「タリフ・エスカレーション」の問題である。この現象は、アフリカの開発努力を妨げ、これに罰則を科す性格を持っているため、アフリカ製品についてはこの措置を撤廃すべきである。 98.先進諸国は、競争激化に抵抗する国内政治ロビーの圧力を受けたとしても、競争的なアフリカ製品に対するアクセスを確保するよう、特別の努力を行う必要がある。私は、二国間ベースと世界貿易機関を通じて実施すべき共通政策の採択を目指し、次回の主要先進国首脳会議で、アフリカ製品に対する貿易障壁撤廃の問題を取り上げるよう要請する。 99.競争的な世界貿易環境への適応。アフリカ自身の関税引下げを進める上で、国際社会は歳入、財政赤字、マクロ経済の不安定および債務返済負担に対して、関税引下げが及ぼしうる影響を考慮すべきである。アフリカ諸国がすでに着手している関税引下げと経済改革を持続させるためには、援助が必要となる。アフリカはまた、新しい環境、保健および労働基準など、新たに台頭しつつある非関税障壁に対処する上でも、特別の支援を必要としている。多くのアフリカ諸国には、国際市場のアクセス改善だけでなく、ウルグアイ・ラウンド合意を通じて提供された既存の機会を活用できる能力を制限している、国内的制約の除去も必要である。国際社会はまた、アフリカにおける生産能力の開発と、アフリカ産業の競争力向上にも、その援助を向けるべきである。 ・地域協力・統合の支援 100.多くのアフリカ諸国において経済活動の拡大を妨げている重要な要因として、狭小な市場、高い取引、輸送費用および通信体制の不備があげられる。地域的な協力と統合を拡大すれば、これら障害のいくつかを緩和するとともに、多くの国々にとって、独力では達成できないことを集団的に達成することが可能になろう。また、小地域あるいは地域機関の加盟国間で経済関係が緊密化すればするほど、論争や緊張状態が紛争へと発展することを防止するための努力が強まる可能性が高くなる。これまで、様々な政治的、制度的および物理的制約により、アフリカにおける地域統合を促進しようとする努力は妨げられてきた。具体的な阻害要因としては、イデオロギー上の対立、国家主義的政策、国内通貨の非兌換性、関税・非関税障壁、法的な制度と枠組の違い、および、場合によっては道路、通信施設、輸送などの基礎インフラの不備があげられる。 101.今日では、数多くの重要な要因が、地域・小地域協力の強化を後押ししている。こうした要因としては、アブジャ条約、多くの政府による民間部門育成努力、多くのアフリカ諸国による構造調整プログラムの採用に起因するマクロ経済政策の収斂、および、世界のその他の地域における新たな貿易圏の形成によって提起された共通の課題があげられる。これらの努力に真の意味で弾みをつけるためには、一層の政策の収斂と調和が必要である。小地域レベルにおける具体的活動としては共通の経済特別区、共通のインフラ整備プロジェクト、共同観光開発など、複数の国を結びつける協力プロジェクトがあげられよう。国内的な経済努力を補強するため、私はアフリカ諸国に対し(ブレトンウッズ機関を含む国連システムおよび欧州連合その他の支援を受け)、経済秩序と健全なマクロ経済政策を推進し、近隣国間の強固な制度的信頼醸成関係の確立を促進するために、地域・小地域統合をどのように活用できるかを模索するよう要請する。 102.また、私はアフリカ諸国に対し、小地域の交流に関連する機材および施設に関する統一基準の確立を優先課題とするよう要請する。大幅な進歩のためには、特に近隣諸国間に共通な基準および機材の開発について、援助国・機関および貿易相手国が一層支援的な態度をとる必要もある。外部との二者間の特恵取極は、相容れない基準、技術および機材を次々に生み出し、真の統合を妨げていることがあまりにも多い。 ・現行の国際・二国間イニシアチブの調和 103.多国間、二国間を問わず、援助国・機関の間の調整は不可欠であり、アフリカに対する援助が貧困の軽減と経済成長の促進についてこれまでよりも成果をあげられるようになるまで、継続的にその再評価を行うべきである。意味のある努力を行うためには、国際金融機関が提供する援助だけでなく、国際開発援助のはるかに大きな部分を占める二国間援助もその対象に含める必要がある。近年では、アフリカにおける平和と開発をねらいとして、重要な多国間イニシアチブが数多く発足している。その中には、「1990年代のアフリカ開発に関する国連の新課題」とその実施を補完する「アフリカに関する国連システム全体の特別イニシアチブ」、「アフリカ開発に関する東京国際会議」、「1990年代の後発開発途上国のための国連行動計画」および「社会開発に関するコペンハーゲン宣言」のコミットメント7が含まれている。私の改革提案の精神に沿って、これらのイニシアチブを十分に検討し、国連とその基金・計画が全体として、また、アフリカ各国の政府と社会、援助国・機関および非政府機関とともに、有効に機能するようにすることが必要である。 X.必要な政治的意思の結集 104.アフリカと国際社会の双方に十分な政治的意思があれば、アフリカにおける平和と開発に新たな弾みをつけることができる。アフリカは悠久の大陸である。その土地は、繁栄の強固な基盤を提供できるほど豊富かつ肥沃である。そこに住む人々は、チャンスが与えられれば、これを活用するのに十分な誇りと勤勉さを備えている。アフリカの人々にスタミナ、決意あるいは政治的意思が欠けていることはないと、私は確信している。今日のアフリカはプラスの変化を模索しており、この努力は多くの場所で結実しつつある。アフリカの一部で殺戮や悲劇が起こっていても、私達は明るい兆しを見逃したり、成果を無視したりしてはならない。 105.アフリカに求められること。政治的意思があれば、美辞麗句をまさに現実のものとすることができる。逆に政治的意思がなければ、どんなに高尚な考えも成功の見込みはない。3つの分野に特に注目する必要がある。第一にアフリカは、軍事的ではなく、政治的に問題の解決を図るという意志を立証しなければならない。正当な利益追求や反対表明のための民主的手段を保護するとともに、野党を尊重、合憲化しなければならない。第二にアフリカは人権と法の支配の尊重を確保し、民主主義を強化し、行政における透明性と能力を向上させることによって、よい統治を真剣に考える意思を結集しなければならない。よい統治が尊重されなければ、アフリカは、今日明白な脅威と紛争の現実から自らを解き放つことができない。第三にアフリカは、経済成長の促進に必要な様々な改革を実施、堅持していかなければならない。アフリカ各国の政府が健全な経済政策を実施し、強固な経済基盤が確立されるまでこれを堅持するという政治的意思を持ってはじめて、長期的な成功は達成可能となる。 106.国際社会に求められること。国際社会にも政治的意思は必要である。国際社会のコミットメントがあれば、顕著で急激な変革も可能であることは証明済みである。アフリカに関し、国際社会は今、効果が期待できるところに介入し、資源が必要とされるところに投資を行うという政治的意思を結集しなければならない。新たな資金源も必要ではあるが、既存の資源の効率的利用と、アフリカに自らの資源の創出とその再投資を可能にするような貿易および債務関連措置の実施も、同様に必要である。アフリカに対する国際社会のコミットメントは宣言文ではなく、実際の行動によって評価されるのであるから、具体的な行動をとならなければならない。顕著な進歩を遂げるためには、数年間にわたり政治の最高レベルで国際的な注意を持続する必要がある。アフリカを支援する行動の弾みを保つため、私は安全保障理事会に対し、2年に1回のペースで再び閣僚級会合を開催し、実行された努力と必要な行動を評価するよう要請する。私はまた、このために5年以内に首脳レベルの安全保障理事会を開催することを検討するよう促すものである。 Y.結論 107.本報告において私は、アフリカにおける紛争の源とその存続の理由について、明確で率直な分析を試みた。紛争を減少させ、長期的には強力で恒久的な平和を打ち立てることに貢献するため、私は現実的かつ達成可能な行動と目標を勧告した。私は、アフリカの人々にもそれ以外の人々に対しても、政治的意思を結集して私達すべてが立ち向かわなければならない課題に対処するよう促した。アフリカで起こっている出来事や進歩のために達成しなければならないことについて、誰もが無知を装うことができる時代はとっくに過ぎている。また、変革遂行の責任を他人に転嫁できるような時代も過ぎ去った。私達すべてがこの責任に立ち向かわなければならない。国連にはその役割を果たす用意がある。世界にも、そしてアフリカにも、この用意がなければならない。 1998年10月 国際連合広報センター 東京都渋谷区神宮前5丁目53‐70 国連大学ビル8階 〒150‐0001電話(03)5467‐4451〜2 FAX(03)5467‐4455 E‐ mail :unictok@blue.ocn.ne.jp Home page :http://www.unic.or.jp