COP21:「私たちの運命を自らが決める、またとない機会」 事務総長、国連気候サミットで演説
2015年12月10日
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は2015年12月7日、気候変動を私たちの時代を決する課題と形容したうえで、各国政府首脳に対し、パリの国連気候変動会議(COP21)が「私たちの運命を決める」機会となることを告げました。
「気候変動の課題に立ち向かうことで、私たちは将来の世代のために、世界を持続可能な道へと導き、すべての人の繁栄と安全に向けた基盤を整備することができます」事務総長はCOP21開会から1週間後に当たるハイレベル閣僚協議の開会式で、このように述べました。COP21はフランスの首都、パリ北西部にあるル・ブルジェで、11月30日から開催されています。
2週間目に突入した交渉では、地球の平均気温上昇を摂氏2度未満に抑えるための新たな普遍的協定の成立を目指します。
「1週間前、全世界のリーダー150人はこの場で、私たちが直面する試練に見合う厳格な気候協定に対する全面的な支援を表明しています。これほど多くの首脳が、共通の目的をもって、一つの場所に同時に参集したことは、かつてありませんでした」潘事務総長はこう振り返りました。
事務総長は集まったリーダーから、あらゆる障壁の除去に努めるとの確約を得ていることを強調しました。
「各国首脳は、強い熱意を求めるとともに、温室効果ガス排出量の削減と、今後の気候変動に対するレジリエンス強化を支援していくことを改めて確認しました」事務総長はこう強調しつつ、リーダーたちに対し「この歴史的な行動要請を持続的かつ精力的で、信頼性のある公正な気候協定」へと具体化するよう呼びかけました。
議場の外で「強力で普遍的な合意に向けたグローバルなうねりができ上がりつつある」ことを指摘した事務総長は、その実現に向けて進行中の作業から、世界の人々が何を期待しているかを代弁しました。
「第1に、私たちには、気温上昇を摂氏2度未満に抑えるための合意が必要です。1.5度の気温上昇でさえ、標高の低い国や後発開発途上国を含む多くの国々には、甚大な影響を及ぼすからです」事務総長はこのように主張しました。
「第2に、民間セクターに対しては、グローバル経済の低排出への転換が不可避であり、有益であり、すでに始まっているという明らかな兆候を示すことが必要です。第3に、先進国は先頭に立って対策を進めることに合意せねばならない一方で、開発途上国も、その能力に応じて、ますます大きな責任を担う必要があります。第4に、気候協定は開発途上国、特に最も貧しく、弱い立場に立たされた国々に対して、十分かつバランスの取れた適応・緩和支援を確保するものとせねばなりません」
事務総長は最後に、進捗状況の測定、監視、報告を透明な形で行うための単一の枠組みを気候協定で定めなければならないとしました。
事務総長は「皆様がここで下す決定は、時代を超えて影響を及ぼすからです」と明言しています。
また、事務総長は前日、ノルウェーの若き探検家、エリカさんと会った際の会話の内容も紹介しました。セーヌ川に係留中の調査船「タラ」号を訪れた事務総長に対し、エリカさんは次のように話しました。「私たちは未来です。皆さんがきょう下す決定は、私たちの未来となるのです」
一方、クリスティアーナ・フィゲレス国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長も、リマ・パリ行動アジェンダに基づき、COP21第1週の間に実施された多数の活動で、気候対策に向けた機運の盛り上がりが明らかになったと述べました。
「投資家、企業、州や市町村、さらには市民社会全体が、約束を実行に移しています」フィゲレス事務局長はこのように語りました。
モーエンス・リュッケトフト第70回国連総会議長もこれに同調し、2015年が合意の年であったのに対し、2016年は迅速な実行の年となるという見解を示しました。そして、4月にはニューヨークで、国連の全加盟国が今年、全会一致で合意した持続可能な開発目標(SDGs)の達成を支援するイベントを開催することを発表しました。
その一方で、リュッケトフト議長は、世界の平均気温上昇を摂氏2度に抑えるうえで、パリでの厳格かつ普遍的な気候協定は不可欠な基盤となることも指摘しました。
「皆様のリーダーシップがなければ、いかなる協調的な取り組みも無意味になってしまいます」リュッケトフト議長はこう警告しました。
演説後に記者会見に臨んだ潘事務総長は、「ラゴスからロサンゼルス、さらにはベルリンから北京に至るまで、全世界の人々がその子孫、そして健全な地球のために、きれいな空気と平和で豊かな未来を求めています」と述べました。
「私たちは地球との和解という、最も重要な和平合意の一つを成立させようとしているのです」事務総長は記者団に対し、このように語りました。
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