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国際家族デー(2000年5月15日)
「家族-開発と社会発展の主体であり受益者」

プレスリリース 00/49 2000年05月17日

状況
 基本的な社会的単位であり、開発の主体でありかつ受益者でもある家族は、社会を形成する上で重要な役割を果たしている。家族は、その社会化を進める機能を通じて、また愛、安全、支援をもたらす主な単位として、社会統合の主要な手段となっている。家族の基盤が強固であれば、家族一人ひとりの幸福につながると同時に、社会全体の利益ともなる。一方で、家族の絆が脆弱で、苦しみが多いところでは、持続可能な開発が進むことはほとんどないであろう。家族は社会変革の証人であり、意思決定の場でもあり、家族が積極的に関わることによって、進歩や開発がもたらされる。

 多くの社会において、一部には近代化の過程、そして開発というとぎれることのない圧力の結果、家族の本質は変貌を遂げてきた。社会発展は諸制度、例えば福祉、教育および法律制度の強化をもたらし、それらはある程度家族が従来まで果たしてきた諸機能、つまり養育や保護、健康の増進、社会管理への参加を代行することとなった。結婚制度に関わる道徳的・宗教的価値観の低下、労働市場への女性の大量進出、有効な避妊法の発明などにより、家族構成がさらに変化し、家族の新しい形態が生まれるようになった。また、通信、交通、情報アクセスの進歩と共に、個人が従来の領域を越えて、さまざまな考え方ならびに行動規範に触れることができるようになった。

 従って現在の社会の特徴は、ひとり親(多くの場合、未婚の母親である)から核家族、世代間家族、拡大家族に至るまで、多種多様な家族形態が存在するところにある。産業化社会および開発途上社会はともに、変化と多様性に富んだ家族形態の複雑なプロセスを経験している。

問題
 社会発展が家族に与える影響は、世界的レベルで、健康、教育、経済指標の向上など肯定的な表現で語られるが、一方では、変化の持つ矛盾した本質により、新たな問題や難題、新しい形の不平等、そして開発がもたらす利益を享受する上での不平等などが生じている。社会における不平等がさらに拡大し、政治上の不安定性が増大することによって、各家族に重い経済的・精神的負担がかかることになる。

 開発途上の国々においては、産業化の過程が一様でないこと、農業が市場の変動に影響を受けやすいこと、そして世界経済への参加が不規則であることが貧困を助長させた。多くの先進国では可能な様々な福祉サービスも、福祉制度が弱体化していると、提供できなくなる。輸送や通信手段が発展した結果、田園地方から都会や海外への人口移動がますます増え、家族関係にさまざまな影響を及ぼすことになった。家族や社会の代わりにさまざまな責任を負うネットワークが強化される一方で、距離や別離からくる痛みによって家族の絆が弱まる、もしくは緊密さを欠くことになった。

 産業化社会においては消費者としての価値に重点が置かれ、経済に対して個人が占める位置、ならびに家族同士の位置関係が変容することになった。こういった意味においては、家族が基本的に個別の消費者の集合体となるため、性別ならびに年代別に異なるターゲットを持つ消費社会が、家族のきずなを弱める要因となっている。さらに、医療や福祉の方策の成功が、人口構成および高齢者や若者が占める社会的位置の変化を決定している。高齢者社会が幕を明けたことで、健康で生産力のある高齢者が増え、また若者の主張と独立心も増大している。

 過去数十年にわたり、世界の幾つかの地域が武力闘争を経験し、その結果として難民や犠牲者が発生し、家族のきずなも破壊的な影響を直接に受けることになった。

アプローチ
 家族、ならびに家族の形態、構成、機能は常に変化している。さまざまな社会の中で、新しく、かつ多様な家族形態が発展しつつある。その多様性とダイナミズムゆえに、家族に対する単一的な捉え方は存在しないし、それを定義する上で統一的なコンセンサスもありえない。家族について最も一般的な表現を用いるとすれば、それは常に社会環境との相互作用のなかにあるということであろう。従って、家族というものを理解する上で、2つの見方を考慮に入れるべきである。第一に、社会における一つの複雑な制度としての家族、第二に、家族同士の関係、家庭内の責任配分、一家の経済状況などに反映される構造と力学である。

 家族が変容しつつあり、そのことを深刻に扱う手段を講じなければならないという総意が世界的なレベルにおいて存在する。これまで国連の国際会議においても家族の現状が指摘され、家族のために現在の社会、経済、技術の変革をいかに役立てることができるかという方法論について、そこに集った各国政府は論議を交わしてきた。家族のニーズは、発展の最低基準の一つとしての開発の目標に結びついていなければならない。一言で言えば、家族とは開発過程の動力源であって、開発目標を確立する際に考慮すべき対象であるということである。

優先事項

  • 開発における最優先事項は、貧困のぼく滅である。貧困は社会生活のあらゆる面にはびこり、その構成員のニーズを満たそうとする家族の能力を脅かしている。さらに、貧困は社会における排他主義の原因となる。従って、家族を助け、保護するプログラムを提供するための分野を超えた努力が必要となる。
  • 家族を中心とする政策ならびに家族を支援するための手段(育児手当、育児休暇、社会保障、障害者への給付、家庭内介護者への援助など)を確実に実行するためには、福祉制度を強化するのが一つの方法である。こういった目標を実行するには、国の諸機関の確立が不可欠である一方で、草の根レベルで直接活動できる非政府機関(NGO)が、しだいに重要な役割を果たしつつある。
  • 「家族政策」と目されるプログラムは、家族が生き抜くための諸条件を提示しているが、その他の政策も同様に重要である。すなわち、雇用や失業に関わる経済、産業、公的な政策、税金や給付の政策、環境政策などである。たとえそれらが家族を特定していてもいなくても、家族、とりわけ弱者に対するあらゆる政策の影響を考慮し、家族と社会に対して悪影響が出ないように配慮すべきである。
  • 社会の発展や開発を可能にするためには、家族の構成員が諸給付を公平に受けられるようにすること、そして責任を平等に分担することが必要になる。従って、家族内で調和のとれた関係が保たれ、家族全員が幸福に暮らすための諸決定が行われるためには、家族が強固なものになることが重要である。
  • 世界中で民主主義と市民社会の重要性が強調されている今、家族においては、性別や年齢を超えた、より公平なエンパワーメントが保証されなければならない。それは適切な法律を公布し、好ましい経済環境を整えることなどによって、はじめて実現するものである。

出典:
Bruce(J),Lloyd(C) and Leonard(A). Families in Focus. NY Population Council.1995

Commaille(J),de Singly(F),ed. The European Family. The Family Question in the European Community.
Kluwer, Academic Publishers.1997

“Follow-up to the International Year of the Family”Report of the Secretary General (A/54/256)

Technology and its Impact on the Family, DESA, Division for Social Policy and Development. Family Unit. United Nations. New York. 1999

Compilation of Family-Specific Recommendations of the Global Conferences of the 1990s. United Nations. Department for Policy Coordination and Sustainable Development. New York. 1995

The Intersection of Family, Gender and Economy in the Developing World. Occasional Paper Series, No.9. United Nations. Vienna. 1994

詳細は下記へお問い合わせください。

Mr. Amr Ghaleb, Chief, Family Unit
Division for Social Policy and Development
Department of Economic and Social Affairs Two United Nations Plaza, Rm.DC2-1302
New York, NY 10017
Tel: 212-963-3238 Fax: 212-963-3062
E-mail: ghaleb@un.org

 

国際家族デー(2000年5月15日)の実施に関する
インフォメーション・ノート

「家族 ― 開発と社会的発展の主体であり受益者」

 第7回国際家族デーが、2000年の5月15日に祝われる。この国際デーは、国連総会において1993年9月20日の決議47/237により決定され、その背景として国際社会が社会の基本単位である家族を重要視していること、そして世界中の家族が置かれている状況に憂慮を抱いているという状況がある。

 国際家族デーは、社会の基本的な単位としての家族を巡るさまざまな問題に対する認識を高め、適切な行動を促す機会を提供するものである。国際家族デーは、全ての国の家族の代弁者であり、各家族がこの機会を活用して、それぞれの社会における重要な家族問題の解決に着手するための起動要因となりうる。2000年に国際家族デーが実施されることで、家族はより良い生活水準を求めるための家族間の連帯意識を表明する機会を得るのである。2000年の国際テーマ「家族 ― 開発と社会的発展の主体であり受益者」は、「国際家族年に関する第4回特別委員会」が提案したものである。

 このテーマは、2000年がちょうど「第4次国連開発の10年(1991-2000)」最後の年にあたることから提案された。さらに2000年は、総会が「世界社会開発サミット」の成果を総体的に再検討・評価し、一層の行動とイニシアチブを検討するための特別総会を開催する年にあたる。コペンハーゲン宣言と行動計画は、開発ならびに社会的発展における家族の役割に焦点を当てたものとなっている。

 各国政府、非政府機関(NGO)、教育機関、宗教団体および個人が、国際家族デーを祝うことによって、家族の機能、家族にまつわる問題、強み、そしてニーズに対するより良い理解を得ることができる。国際家族デーを実施することは、家族に影響を与える経済、文化、社会、人口学的プロセスへの理解を深めることにもなる。

 国連経済社会局家族担当課は、国連システム内で家族問題を扱う中心的役割を果たしており、以下のような提案を行なっている。

国家レベルでの国際家族デーの実施
 国際家族デーを実施する上で、各国政府は5月15日に家族を中心に据えたプロジェクトの発足、家族関連法の施行、国内の家族問題に関する討論の開始(特別会議、文化的な祝祭行事、特別宣言およびその他同様の行事)などを計画してみるのも良い。

 国際家族デーが成功を収めるためには、マスコミの支援および積極的な参加が重要となる。家族デーはきわめて時間の限られた行事であるため、集中的かつ焦点を絞ったメディア・キャンペーンが有効である。国際家族年の公式ロゴ・マークが国際家族デーにも使用されており、メディア・キャンペーンを行う際の有益な道具となっている。

 国際家族デーを成功させるためには、NGOの積極的な参加が望まれる。2000年そしてその後の国際家族デーにおいて、NGOが引き続き、その貴重な専門技術、組織力、草の根レベルの活動範囲、ならびに人的・物的資源を最大限に活用することがきわめて重要である。各国政府はNGOと積極的にパートナーシップを構築し、ボランティア活動に対して必要とされる支援を提供しなけれなばらない。家族のために公共部門と民間・ボランティア組織との協力関係が促進されなければならない。

地方レベルで国際家族デーを実施するための諸提案
 過去の経験を参考にして、以下のような家族デーに実施可能な活動が挙げられる。

  • 家族の問題を考え、家族を強固なものとするために家族フォーラム、コミュニティー・フォーラムおよびワークショップを開催して意見交換を行う。このようなフォーラムでは、カウンセリングや経済的援助、助言・情報サービスなどの家族援護サービスが提供される。
  • 教育環境における特別なイベント、つまり親と教師の集まりなどを設ける。もしくは学生の諸活動において、家族に焦点を当てる。
  • 公共の交通機関において、家族向け特別料金の適用や無料家族切符の配布などを行い、国際家族デーをさらに印象づけ、家族の参加を促すための奨励策を実施する。
  • 美術館、展覧会、コンサートなどの文化的な催し物への家族無料入場券を配布する。
  • 市長および地方自治体などが、国際家族デーに関する正式声明を行なう。
  • 「家族週間」の宣言を行なう。
  • 家族をテーマにしたドキュメンタリーならびにプロモーション・フィルムを制作し、国営・地方のテレビ局で放映する。
  • 出版物、写真、児童画、ポスターなどの特別展覧会を開催する。
  • 家族に関する出版物を発行する。
  • テレビ、ラジオ、新聞などのマスコミを使い、国際家族デーの関連行事の特集を行なう。新聞は国際家族デーに関する特別記事、ならびにシリーズ連載を組む。
  • 家族をテーマにしたエッセー・コンクールを開催する。
  • 研究機関ならびに家族問題に関わるその他の人々が記者会見を開き、優先課題に対して一般の人々の意識を高める。

詳細に関しては、下記へご連絡下さい。

Mr. Amr Ghaleb, Chief, Family Unit
Division for Social Policy and Development
United Nations Department of Economic and Social Affairs 
Two United Nations Plaza, Rm.DC2-1302 New York, NY 10017
Tel: 212-963-3238
Fax: 212-963-3062
E-mail: ghaleb@un.org