第1回小型武器隔年会合議長による記者会見
プレスリリース 03/069-J 2003年07月17日
小型武器に関する第1回隔年会合の議長を務めた猪口邦子・軍縮会議日本政府代表部大使は7月11日、国連本部で記者会見に出席しました。記者団に対し、同会合の目的は、行動計画の実施を改善するためにモメンタム、政治的意志および専門的な知識を結集し、将来の世代のためによりよく、より安全で、悲劇の少ない世界に向けた道のりを描くことにあったと述べました。
行動計画の実施を検討する1週間の会合の閉幕を目前に控え、猪口氏は、この会合が各国にとって、小型武器の非合法取引根絶を目指す上で得られた経験と教訓を改めて確認する機会になったと発言。武器の回収と廃棄、マーキングと追跡、輸出入規制、取引仲介、備蓄(武器が悪用される危険性を含む)、実施のための能力育成、研究、制度の構築、立法、さらには、子ども兵士や小型武器拡散のジェンダー面での影響など、人間の安全保障の問題を含め、極めて具体的なトピックが取り上げられたことを明らかにしました。
小型武器の非合法取引の主たる犠牲者が子どもであることは、周知の事実です。猪口氏は「子どもが一夜にして兵士に変身できるのは、小型武器があるためだ」と語り、その理由として、小型武器は携行が簡単で、それを使うにあたっては複雑な訓練が要らないことをあげました。
猪口氏によれば、小型武器の女性に対する影響に関する統計も、問題の深刻さを物語っています。小型武器関連の死者は毎年、約50万人に上ります。犠牲者の90%は民間人ですが、そのうちの80%が女性と子どもです。このデータは1日に1,000人の死者が出ていることを示しており、小型武器は実際のところ、大量破壊兵器となっています。
猪口氏は、まさにこの点に本会合の開催理由があることを強調。会合は法文書策定のための話合いではなく、すでに合意された道のりの実施を促進する機会であったと述べました。多くの国々が国内レベルで講じられたイニシアチブの成果を共有したほか、地域的な調和の実例もいくつか報告されました。中には、今次会合での報告に合わせて、法律を制定した国もありました。猪口氏自身、これまでの教訓と今後に向けた一層の措置を話合いの中心とするよう要請していました。しかし、同氏は、各国が依然として、行動計画への「自己責任(ownership)」を育んでいる段階にあるという感じを受けたと語りました。
各国からの報告の信憑性に関する質問に対し、猪口氏は、小型武器問題が複雑な政策ツールを要する複雑な問題であることを指摘。小型武器の非合法取引は極めて多面的であるため、この問題について万能な解決策はないとしました。同氏によれば、小型武器はこの点で、大量破壊兵器とは異なっており、国連プロセスはこのような幅広い問題に関し、行動計画実施に向けたモメンタムと政治的意志を作り出すことしかできません。これによって小型武器問題の認識向上と主流化が図られ、各国が関連のイニシアチブに資金と労力を注ぎ込むようになることも考えられます。会合では、取引仲介やマーキングなど、テーマ別の議題に関する公開討論も行われましたが、これへの非政府組織(NGO)の参加にも重要な意義がありました。会合と並行して、このようなテーマに関する行事も行われました。これらはすべて、モメンタムの創出に貢献しています。
別の質問に対し、猪口氏は、各国代表団が2006年の再検討会議の議題に含めることを希望する争点をすでに明らかにしていると回答。各論点の再交渉は5年ごとに行われるのに対し、隔年会合の目的は実施状況の評価にあると述べました。現在実施中の行動計画は、米国で同時多発テロが発生した9月11日より数週間前の2001年7月に採択されたものです。すでに焦点は絞り込まれていますが、状況の進展に応じ、2006年に向けたモメンタムは今後も強まると見られます。
同氏は加えて、ほとんどのテロ行為は小型武器を使用したものであることを指摘。これら武器の不正な流れは、テロリズム、薬物密売、マネー・ローンダリングなどの問題と関連していると述べました。同氏によれば、2006年の会議で新たに取り上げられる議題は、テロリズムによって生じる脅威を中心とするものになると見られます。その中には、国家以外の行為者に対する移転、備蓄の安全性、および、小型武器の乱用防止という観点からのこれら兵器への取組みが含まれます。マーキングと追跡の問題も議題に上るでしょう。マーキングについては、国際条約策定の合意もできています。
しかし、猪口氏はこの問題が複雑であると述べ、慎重な姿勢を崩しません。マーキングは永久的で取外し不可能なものとしなければなりません。追跡の問題に加え、各国にマーキングと追跡の責任をどのように取らせるかという問題も検討が必要です。さらに、取引仲介活動の問題も絡んできます。今のところ、国と地域のレベルで進展が見られているものの、グローバルな規模での前進は今後の大きな課題となっています。