初のSDG報告書、目標達成までに必要な取り組みの規模を提示 ~開発の恩恵が平等に行き渡っていない現状が明らかに~
プレスリリース 16-063-J 2016年07月22日
世界が「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とその17の「持続可能な開発目標(SDGs)」の実現に向けた取り組みに着手する中で、世界人口の13%は引き続き極端な貧困の中で暮らし、8億人が飢餓に苦しみ、24億人が改良型衛生施設を利用できない状態に置かれています。潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が7月19日に発表した初の『持続可能な開発目標(SDGs)報告書』は、この集団的な取り組みの出発点における世界の現状を概観し、目標達成に向けた重要課題を明らかにするものとなっています。
潘事務総長は「私たちは、世界の現状の正確な把握に基づき、機会と目的を意識しながら、実施に着手しなければなりません」と語っています。
2015年9月、世界のリーダーたちが国連本部において全会一致で合意したSDGsは、貧困に終止符を打ち、不平等に取り組み、気候変動に対処するための大胆かつ野心的なグローバルプランです。目標はいずれも普遍的であり、先進国、途上国はもとより、すべての人々に対しても、全世界の経済開発、社会の進歩、そして環境の持続可能性に向けた取り組みを結集するための行動を呼びかけています。
この初回の報告書は、現時点で入手できるデータを用いて17の目標を概観し、いくつかの重大なギャップと課題を明らかにしています。SDGsは7カ月前に発足したばかりであるため、進捗状況を的確に測定することはまだできないものの、報告書はいくつかの分野で近年に見られた動向のほか、グローバルな課題への取り組みにおけるギャップも取り上げることで、目標を達成し、誰も置き去りにしないためには何が必要かについて、明確な全体像を提供しています。
成果を土台に
SDGsは、2000年から2015年にかけて、貧困対策の取り組みとして史上最大の成功を収めたミレニアム開発目標(MDGs)の成果を土台とし、これをさらに進めるものとなっています。
2016年SDGs報告書によると、極度の貧困ライン未満で暮らす世界人口の割合は、2002年から2012年にかけて半分以下に低下しました。発育不良の5歳未満児の割合も、2000年の33%から2014年には24%へと減少しています。1990年から2015年にかけ、全世界の妊産婦死亡率は44%低下したほか、5歳未満の幼児死亡率も半分以下になりました。
2015年の時点で、世界人口の91%にあたる66億人が改良型飲料水源を利用していますが、これも2000年の82%から改善しています。
2015年の政府開発援助(ODA)総額は1,316億ドルと、対2014年で実質6.9%増となり、史上最高額を更新しました。
重大なギャップと課題
しかし、SDGsを達成するためには、より一層の取り組みが必要です。貧困は半減したものの、2012年の時点で依然として8人に1人が極度の貧困の中で暮らしています。2015年には、ほとんどが予防可能な原因で、5歳未満の子ども590万人が死亡しただけでなく、出生数10万人当たり216人の女性が、出産時に命を落としたものと見られています。
2013年の時点で、小学校就学年齢の子ども5,900万人が学校に通えず、20歳から24歳の女性の26%が、18歳の誕生日を迎える前に結婚したことを報告しています。2015年になっても、6億6,300万人が未改良の改良水源または地表水を利用しているものと見られます。2012年の時点では、11億人がこの不可欠なサービスを利用できていませんでした。
誰も置き去りにしない
呉紅波(ウ・ホンボ)経済社会問題担当国連事務次長は「誰も置き去りにしないことは、2030アジェンダの根本的原則の一つです。初の報告書は、開発の恩恵が全員に平等に行き渡っていないことを示しています」と述べています。
報告書は、いくつかの人口集団が極めて不利な立場に置かれていることを強調しています。深刻な所得格差は、最大の課題の一つです。複数の調査結果によると、最貧層世帯の子どもは最富裕層世帯の子どもに比べ、発育不良に陥る可能性が2倍を超えています。若年失業率は成人失業率の3倍に上ります。
しかし、2030アジェンダに定められているように、子ども、若者、障害者、HIV感染者、高齢者、先住民、難民、国内避難民、移住者など、すべての弱者集団の動向を把握できる詳細なデータはほとんどありません。
より良いデータで、より良い暮らしを
どのような旅にも、始まりと終わりがあります。旅の行程を描き、その途中に重要な節目を設けるためには、信頼できる詳細なデータが適時に利用できなければなりません。このデータ要件は、すべての国にとって重大な課題であるため、全世界のステークホルダーが協調的なデータ作成と統計能力育成に向けた取り組みに関与する必要があります。
持続可能な開発目標(SDGs)報告書では毎年、目標達成に向けた全世界と各地域の進捗状況を検証します。報告書は国連事務局経済社会局が作成した一連の基本データに基づき、多数の国際・地域機関からのインプットも参考にしながら作成されます。
2016年SDG報告書についてさらに詳しくは、http://unstats.un.org/sdgs をご覧ください。
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