アフガニスタンにおいて恒久的政府機関を再設置するまでの
暫定的取り決めに関する協定
プレスリリース 01/107-J 2001年12月20日
アフガニスタン問題国連会議の出席者は、
アフガニスタン問題に関する事務総長特別代表の面前にて、
アフガニスタンにおける悲劇的な紛争を終了させ、同国における国民の和解、平和の永続、安定および人権の尊重を促進することを決意し、
アフガニスタンの独立、国家主権、および領土の保全を再確認し、
アフガニスタン国民が、イスラム、民主主義、多元性、社会正義の原則に基づいて、彼等自身の政治の将来を自由に決定する権利を承認し、
長年にわたって、アフガニスタンの独立、領土の保全、国家的統一を擁護し、テロリズムと圧制に対する闘いの中で主要な役割を演じるとともに、それが払った犠牲のために、ジハード(聖戦)の英雄、最愛の祖国の平和、安定、再建の闘士となったアフガニスタンのムジャヒディン(イスラム聖戦士)に対する感謝の意を表明し、
アフガニスタンの不安定な状況が緊急な暫定的取り決めの実施を必要としていることを認識し、ブルハヌディン・ラバニ教授閣下殿が本協定に基づいて樹立される暫定政権に快く権力を移譲されることに対して深い感謝の意を表明し、
これらの暫定的な取り決めにおいて、アフガニスタン問題国連会議に適当な代表を出していないグループを含め、アフガニスタン国民のすべての部分が広く代表されることを保証する必要を認識し、
これらの暫定的取り決めは、広い基盤の、ジェンダーに敏感で、多民族的な、完全に国民を代表する政府の樹立に向けた第一歩にしようとするもので、特定の期間を超えて存続させる意図はないことに留意し、
新しいアフガニスタン治安部隊が完全に設置され、機能するには若干の時が必要であり、その為に、本協定の付属文書Ⅰに詳記されるような他の治安規定をその間用意する必要があることを認識し、
アフガニスタンにおいて恒久的な機関が設置されるまでの期間において、不偏不党な機関として国際的に認められた国連が、本協定の付属文書Ⅱに詳記されるような、特別に重要な役割を演じなければならないことを考慮して、
次の通り協定する。
暫定政権
I. 総則
1) 2001年12月22日付けの権力の正式な移譲後直ちに暫定政権を設置するものとする。
2) 暫定政権は、議長が統括する暫定行政機構、緊急ロヤ・ジルガの招集のための特別独立委員会、アフガニスタン最高裁判所および暫定行政機構が設立するその他の裁判所から構成されるものとする。暫定行政機構と特別独立委員会の構成、役割および統治手続きについては本協定に述べる。
3) 権力の正式な移譲後直ちに、暫定政権は有効なアフガニスタンの主権の存在場所となるものとする。そのような機関として、全暫定期間を通じて、暫定政権は対外関係でアフガニスタンを代表し、国連、その専門機関および他の国際機関や国際会議においてアフガニスタンの議席を占めるものとする。
4) 緊急ロヤ・ジルガは暫定政権の設立後6カ月以内に招集されるものとする。緊急ロヤ・ジルガはアフガニスタンの元国王のモハメッド・ザヒル陛下が開会する。緊急ロヤ・ジルガは、緊急ロヤ・ジルガの招集日から2年以内に行われる予定の、自由で公正な選挙によって完全に国民を代表する政府が選ばれるまでアフガニスタンを先導する、広い基盤の移行行政機構を含めた、移行政権について決定を行うものとする。
5) 暫定政権は、一度緊急ロヤ・ジルガが移行政権を設立すると消滅するものとする。
6) 制憲ロヤ・ジルガは、アフガニスタンの新憲法を採択するために、移行政権の設立後18カ月以内に招集されるものとする。制憲ロヤ・ジルガの憲法案の作成を助けるために、移行行政機構は開始後2カ月以内に、国連の援助を受けて、憲法委員会を設立するものとする。
II. 法的枠組みと司法制度
1)上記の新憲法の採択まで、次のような法的枠組みが暫定ベースで適用されるものとする。
i) 1964年の憲法、a/その規定が本協定に含まれる規定と矛盾しない範囲で適用。b/憲法に定められた、王室および行政、立法機関に関する規定を除いて適用。ii) 現存の法規。本協定あるいはアフガニスタンが関係する国際的な法的義務、または1964年の憲法に含まれるような適用規定と矛盾しない範囲で適用。但し、暫定政権はそれらの法規を廃止、改正する権限を有するものとする。
2) アフガニスタンの司法権は独立的なものとし、アフガニスタンの最高裁判所および暫定行政機構が設立するような他の裁判所に付与される。暫定行政機構は、国連の援助を受けながら、イスラムの原則、国際基準、法の支配、アフガニスタンの法的伝統に基づいて国内司法制度を立て直すために司法委員会を設置する。
III. 暫定行政機構
A 構成
1) 暫定行政機構は1人の議長、5人の副議長、および24人のその他のメンバーから構成される。議長を除き、各メンバーは暫定行政機構の省庁の長となることができる。
2) アフガニスタン問題国連会議の出席者は、アフガニスタンの元国王のモハメッド・ザヒル陛下に暫定政権の議長を務めていただきたいと要請したが、陛下は、むしろ参加者に受け入れられるような適当な候補者を暫定政権の議長に選んで欲しいと伝えた。
3) 暫定行政機構の議長、副議長、その他のメンバーが、本協定の付属文書Ⅳに記載された通り、アフガニスタン問題国連会議の参加者によって選出された。選出はアフガニスタンの民族的、地理的、宗教的構成と女性の参加の重要性を十分考慮し、国連会議の出席者が提出したリストから専門能力と人格的な清廉さをベースに行われた。
4) 暫定行政機構のメンバーを務めるものは、いずれも、同時に緊急ロヤ・ジルガの招集のための特別独立委員会の職にあることはできない。
B. 手続き
1) 暫定行政機構の議長、同人が不在の場合には副議長の1人が会合を招集、主宰し、これらの会合のための議案を提案するものとする。
2) 暫定行政機構は総意により決定に到達するように努めるものとする。決定を行うためには、少なくとも22名のメンバーの出席が必要である。投票が必要になった場合には、本協定に他の定めがない限り、出席メンバーの過半数で、投票により、決定を行うものとする。メンバーの賛否が同じ票数に分かれた場合には、議長が決定票を投じるものとする。
C. 職務
1) 暫定行政機構は日々の国務の運営を委託されるものとし、アフガニスタンの平和、秩序、良き統治のために政令を発布する権利を有するものとする。
2) 暫定行政機構の議長、同人が不在の場合には副議長の1人が暫定行政機構を代表するものとする。
3) 各省庁の行政に責任を有するメンバーは、責任領域内における暫定行政機構の政策の実施に対して責任を持つものとする。
4) 権力の正式な移譲後は、暫定行政機構が国の通貨の印刷と交付、および国際金融機関からの特別引出権について完全な管轄権を有するものとする。暫定行政機構は国連の援助を受けて透明で説明可能な手続きによって国のマネー・サプライを統制するアフガニスタン中央銀行を設立するものとする。
5) 暫定行政機構は、国連の援助を受けて、独立的な公務員委員会を設置し、暫定政権と将来の移行政権に対して、行政部門の重要ポストおよび地方長官やuluswalsに任じる候補者の選抜候補者リストを提供し、彼らの能力と清廉さを保証するものとする。
6) 暫定行政機構は、国連の援助を受けて、独立的な人権委員会を設置するものとする。同委員会の責務には人権問題の監視、人権の侵犯に関する調査、国内人権機関の開発が含まれる。 また、暫定行政機構は国連の援助を受けて、本協定が扱っていないような事項を検討するための他の委員会を設置することができる。
7) 暫定行政機構のメンバーは国際基準にしたがって練られた行動規範を順守するものとする。
8) 暫定行政機構のメンバーが行動規範の規定を順守しない場合は、同人を停職にすることとする。メンバーを停職にする決定は、議長若しくは副議長の提案に基づき暫定政権メンバーの3分の2の多数決によって行うものとする。
9) 暫定政権のメンバーの職務と権限は国連の援助を得て更に練るものとする。
IV. 緊急ロヤ・ジルガの招集のための特別独立委員会
1) 緊急ロヤ・ジルガの招集のための特別独立委員会は暫定政権の設置後1カ月以内に設立するものとする。特別独立委員会は21名のメンバーから構成され、そのうちの1人は憲法または慣習法の専門知識を有する者とする。メンバーはアフガニスタン問題国連会議の出席者、アフガニスタンの専門グループ、市民社会グループの提出する候補者リストから選出される。国連は委員会と充実した事務局の設立と職務の遂行を援助する。
2) 特別独立委員会は、緊急ロヤ・ジルガの手続きと、参加者数について決定する最終権限を有する。特別独立委員会は (i) アフガニスタンに居住する定住者と遊牧民への議席の割当の基準、(ii) イラン、パキスタン、その他の場所に居住しているアフガン人難民と離散しているアフガン人への議席の割当の基準、(iii) アフガニスタン内および離散している市民社会機関とイスラムの学者、知識人、商人等の高名な個人を含める基準、について述べた規則と手続きの草案を作成する。特別独立委員会は、緊急ロヤ・ジルガには相当数の女性とアフガニスタン国民のすべての階層からの代表参加に適当な注意が払われるように保証する。
3) 特別独立委員会は、緊急ロヤ・ジルガの招集の少なくとも10週間前までに、その開会日と場所と開催期間と併せて、緊急ロヤ・ジルガの招集のための規則と手続きを発表し、配布する。
4) 特別独立委員会は、緊急ロヤ・ジルガへの個人の任命のプロセスを監視する手続きを採択、実施し、間接的選挙、選抜のプロセスの透明性、公正性を保証する。任命に関する衝突を防止するために、特別独立委員会は、不平の申し立ての仕組みと紛争の調停規則を定める。
5) 緊急ロヤ・ジルガは移行行政機構の国家主席を選出し、移行行政機構の仕組みと主要人事についての提案を承認する。
V. 最終規定
1) 権力の移譲後直ちに、国内のすべてのムジャヒディン、アフガニスタン軍隊、武装グループは暫定政権の命令、統治下に入り、新しいアフガニスタン国の治安部隊・軍隊の必要にしたがって再編されるものとする。
2) 暫定政権と緊急ロヤ・ジルガは、アフガニスタンが締約国となっている人権に関する国際文書と国際人道法に含まれた基本原則と規定に基づいて行為するものとする。
3) 暫定政権はテロリズム、薬物、組織犯罪への闘いにおいて国際社会と協力するものとする。暫定政権は国際法を尊重し、近隣諸国や他の国際社会と平和で友好的な関係を維持することを約束するものとする。
4) 暫定政権と緊急ロヤ・ジルガの招集のための特別独立委員会は暫定行政機構と緊急ロヤ・ジルガへの女性の参加とすべての民族、宗教共同体の公平な代表参加を保証する。
5) 暫定政権が行うすべての行動は、安全保障理事会の決議1378号(2001年11月14日付け)とアフガニスタンに関する、他の該当する安全保障理事会決議と一致したものとする。
6) 暫定政権のもとで設置される機関に関する手続き規則は国連の援助を得て練るものとする。
本日2001年12月5日付けにて、ボンにおいて英語にて作成された本協定書は、付属文書もこれと一体をなすものであり、単一部数の、真正のテキストとして国連の保管文書として保管するものとする。公式テキストは、ダリ語、パシュトウ語および事務総長の特別代表が指定する他の言語で提供されるものとする。事務総長の特別代表は参加者のそれぞれに対して英語、ダリ語、パシュトウ語の証明済み写しを送付するものとする。
アフガニスタン問題国連会議の参加者を代表して
アメナ・アフザリ氏
S. フサイン・アンワリ氏
ヘダヤト・アミン・アルサラ氏
サィエド・ハメド・ガイラニ氏
ラーマンツラー・モウサ・ガジ氏
アブドル・ハキム技師
ホゥマヨゥン・ジャリール氏
アッバス・カリミ氏
ムスタファ・カジミ氏
アジズラー・ラディン博士
アーマド・ワリ・マソゥド氏
ハフィズラー・アシフ・モーセニ氏
モハマド・イシャク・ナディリ教授
モハマド・ナティキ氏
ユヌス・カヌニ氏
ザルマイ・ラソウル博士
H. ミルワイス・サデク氏
モハマド・ジャリル・シャムス博士
アブドゥル・サッタル・シラト教授
フマユン・タンダル氏
シマ・ワリ氏
アブドゥル・ラヒム・ワールダック将軍
パシャ・カン・ザドラン氏
国連を代表し、証人として署名した者
アフガン問題に関する事務総長特別代表
ラフダール・ブラヒミ氏
付属文書 I
国際治安部隊
1. アフガニスタン問題国連会議の出席者は、アフガニスタンの全土に安全と法と秩序を供給する責任はアフガニスタン国民自身にあることを認識している。この目的のために、彼らは、アフガニスタンに配置されたすべての国連機関やその他の国際・政府・非政府機関を含めて、そのような安全を確保するために力の及ぶ限りのことをすべて行うことを確約する。
2. この目標を念頭に、参加者は、アフガニスタンの新しい治安部隊と軍隊の設立と訓練における新アフガニスタン当局への国際社会の助力を要請する。
3. 新しいアフガニスタンの治安部隊、軍隊が完全に設置され、機能するには若干の時間を要するかも知れないことを意識して、アフガニスタン問題国連会議の出席者は、安全保障理事会に対して、国連に委任された軍のアフガニスタンへの早期展開の承認を考慮するように要請する。この部隊はカブールとその周辺地域の安全の維持を助けるものである。そのような軍隊は、場合によって、他の都市の中心部や他の地域へ漸次、その展開を広げることもあり得る。
4. アフガニスタン問題国連会議の出席者は、国連に委任された部隊が配置されるカブール、その他の都市の中心部または他の地域から、すべての部隊を撤退させることを約束する。そのような軍隊がアフガニスタンのインフラの復旧を援助できれば、望ましいことであろう。
付属文書 II
暫定期間中の国連の役割
1. 国連事務総長特別代表は国連のアフガニスタンにおける事業のすべての面について責任を持つものである。
2. 特別代表は本協定書のあらゆる面の実施を監視し、援助を行う。
3. 国連は自由で公正な状況での緊急ロヤ・ジルガの開催を助けるような政治的に中立的な環境の確立について暫定政権に助言を行うものとする。国連は緊急ロヤ・ジルガの招集や結果に直接影響を及ぼすような機関や行政部局の運営に、特に注意を払うものとする。
4. 国連事務総長特別代表または同人の代理を、暫定行政機構と緊急ロヤ・ジルガの招集のための特別独立委員会の会合に出席するように招待することができる。
5. もし、どのような理由であっても、暫定行政機構、または特別独立委員会が緊急ロヤ・ジルガの招集に関する事項の打ち合わせを積極的に妨害されるか、その様な事項に関する決定に達することができない場合には、国連事務総長特別代表は暫定行政機構、または特別独立委員会で述べられた見解を考慮しながら、行き詰まりの解決、もしくは決定を促進するものとする。
6. 国連は人権の侵犯を調査し、必要な場合は矯正行動を勧告する権利を有するものとする。また、国連は人権の尊重と理解を促進するために、人権教育プログラムの開発と実施にも責任を持つ。
付属文書 III
アフガニスタン問題国連会議の参加者による国連への要請
アフガニスタン問題国連会議の参加者は、
1. 国連と国際社会が、アフガニスタンの国家主権、領土の保全、統一、およびアフガニスタンの国内問題への外国の不干渉を保証するために必要な措置を取るように要請する。
2. 国連、国際社会、特にドナー諸国、多国間機関が、暫定政権と協調してアフガニスタンの復興、修復、再建を援助する約束を再確認し、強化し、実施するように求める。
3. 国連が出来るだけ早く(i) 制憲ロヤ・ジルガによる新憲法の採択後直ちに行われる総選挙に先立って投票者の登録を行うこと、また、(ii) アフガニスタンの人口調査を行うことを要請する。
4. アフガニスタンの独立と国民の尊厳の援護のためにムジャヒディンが演じた英雄的な役割を認め、国連と国際社会が暫定政権と協調して、新しいアフガニスタンの治安部隊と軍隊へのムジャヒディンの組み入れを援助するために必要な措置を取るように求める。
5. 国連と国際社会が殉教者、戦争の犠牲者および傷病軍人の家族その他の被扶養者を援助する基金を創出するように請う。
6. 国連、国際社会、地域機関が、暫定政権と協力して、国際テロリズム、不正な薬物の栽培や取引と闘い、アフガニスタンの農民に対し代替作物の生産のための資金、材料、技術資源を提供するように強く求める。
付属文書 IV
暫定政権の構成
議長: ハミド・カルザイ
副議長:
副議長及び女性問題担当: シマ・サマル博士
副議長及び国防担当: ムハマド・カセム・ハァヒーム
副議長及び計画担当: ハジ・ムハマド・モハケク
副議長及び水利・電力担当: シャケル・カルガル
副議長及び財務担当: ヘダヤト・アミン・アルサラ
メンバー:
外務省: アブドラ・アブドラ博士
内務省: ムハマド・ユヌス・カヌーニ
通商省: セイエド・ムスタファ・カゼミ
鉱工業省: ムハマド・アレム・ラズム
中小企業省: アレフ・ヌールザイ
情報・文化省: ラヒン・マハドム博士
通信省: アブドル・ラヒム
労働・社会省: ミル・ワイス・サデク
巡礼・宗教福祉省: ムハマド・ハニフ・ハニフ・バルキ
殉教・障害者省: アブドラ・ワルダク
教育省: アブドル・ラスル・アミン
高等教育省: シャリフ・ファエズ博士
保健省: ソヘイラ・セディキ博士
公共事業省: アブドル・ハリク・ファザル
地方開発省: アビドル・マリク・アンワル
都市開発省: ハジ・アブドル・カディール
復興省: アミン・ファルハング
運輸省: スルタン・ハミド・スルタン
難民帰還省: エナヤトラ・ナゼリ
農業省: セイエド・フセイン・アンワリ
灌漑省: ハジ・マンガル・フセイン
司法省: アブドル・ラヒム・カリミ
航空運送・観光省: アブドル・ラーマン
国境問題省: アマヌラ・ザドラン