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事務総長、平和構築に関する画期的な国連決議採択を受け、「戦略と考え方の変化」を歓迎

2016年05月11日

国連平和構築体制に関する決議を全会一致で採択する安全保障理事会。総会も実質的に同じ内容の決議を採択した。2つの決議により、国連システムにおける「平和の持続」への注力に新たな弾みがついた©UN Photo/Manuel Elias

2016年4月27日 ― 国連総会と安全保障理事会はきょう、武力紛争によって生じる大きな人的損失と苦痛を深く憂慮しつつ、世界が現在、夥しい数の安全保障上、人道上の危機に直面しているという認識に立ち、国連の平和構築体制に関する決議を同時に採択しました。これによって、国連システムにおける「平和の持続」への注力に新たな弾みがつくことになりました。

*それぞれの決議と邦訳はこちらからご覧ください→(S/RES/2282およびA/RES/70/262)(S/RES/2282の邦訳 および A/RES/70/262の邦訳

決議は、平和構築の概念を「平和の持続」の定義を含むものへと拡大するとともに、これを「共通の社会のビジョンを構築し、あらゆる層の人々のニーズが考慮されることを確保するための目標およびプロセスとして幅広く理解」すべきだと定めています。

その中には、紛争の勃発、激化、継続および再発を防止し、根本的な原因に取り組み、紛争当事者による戦闘行為の中止を支援し、国民和解を確保し、復興、再建、開発に向けて歩みを進めることをねらいとする活動も含まれています。

事務総長、国連加盟国に「弾みを維持」するよう促す

決議の採択を受け、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は加盟国に対し、平和構築体制の見直しの成果について祝意を表し、この弾みを維持するよう訴えるとともに、紛争被災国に対する国際的な関心、援助、資金提供の強化を求めました。

潘事務総長は報道官を通じた声明で「総会と安全保障理事会がこれら包括的決議を同時に採択したことは、強力なメッセージとなる」と述べています。

また、事務総長は「これらの決議は、戦略と考え方の変化を示す主旨書と言える。国連システムは、他の様々な機関とのさらに強力なパートナーシップにより、紛争の再発防止だけでなく、そもそもの紛争の発生を防ぐため、政府との協力と現地での活動をより戦略的に進めていく」と付け加えました。

声明はさらに、事務総長が国連システムによるこれら決議の即時履行を支援する強い決意を固めていること、そして、人権や持続可能な開発その他あらゆる取り組みの必要前提条件として、平和の持続に優先する課題はあり得ないことを強調しています。

持続的な平和は共有の責務

決議自体は、持続的平和が各国政府その他すべての国内ステークホルダーによって果たされる必要のある責務であり、「紛争のすべての段階において、国連の関与の3本柱を通じて実現」すべきものであることを強調しています。

決議はこの関連で、潘基文事務総長の支援を得ながら国連平和構築支援事務局を「再活性化」すべきこと、および、国連国別チームを通じ、また、国連本部でも、フィールドでの協力と調整を強化すべきことを定めています。

潘基文事務総長©UN Photo/Evan Schneider

決議はまた、各国政府と国連のほか、国際機関、地域・小地域機関、国際金融機関、地域その他の開発銀行、市民社会団体、女性団体、ユース組織、および妥当な場合、民間セクターを含む主要なステークホルダーが、平和の持続という課題の規模と性質に見合う密接な戦略面、活動面のパートナーシップを構築すべきことも強調しています。

決議はこの関連で、平和構築の取り組みに戦略的なアプローチと一貫性をもたらすうえで、国連平和構築委員会(PBC)が果たす役割を再確認しています。総会と安全保障理事会の補助機関として設置されたPBCは、議論の対象となっている国、地域の加盟国と機関、国際金融機関、市民社会を含むすべての主体を巻き込むことで、平和の持続に対する調整の取れたアプローチについて話し合う場を提供しています。

決議は、PBCがより柔軟に活動し、総会、安全保障理事会、経済社会理事会(ECOSOC)の間の橋渡し役を演じるべきことを強調しつつ、平和構築問題に関するPBCと安保理の調整および協力の緊密化を求めています。

決議は事務総長とPBCに対し、地域・小地域機関、国際金融機関その他妥当なステークホルダーとの協力に向けた幅広いオプションを提供しています。決議は特に事務総長に対し、国連と世界銀行の間の連携を強化するためのオプションの模索を要請しています。そして、具体的にアフリカ連合(AU)に言及しつつ、地域機関と協力を行う必要性を強調しています。

国連平和構築活動の再定義

オスカー・フェルナンデス=タランコ平和構築支援担当国連事務次長補は、最近の「国連ラジオ」とのインタビューで、今回の決議が「現在の形で平和構築体制が確立されてから10年を経た今、平和構築を定義し直す新たな機会を捉えた」ものであることを指摘しました。

事務次長補は、決議が「現在の平和維持のあり方に関する議論の見直しを図っている」ことを強調しつつ、平和構築はこれまで長年にわたり、加盟国と国連が戦争後の暴力再発を防止するために作り上げた体制であった、と語りました。

今回の決議は、紛争予防が「国連という組織の根本的な設立目的」であるという理念を前面に押し出すものです。

フェルナンデス=タランコ事務次長補は「国連の中核的機能は何よりも、戦争を予防し、暴力的紛争が現実に起こらないようにすることにある」と付け加えました。

国連のいわゆる平和構築体制は2005年、平和構築委員会、平和構築支援事務局および平和構築基金の設立をもって発足しました。これには、「国連の制度的機構には大きな穴が開いており、国連システムの中には、戦争から恒久的平和への移行期にある国々の課題に実効的に取り組める部分がない」という、コフィー・アナン前事務総長の懸念に対応する意味がありました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。