UNOPSは、インフラ建設や、医薬品・医療機器・車両等の物品・サービスの調達と提供をはじめとしたプロジェクトの実施に特化した国連機関として、各国政府機関や他の国際機関より拠出を受け、紛争地や危険地域を中心に世界80カ国以上で年間1,000件以上のプロジェクトを実施しています。

UNOPSは1973年に国連開発計画（UNDP）の調達ならびにプロジェクト実施を担う部局（Office for Project Service）として設立された後、UNDPのみならず各国政府や他の国際機関からの業務も担うようになり、1995年に新しい国連機関として独立しました。アントニオ・グテーレス国連事務総長は、各国政府が持続可能な開発目標や気候変動に関するパリ協定を実現する際に、UNOPSの高い専門性が重要な役割を果たすと強調し、「イエメン、イラク、ソマリア、コロンビアなどの国々では、UNOPSが他の国際機関に調達やその他専門分野の技術支援を行ったことにより、何百万人もの人々が救援物資を受け取ることが出来、UNOPSはより安全で安定した社会の構築に貢献した。」と述べています。

UNOPSは組織本体に対する資金提供を受けず、プロジェクトごとに予算を獲得する独立採算制による合理的な運営を追求しながら、ステークホルダーに寄り添い、密に連携しながらプロジェクトを遂行しています。また、運営の透明性と説明責任、そして最先端の国際水準を業務に反映し続けています。たとえば、UNOPSは高い国際基準（ISO 14001, OHSAS 18001, Global Reporting Initiative Gold, Chartered Institute of Procurement & Supply (CIPS) Gold, International Federation of Consulting Engineers（FIDIC）, PRINCE2）を適用しており、調達においては英国勅許調達供給協会 （CIPS）からGold 認証（持続可能な調達） を4年連続で受けている唯一の団体となっています。

UNOPSは、よりよい世界を築くために、紛争や自然災害によって被害を受けた困難な環境下で人々が尊厳を持って生活するための基盤づくりにスピードと効率性、そしてイノベーションを重視して取り組んでいます。UNOPSの行う活動は、紛争後地域におけるインフラ修復事業から新型コロナ対策のための緊急医療支援まで多岐にわたります。

たとえばアフガニスタンの首都カブールでは、道路の舗装率が20％にとどまっており、交通渋滞や交通事故が頻発しています。そればかりでなく、交通事情が悪いために医療・保健施設や学校に満足に通うことができない人々も多く存在します。UNOPSは日本政府からの資金拠出を受けて、車両だけでなく自転車や歩行者も快適かつ安全に通行できるよう既存道路の拡幅と改修を行いました。

また、2011年に内戦が勃発したシリアに隣接するヨルダン北部では、シリアからの難民が流入し、従来のインフラ設備では対応が困難なほど急激に人口が増加しました。UNOPSは日本政府からの資金拠出を受け、老朽化した配水管を修復し漏水を削減するとともに、排水管網を整備することで希少なヨルダンの水資源の有効活用を図り、地元住民とシリア難民の間に水資源をめぐる摩擦が生じることを防いでいます。

2021年5月には、インドにおける新型コロナウィルス感染症の急拡大に対応するため、日本政府からの資金拠出によって人工呼吸器1,500台および酸素濃縮器2,500台を供与し、日本製人工呼吸器300台を緊急輸送しました。プロジェクトの承認からわずか約２週間でこれらの機材を供与し、医療現場へのタイムリーな支援を実現しています。

UNOPSは緊急的な支援が求められる現場において迅速かつ効率的に活動し、UNOPSの強みである「質の高いインフラ」の提供を通じて、日本の外交政策の円滑な実施に貢献しています。

駐日事務所は、必要とされている支援を世界各地に届けるため、日本政府、民間企業、研究機関やNGOをはじめとする日本のパートナーとの連携を促進しています。今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げます。