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『ミレニアム宣言の実施に関する報告書2003』発表
国連事務総長、「共通の安全保障の課題をめぐって目標の一致」を要求

プレスリリース 03/090-J 2003年09月09日

~安全保障理事会は加盟国の信頼と世界の世論の信頼を回復しなければならない~

9月8日に発表された報告書において、コフィー・アナン国連事務総長は、イラク戦争をめぐる分裂を乗り越えて結束を固め直し、人類が直面する重大な脅威とは何かについて合意し、他の国際組織と同様、有効性を高めるために必要ならばひるむことなく、国連自体の徹底した改革に取り組むよう、世界の国々に求めました。

この報告書が発表された9月8日は、世界の指導者たちの多くが出席すると見込まれる、年一回の国連総会「一般討議」の2週間前にあたります。アナン事務総長は世界の指導者すべてに対し、今年の総会に参加して国際システムをよりよく機能させる方法についての考えを持ち寄るよう要請しています。

『ミレニアム宣言の実施に関する報告書2003』は、明らかにこの一般討議を準備するものです。冒頭に述べられているのは、バグダッドの国連イラク現地本部が爆撃され、セルジオ・ヴィエイラ・デメロ事務総長特別代表を含む22名の命が失われた8月19日の「大きな打撃」です。

アナン事務総長は、この爆撃を「国連憲章に根ざした世界の安全保障のビジョンに対する直接的な挑戦」であると表現しています。このビジョンこそ、ちょうど3年前、ミレニアム・サミットの席で世界の指導者が全員一致で採択した、ミレニアム宣言の根底を成すものです。世界の指導者たちが当時世界の平和と安全に関して合意したものが、今回の事件で「3年前よりも不安定になっているように見える」と事務総長は考えています。

開発の側面に関しては、報告書はより前向きな内容となっています。2015年の達成を目指したミレニアム宣言の開発目標は、残された12年間に「これまでに生み出された勢いを維持し、さらに強めていく」ならば、まだ実現が可能だと述べています。しかし、事務総長は、「加盟国が自分たちの合意にもとづいて行動するという十分に強い決意を持っているかどうか大きな疑いが残る」と警告しています。

また、人権と民主主義の側面については、テロリズム、およびテロリズムと闘うために加盟各国で用いられている手法によって人権が圧迫されているため、1990年代に成し遂げた「重要な成果の一部が後退する危険がある」と記されています。

『ミレニアム宣言の実施に関する報告書2003』で最も長い章である「平和と安全保障に関する章」で、事務総長は「国際的な安全保障の仕組みは…私たちの時代のニーズに適応することができなければならない」と警告し、そのニーズとは何かをめぐる意見の不一致を憂慮しています。一部の加盟国は主にテロリズムと大量破壊兵器の拡散の問題に焦点をおいていますが、「世界の多くの国にとって、今なお最大の問題は貧困、欠乏、内戦」なのです。

事務総長は、「国際社会は過去数カ月の足並みの乱れを継続させず、共通の安全保障の課題をめぐって目標の一致を見出すことが何より重要である」と述べ、「それは加盟各国がそれぞれの国益を追求するにあたって、世界の現実と他国のニーズを理解し尊重してはじめて達成できる」と言い添えています。
事務総長は、共通の安全保障の課題は「以前から継続するものにせよ新たに浮上してきたものにせよ、平和と安全保障に対する重大な脅威とそれに対する共通の対応についての世界的な合意を反映するべきであり、必要に応じて国連とその他の国際機関の構造と機能を向上・変化させるのをためらってはならない」と述べています。

特に、安全保障理事会は「加盟国の信頼と世界の世論の信頼を回復する」必要があり、「安保理が国際社会全体、および現代の世界の地政学的現実を幅広く代表していると認識されるならば」その信頼回復をよりよく実現できると述べています。だからこそ、安保理の理事国数の拡大について合意に達することができるよう、加盟各国がいっそう努力することを事務総長は希望しているのです。

開発に関する章において、アナン事務総長は、貿易、債務救済、援助の分野で先進国が途上国に対する責任を果たす必要があると特に強調しています。ミレニアム開発目標全体の成否は先進国がこの責任に取り組むかどうかにかかっており、先進国は、極端な貧困と飢餓を半減するといった2015年の目標に合わせて、自分たちの約束を果たす期限を定めることに合意すべきであると事務総長は主張しています。

また、人権、民主主義、よい統治に関する章では次のように警告しています。「『テロとの戦い』が行われるとき、最初に犠牲になるのは寛容性です。特にイスラムに対する戦いであると、イスラム教徒には受け止められています」。そして、「民主主義と社会正義に加え、これまで以上に人権を尊重することが、長期的に見て最も効果的なテロ予防策である」と指摘しています。

同章では女性の権利についても詳しく論じられています。「何より喜ばしいことは、女性の権利に影響を及ぼすさまざまな問題について世界の認識が高まっているということです。しかし、国レベルではほとんど前進が見られず、すでに獲得された権利が脅かされることさえ少なくありません」とアナン事務総長は述べています。

報告書を締めくくるのは、「多国間組織の強化」に関する章です。事務総長は、既存の国際組織の仕組みを「厳しく見つめ直すこと」、特に国連自体の重要な組織について再考することを求めています。それには安保理だけでなく、総会、経済社会理事会、そしておそらくは信託統治理事会も含まれるでしょう(信託統治理事会は国連信託統治地域 ― 主に第二次世界大戦の枢軸国植民地 ― が独立して以来、任務がない状態にありますが、アナン事務総長は、「近年、加盟国によって国連に与えられている新しいタイプの責任に照らし、この組織を見直してもよいのではないか」と提案しています)。

注:報告書(文書A/58/323)の全文は、9月8日からwww.un.org/millenniumgoalsで見ることができます。