東ティモール建国へ
プレスリリース 01/65-J 2001年09月03日
以下はセルジオ・ビエイラ・デメロ東ティモール担当国連特別代表およびUNTAET(国連東ティモール暫定行政機構)の長によるメッセージである。
太平洋上のある島の半分では、真に注目に値することが起こりつつある。東ティモールは建国直前の段階にあり、今千年紀最初の新国家の誕生が近づいている。8月30日に行われる選挙により、東ティモールの歴史上初の民選機関として制憲議会が創設される。これは同国の長く、しばしば痛ましい自決のプロセスにおける決定的な瞬間であり、このプロセスは2002年の前半、独立をもって完了する可能性が高い。
1999年の東ティモールにおける独立を圧倒的に支持する投票に続いて発生した荒々しい暴力は、殺戮、虐待および大量の避難民だけでなく、恐るべき規模の物理的破壊をももたらした。カルタゴと運命をともにするかのごとく、ほとんどあらゆる建物は焼かれるか、略奪されるか、完全に打ち壊され、農業は衰退し、あらゆる記録は破壊された。このような真空状態の中、国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)は、ティモールの人々と協力し、その国を再建(より正確に言えば建設)する任務を担うことになった。
まさにゼロからスタートした国連とティモールの人々は、数十年間も遠ざかっていた平和と安全を確立し、代表的で透明かつ効率的な行政に必要な制度を開発し、その管理を行う人々を養成すべく、ともに努力した。確かに、このプロセスに欠陥がなかったわけではないが、その多くは、こうした試みの経験がなかったことに起因するものであった。どのように国家を建設するかを示すマニュアルも存在しなかった。
過去2年間、私たちは自らの国々で数世代を要した開発の諸段階を目の当たりにしてきた。行政権限はすでに1年以上にわたり、ティモール人が主体の内閣の手にあるが、その決定は最近解散したティモール国民協議会という萌芽期の立法府によって慎重に審査され、時には否決された。新たな公務員制度とともに、金融、法律および司法制度も立ち上がっているが、司法機関は現在、1999年に民兵が行った残虐行為に関連する主要な事件を審理している。診療所と学校も再開された。農作業も暴動以前のレベルに回復し、経済は活力を取り戻した。最近になってオーストラリアとの間で締結されたティモール海取決めは、数十年間にわたり、多額の石油収入をもたらす可能性を秘めている。
対外関係では、多くの外国政府が首都のディリに代表事務所を設置している一方、東ティモールは最近のハノイにおけるASEAN閣僚級会合への代表団派遣を招請された。インドネシアとの関係は、両国が歴史と近接性によって密接に結びついていることから、東ティモールにとって明らかに、最も重要な対外関係となろう。
今日では、民兵の活動は終息しているほか、国内全体の犯罪も過去最低となり、ほとんどの先進国と比べて一握りのレベルにまで低下している。さらに、国連の平和維持要員と文民警察はともに、十分な訓練を受けたティモールの職業軍人によってますます多くの援助を受けており、あとはこれに引継ぎを行うのみとなっている。主として元FALINTIL解放軍の兵士から構成される東ティモール国防軍からは初の士官が生まれたが、その多くは選挙期間中、国連軍とともに任務につく予定である。東ティモール警察は900人を超える警察官(その3分の1近くは女性)を養成しており、その姿は国内全土で見られるようになっている。
こうした過去に例のない安全と個人的福祉の雰囲気は、18万5,000人近くの難民を東ティモールに帰還させる上で重要な要素となっており、その大多数は大きな歓迎を受けている。残念なことに、西ティモールの難民キャンプには恐らく8万人がまだ残っていると思われるが、私は平和的な選挙(今のところこれが実現する可能性は高い)の後、これら難民のほとんどが、自らの将来は東ティモールにあることを確信すると期待している。
選挙の後、特に投票結果に基づく全国民的政府の樹立を通じ、UNTAETから東ティモール指導者へと、さらに顕著な権限移転が行われる予定である。前もって東ティモール政府の独立を企画するというこの意図は、ある国に自治の十分な準備をさせるためには、その国に自らを真に統治する機会を与えなければならないという基本的指導哲学を前提としている。また、これにより、国際的構成要素の多い行政機構から、ほとんど東ティモール人のみからなる行政機構への移行も緩やかなものとなろう。独立後の新政府が長期にわたって政治的・経済的持続可能性を確保するためには、そのベルトを固く締めなければならないであろう。
しかし、間近に迫った民主的な政治体制の移行を実効的な行政の確立とみなすことは、あまりにも近視眼的だといえよう。UNTAETが安全保障理事会によって定められた任務を今後数ヵ月で完了することはなかろう。過去の過ちから、国連と国際社会が最後まで努力しなければ、過去2年間の進歩が損なわれかねないという合意が出来上がりつつある。現在は、独立後も国連が東ティモールの現場に残り、新政府が迅速かつ常識的に、また、経済的かつ慎重に、政府の地歩を築く援助を行うための計画が策定されているところである。そうしなければ、東ティモールが手に入れる独立は、経済的依存によって妨げられ、その国家機関には完全な発達も十分な人員も望めなくなり、過去の大きな弊害であった不正管理を招きやすくなるであろう。
国際社会にとって、東ティモールでの国連の活動は、その歴史上のどんな任務よりもあからさまに、かつ、饒舌に、国連憲章の精神を生き生きと映し出すものと言える。私たちはすべて、この先の道のりを常に心に留めつつも、これまでの集団的な成果を誇りとしてしかるべきである。東ティモールの人々にとって、このかつてない国際的注目度は、当たり前のものとして捉えるべきではないものの、過去の暗黒の日々にもこの目標に向けて不断の努力を行ってきたその不屈の精神と決意に対する敬意を表するものである。自らの将来を決定し、管理する権利という、かつてはきわめて達成困難であったこの目標は、もうすぐそこに見えているのである。