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グリーン経済をめざして:持続可能な発展と貧困の撲滅への道筋-政策立案者のための統合的方策

プレスリリース 11-010-J 2011年02月21日

*国連環境計画(UNEP)プレスリリースのご案内です

国連環境計画(UNEP)は本日、最新の報告書「グリーン経済をめざして:持続可能な発展と貧困の撲滅への道筋 政策立案者のための統合的方策」を発表しました。結論の要約をまとめた日本語資料を以下にご案内します。なお、報告書および関連プレスリリースは以下のサイトをご覧ください。
http://www.unep.org/greeneconomy/

結論の要約
10の主要セクターに世界のGDPのわずか2%を投資するだけで低炭素、資源効率の高い経済に向けての移行が可能である。UNEPの新たな報告書によれば、グリーン経済への移行は年間2%の世界GDP(現在約1.3兆ドル)を今から2050年までの間投資することによって、農業、建設業、エネルギー業、漁業、林業、製造業、観光業、運輸業、水資源および廃棄物管理に関する事業の主要分野を環境に優しいものへ移行することが可能である。しかしながら、その種の投資は国内および国際的な政策改革によって拍車をかけていかなければならない。

世界中の専門家および先進国と開発途上国両方の機関によって行われた、この時を得た報告書では、グリーン経済のシナリオのもと経済的成長と環境的持続性を両立できないことはないと確認している。それどころか、グリーン経済は雇用を創出し、経済的な発展を遂げると同時に、気候変動や、より深刻な水不足とエコシステムサービスの損失など相当なマイナス面を回避しようとしている。

グリーン経済を進めることは成長を引き起こすだけではなく、特に自然資本の増益にもつながり、GDPおよび一人あたりのGDPのより高い成長を生み出す。GERモデル実施のもと、グリーン投資シナリオは、5-10年以内の通常のビジネスシナリオより高い年間成長率を達成する。この経済的成長は現行レベルの1.5から2050年までに1.2以下へ減少すると見積もられたバイオキャパシティ率を地球規模のエコロジカルフットプリントによる環境的負荷から大きく切り離すことで特徴づけられ、通常ビジネスでのレベル2を超えて上昇するのに反して、持続可能な基準点の値1により近くなる。

エネルギーに対する世界的需要がある程度は上昇するが、2050年までには現行レベルに戻り、それはエネルギー効率化の相当な進歩のおかげで通常ビジネスで予想されるよりも約40%も少なく済む。グリーン投資シナリオは現行レベルと比べて2050年までにエネルギー関連のCO2排出量を約1/3減らすことを目標としている。排出量の大気中の濃度は2050年までに450 ppm以下に抑えなくてはならず、2℃の基準点で地球温暖化を押さえる機会を得るためには不可欠なレベルである。

グリーン経済は自然資本に価値を見出し、投資する。 分析されたグリーン投資の1/4であるGDPの0.5%(3250億ドル)が自然資本セクターである林業、農業、淡水事業および林業に割り当てられている。林業における付加価値は通常のビジネスと比べ、2050年に約20%上昇する。2010年から2050年の間の年間1000億ドルから3000億ドルの範囲のグリーン農業への投資は土壌の改善と主要作物用に世界的な収穫を増やし、現在の投資戦略で可能なものより10%もの向上を示している。農業、工業と地方自治体セクターにおける効率性の向上は2050年までに水需要を約1/5減らし、予定された動向に比べて、地下水および上水にかかる圧力を短期と長期の両方で減らしている。

グリーン経済は貧困緩和に貢献できる。 貧困の緩和と天然資源とエコシステムの賢明な管理方法との間には切っても切れないつながりがあり、それは貧困層によって直接受け取られる自然資本からの利益の流れによるものである。これは特に収入が低い諸国において重要であり、エコシステム商品やサービスは貧しい農村地帯の生計の大きな構成要素であり、自然災害や経済ショックに対しての最低限の生活保障を提供する。

グリーン経済への移行で、新規雇用が創出され、経時的には「ブラウン」経済の雇用における損失を超える。これは特に農業、建設業、エネルギー業、林業および運輸業セクターにおいて顕著である。ただ、漁業など資本が非常に枯渇しているセクターにおけるグリーン化は、自然のまま在庫を補給し、収入や職の恒久的な喪失を防ぐために、短期および中期的な失業と収入の損失は避けられない。また、労働力にスキルの向上や再教育するための投資も必要となる。

政府による投資の優先化および経済セクターのグリーン化を刺激する分野での支出は臨海経路(クリティカルパス)を歩んでいる。 全セクターにおいて金がかかり害のある補助金改革はグリーン経済移行にとっては金融的な余裕と自由な資源を開くことになる。エネルギー事業、水事業、漁業および農業セクターにおける補助金を取り除くだけで、年間の世界のGDPの1-2%の節約になる。漁業の補助金は例えば、年間約270億ドルと推計されており、結果としては国内経済と社会福祉に対する長期的な利益というよりも、より多くの損害を受けることにつながっている。化石燃料に対する価格と生産補助金は2008年に合計6500億ドルを超え、このレベルの支援は再利用可能なエネルギーへの移行の妨げとなっている。

グリーン投資と革新を推進するための税金、奨励金や取引可能な許可書等の手段を使うこともまた不可欠であるが、能力開発、トレーニングや教育に投資することも重要である。移行を支持する国際的なガバナンスと世界規模のメカニズムの強化が重要である。2012年にリオで開催されるリオ+20サミットである国連持続可能な開発のための会議は、より持続可能で安全な正しい世界の新しい方向性を打ち出すための機会となる。

グリーン経済移行のために必要な資金調達の規模はかなりのものであるが、それは年間の世界的規模の投資額よりも一桁小さいものである。 これに関して、報告書の中でモデル化されている世界全体のGDPの2%は合計正味資本形成の一部、2009年の世界全体のGDPの約22%であることは注目に値する。この金額は賢明な公共政策および革新的な融資メカニズムによって動員することができる。資本市場の急激な成長、グリーンイニシアチブにおける市場の関心の増加、および炭素金融やミクロ金融等の代替手段の進化は、世界規模の経済転換のための大規模融資の余地を広げている。但し、これらの額は必要とされる合計量に比べるとまだ小さく、至急拡大する必要がある。

グリーン経済への動きは段階的に発生しており、これまでにないほど加速している。 2010年の間クリーンエネルギーへの新しい投資は最高記録更新の1800万億ドルから2000万億ドルに達すると予想された。それは2009年の1620万億ドルと2008年の1730億万ドルから増加している。成長は非OECD諸国によるものが増え続け、再利用可能なエネルギーにおける世界規模の投資シェアは2007年の29%から2008年の40%に増え、そのほとんどをブラジル、中国とインドが占めていた。

大きな成長と雇用を、あるいは現在の通常のビジネスに比較し、さらに大きな成長と雇用を生み出し、中長期的な経済的目標を凌ぎ、その間、大幅なより多くの環境的および社会的な利点をもたらすと予想される。しかしながら、従来のブラウンセクターを「グリーン化」することから、炭素で縛られた世界で急激に変化する市場の需要を満たすに至るまで、グリーン経済へのそうした移行にはリスクや試練が伴うものである。したがって、世界中の指導者、市民社会および業界をリードする諸企業は協力し合って、富や繁栄と幸福の伝統的な方策を考え直し、再定義する作業に従事しなくてはならない。明確なことは、全員にとっての最大のリスクは現状のままを続けていくことである。

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