UNDP「人間開発報告2003」を発表 ~記者会見から~
プレスリリース 03/066-J 2003年07月11日
「人間開発報告2003」を共著したデイビッド・スチュアート氏は7月8日、国連本部で記者会見し、同報告書の結論によれば、ミレニアム目標を達成するためには豊かな国々からの大きな支援が必要だと述べました。
報告書発表記者会見には、スチュアート氏とともに国連開発計画(UNDP)広報部長のウィリアム・オーム氏も参加しました。スチュアート氏は、これまでにUNDPが発表した人間開発報告の中でも、本年度の報告書が最も重要なものの一つであることは間違いないと発言。世界の関心はここ2年間、テロとの戦いにくぎ付けとなってきたが、報告書はその関心の一部を貧困との戦いに向けようとしていると語りました。
同氏によれば、この報告書はミレニアム開発目標(Millennium Development Goals = MDGs、 2015年までに貧困を大幅に削減するために190カ国以上が合意した8つの目標)を中心に据えています。これら目標達成に向けた進捗状況について、スチュアート氏は、中国とインドの高度経済成長もあり、世界は2015年までに所得による貧困を半減させる方向に向かっていると指摘しました。
同時に、1990年代は人間開発の危機の時代でもありました。1990年よりも貧しい状態でこの10年間を終えた国々は54カ国に上ります。21カ国は実際に後退の道をたどるという、前代未聞の事態も生じました。これにより、ミレニアム開発目標にも影響が現れています。例えば、サハラ以南アフリカでは、5歳未満の幼児死亡率半減という目標の達成に150年を要する計算になります。
スチュアート氏は続けて、報告書によれば目標達成が困難な国々は59カ国にのぼると発言。これらの国々は元来貧しく、進歩が見られないか、後退さえしている国々だと語りました。これらの諸国がなぜ進歩を遂げていないのかに関し、同氏は、構造的な障害に対する関心が低すぎると発言。その多くは世界市場から孤立し、国内市場が小さく、天候不順による悪影響を受け、大きな債務負担に苦しんでいるとしました。こうした課題を克服するまで、これらの国々は進歩を遂げることも、必要な資源を生み出すこともできないのです。
何をしなければならないか、そして、誰が行動しなければならないかという問題に関し、スチュアート氏は、報告書の中心が、豊かな国々と貧しい国々の間の「ミレニアム開発コンパクト」にあると発言。貧しい国々は、政策的な改革に着手し、腐敗と闘うとともに、最も重要なこととして、ミレニアム開発目標をその開発戦略の中心に据えなければならない一方で、最も豊かな国々は、ミレニアム開発目標の公約、および、開発資金に関する国際会議で行った公約を履行しなければならないとしました。
同氏は例として、目標の達成には援助の倍増が必要なものの、ここ10年間、最も貧しい国々に対する援助額は3分の1減少していることを指摘。貿易はきわめて重要であり、最も貧しい国々が持続可能な発展と進歩への道を見出すためには、グローバルな環境で公正な貿易を行えることが必要だとしました。
スチュアート氏は、人間開発の大まかな尺度として報告書が175カ国について算定している人間開発指数には、平均寿命、識字率、所得水準および就学率に関する指標が含まれていることを指摘。昨年同様、ノルウェーの指数が最も高くなっていると述べました。同氏はまた、第1位から第10位の国までの差は0.014ポイントにすぎないことも指摘しました。指数の最下位34カ国のうち、30カ国はサハラ以南アフリカの国々となっています。このことは報告書のメッセージ、すなわち、最も貧しい国々の進歩には劇的な努力が必要だという点を如実に示しています。
データの出所に関し、スチュアート氏は、報告書の統計がすべて国際統計機関から入手されたと発言。例えば、就学率に関するデータは、国連教育科学文化機関(ユネスコ)統計研究所のものだと語りました。関係国から直接入手したデータはありません。人間開発指数については、該当する国際機関が必要なデータを備えていない場合、UNDPがその他の情報源からデータを入手するよう最大限の努力を行っています。
オーム氏は記者に対し、ダブリンできょう、アイルランドのバーティー・アハーン首相、グローバルな債務削減への取組みの提唱者として知られるロックグループU2のボノ、UNDPのマーク・マロック・ブラウン総裁、報告書の主著者サキコ・フクダ=パー氏、および、コフィー・アナン事務総長の顧問で、今年度版報告書の客員編集員を務めた著名な開発経済学者ジェフリー・サックス氏が出席し、報告書の全世界での発表を記念する式典が行われたことを伝えました。
オーム氏は続けて、今年で14回目を数える人間開発報告が木曜日、モザンビークのマプトで開催されるアフリカ連合の会合でも発表されると発言。報告書はこの会合の正式な議題として取り上げられ、著名なアフリカ指導者数人が、その調査結果に対する意見を述べる予定だとしました。