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アナン国連事務総長、アフリカ連合サミットで演説
アフリカが「行動で責任能力を実証」すべき重大な緊急課題を提示
(2003年7月10日、モザンビーク マプトにて)

プレスリリース 03/070-J 2003年07月23日

1年前、アフリカの指導者は、アフリカ連合(AU)発足にあたり、すべてのアフリカの人々に対して、その運命を問い直し、この大陸に住むあらゆる人々の生活の向上を図るとともに、グローバルな問題においてアフリカがその役割と責任を完全に果たす能力を与えるよう呼びかけました。
 
 事実、アフリカ統一機構(OAU)創設から40年後に誕生したAUは、アフリカの運命と未来を形作る責任は主としてアフリカ自身にあり、また、アフリカがこの任務を全うするための最善の方法、そして唯一の方法は、アフリカの人々のニーズと希求の下に一致団結することにあるという、歴史的な認識を新たにする意味を持っています。
 
 このたびのAUサミットのテーマ「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)の実施確保」は、必要とされる真剣さと集中力をもって、アフリカ諸国がこの任務を追求しようとする意志を示すものです。
 
 それはまた、平和と安全、民主主義、よい統治、貧困削減および健全な経済運営の分野においてNEPADの戦略的目標を達成するために、AUが中心的な役割を担わなければならない、という決意も物語っています。
 
 課題を自らの手で克服しようとするアフリカの決意を世界は歓迎しています。このことは、G8が「アフリカのための行動計画」で行った公約にも、アフリカにおけるHIV/エイズ対策への資金提供を増額する米大統領と欧州連合(EU)のイニシアチブにも現れています。
 
 国連は、政府開発援助の増額、関税と補助金の撤廃、債務救済の拡大、エイズ対策支援の一層の強化など、先進国にさらなる努力を行うよう説得することにより、AUを援護する役割を務めてゆく所存です。
 
 事実、このサミットではきょう(7月10日)これから、国連開発計画(UNDP)がミレニアム開発目標(MDG)に関する新たな「人間開発報告」を発表します。この報告はアフリカ、そして世界全体で、これらの重要目標をどのように達成すべきかに関する斬新なアイデアを数多く提示しています。報告書は援助国に対し、より多くの資源と貿易機会の提供により、開発途上国での改革を支援するよう呼びかけています。また、豊かな国にも貧しい国にも、国内的・地球的な政策決定の中心にMDGを据えるよう求めています。ここでカギを握るのは、相互的な説明責任です。それはすなわち、政府の国民に対する説明責任、先進国と途上国パートナーのお互いに対する説明責任に他なりません。
 
 アフリカが改革の公約を実現する決意を固めればそれだけ、MDG達成に向けた私たちの作業が実を結ぶ可能性も高くなります。この作業において極めて重要な役割を担うのがNEPAD、および、そのピア・レビュー・メカニズム(Peer Review Mechanism)の真に効果的な利用です。
 
 6月のアフリカ財務担当閣僚会議での声明にあるとおり、アフリカと世界とのパートナーシップは、援助国・受益国双方の実績の監視、政策の一貫性、開発の実現に関する責任の共有、および、相互的信頼感に基づくものとしなければなりません。私はさらに、このパートナーシップがアフリカの指導者たちに対する国民の信頼にも応えるべきであることを付け加えたいと思います。
 
 このアフリカ人自身の責任感が、アフリカ大陸の直面するすべての課題に適用されなければならないことは、すでに誰もが認識しています。その中でも、私が特に重要と考える課題のいくつかについて述べたいと思います。
 
 武力紛争は引き続き、老若男女を問わずアフリカのすべての人々、そしてアフリカ大陸全体の発展に甚大な被害を与えています。最近では、ブルンジ、コートジボワール、スーダンなど一部の国々で、前進と平和の展望が開けています。ソマリアでも同じような進展が見られることを期待しましょう。また、積み残された課題は多いものの、コンゴ民主共和国の和平プロセスでも、大きな進展が見られています。
 
 これらは紛争の管理と解決に向け、勇気づけられる実例といえます。そこでは、アフリカ人自身の指導力が決定的要因となりました。そして、このような指導力の高い評価を最も輝かしく示しているのが、ここモザンビークに他なりません。
 
 しかし、リベリア、そして、苦境に立つコンゴ民主共和国のイトゥリ、キブ両地域では、痛ましい事件が続いています。ここでの言語を絶する残虐行為は、アフリカ人だけでなく、あらゆる人間に後ろめたさを感じさせていることでしょう。こうした事件からは、アフリカが、紛争の勃発を防いだり、基本的な国際人道法を執行したりするために必要な実効的なメカニズムを備えるには程遠い状態にあることを痛感させられます。
 
 国連をはじめとする国際社会は、特使を任命し、交渉を促し、数十億ドルの平和維持活動を展開したりすることができますが、当のアフリカに政治的な意志と能力がなければ、そのいずれによっても紛争は解決されないでしょう。アフリカ連合、そしてその全加盟国が平和的解決に向けた総合的戦略の策定に努めなければならない理由はここにあります。アフリカの指導者一人ひとりが、この大陸の若者たちに、仲間であるアフリカ人の生命と安全は不可侵であること、そして、平和の恩恵に代わるものはないことをわからせるよう、個人的に尽力することを期待します。
 
 私は、特に西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)、中部アフリカ経済通貨共同体(CEMAC)および政府間開発機構(IGAD)、ならびに、前議長国の南アフリカにおいて、このようなエネルギー、想像力および忍耐力をもって紛争に対処してきたアフリカ指導者の方々に敬意を表します。
 
 恒久的な平和とは、単に戦争がないことではありません。民主化とよい統治を伴ってはじめて、平和は持続できるのです。通常、民主主義国の間で戦争が起きないことは周知のとおりです。民主主義を基盤とする国々が増えれば、地域全体に持続可能な平和が訪れる可能性は高くなります。
 
 民主主義は政権交代も意味します。平和的で定期的な政権交代の価値は世界各地で、これまでに何度も立証されています。民主主義は果てしない闘争ですが、それは平和的手段による闘争です。これを可能にするために任期の制限が必要となれば、そうするしかありません。