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国連薬物特別総会

1998年06月10日

 国連薬物特別総会が1998年6月8日-10日、ニューヨークで開催された。世界の指導者を集めたこの特別総会で加盟国は、不正薬物の需要、向精神薬の生産および前駆物質の転用を削減するための集中的コミットメントを採択し、2008年までに不正薬物の需給を大幅に削減することを約束した。

 特別総会は「政治宣言」「薬物需要削減の指針に関する宣言」、および、「世界薬物問題対策に関する国際協力強化措置」に関する決議を無投票で採択したが、これらはいずれも、薬物乱用から生じる個人的・集団的問題への取組みをめざす史上初の国際的合意である。

 コフィー・アナン事務総長は特別総会の閉幕に寄せたメッセージにおいて、特別総会が、地球的薬物統制の新たな1ページを開くものだと述べた。また「私達は、新たな『麻薬戦争』を始めようとしているわけではありません。実際、これまでもそのようなものは存在しませんでした。むしろ国際社会は、死に至る病に立ち向かう医者のような存在と言えましょう。薬物は人々を殺しているのですから、永遠の責任は治療法を見つけることにあります。政治宣言と行動計画の選択により、薬物のない世界はまた一歩近づいたと言えます」と述べた。
 またウドベンコ特別総会議長(ウクライナ)は閉会の辞において、特別総会がしっかりとした戦略と、特定期限までに達成されるべき措置および目標のパッケージを採択したことを指摘した。課題を設定する3つの政治文書は、全会一致の支持を得たが、それについて「今次特別総会が真に画期的な出来事として歴史に残るためには、これらの計画全てを実際の行動に移す必要がある。一致団結すれば、国際社会は、薬物問題対策に新たな道を切り開き、国連が現代世界の最も大きな脅威の一つを解決できるという強力なメッセージを送ることができよう」と訴えた。

 需給削減に加え、「政治宣言」は加盟国に対し、数多くの薬物問題対策を講ずるよう求めている。加盟国は2003年までに次のことを要請されている。

  • 薬物削減戦略およびプログラムの新設あるいは拡充を行う。
  • アンフェタミン系興奮剤(ATS)とその前駆物質の不正製造、取引きおよび乱用と闘う国内立法およびプログラムを確立あるいは強化する。
  • 国内のマネー・ローンダリング対策立法およびプログラムを採択する。
  • 薬物関連犯罪に関与する犯罪組織を取り締まるため、司法および法律執行当局の多国間協力、地域的協力および二国間協力を強化する。

 また2008年までに、加盟国は以下の履行を誓約した

  • 向精神薬の製造、マーケティングおよび取引き、ならびに、前駆物質の転用を根絶あるいは大幅に削減する。
  • 需要削減について意義のある測定可能な成果を達成する。
  • コカ、大麻およびケシの不正栽培削減について、意義のある測定可能な成果を達成する。

 「需要削減指針に関する宣言」には、各国政府が目標期日までに薬物需要削減プログラムを確立するうえでの基準が含まれている。また各国政府が効果的な予防、治療および社会復帰プログラムを設置する上で指針となる基準も含まれており、そうしたプログラムに対する十分な資源の提供が呼びかけられている。

 5部構成の決議により、総会は加盟国に対し、「世界薬物問題対策に関する国際協力を強化する措置」を講じるよう促した。この措置には、ATSとその前駆物質に対処し、不正薬物作物の根絶と代替的開発に関する国際協力を促進する行動計画、前駆物質の取締り、司法協力の促進およびマネー・ローンダリング対策に関するものがあげられる。
 同決議により加盟国は、コミットメントに見合った実際的な行動をとり、実質的で測定可能な成果を確保するのに必要な資源を投入する決意も示した。そして国際社会、ならびにUNDCPをはじめとする関連国連機関が、薬物生産国に対し、代替的開発のための資金援助と技術援助を提供するよう求めた。さらに国連システム構成機関と関連金融機関は、不正作物栽培の影響を受ける地域および人々を対象とした農村開発を支援すべきであると述べ、国際金融機関と地域開発銀行に対しては、代替的開発プログラムへの資金援助提供を奨励すべきである、と訴えている。

 なお特別総会は、国連システムの機関および計画の長で構成される行政調整委員会(ACC)から特別総会に対する共同声明に留意。事務総長が覚書(文書A/S-20/3)で伝達したこの声明において、各機関の長は、持続可能な開発を促進する国連システムのプログラムの要素に、代替的開発措置を含めることを奨励した。ACCはまた、国連薬物統制計画と密接な協力を行っていくという誓約を再確認した。
 特別総会はさらに、国際薬物統制に関する国連機構の見直しおよび強化のために開催された専門家グループの報告(文書A/S-20/2)にも留意した。この13名からなる専門家グループは、制度的変革と資金調達方法の改善により、UNDCPの実効性を強化すべきことを強調した。専門家グループはまた、国際薬物統制問題の主たる政策立案機関である麻薬委員会の活動と機能の評価も行った。事務総長が召集するこの専門家グループは、6月にウィーン、11月にニューヨークで会合を開いた上で、1999年に最終報告書を提出することになっている。

 

 今次特別総会の目的は、国際的な薬物問題の現状を評価するとともに、バランスの取れた需給削減アプローチに基づき、21世紀に向けて時代を先取りする戦略を打ち立てることにあった。そして、不正作物根絶と代替的開発、アンフェタミン系興奮剤、前駆化学品、マネー・ローンダリング、および、司法協力という重要課題に焦点を当てることにより、世界薬物問題に対するアプローチを行った。

 本会議では、世界薬物問題に関する高級協議が行われた。これと同時にアドホック全体委員会が開催され、ここで交渉された最終案文は総会に提出されて採択された。一般討議には、国家元首23名、首相8名、副大統領1名およびオブザーバー7名を含む計158名が参加した。
 アドホック委員会は、特別総会の最終文書の承認に加え、国際麻薬統制条約および薬物統制体制の加盟および実施状況の再検討を行った。同委員会はまた、国連の計画および機関、ならびに、非政府機関の代表からも意見聴取を行った。

 特別総会と並行して開催された行事としては、アルラッキ氏が議長を務めた薬物とマネー・ローンダリングに関するパネル討議、ならびに、国連児童基金(UNICEF)、国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連人口基金(UNFPA)およびUNDCPの共催による、子ども、若者および薬物乱用に関する円卓会議などがあげられる。

 本特別総会開催は、1996年の経済社会理事会決議1996/17によって提案されたものである。この決議で提案されたテーマは、薬物と向精神薬の不法生産、販売、需要、取引きおよび流通を防止するための国際協力であった。第51回国連総会は、1998年6月に3日間にわたって特別総会を開催することを決定(決議51/64)するとともに、特別総会準備に関し、麻薬委員会を中心的な政府間フォーラムとすべきであるとした。このプロセスは、3月16日から21日にウィーンで開催された麻薬委員会の第2回準備会期で実施された。その結果として作成された最終文書案は特別総会に提出され、その最終的承認を仰ぐことになったのである。

 特別総会の一般討議と採択された文書の要旨は以下のとおり。

 一般討議

 開会に当たり、コフィー・アナン事務総長はすべての国家に対し、薬物のない世界に向けた課題に立ち向かう決断を下すよう求めるとともに、若者たちは、指導者が一致団結して、不正薬物の生産、取引きおよび乱用に対策を講ずることを必要としていると述べた。事務総長はまた、向精神薬の乱用および生産の増大傾向を逆転させなければならず、不正な合成薬物とその前駆物質の台頭には特に目を光らせなければならないと指摘した。

 薬物取引き対策にはバランスの取れた戦略が必要だとする向きも多かった。こうした意見によれば、地球的な薬物対策は、共同責任、包括性および多国間主義に基づくべきであり、国際社会は、薬物市場には需要と供給の両方があり、これらすべての側面に対処しなければ実質的な解決策は見つからないことを認めるべきである。また需要問題を社会的行動や価値観だけでなく、公衆衛生上の問題として捉え、医療、教育、訓練および文化プログラムによって対処しなければならない。なおコロンビア大統領は、犯罪収益で取得した財産の没収によって得られた資金の一部を利用して、薬物対策のための世界基金を設立するよう求めた。

 薬物取引き対策には国際協力が必要だとする意見も大勢を占めた。このような薬物需要の充足において最も大きな人的、社会的および制度的負担を被るのは中継国であり、薬物取引きとの闘いで最初に命を落とすのも、こうした国の人々である。多くの薬物中継国の国境は脆弱であり、完全武装した密売人を通さないようにするためには、これらの国々に資金および技術援助を提供する必要がある。代替的開発プログラムには、中継国の小規模農家、運び屋および漁民の状況に対処する要素を組み込むべきである。これらの人々は貧しく、代替的生計手段を持たないがために、薬物の不正取引きに引き込まれているのである。

 国家主権を侵害する一方的な措置の使用を非難する向きも見られた。この意見によれば、いかなる国も他国に判断を下すべきではなく、いかなる国も自国の法律執行のために他国の法律に違反する権利を持つなどと考えるべきではない。また各国が講ずるいかなる措置も、共通の責任共有に基づくべきであり、このためには、国連憲章と国際法に従った地球的でバランスの取れたアプローチが必要なのである。

 さらに一定の国による薬物対策の評価により、各国が貿易上の特権を失ったり、その他の経済的・政治的制裁を受けることになる、一方的な「認定」政策を非難する意見も出された。こうした見方をする者は、国際的な取締りと評価は国際麻薬統制委員会(INCB)が一手に引き受けていることを理由として、認定手続の使用が、協力、多国間主義、および、各国の主権と独立の尊重という概念に反する、と強調した。

 一部の発言者は総会に対し、武器と薬物の連関が暴力と暴力的犯罪の激化を生んでおり、これによって国際の平和と安全は損なわれ続けるだろうと警告した。この主張によれば、小国が不正な薬物作物の生産、栽培および輸出の取締りを義務づけられているのだから、武器生産国もこれと同等の武器取締りを行わなければならない。一部の政治勢力が、薬物取引きで得た資金で武器を購入し、政府の不安定化工作を行っていることも指摘された。また国際的な措置により、薬物販売収益のマネー・ローンダリングに関与した金融機関の営業停止と処罰を行うべきだとする意見も見られた。

 

 さらにマネー・ローンダリングが、金融システムの安全を脅かすことを指摘する意見も多 かった。これによれば、マネー・ローンダリングは、国際貿易システムをも脅かしており、国際的麻薬カルテルに莫大な資金をもたらしている。また1988年の「麻薬および向精神薬の不正取引きの防止に関する国連条約」におけるマネー・ローンダリング防止規定を実施する必要があり、国連薬物統制・犯罪防止室は、訓練、助言および技術援助を提供すべきである。

 地球的な薬物問題が、最近の世界経済の変革によってさらに悪化しているとする発言も多くみられた。この意見によれば、グローバリゼーション、国際市場の自由化および国境の消滅は、薬物取引きの繁栄に手を貸している。衛星通信その他の技術進歩により、取引き組織網にとって、世界経済システムに適応し、これをさらに利用するための、新しい効率的な作業ツールが生まれている。

 開発途上国の中には、薬物対策に費やされる数十億ドルの一部を貧困緩和、人間開発、教育および医療に割り当てない限り、世界の薬物問題は継続するだろうと指摘する向きもあった。この見方によれば、薬物問題対策の前提条件はあまりに膨大であり、貧困の帰結との戦いを強いられている多くの開発途上国の能力を越えている。市場アクセス、安定した作物価格および公正な取引きが確保されれば、薬物の生産、取引きおよび消費に関与する数百万人の人々の大半は、代替的なライフスタイルを選択することになろう。

 薬物の消費が子ども、女性および若者に拡大しているという発言もあった。これによれば、薬物問題は開発の精神的側面に対する取組みの失敗に起因しており、その解決策は、大々的な政府プログラムではなく、分散型のコミュニティー活動にある。薬物に関連する中毒、疾病 および暴力を緩和するためには、倫理的価値の再生と家族構造の活性化が有用と見られる。スポーツ、教育、および、自尊心と帰属意識の促進は、若者が友人からの薬物使用の誘惑を拒絶する助けとなりうる。

 薬物中毒から回復しつつある43歳のHIV感染者は、アドホック委員会に対し、薬物のない世界の希求は非現実的であり、薬物使用の犯罪化は非生産的であると述べた。この意見によれば、犯罪化が価格の高騰をもたらしたため、薬物常用者は、購入資金を稼ぐために、日和見的犯罪に走るようになった。全世界で過去数十年間の規範となってきた抑圧的な薬物政策の類型を考え直すときが来ている。薬物乱用に対処する上で最も有用な戦略の中には、薬物常用者自身が策定したものもある。

 「プロジェクト・アウトリーチ」の代表は、国内的解決策に向けて目や耳や心臓の役割を果たし、コミュニティー・プログラムによって需要削減活動を主導している非政府機関(NGO)が、麻薬戦争において疎外されていることを遺憾とした上で、各国政府も、疑う余地のない真剣な態度で薬物問題に専心するNGOと直接接触できるよう、その政策を転換すべきだと述べた。

採択された決議

 「政治宣言」により、加盟国は2008年までに、需要削減における有意義で測定可能な成果を達成することを誓約した。加盟国はまた、公衆衛生、社会福祉および法律執行当局との協力による需要削減戦略およびプログラムの新規策定あるいは拡充について、2003年を目標期日とすることを約束した。さらに各国は、教育、情報活動およびその他の予防措置を通じて若者と協力することにより、需要削減に注意を払うことを決定した。

 加盟国は、2003年までに国内の立法およびプログラムを策定あるいは強化し、本特別総会で採択された、ATSとその前駆物質の不正製造、取引きおよび乱用の防止に関する行動計画を実行することも求めた。加盟国はさらに、合成薬物を含めた向精神薬の不正製造、マーケティングおよび取引き、ならびに、前駆物質の転用を各国が根絶あるいは大幅削減する上で、2008年を目標期日とすることを決定した。

 これに加えて宣言は、1988年条約の関連規定に従って国内のマネー・ローンダリング対策法およびプログラムをまだ採択していない国々に対し、2003年までにこれを行うよう勧告した。また各国は、2008年までに、コカ、大麻およびケシの不正栽培を根絶あるいは大幅削減するために、UNDCPとの密接な協力の下で戦略開発を行うことを誓約した。加盟国に対しては、薬物犯罪および関連犯罪に関与する犯罪組織に対処するため、2003年までに、司法当局および法律執行当局間における多国間、地域、サブ地域および二国間協力の見直しおよび強化を行うことが奨励された。
 3つの薬物統制国際条約への加入またその完全実施を行っていない国については、これを行うことが求められた。各国はまた、国連とその薬物統制関連機関、特に麻薬委員会に対する支持を再確認し、これら機関の機能および統治の強化に対する決意を表明した。

 「薬物需要削減の指針に関する宣言」は、課題、コミットメント、指針および行動要請の4節から構成される。宣言には、国内の薬物統制戦略を検討する政府向けの追加的参考資料が付属している。

 この宣言により加盟国は、公衆衛生問題の緩和、個人の健康と福祉の向上、社会的・経済的統合の促進、家族制度の補強およびコミュニティーの安全向上に資すると見られる需要削減プログラムへの投資に対する持続的コミットメントを誓約した。供給抑制と需要削減のための地域間および国際協力促進についても合意が見られた。加盟国は、1988年条約に規定する需要削減措置の採択を誓約した。
 宣言によれば、需要削減プログラムは、薬物の使用および乱用の性質および規模、ならびに、国民の間での薬物関連問題に関する定期的評価に基づくべきである。また需要削減努力は、より幅広い社会福祉・健康増進政策、および、予防教育プログラムに統合すべきである。かかる削減プログラムはまた、国民一般のニーズと、若者をはじめとする特定集団のニーズに取り組むべきである。さらにジェンダー、文化および教育面での差異を勘案しながら、プログラムを最も危険性の高い集団にアクセス可能なものとし、加盟国は、刑事司法制度内で、薬物乱用者を教育、治療および社会復帰サービスによって援助する能力を養成すべきである。

 

 「世界薬物問題に対処する国際協力を拡充するための措置」は、ATSとその前駆物質の不正製造、取引きおよび乱用防止に関する行動計画(A部)、前駆物質取締り措置(B部)、司法協力促進措置(C部)、マネー・ローンダリング対策(D部)、および、不正薬物作物の根絶と代替開発に係る国際協力に関する行動計画(E部)で構成されている。

 ATSに関する行動計画(A部)は、ATS問題に対する認識向上、需要削減、正確な情報提供、供給抑制、および、ATSとその前駆物質の取締りシステム強化の5節で構成される。
 行動計画は、ATSを麻薬委員会の定期的議題とすることを含め、国際社会がこの問題の優先度を高めることを確保する、数多くの行動を求めている。ATS問題を認識させるためには、各国による努力に加え、民間セクターおよびNGOの動員を図るべきである。各国はまた、ATS乱用の社会、経済、保健および文化面に関連する数多くの措置を要請されている。
 行動計画は、教育および訓練目的に、インターネット等の情報技術を積極的に活用することを主張している。行動計画によれば、各国は、科学技術を用いて、ATS乱用の健康、社会および経済への悪影響に関する情報を広めるべきである。主たる供給抑制戦略は、取引きに焦点を絞ること、不正製造を止めさせること、および、試験機器と前駆物質の転用を防止することにある。そして合法的国際取引きから不正経路へのATSの転用を防止するためには、業界の密接な協力が必要であるとされた。

 前駆物質の取締り措置(B部)は、「麻薬および向精神薬の不正製造に用いられる前駆物質の不正製造、輸出入、取引きおよび流通を防止する措置」、「前駆物質取締りに関する国際協力の普遍化をめざして」、ならびに、「代替化学品」という3節から構成される。
 決議によれば、各国は、前駆物質移動の監視を可能にする立法的基盤を確立すべきである。各国は、国内の担当当局とその特定的役割を明らかにし、この情報を他国と共有する必要がある。国際・地域機関および民間セクターと協力して、各国はまた、前駆物質取引き監視のためのメカニズムおよび手続を改善すべきである。また不正薬物製造に必要な前駆物質の密売人に対する入手可能性を制限し、転用の試みを明るみにできるようにするためには、すべての国家による行動の統一化が必要である。さらに化学業界と協力して、特別監視リストに掲載される物質の合法的経路から不正取引きへの転用を防止すべく、監視措置を適用すべきである。

 司法協力促進措置(C部)は、各国に対し、犯罪者引渡し、相互司法援助、裁判移管、その他の協力形態および訓練、取引き追跡捜査、海路による密輸、ならびに、補完的措置の7つの分野について、行動をとることを勧告している。
 各国は、国内立法による犯罪者引渡し手続の簡素化と、自国民の重大薬物犯引渡しの検討を要請されている。決議の勧告によれば、各国は、相互司法援助の要請を作成および実行する当局を指定すべきである。各国はまた、類似の法制度を備えた他国と協定を結ぶことにより、刑事裁判の移管あるいは受入れ、および、法律執行職員交流プログラムの開発あるいは拡充を行うよう要請されている。さらに決議は各国に対し、その立法、手続および慣行により、国内・国際レベルの双方で、取引き追跡捜査の実施を可能にするよう勧告している。

 マネー・ローンダリング対策(D部)において、総会は全加盟国に対し、1988年条約およびその他の関連国際取極に含まれるマネー・ローンダリング対策規定の実施を促した。この文脈において各国は、マネー・ローンダリング罪の防止、捜査および起訴を規定するために、マネー・ローンダリング行為を犯罪化する立法枠組みの策定を促されている。各国に対しては、犯罪者に国内・国際金融システムへのアクセスを拒絶する金融・規制体制の確立も促されている。

 不正薬物作物の根絶および代替的開発に係る国際協力に関する行動計画(E部)は、「大量の不正栽培に対処するバランスの取れたアプローチの必要性」、「代替開発のための国際協力強化」、「代替的開発へのアプローチの改善および革新」、「監視、評価および情報共有の拡充」、「不正作物取締りに関する法律執行の必要性」ならびに「フォローアップ」の6節から構成される。
 行動計画は、薬物作物の不正栽培が行われている国に対し、測定可能な目標を含めた、不正作物の削減・根絶に関する国内戦略の開発を助言している。また各国が、代替開発のための国内計画を実施し、制度の整備と、これに適した法的、経済的、社会的枠組みの創設を行うべきである、とする。また各国が、ある地域あるいは国から別の場所への不正栽培の移動を回避するため、協力を行い、不正薬物作物栽培の問題を抱える国については、代替開発プログラムの法律執行措置による補完を確保するよう要請している。
 そして国際社会と、UNDCPをはじめとする国連システムは、代替開発のための資金および技術援助を提供すべきであるとする。国連システムと金融機関は、不正作物栽培の影響を受ける地域および住民のための農村開発支援においても、協力を行うべきである、とした。

特別総会役員

 特別総会議長は、第52回総会のヘンナディー・ウドベンコ議長(ウクライナ)が務めた。副議長は、中国、コンゴ民主共和国、エジプト、エチオピア、フランス、ギリシア、ギニア、アイルランド、ヨルダン、キルギスタン、メキシコ、モンゴル、パナマ、カタール、ロシア連邦、セントビンセント・グレナディーン、南アフリカ、トーゴ、英国、米国およびベトナムの代表が務めた。
 アドホック全体委員会の議長には、アルバロ・デ・メンドンカ・エ・モウラ氏(ポルトガル)が選出された。副議長にはアルベルト・スカバレッリ(ウルグアイ)、N.J.ンサカト=ディセコ(南アフリカ)、ダニエラ・ロズゴノーバ(スロバキア)およびN.K.シン(インド)の4氏が選出された。シン氏は報告官を兼任した。