ファクト・シート
水:生と死の問題
プレスリリース 03/016-J 2003年03月05日
10億人以上の人々がきれいな水の安定した供給を受けられない状態にあります。劣悪な衛生状態にある人々の数は、世界人口の3分の1以上に当たる24億人にも達しています。その結果は悲惨なものです。
・ 水の供給や衛生施設が不十分なために起こる病気が原因で、毎年220万人以上の人々が死んでいます。こうした人々のほとんどが開発途上国の人々です。
・ 水の供給や衛生施設を改善することによって防ぎうる病気のために毎日6,000人の子供たちが死んでいます。
・ 毎年2億5,000万人以上の人々がそうした病気に苦しんでいます。
水と適切な衛生施設を利用できるようにすることは人類の福祉と発展にとって不可欠で、今や国際社会の優先事項となっています。国際連合は即時行動の必要を強調するために2003年を「国際淡水年」に指定しました。
水は人類の生存に不可欠であるにもかかわらず、その配分は不平等なものです。地球の表面の70パーセントは水で覆われていますが、そのうちの97.5パーセントは塩水です。残りの2.5パーセントは淡水ですが、その約4分の3が氷帽とし凍結しています。
ほとんどの地域には、すべての人々のニーズを満たすに足る十分な水があります。したがって、必要なことはそれを適切に管理し、利用することです。今日の世界においては、多くの水が無駄に浪費され、かつ不適切な利用のされ方をしています。需要が大きすぎて、自然による水の涵養が間に合わないこともしばしばです。水資源に対する競争が紛争の原因になることもありますが、水資源を分かち合うことが協力の触媒となりうることも歴史は証明しています。
主な統計資料
- 利用しうる淡水のおよそ70パーセントが農業のために利用されています。しかし灌漑施設が特に開発途上国において不備なために、灌漑用水の60パーセントは蒸発してしまうか、また川や地下水の帯水層に戻ってしまいます。
- 灌漑用の引水は1960年以来60パーセント以上も増えました。
- 現在世界人口のおよそ40パーセントが中程度から高程度の水不足の地域に住んでいます。2025年までには世界人口のおよそ3分の2 ― およそ55億人 ― がそうした水不足に直面する地域に住むことになると予想されています。
- 世界的に水不足に直面する国が増えてきています。特に北アフリカ、西アジア、南アジアでその傾向が見られます。
- 20世紀には水の利用が6倍にもなりました。これは人口増加の2倍の速さです。
- 漏水、違法な引水や浪費の量は、開発途上国において飲料に利用される水の量のおよそ50パーセントに相当します。
- 開発途上国の下水のおよそ90パーセント、工業用水の70パーセントは処理されることなく排水され、利用可能な水資源を汚染することがしばしばあります。
- 淡水の生態系は非常に悪化してきています。世界の湿地帯のおよそ半数がすでに失われ、世界の1万種にのぼる淡水種の20パーセント以上が絶滅してしまいました。
- アメリカ、中国、インドのような国では、地下水は涵養量を上回る速さで利用されており、地下水面は確実に低下しています。アメリカ西部のコロラド川や中国の黄河のように、いくつかの川は海に到達する前に干上がってしまうこともしばしばあります。
- 多くの農村地帯では水を運ぶのは女性や子供たちの仕事になっており、家族のために毎日何キロも歩いて水汲みに出かけなければならないこともしばしばあります。また、衛生施設の欠如のために、女性や少女がもっとも深刻な影響を受けやすい傾向にあります。
- 世界の病院のベッド数の半分は、水に関連した病気の患者で常に占められています。
- 1990年代に、開発途上国のおよそ8億3,500万人の人々が安全な飲料水にアクセスできるようになり、およそ7億8,400万人の人々が衛生施設にアクセスできるようになりました。
グローバルな目標の達成
2000年開催の国連ミレニアム・サミットに出席した世界147カ国の指導者は、2015年までに安全な飲料水を利用できない人々の割合を半減させるとの目標を採択しました。ヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関する2002年世界サミットにおいては、2015年までに適切な衛生施設を持たない人々の割合を半減させるとの同様の目標について合意に達することができました。
開発途上国において基本的な人間のニーズを満たすために水の供給と衛生施設を改善するには、年におよそ200億ドルが必要になると見積もられています。現在、途上国で行われている事業の年間予算はおよそ100億ドルとなっています。
水に関連したあらゆる形態のインフラ整備を行うには、どの程度のグローバルな投資が必要であるかの見積もりは状況によって変わってきますが、現在行われている年間700億ドルから800億ドルの投資レベルは相当に引き上げなければならないと一般に考えられています。年に1,800億ドルが必要になるとの見積もりもあります。
水管理を緊急に改善する必要があることについては合意が見られるものの、何が最善の方法であるかについては政策上の相違が見られます。ある人は、きれいな飲料水と衛生施設にアクセスすることは人権の一つで、政府はそうしたサービスを提供する義務があると主張しています。他方、水は商品であり、もっとも費用効果のある方法で水を提供すべきだとの立場をとる人々もおり、その選択肢として、市場主導の機構を設けたり、水の輸送の一部を民有化したりすることをあげています。多くの国の政府はその折衷案的なアプローチを求めています。
水と衛生施設へのアクセスを改善する努力を集中的に行ってきた国には進歩の跡が見られます。たとえば南アフリカでは、1994年にはきれいな飲料水にアクセスできるのは全人口4,200万人のうちの1,400万人だけでした。しかしその後の7年間で、南アフリカは安全な水にアクセスできない人の数を予定よりも早く半減させることができました。現在の目標としては、南アフリカは2008年までにきれいな水と衛生施設をすべての人々に提供することを目指しています。
(国連広報局 DPI/2293B-December2002)