人権宣言50周年
1998年12月10日
要旨
1998年は人権にとって重要な年である。この1年を通じ、国際社会は、あらゆる人間の権利と自由がはじめて宣言されてから50周年を記念する行事を行う。1948年、国連総会は、「世界人権宣言」(UDHR)を採択したが、これにより、人権の推進と擁護が強力に主張されることになった。この50周年記念行事は、過去50年間の成果に学び、21世紀のビジョンを描くことで、人権に一層の弾みを与えるまたとない機会といえる。
1998年はまた、世界人権会議によって世界人権宣言50周年と関連づけられ、 「ウィーン宣言および行動計画(VDPA)」の5ヶ年実施レビューの年としても極めて重要である。
したがって「1998人権年」イベントは、次のような機会を提供すべきである。
- 全世界における人権の推進および擁護を強化する。
- 世界人権宣言以降の人権分野、および、VDPA実施における進捗状況を審査・評価する。
- 現在および今後の課題に対処するため、国連人権プログラムをさらに発展させる方法と手段を検討する。
総会決議51/88、ならびに、人権委員会決議1996/42および1997/35は、国際社会に対し、人権推進・擁護を目的とする追加的努力を通じて、世界人権宣言50周年を記念するよう求めている。人権の普遍性、不可分性および相互依存性は、相互補強的関係にあり、世界人権会議が強調したとおり、これらを国際社会全体の指導原理とすべきである。
「1998人権年」は、1997年12月10日に始まり、世界人権宣言採択50周年に当たる1998年12月10日に終了する。この1年間の活動は、次のような性格を有するべきである。
- 平和、民主主義および開発とともに、21世紀における調和の取れた国際関係と全ての国のコミュニティー強化を指導する原理として、あらゆる人権の役割を進展させる上で重要な役割を果たす。
- 人権の尊重およびその侵害防止を強化するとともに、適切な慣行を促進する。
- 草の根レベルをはじめとして、あらゆる場所の人々に手を差し伸べることを重視する。
- 国連内外において、人権のためのパートナーシップを強化する。
対象となる者すべて、特に、一般市民およびメディアの注意を喚起し、プログラムの目標を達成できるようにするため、「1998人権年」活動を集中的に行う時期をいくつか設ける必要がある。国連内部で、このような期間は、人権委員会(3月中旬)およびその小委員会(8月前半)の開催時期、ならびに、特に総会が人権を中心とした話合いを行う時期(12月10日まで)によって、自然と決まってくる。総会はまた、1998年12月10日、人権宣言50周年を記念する全体会合も開催する予定である。経済社会理事会の調整協議では、国連機関・計画によるVDPA実施への貢献のレビューが議題とされる予定である。
50周年記念を目的とした運動は、現在世界的な盛り上がりを見せはじめている。人権高等弁務官と人権センターは、国際的な努力を支援し、国連システム全体の協力を組織し、コミュニケーション経路を確立し、比較優位とノウハウの共有を促進し、助言を提供し、コンセプトとアイデアを提案することで、準備プロセスへの貢献を行っている。
各国政府、国連の機関・計画、国際・地域機関、国内機関、学術機関および非政府機関、ならびに、メディアおよび民間セクターを含むその他の市民社会の密接なパートナーシップは、世界中で記念行事プロジェクトを発案、開発および実施する上で不可欠である。「1998人権年」準備プロセスは、地球的な運動の触媒役となり、人権が、期待と希望だけでなく、全世界のあらゆる人々の本質的関心および合法的要求を反映し、全ての人間の活動において貫徹すべきものであることを証明すべきである。
人類社会の全ての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎であるので、
人権の無視および軽侮が、人類の良心を踏みにじった野蛮行為をもたらし、言論及び信念の自由が受けられ、恐怖及び欠乏のない世界の到来が、一般の人々の最高の願望として宣言されたので、
人間が専制および圧迫とに対する最後の手段として反逆に訴えることがないようにするためには、法の支配によって人権を保護することが肝要であるので、
諸国間の友好関係の発展を促進することが、肝要であるので、
国際連合の諸国民は、国際連合憲章において、基本的人権、人間の尊厳及び価値並びに男女の同権についての信念を再確認し、かつ、一層大きな自由のうちで社会的進歩と生活水準の向上とを促進することを決意したので、
加盟国は、国際連合と協力して、人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守の促進を達成することを誓約したので、
これらの権利および自由に対する共通の理解は、この誓約を完全にするためにもっとも重要であるので、
よって、ここに、国際連合総会は、
社会の各個人及び各機関が、この世界人権宣言を常に念頭に置きながら、加盟国自身の人民の間にも、また、加盟国の管轄下にある地域の人民の間にもこれらの権利と自由との尊重を指導及び教育によって促進すること並びにそれらの普遍的かつ効果的な承認と遵守とを国内的および国際的な漸進的措置によって確保することに努力するように、すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準として、この世界人権宣言を公布する。
第1条
すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利について平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。
第2条
すべての人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる。
さらに、個人の属する国又は地域が独立国であると、信託統治地域であると、非自治地域であると、又は他のなんらかの主権制限の下にあるとを問わず、その国又は地域の政治上、管轄上又は国際上の地位に基づくいかなる差別もしてはならない。
第3条
すべての人は、生命、自由及び身体の安全に対する権利を有する。
第4条
何人も、奴隷にされ、又は苦役に服することはない。奴隷制度及び奴隷売買は、いかなる形においても禁止する。
第5条
何人も拷問又は残虐な、非人道的な若しくは屈辱的な取扱い若しくは刑罰を受けることはない。
第6条
すべての人は、いかなる場所においても、法律の下において、人として認められる権利を有する。
第7条
すべての人は、法律の下において平等であり、また、いかなる差別もなしに法の平等な保護を受ける権利を有する。すべての人は、この宣言に違反するいかなる差別に対しても、また、そのような差別をそそのかすいかなる行為に対しても、平等な保護を受ける権利を有する。
第8条
すべての人は、憲法又は法律によって与えられた基本的権利を侵害する行為に対し、権限を有する国内裁判所による効果的な救済を受ける権利を有する。
第9条
何人も、ほしいままに逮捕、拘禁、又は追放されることはない。
第10条
すべての人は、自己の権利及び義務並びに自己に対する刑事責任が決定されるに当って、独立の公平な裁判所による公正な公開の審理を受けることについて完全に平等の権利を有する。
第11条
- 犯罪の訴追を受けたものは、すべて、自己の弁護に必要なすべての保障を与えられた公開の裁判において法律に従って有罪の立証があるまでは、無罪と推定される権利を有する。
- 何人も、実行の時に国内法または国際法により犯罪を構成しなかった作為または不作為のために有罪とされることはない。また、犯罪が行われた時に適用される刑罰より重い刑罰を課せられない。
第12条
何人も、自己の私事、家族、家庭若しくは通信に対して、ほしいままに干渉され、又は名誉及び信用に対して攻撃を受けることはない。人はすべて、このような干渉又は攻撃に対して法の保護を受ける権利を有する。
第13条
- すべての人は、各国の境界内において自由に移転及び居住する権利を有する。
- すべての人は、自国その他いずれの国をも立ち去り、及び自国に帰る権利を有する。
第14条
- すべての人は、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利を有する。
- この権利は、もっぱら非政治犯罪又は国際連合の目的および原則に反する行為を原因とする訴追の場合には、援用することはできない。
第15条
- すべての人は、国籍をもつ権利を有する。
- 何人も、ほしいままに国籍を奪われ、又はその国籍を変更する権利を否認されることはない。
第16条
- 成年の男女は、人種、国籍又は宗教によるいかなる制限をも受けることなく、婚姻し、かつ家庭をつくる権利を有する。成年の男女は、婚姻中およびその解消に際し、婚姻に関し平等の権利を有する。
- 婚姻は、両当事者の自由かつ完全な合意によってのみ成立する。
- 家族は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有する。
第17条
- すべての人は、単独で又は他の者と共同して財産を所有する権利を有する。
- 何人も、ほしいままに自己の財産を奪われることはない
第18条
すべての人は、思想、良心及び宗教の自由に対する権利を有する。この権利は、宗教又は信念を変更する自由並びに単独で又は他の者と共同して、公的に又は私的に、布教、行事、礼拝及び儀式によってその宗教又は信念を表明する自由を含む。
第19条
すべての人は、意見および表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく意見を持つ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を超えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。
第20条
- すべての人は、平和的な集会および結社の自由に対する権利を有する。
- 何人も、結社に属することを強制されない。
第21条
- すべての人は、直接に又は自由に選出された代表者を通じて、自国の政治に参与する権利を有する。
- すべての人は、自国においてひとしく公務につく権利を有する。
- 人民の意思は、統治の権力の基礎とならなければならない。この意思は、定期のかつ真正な 選挙によって表明されなければならない。この選挙は、平等の普通選挙によるものでなければならず、また、秘密投票又はこれと同等の自由が保証される投票手続によって行なわなければならない。
第22条
すべての人は、社会の一員として、社会保障を受ける権利を有し、かつ、国家的及び国際的協力により、また、各国の組織及び資源に応じて、自己の尊厳と自己の人格の自由な発展とに欠くことのできない経済的、社会的及び文化的権利を実現する権利を有する。
第23条
- すべての人は、勤労し、職業を自由に選択し、公正かつ有利な勤労条件を確保し、及び失業に対する保護を受ける権利を有する。
- すべての人は、いかなる差別をも受けることなく、同等の勤労に対し、同等の報酬を受ける権利を有する。
- 勤労する者は、すべて、自己及び家族に対して人間の尊厳にふさわしい生活を保障する公正かつ、有利な報酬を受け、かつ、必要な場合には、他の社会的保護手段によって補充を受けることができる。
- すべての人は、自己の利益を保護するために労働組合を組織し、及びこれに参加する権利を有する。
第24条
すべての人は、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇を含む休息及び余暇をもつ権利を有する。
第25条
- すべての人は、衣食住、医療及び必要な社会的施設により、自己及び家族の健康及び福祉に 十分な生活水準を保持する権利並びに失業、疾病、心身障害、配偶者の死亡、老齢その他不可 抗力による生活不能の場合には保障を受ける権利を有する。
- 母と子は、特別の保護及び援助を受ける権利を有する。すべての児童は、嫡出であると否とを問わず、同じ社会的保護を受ける。
第26条
- すべての人は、教育を受ける権利を有する。教育は、少なくとも初等の及び基礎的の段階においては、無償でなければならない。初等教育は、義務的でなければならない。技術教育及び職業教育は、一般に利用できるものでなければならず、また、高等教育は、能力に応じ、すべての者にひとしく開放されていなければならない。
- 教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。教育は、すべて の国又は人種的若しくは宗教的集団の相互間の理解、寛容及び友好関係を増進し、かつ、平和の維持のため、国際連合の活動を促進するものでなければならない。
- 親は、子に与える教育の種類を選択する優先的権利を有する。
第27条
- すべての人は、自由に社会の文化生活に参加し、芸術を鑑賞し、及び科学の進歩とその恩恵と にあずかる権利を有する。
- すべての人は、その創作した文学的又は美術的作品から生ずる精神的及び物質的利益を保護 される権利を有する。
第28条
すべての人は、この宣言に掲げる権利及び自由が完全に実現される社会的及び国際的秩序に対する権利を有する。
第29条
- すべての人は、その人格の自由かつ完全な発展がその中にあってのみ可能である社会に対して 義務を負う。
- すべての人は、自己の権利及び自由を行使するに当っては、他人の権利及び自由の正当な承認及び尊重を保障すること並びに民主的社会における道徳、公秩序及び一般の福祉の正当な要求を満たすことをもっぱら目的として法律によって定められた制限にのみ服する。
- これらの権利及び自由は、いかなる場合にも、国際連合の目的及び原則に反して行使してはならない。
第30条
この宣言のいかなる規定も、いずれかの国、集団又は個人に対して、この宣言に掲げる権利及び自由の破壊を目的とする活動に従事し、又はそのような目的を有する行為を行う権利を認めるものと解釈してはならない。
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