国連の取り組み:平和維持活動における 性的搾取・虐待を防ぐために(ファクトシート 2015年9月)
プレスリリース 2015年11月01日
国連は軍事要員、警察官、文民を問わず、あらゆる平和維持要員が最高の行動基準を守り、常にプロとして、規律ある振る舞いをすることを期待しています。残念ながら、性的搾取や虐待といった行為を含め、平和維持要員が関係する不祥事の疑いや事件が生じています。国連と加盟国は、すべての疑惑を調査するとともに、このような疑惑が事実であることが判明した場合、直ちに適切な措置を講じる ようにすることで、これに対応すべきです。
◆現時点で講じられている措置
国連本部には2005年、規範・懲罰課(CDU)を設置し、平和維持活動と特別政治ミッションにおける規範、懲罰面の監督を行っています。CDUは、比較的大きな平和維持ミッションに設けられた現地の規範・懲罰チームや、比較的小さな平和維持・特別政治ミッションに設けられたフォーカルポイントとの連携を図っています。こうした規範・懲罰要員は、研修、予防、執行、是正措置に関するミッションの戦略を遂行するとともに、関連の問題についてミッションの団長に助言を行います。
兵力提供国(TCC)と国連の間で結ばれる覚書(MOU)は、各国がその兵員の規範と懲罰について義務を負うことをはっきりと定めています。
平和維持要員の研修
- 軍事要員、警察官、文民を問わず、すべての要員は平和維持ミッションに加わる際、性的搾取・虐待(SEA)に関する研修を義務づけられています。
- 国連はまた、TCCが国連から提供された研修教材を用いて、自国の兵員を対象に展開前の研修を行うよう要請しています。
要員の審査
- 国連はその「不祥事追跡システム」を用いて、フィールド・ミッションに申し込みをした国連スタッフが、過去のフィールド・ミッションで不祥事を犯していないかどうかをチェックしています。また、国連は個別に採用した軍事要員、警察官、矯正官、国連ボランティアについても、同様の審査を行っています。
- 平和維持ミッションを構成する軍部隊や警察部隊要員の不祥事歴の審査は現在、兵員・警察官提供国による認証を通じて行われています。
疑惑への対処
- 不祥事の疑惑が生じた場合に調査を行う標準的な手続きが導入されています。
国連職員の場合:
- 国連が不祥事の疑惑を調査します。
- 国連は現在、酌量すべき状況を踏まえつつ、6カ月以内に調査を完了させることを公約しています。
- 疑惑が事実であることが判明した場合、国連は職員を懲戒処分とします。
- 犯罪行為が明らかになった場合には、各国当局による訴追を求めたり、各国当局が直接に訴追したりする可能性もあります。
警察官や軍事監視員をはじめ、専門家としてミッションに展開された要員の場合:
- 国連が不祥事の疑惑を調査します。
- 国連は現在、酌量すべき状況を踏まえつつ、6カ月以内に調査を完了させることを公約しています。
- 疑惑が事実であることが判明した場合、派遣元の加盟国が懲戒処分を決定しなければなりません。国連は、派遣加盟国に適切な処分を行うよう要請します。こうした要員について、国連は本国送還や今後のミッションへの参加禁止など、該当する要員について限定的な処分を行うことしかできません。行われた処分に関する情報を受け取るまで、国連は定期的に派遣加盟国への働きかけを行います。
- 犯罪行為が明らかになった場合には、各国当局による訴追を求めたり、各国当局が直接に訴追したりする可能性もあります。
軍事要員の場合:
- 調査の主たる権限は、TCCにあります。
- 加盟国には、疑惑の内容を伝え、調査を行う意思があるかどうかを10就業日以内に国連に通知するよう要請します。
- 政府が10日以内に調査開始の意思を国連に通知しないか、これを拒んだ場合、国連は直ちに行政調査を開始できます。
- その際、事務総長は該当する加盟国に対し、酌量すべき状況を踏まえつつ、6カ月以内の調査完了を公約するよう要請します。
- 疑惑が事実であると判明した場合、TCCが懲戒処分または刑事罰を決定します。国連は、派遣加盟国に適切な処分を行うよう要請します。国連は本国送還や今後のミッションへの参加禁止など、該当する要員について限定的な処分を行うことしかできません。
- TCCは、不祥事の調査結果と訴追の内容について、国連に報告を行うよう要求されています。行われた処分に関する情報を受け取るまで、国連は定期的にTCCへの働きかけを行います。
事件の追跡と報告
- 国連はすべての疑惑について、グローバル・データベースと極秘の追跡システムを導入しています。
- 平和維持ミッションは毎四半期と毎年、国連本部フィールド支援局に規範と懲罰に関する報告を行います。
- 平和維持ミッションの幹部は、SEAを減らすための手続きの進捗状況を追跡するとともに、SEAを予防し、調査への協力を確保するために講じたすべての措置を報告する責任を負います。
被害者に対する支援
- 平和維持ミッションは、総会決議62/214の規定に従い、被害者に援助と支援を提供します。
- 具体的な支援としては、医療や心のケアなど、国内のサービス提供者へのアクセスや、子どもの認知や養育費請求に向けた法的支援が挙げられます。
◆新たな措置:システム全体の対応が必要なシステム全体の課題
国連が引き続き、性的搾取・虐待(SEA)を予防し、基準を執行し、説明責任を高め、是正措置を講じ、調査の有効性を確保するための新たなプログラムや議定書、全般的手続きを導入する中で、数多くの取り組みが実施に移されています。
- 国連は2015年5月に総会が採択した事務総長報告書『SEAからの保護に向けた特別措置』に掲げられた40項目を超える提案を実施中です。最も重要な措置としては、下記が挙げられます。
o 調査で用いる証拠を収集、保存するため、平和維持ミッションに「即時対応チーム」を設ける。
o 性的搾取・虐待の調査完了に6カ月の期限を設け、加盟国にこれを守るよう呼びかける。
o 人々が安心して名乗り出て、国連要員に関する苦情申立てができるメカニズムをコミュニティ内に確保するため、本格的な申立受付の枠組を開発する。
o こうした行為を犯したことが判明した職員につき、資格剥奪を含む行政措置を強化する。
o 信憑性のある根拠に基づき、容疑者に関する兵力・警察官提供国への支払いを見合わせる。
o 被害者、申立人、性的搾取・虐待の結果として生まれた子どもに支援と援助を提供するための信託基金を立ち上げる。
- 2015年、中央アフリカ共和国で一連のSEA事件が生じたことを受け、事務総長は次の措置を講じました。
o国連の指揮下に属さない外国の軍隊による子どもの性的搾取・虐待疑惑への国連の対応を審査するため、ハイレベルの「外部独立調査パネル」を任命。
o平和維持ミッションの全ての団長、部隊司令官、警察本部長に通達を出し、日々最高の行動規範を執行する義務があることを強調。
o総会に対する次回の事務総長報告に、調査中の信憑性のある疑惑に関する国別の情報を含めることを提案。
- 事務総長は加盟国に対し、下記を求めています。
o TCCが6カ月以内の調査完了を公約すること。
o TCCが裁きを確保し、その処分の結果を事務局に伝達する責任を全うすること。
o SEAの事実が明らかになった場合、TCCが適切かつ比例的な処分を確保するとともに、「いずれも加盟国の責任である調査と司法プロセスを通じ、SEA行為の責任者の刑事責任を問う」ことにより、不処罰を防ぐこと。
o 十分な資金で立ち上げられた被害者援助プログラムを支援すること。
o SEAその他の不祥事を、安全保障理事会のTCCとの会合で議題に載せるとともに、安保理は、報告があった事件すべてに関する追加的措置を審査すること。
さらに詳しい情報については下記をご覧ください。
規範・懲罰課ウェブサイト:https://cdu.unlb.org
国連平和維持活動ウェブサイト:www.un.org/en/peacekeeping/issues/cdu