任命プロセス
事務総長は安全保障理事会の推薦を受け、総会が任命します。よって、事務総長の選任については、安全保障理事会の常任理事国5カ国がいずれも拒否権を発動できます。
第8代国連事務総長の潘基文(パン・ギムン)氏は、2007年1月1日に就任しました。それ以前の事務総長は下記のとおりです。
- コフィー・A・アナン(ガーナ):1997年1月から2006年12月まで在職
- ブトロス・ブトロス=ガーリ(エジプト):1992年1月から1996年12月まで在職
- ハビエル・ペレス・デクエヤル(ペルー):1982年1月から1991年12月まで在職
- クルト・ワルトハイム(オーストリア):1972年1月から1981年12月まで在職
- ウ・タント(ビルマ、現ミャンマー):1961年11月に事務総長代行に任命されてから(1962年11月に正式に事務総長に任命)1971年12月まで在職
- ダグ・ハマーショルド(スウェーデン):1953年4月から1961年9月、アフリカでの航空機墜落事故で殉職するまで在職
- トリグブ・リー(ノルウェー):1946年2月から1952年11月の辞任まで在職
事務総長は任期5年で規則上、再選に制限はありませんが、これまで3期以上在職した事務総長はいません。
よくある質問:事務総長の任命手続き
1) 国連事務総長の任命における基本要件は何ですか?
国連憲章第97条は、「事務総長は安全保障理事会の勧告に基づいて総会が任命する」と規定しています。すなわち、第97条には2段階のプロセスが設定されています。最初に安全保障委員会による勧告があり、次に総会による決定があるというプロセスです。
2) 安全保障理事会は総会に1人以上の候補者を推薦できますか?
安全保障理事会に1人以上の候補者を推薦させないとする記述は憲章にはありませんが、1946年1月24日の総会決議11 (I) には、安全保障理事会は「候補者一人を推薦すること」が望ましいと明記されており、それが変わらぬ慣行となっています。
3) 安全保障理事会はどのようにして勧告を行うのですか?
安全保障理事会は勧告決議を採択します。この決議の採択は一貫して安全保障理事会の非公開会合で行われてきました。安全保障理事会の仮手続規則の中の規則48に「事務総長の任命に関する総会への勧告は非公式会合で審議および決定されるものとする」と規定されているためです。複数の候補者が挙げられている年には、安全保障理事会は決議を採択する前に投票を行います。候補者が1人の年は、安全保障理事会の通常の慣行として、事前投票はなく直接、通常は全会一致による決議の採択が行われます。
4) 安全保障理事会の勧告の採決において拒否権を行使できますか?
はい。1946年1月24日の総会決議11 (I) には、安全保障理事会による事務総長任命の勧告は「実質事項の決定」であり、そのため常任理事国の反対票は勧告に関する決議案の採択を阻止できる、と明記されています。
5) 安全保障理事会と総会の間にどのような計画・調整が行われるのですか?
安保理議長が最初に行うことは他の安保理メンバーと非公式に協議し、安全保障理事会の勧告を採択するための非公式会合の開催日を決定することです。開催日について安保理メンバーの合意が得られると、安保理議長は書簡を作成し総会議長に通知します。次に総会議長は総会のメンバー国に通知します。両議長が直接会って選挙の準備について協議することもよくあります。安全保障理事会の勧告が採択されると、安保理議長は書簡を作成し総会議長に通知します。
6) 報道機関は安保理議長から状況報告を受ける機会がありますか?
安全保障理事会の勧告が採択された後、通常、安保理議長は記者会見場を行い、報道機関に対し簡単な説明を行います。
7) 憲章には事務総長の任期の年数について明記されていませんが、それはどのようにして決められますか?
決議の採択時に、推薦候補の任期を明示することが安保理の慣行です。総会の採択する決議も同様です。国連の設立直後の数年間に多少の調整が行われたことがありますが、事務総長の任期は5年と定められています。
8) それぞれの地域グループから書面による承認を得ることが、候補者が安全保障理事会の推薦を受ける、または総会の任命を得るための要件になっていますか?
推薦候補が地域グループから承認を得る必要はありません。それにもかかわらず、一般的には、それらのグループが候補者を支援して国連加盟国宛てに書簡を送り、安保理メンバーに回覧されます。