国際連合薬物犯罪オフィス
国連腐敗防止条約署名のためのハイレベル政治会議
(2003年12月9-11日、メリダ、メキシコ)
プレスリリース 04/068-J 2004年07月15日
ファクトシート1
国連と腐敗対策:グローバルな課題へのグローバルな対応
●課 題
腐敗は複雑な社会的、政治的、経済的現象であり、社会のあらゆる側面に影響しています。また、投資の減少や引揚げさえも誘発し、社会の分極化、法治と人権の軽視、非民主的な慣行、発展と不可欠なサービスに用いられるべき資金の流用など、多くの長期的な影響を及ぼします。
●対 応
国連薬物犯罪オフィス(UNODC)は、犯罪防止と刑事司法面での国際協力改善を目指すグローバルな取り組みの先頭に立っています。腐敗対策は民主主義、持続可能な開発および法治の基礎を築こうとするUNODCの全体的な取り組みの一環となっています。こうした目標をさらに追求するため、1989年以来の取り組みに基づき、UNODCは1999年に「腐敗防止グローバル・プログラム」(GPAC)を発足させました。GPACは、各国から腐敗対策への支援を要請する声が高まっていることを受けて創設されました。UNODCの活動と、このプログラムによって実施される技術協力への取り組みは、加盟国が腐敗を防止し、取り締まるだけでなく、健全性を育むための支援を行うことをねらいとしています。具体的な措置としては、以下があげられます。
- 腐敗対策の措置とツールに関する知識と専門技術を高めること
- 各国が腐敗を防止し、取り締まる能力を育成、強化するための技術的な援助を提供すること
- 腐敗対策のための政策立案と唱道活動を国際的に展開する組織間での協調と協力を強化すること
国連はガイダンスと技術援助提供の要請に応じ、加盟国との協力を行っています。こうしたサービスを提供する際、UNODCは腐敗に対する総合的アプローチ、すなわち事実に基づき、透明、中立的、包摂的、包括的、結果志向かつ柔軟なアプローチを採用しています。この目的で、腐敗防止グローバル・プログラムはモジュール設計の役割を果たすものとなっています。そのさまざまな要素の中には、国際、国内および地方(市町村など)レベルで個別にも、パッケージとしても実施できる多様な活動が組み込まれています。また、腐敗は複雑な現象であるということも考慮されています。その性質は、支配層の社会、経済および文化条件、特に法的な背景によって、国ごとにより大きく異なっています。GPACの主要な構成要素は、学習、技術協力、評価の3つです。
●GPACと司法の健全性
2000年以来、GPACはトランスパレンシー・インターナショナル(TI)および英国開発援助庁(DFID)との協力により、英米法、大陸法諸国の首席裁判官が司法の健全性と能力を強化する上でのベストプラクティスを判別、適用するための支援を行っています。
この支援により、次のような成果が生まれました。
- 司法改革の主要目標リスト
- 一連の測定可能なパフォーマンス指標
- 司法の健全性と能力に関する包括的アセスメントの方法
- 「世界司法行動規範宣言」(Universal Declaration on Judicial Conduct)案
- 首席裁判官が司法改革、変革の管理および法治の強化に関するベストプラクティスに触れることができる「安全」で有意義な学習環境
●機関間の調整
2001年12月、UNODCは国連副事務総長室から、腐敗対策の政策立案、提唱および実施を国際的に展開する全組織間の調整と協力を強化するよう要請されました。この取り組みは、活動の不要な重複を避け、既存の資源の効果的、効率的な利用を確保することを目的としたものでした。
UNODCはこれを受け、
- 国連と腐敗防止の分野で活動するその他の機関全体の相乗効果改善を確保する「機関間腐敗対策メカニズム」(Inter-agency Anti-Corruption Mechanism)の設置を先頭に立って進めるとともに、
- 国連内部監査部(OIOS)を支援し、国連システム全体を通じた倫理のメインストリーミングをねらいとした「組織健全性イニシアチブ」(Organizational Integrity Initiative)の開発を行っています。
●GPACの活動
腐敗は動態的なもので、様々な分野で影響を及ぼすため、GPACはこれに対応するダイナミックで全体観的なアプローチを採用しています。つまり、防止、執行および訴追に関する措置に同程度の重点が置かれています。
GPACは2005年までに、加盟国による腐敗の防止と取締りを支援する15件から20件の技術的な協力を行うプロジェクトを計画しています。現在はハンガリー、レバノン、ナイジェリア、南アフリカ、コロンビア、インドネシア、ルーマニア、イラン・イスラム共和国およびウガンダのプロジェクトが実施中です。GPACはまた、援助機関間の調整とベストプラクティスの判別、促進にも努めています。
技術協力は包括的な腐敗対策の措置あるいはツールのモジュール型アプローチを反映するもので、国際、国内および地方のレベルにおいてさまざまな段階で実施することができます。これにより、腐敗防止対策の柔軟性が高まり、各国あるいは各小地域のニーズと事情に適合させることができます。各々のツールは、行動・学習プロセスによる試験と精緻化を経てから、加盟国に提供されています。
●ツール
マニュアルは、政策ガイドラインとしてだけでなく、政策に関する共通の理解を促進し、政府が、国内及び国境を越えた腐敗と闘うための健全性を育む能力を高める実用的な「ツール」としての役割も果たします。
「国連腐敗対策ツールキット」(United Nations Anti-Corruption Toolkit)は、あらゆる種類の腐敗問題を「是正」するため、ツールとケーススタディーを集めたものです。これらのツールとケーススタディーについては、継続的な精緻化が図られます。
「国連腐敗対策マニュアル」(United Nations Manual on Anti-Corruption Policy)案は、政策立案者への指針を提供するものとして、「国連法文書補遺」(United Nations Supplement on Legal Instruments)案は、現行条約に関する包括的ガイドとして、それぞれ策定されています。
また、国連司法局および南アフリカの刑事裁判所との密接な協力により、「国連検察官・捜査官ハンドブック」(United Nations Handbook for Prosecutors and Investigators)も作成されました。必要な協力、普及活動および支援が得られれば、その他のツールキットやマニュアルの作成も可能です。
UNODCはその「出版物シリーズ」(Publication Series)を通じ、各種の専門的資料の作成と普及も行っています。これらは多様な目的を有し、さまざまな対象者、学術研究者および専門家向けに、電子出版物および印刷物として刊行されています。
普遍的なメンバーシップと全世界的な任務を備えた組織である国連はグローバルな課題に対応する上で理想的な立場にあります。加盟国は、腐敗がグローバルな問題であるという事実を認め、総会を通じてUNODCに対し、国連腐敗防止条約(United Nations Convention against Corruption)の交渉を支援する任務を与えました。国連腐敗防止条約は、腐敗対策への取り組みで中心的な役割を果たします。UNODCは、加盟国がこれを批准し、その規定を実施するための援助を提供してゆきます。より具体的な活動として、この新条約で要求あるいは法制化された要件と、現状との格差を埋めるための一助となる研修など、諮問的サービスを提供することになります。
●資 金
技術協力活動は、枠外予算に基づくものとなります。2003年については、多くの援助機関から190万米ドルに上る拠出金が寄せられました。UNODCによる技術協力活動の継続は、援助機関からの支援の継続にかかっています。各国による新たな腐敗防止条約の履行を最善の形で支援するには、これよりはるかに多くの資金が継続的に必要です。
詳しくはホームページwww.unodc.orgおよびwww.unis.unvienna.orgをご覧ください。
ファクトシート2
腐敗防止条約:Q&A
国連加盟国は2年足らずの交渉により、「国連腐敗防止条約」という新条約の最終案文策定にこぎつけました。条約案は、総会が2002年12月に設置したアドホック委員会によって合意されました。委員会の事務局はオーストラリアのウィーンにある国連薬物犯罪オフィス(UNODC)が務めました。
その後、条約案の提出を受けた総会は、2003年10月31日にこれを採択し、2003年12月9日から11日にかけ、メキシコのメリダで署名式を行いました。同条約は30カ国の批准によって発効することになります。
●条約は腐敗を定義していますか。
条約は、腐敗の包括的な定義が必要でもなければ、適合するものとのスタンスを取っています。腐敗は流動的な概念で、人が違えばその定義も変わります。もっとも重要なのは、その概念が変化するということです。条約はグローバルな環境で機能するように作られており、将来を見据えたものになっています。こうした目標に照らして、また、腐敗という現象の多面的な性格と、それによる法的定義の難しさを考えて、条約は現存する腐敗の諸形態をカバーしながら、各国が他形態の腐敗の発生にも対処できるようにするという、実際的なアプローチを採用しています。
●なぜ腐敗防止条約が必要なのですか。
多くの国では、運転免許、建築許可などの日常的文書の申請者は、公務員からの「上乗せ金」の要求に慣れてしまっています。さらに上のレベルでは、公共工事や営業許可を取得したり、調査や行政手続きを免れたりする目的で、さらに多額の金銭が支払われています。
このような腐敗行為は、一部の公務員の銀行口座を肥え太らせる以上の影響を及ぼします。腐敗は投資の減少、さらには引揚げさえも誘発し、社会の分極化、法治と人権の軽視、非民主的な慣行、発展と不可欠なサービスに用いられるべき資金の流用など、多くの長期的な影響を及ぼします。
腐敗の当事者が稀少な資源を流用すれば、国民に基本的なサービスを提供し、持続可能な経済、社会および政治の発展を促す政府の能力に支障が出ます。さらに、インフラ整備プロジェクトの設計がずさんになったり、医療機材が不足あるいは老朽化したりすることなどにより、国民の健康や安全が損なわれるおそれもあります。
一番重要なのは、腐敗による悪影響が、国民の中でもっとも弱い人々、つまり貧困層に集中するということです。
●国連はどのように関わっていますか。
より効果的で公正かつ効率的な政府を作り上げるためには、腐敗対策が不可欠だという認識が高まりつつあります。贈収賄や縁故主義は開発を遅らせることを理解し、こうした慣行を抑制するツールを手に入れるために国連の援助を要請する国々も増えてきています。
腐敗の原因は国によって異なるため、一部の国々で有効な執行・訴追措置が他の国でも効果をあげるとは限りません。また、資源の不足により、腐敗対策の実施に援助を必要とする国もあります。
●腐敗防止条約がその他同様の条約と異なる点は何ですか。
国連腐敗防止条約は、グローバルな法的拘束力を持つ条約としては初めてのものです。その他の現行条約はいずれも地域的なもので、より限られた環境での適用を意図しています。実質的に見て、この新条約は、資産回収と防止に関する規定があるという点で、画期的なものとなっています。
●条約はどのように機能するのですか。
腐敗は国を貧しくし、国民からよいガバナンス(統治)を取り上げてしまいます。また、経済システムを不安定化させ、その影響が地域全体に及ぶこともあります。そして、組織犯罪、テロなどの違法行為がはびこるようになります。多くの国々では、腐敗によって基本的な公共機能が損なわれ、人々の暮らしの質が低下しています。
条約は、腐敗問題が単なる犯罪行為の問題に止まらないことを認識しています。よって、その規定には、国内レベルでの防止活動、あるいは、防止に関する各国間の協力強化を目的とした幅広い措置が盛り込まれています。これらの規定を補完するため、締約国は条約批准により、贈収賄、横領、マネー・ローンダリングなど、特定の行為を犯罪とすることを義務づけられます。
条約の主眼は、犯罪者引渡しや司法共助など、具体的措置についての国際協力の促進に置かれています。条約は資産回収について、まったく新しい一連のルールと措置を規定しています。さらに、開発途上国の条約履行能力強化を目的とした技術協力に関する規定も設けられています。
●条約の署名後はどうなりますか。
各国による批准の手続きが始まります。条約は30カ国がこれを批准した段階で発効します。条約の批准で作業が完了するわけではありません。条約の履行を促進し、その進捗状況を審査するために、締約国会議が設置されています。締約国会議は定期的に開かれ、締約国による実施状況の審査、および、条約が義務づける活動の促進を図るフォーラムとしての役割を果たすことになります。
●簡単な経緯
アドホック委員会の第1会期は2002年1月に開かれました。第1会期と第2会期で、委員会は条約案の第1読会を完了しました。第2読会は第3会期と第4会期で行われました。2003年3月の第5会期で、委員会は大半の規定に関する暫定合意に達しました。
第6会期はそれまで5度の会期よりも1週間長引き、夜間のセッションも行われました。2003年8月9日(土)、午前3時50分まで続いた討議を経て、128の加盟国代表は、3日間の短い第7会期を開催し、ここで引き続き、腐敗防止条約案の最終的な詰めを行うことを決定しました。第7会期は2003年10月1日に閉幕しました。
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ファクトシート3
条約の要点
●資産回収
画期的な規定として、各国は資産の回収に合意しました。これは「条約の基本原則」として明言されています。
盗まれた資産の判別と回収は大きな課題です。多くの開発途上国では、腐敗の蔓延によって国富が略奪され、新政府のもとで社会の再建と復興が急務となっているため、資産の回収は重要な問題となっています。
この点に関する合意に到るまでには、不正な資産の返還を求める国々のニーズと、援助を求められる国々の法的・手続き的セーフガードとの調整を図る必要があったため、集中的な討議が必要でした。協力と援助のあり方については、いくつかの条項で定められています。
特に公金横領の場合、没収された資産は要請国に返還されることになります。条約の対象となる、それ以外の何らかの犯罪による収益の場合、所有権を示す証拠があること、あるいは、要請国に生じた被害が認められることを条件に、資産は返還されます。その他の場合にはいずれも、没収資産の要請国への返還、以前の合法的所有者への返還、あるいは、被害者に対する補償が検討されることになります。
実効的な資産回収規定は、腐敗の最悪の影響を是正すると同時に、不正資産を隠す場所はないというメッセージを腐敗公務員に送ろうとする各国の努力を支援するものとなるでしょう。
●法制化
条約は各国に対し、幅広い腐敗行為について、国内法による犯罪とされていないものがある場合、これらを対象とする刑事犯罪あるいはその他の犯罪を規定するよう求めています。場合によっては、各国が犯罪の規定を行う法的義務が生じます。その他の場合には、各国の国内法の差異を考慮に入れながら、これを検討しなければならないとされています。
腐敗防止条約はこれまでの類似条約とどう違うのでしょうか。条約は贈収賄(違反切符を免れるために警察官に「チップ」を渡すことを含む)と公金横領、および、腐敗や司法妨害による収益金の洗浄を犯罪とすることを求めています。また、各国に対し、不当な影響力の行使や腐敗収益隠匿の犯罪化を検討するよう呼びかけています。
条約にはその他、法制化を支援する規定も多く盛り込まれています。例えば、法執行機関と、関連の民間主体との協力を促進するための措置が規定されています。また、行動規範や、企業間あるいは企業と国との契約関係における商業的グッドプラクティスの利用を含め、関連する民間主体の健全性を保護するための基準と、手続きの策定を促進する措置もあります。さらに、民間主体間の関係における透明性の問題も取り扱われています。
●国際協力
一定の法律や実践を世界の各国および政府のすべてに適用しないかぎり、腐敗をなくすことはほぼ不可能です。条約の重要なポイントはここにあります。
腐敗防止条約により、各国は防止、捜査および犯罪者の訴追を含め、腐敗対策のあらゆる側面での共助に合意しました。その趣旨は、犯罪者に隠れる場所を残さないことにあります。そうすれば、母国を離れ、訴追の恐れなく暮らすことなどできなくなるでしょう。
各国は条約により、裁判で利用できる証拠の収集と提供について具体的な司法共助を行い、犯罪者を引き渡す義務を負っています。各国にはまた、腐敗収益の追跡、凍結、押収および没収を支援する措置を講じる義務もあります。
●防止
腐敗への取り組みの第一歩は、その防止にあります。条約には腐敗防止を取り扱う章が設けられています。この章は官民双方を対象とする措置を規定するとともに、官民の日常的な接触についても触れています。
条約が提示する措置の中には、腐敗対策機関の設置や選挙・政党資金の調達における透明性向上など、モデルとなる予防策が含まれています。各国は効率、透明性およびメリット制による採用を促進するセーフガードを公務員に適用するよう努めなければなりません。採用された公務員は行動規範、財政その他の開示義務、および、適切な懲戒処分に服すべきものとされています。
腐敗収益の洗浄防止を図るため、条約は各国に対し、疑わしい取引を審査し、金融情報を分析し、情報の交換を行うためのメカニズムの設置を要請しています。
デューディリジェンス(詳細な調査)プログラムの策定と実施の際、各国は特異な金融取引への警戒強化、特異な取引を行った顧客の本人確認記録簿の作成と保管、および、関連する個人と金融機関による担当当局への疑わしい取引の報告義務づけを検討すべきです。
国家財政の透明性と説明責任も向上させなければなりません。このため、政府調達など公共セクターの特に重要な分野では、腐敗防止のための具体的な義務が規定されています。
一般市民は公務員に高い行動基準を求める権利があります。香港などの一部の場所ではこれが実現しています。しかし、一般市民もまた、公務員の腐敗防止に参加しなければなりません。条約はこうした理由から、各国に対し、非政府組織や地域密着型組織、さらには市民社会のその他要素の関与を積極的に奨励、促進するとともに、腐敗と可能な防止策についての一般の認識を高めるよう呼びかけています。
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ファクトシート4
アントニオ・マリア・コスタ国連事務次長:
腐敗と国連条約に関する発言
「ここ数年間で、腐敗、そして腐敗が国家と国民の福祉にもたらす悪影響に対する意識を向上させるため、かつてない規模での取り組みが行われてきました。腐敗は経済政策の決定を歪めるだけでなく、投資を抑制し、競争力を削ぎ、そして最終的には経済成長を鈍化させます。発展の法的、政治的、経済的側面はそれぞれつながっているため、どれか一つの部門で腐敗が起これば、その全体の発展が阻害されるのです」
国連薬物犯罪オフィス、腐敗対策グローバル・プログラム
腐敗対策ツールキット、「はしがき」、アントニオ・マリア・コスタ
「腐敗対策は、持続可能な開発の礎石となるべきよいガバナンス(統治)と法治の前提条件です。」
「腐敗は国際社会にとっての大きな課題であり、国際的な対応が必要です。事実、腐敗行為はしばしば、国境を越えた影響を及ぼすばかりでなく、援助がなければこの問題に対処できない国も多くあります。」
「腐敗事件のほとんどは、官民の関係から生じています。企業腐敗の場合、その利益は先進国の株主に生じることが多い一方で、その被害は開発途上地域の一般市民が負担することになります。」
「腐敗問題の重大性とグローバルな対応の必要性を考えれば、私たちは重要な時期にさしかかっているといえます。腐敗はグローバルな解決策を必要とするグローバルな問題なのです。」
「今日のグローバル化が進む世界では、腐敗の影響がより目に見える形で現れるようになっているかもしれませんが、腐敗それ自体は新しい問題ではありません。これを一朝一夕に解決することは不可能です。しかし、国際社会はこのグローバルな課題に、より効果的な対応を行うことができるでしょう。この点においては、私は楽観的に見ています。」
国連薬物犯罪オフィス、腐敗対策グローバル・プログラム
よりクリーンな官民関係のための国内会議、ブダペスト、2003年3月20-21日
「腐敗のグローバル力学」、アントニオ・マリア・コスタ
「腐敗防止条約はバランスがよく取れているという点で、革新的な条約となっています。そこには法執行と防止措置がともに規定されています。また、各国が腐敗防止ツールを実施に移す際の技術援助の提供にも触れています。」
「国連条約という性格上、腐敗防止条約はその他の現行条約と異なり、普遍的に適用できる可能性を秘めています。」
「腐敗の定義がないことは、条約を合意可能で柔軟なものとする必要性を反映しています。『包括的テロ対策条約』(Comprehensive Convention against Terrorism)は定義の問題から、実現に到りませんでした。つい先日の9月29日に発効した『越境組織犯罪防止条約』(Convention against Transnational Organized Crime)のアプローチは、これとは異なっています。この条約は組織犯罪を定義する代わりに、具体的な状況を類型化しています。国連腐敗防止条約も、これと似たようなアプローチを取っています。贈収賄、マネー・ローンダリング、権力濫用、横領などの概念を定義し、これを犯罪とすることで、事実上の腐敗の定義を図っているのです。」
2003年10月2日のウィーンでの記者会見
「腐敗防止条約に関する合意が達成されたことは、この問題に具体的な取り組みを行うという国際社会の決意を示すものです。条約には強力な執行力が備わり、世界的な腐敗によって提起された、グローバルな課題への、真にグローバルな対応となっています。」
「交渉の大きな成果として、腐敗によって取得した資産の返還に関する合意があげられます。条約は、腐敗による国家からの資産盗難の防止と、その発見を図る措置を明確に規定しています。」
ウィーン、2003年10月2日(国連広報サービス)
「盗まれて不法に輸出された資産は返還しなければなりません。これは、ウィーンでの交渉で合意された新たな基本原則の一つです。資産回収は、各国の協力強化への踏み台となるものです。これによって、盗んだ資産を隠す方法や場所は少なくなり、不法収益が返還される可能性が高まるでしょう。」
ウィーン、2003年8月11日(国連広報サービス)
アントニオ・マリア・コスタ氏は、ウィーンを本部とする国連薬物犯罪オフィス事務局長と国連ウィーン事務局(UNOV)担当事務次長を兼務しています。