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国連事務総長、持続可能な開発に向けて統合報告書を発表 - The Road to Dignity by 2030 -

プレスリリース 14-082-J 2014年12月08日

潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は2014年12月4日、いわゆる「統合報告書(synthesis report)」の先行版を国連総会に提出し、すべての人にとって持続可能な開発の時代を実現するため、包摂的、機敏かつ協調的な行動を求めました。この報告書は、人間と地球を中心に据え、人権に裏づけられた新たなグローバル・アジェンダ策定に向けた交渉の指針となるものです。

事務総長は「来る2015年は、人類の未来に幸福を確保するため、これまで積み残されてきた遠大でグローバルな行動を起こすうえで、またとない機会になる」と述べました。そして加盟国に対し、2015年までに極度の貧困と飢餓を削減し、特に女児の教育を推進し、疾病と闘い、環境を保護するために、国連の支援のもとで取り組みが行われてきた画期的なミレニアム開発目標(MDGs)を引き継ぐアジェンダの交渉に「斬新、包摂的かつ機敏に、決意と協調」をもって臨むよう呼びかけました。

“[私たちには]誰も置き去りにすることなく、すべての人にとって尊厳ある生活を現実のものとするため、大胆に、力強く、迅速に行動を起こす歴史的な機会と義務がある”

事務総長は、193の加盟国が出席する総会への非公式ブリーフィングで、統合報告書『The Road to Dignity by 2030: Ending Poverty, Transforming All Lives and Protecting the Planet[PDF]』を発表しました。同席したサム・クテサ総会議長も各国代表団への挨拶で、2015年9月のサミットでの新たな枠組みに関する合意に向け、たたき台となる統合報告書の編さんに貢献した政府間交渉プロセスに触れ、各国が大きな変容をもたらすアジェンダを実現に導く「歴史的責任」を担っていることを強調しました。

統合報告書には、ポスト2015年アジェンダに関する交渉の進捗状況を確認し、MDGsの取り組みから得た教訓を見直すことで、今後の各国による議論を支援するねらいがあります。事実、報告書は、現時点で人々を援助し、かつ、新たなアジェンダに向けた出発点としての役割を果たすために、「仕事を完成させる」必要性を強調しています。

事務総長は統合報告書の結論で次のように述べ、加盟国に強く働きかけています。「私たちは国連の創設以来、最も重要な開発の年を迎えようとしている。私たちは『人間の尊厳および価値に関する信念を改めて確認』し、世界を持続可能な未来へ導くという国連の誓約に意味を持たせなければならない…。[私たちには]誰も置き去りにすることなく、すべての人にとって尊厳ある生活を現実のものとするため、大胆に、力強く、迅速に行動を起こす歴史的な機会と義務がある」

潘事務総長は、国連持続可能な開発会議(リオ+20)に続く協議に言及しつつ、総会に対し、開発についてこれほど幅広く包摂的な協議が行われたことはないと述べました。そして、統合報告書は「将来を見通して、人間と地球を中心に据え、人権に裏づけられ、グローバル・パートナーシップに支えられた普遍的で大きな変革をもたらすアジェンダの大枠を論じる」ものであると付け加えました。

事務総長は、今後数カ月で、ポスト2015年アジェンダの最終的なパラメータが固まるだろうとしたうえで、人権と尊厳に基づき、説得力と原則性を兼ね備えた文言を盛り込む必要性を強調しています。また、資金調達その他の実施手段も不可欠になるとして、報告、進捗状況のモニタリング、教訓からの学び、責任の共有の確保のための強力で包摂的な公的メカニズムの整備も求めました。

事務総長は、オープン・ワーキング・グループが作成した成果文書も歓迎し、これによって提案された17項目の持続可能な開発目標と169項目のターゲットは、貧困を終わらせ、繁栄の共有を達成し、地球を守り、誰も置き去りにしないことをねらいとするアジェンダを明確に表現していると述べています。

オープン・ワーキング・グループの議論が包摂的かつ生産的に行われたという認識に基づき、事務総長は、総会も合意しているとおり、ワーキング・グループの提案を新たな目標の基盤とすべきことを指摘しています。報告書はまた、これら目標は、世界的な認識を高め、各国レベルでの実施を促すよう、加盟国の意欲とビジョンを明確に伝える「焦点を絞った簡潔な」ものとすべきであるとも述べています。

統合報告書は、尊厳、人間、繁栄、地球、正義、パートナーシップを、開発目標の議論において理念的な指針を提供すべき横断的な「必須要素」群として提示していますが、潘事務総長は、どの要素も他の要素と切り離して考えることはできず、また、それぞれの要素が全体と不可分の一体をなしていることも強調しています。

事務総長は、持続可能な開発資金に関する政府間専門家委員会の作業を歓迎し、「実施はこのアジェンダの試金石になる。実施には健全な資金的基盤が伴わねばならない」と述べ、各国に取り組みをさらに拡大するよう促しています。

来年、アディスアベバで開かれる開発資金会議は、実施に向けた手段の輪郭を定めるうえで、大きな役割を果たすことになるため、事務総長は、社会で最も貧しく、最も弱い立場に置かれた人々に利益をもたらす国民所得を確保するうえで、各国の政府が果たすことになる「主要な役割」を強調しています。

報告書によると、特に脆弱な国々に供与される政府開発援助(ODA)と国際的な公的指針も「数兆ドルに上る民間資金が変革をもたらす力」を十分に発揮させるうえで不可欠となる一方で、水へのアクセス、再生可能エネルギー、農業、工業、インフラ、輸送の改善による低炭素経済への移行に関するプロジェクトについては、民間投資が特に重要となります。

また、実施は技術格差の解消や、説明責任の共有を確保する新たな枠組みの創出、信頼できるデータの提供にもかかっており、事務総長はこれら要素を「健全な意思決定を支える血液」と呼んでいます。

事務総長は、ポスト2015年プロセスから最大の成果を確保するという決意を改めて表明するとともに、各国が普遍的人権と国際的規範を指針としつつ、異なる国々の異なるニーズに引き続き配慮する必要性を強調しています。

「私たちは、目の前の作業の可能性と機会を認識しなければならない」と事務総長は述べています。

ポスト2015年開発アジェンダの策定を担当するアミーナ・モハメッド事務総長特別顧問はこれに先立ち、UN News Centre のインタビューに応じ、統合報告書から得られる主な「識見」のひとつとして、「2030年までに、私たちは貧困を終わらせ、生活を一変させるとともに、地球を守る方法も見出すことができる」という点を強調しました。

「私たちが、誰も置き去りにしないという普遍的アジェンダについて考えていくうえで、このことは重要だと思います。それは、半数あるいは4分の3の人を対象とするといったことではなく、すべての人々に関わることなのです…。誰も置き去りにしないということは、家族のうちで最も弱く、最も小さいのは誰か、そして、こうした人々を置き去りにしないようにするためには、何をしなければならないのかを見極めることと同じです。それこそまさに、私たちの活動の成否を判定する試金石なのです」

 

持続可能な開発目標

目標1

あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

目標2

飢餓をなくし、食料の安定確保と栄養状態の改善を達成するとともに、持続可能な農業を推進する

目標3

すべての年齢の人の健康な生活を確保し、福祉を推進する

目標4

すべての人の包摂的で公平な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を推進する

目標5

ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

目標6

すべての人に水と衛生施設へのアクセスと持続可能な管理を確保する

目標7

すべての人に安価で信頼でき、持続可能で近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

目標8

すべての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する

目標9

強靭で復元力のあるインフラを整備し、包摂的で持続可能な工業化を推進するとともに、イノベーションを促進する

目標10

国内と国家間の不平等を削減する

目標11

都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭かつ持続可能にする

目標12

持続可能な消費と生産のパターンを確保する

目標13

気候変動とその影響に取り組むため、緊急の措置を講じる*

目標14

海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する

目標15

陸上生態系を保護、回復し、その持続可能な利用を推進すること、また、森林を持続可能な形で管理し、砂漠化に取り組み、土地の劣化を食い止め、逆転させるとともに、生物多様性の損失に歯止めをかける

目標16

持続可能な開発に向けて安全で包摂的な社会を推進し、すべての人に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する

目標17

持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化させる

* 国連気候変動枠組み条約締約国会議が、気候変動へのグローバルな対応に向けた主たる国際的な政府間フォーラムであることを認識しつつ。

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