国際女性の日2011 国連公開シンポジウムが開催されました!
2011年03月09日
東京・有楽町の有楽町朝日ホールにて3月8日(火)、国際女性の日を記念するイベント「国連公開シンポジウム:女性が地球を元気にする」が開催されました。「国際女性の日」は社会全体の取り組みによって女性たちが平等、安全、開発、組織への参加に関してどこまで可能性を広げてきたかを確認すると同時に、今後のさらなる前進に向けて話し合う日です。毎年この日に世界各地で記念イベントが開催され、日本では21の駐日国連諸機関と朝日新聞社が共催して実施されました。
シンポジウムでは、世界を舞台に活躍する3人の女性パネリストによるグローバルトーク「私の職場は地球~世界へ出てみよう」、宇宙という壮大な夢に家族で挑んだ宇宙飛行士の山崎直子さん、大地さんご夫妻によるドリームトーク「夢をかなえる-宇宙へ、家族とともに」が行われ、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長および今年1月に本格的に活動を開始した国連の新組織UN Womenの事務局長ミチェル・バチェレ氏のメッセージが紹介されました。
午後6時のスタートに合わせて集まった参加者の9割以上は女性、うち6割を20-30代が占めるなど、パワー溢れる大勢の若い女性の皆さんの参加が多かったことが今年のイベントの特徴でした。なお、事前の申込みには600席の定員数をはるかに上回る応募があり、およそ4倍の競争率となりました。
まず初めに、山下真理 国連広報センター(UNIC)所長が駐日国連諸機関を代表して挨拶を述べ、国際女性の日の成り立ちとその歴史を振り返りました。今年は特に、1911年のコペンハーゲン国際会合を経てヨーロッパの数カ国で初めて「国際女性の日」が制定されてから100周年という記念の年であることを紹介し、会場参加者は女性の地位向上をめざす100年の取り組みに想いを馳せました。
続いて、林久美子 文部科学大臣政務官より開会のご挨拶がありました。林氏は内閣府の男女共同参画担当大臣を補佐し、日本国内のジェンダー平等と女性のエンパワーメントに深く関わっています。挨拶の中で林氏は、男女共同参画に関する国内外の動きを紹介すると共に、UN Womenの初代執行理事国として日本が今後積極的に貢献していく姿勢を示しました。そして「女性が出産・子育てをしながら、あるいは様々な感性を生かしながら社会に参画することが政治・社会を変え、男性にとっても生きていきやすい世の中を作ることにつながる」と述べて、活力ある社会を一緒につくっていこうと呼びかけました。
次に、山下UNIC所長から潘基文(パン・ギムン)国連事務総長のメッセージが紹介されました。事務総長は100周年を迎える国際女性の日にあたり、この間の著しい進展を祝う一方で、世界には女性がいまだに“二級市民”にとどまっている国や社会が数多く残っていることを強調しました。そして国連がジェンダー平等の実現に向けて、女性への暴力をなくす、平和維持・平和構築に女性の視点を取り入れる、女性と子どもの健康に関するグローバル戦略を推進する、社会や組織における意思決定プロセスにより多くの女性が関わる、などを目指して幅広く取り組んでいることを紹介しました。そして、今年1月に発足したUN Women が、国連のこうした取り組みをよりパワフルに進めていく決意の表れであるとしています。
続いて、国際舞台で活躍する3人の女性をパネリストに迎え、グローバルトーク「私の職場は地球~世界へ出てみよう」がスタート。人や社会・自然環境に配慮した「エシカルジュエリー」を手掛けるHASUNA代表取締役の白木夏子さん、中国でウォーター・ビジネスを行い、数少ない中国での日本人女性起業家として注目される可宝得環保技術有限公司総経理の熨斗(のし)麻起子さん、ボストンコンサルティンググループ東京事務所シニア・パートナーで、営業分野のグローバルリーダーも務める津坂美樹さん、そしてモデレーターに朝日新聞社GLOBE編集長の山脇岳志さんが登壇して活発なトークが行われました。
各パネリストから世界を舞台に働くことになったきっかけと現在の活動が紹介された後、モデレーターから「仕事をする上で、女性であるが故に感じる難しさはあるか」との問いかけがありました。熨斗さんは、男女共働きが一般的な中国では女性の労働環境の改善が進んでおり、女性だからというよりも日本人であること、あるいは仕事ができるかどうかという視点で見られることが多いと述べました。その上で、「日本より海外の方が女性は活躍しやすいという側面がある。しかし、同時に男性も海外に出て、日本に足りないものを発見してほしい」と語りました。一方、白木さんは、かつて男性中心の日本企業で働いた経験を、「女性が働きやすい会社を自分で作ってしまおう」と決心するに至った一つの要因として挙げました。そして、現在の事業では現地パートナーとして青年海外協力隊員をはじめパワフルに活躍する女性のサポートが欠かせないとし、「まさに女性のパワーでビジネスをしている実感がある」と述べました。
働く女性が直面するこうした現実を反映する一つの統計として、山下UNIC所長から国連開発計画(UNDP)の「人間開発指標」が紹介されました。日本は、国全体の発展を測る「人間開発指数」では11位にランクする一方、社会・経済・政治分野における女性の進出機会を測る「ジェンダーエンパワーメント指数」では先進国の中で最も低い57位となっていることが紹介されました。津坂さんはこれに関連して、結婚・出産などで職場を離れた女性が仕事に戻ることで、GDPが上がるという試算を紹介、そのためには家族のサポートと共に、保育施設不足の解消など社会のサポートが不可欠であるとしました。
この後も活発なトークは続き、会場では、働く女性への的確なアドバイスに、メモを取る参加者も多くみられました。
続いてミチェル・バチェレUN Women事務局長のメッセージが紹介されました。国際女性の日が100周年を迎える今年1月に本格始動したUN Women のビジョンは、男性も女性も平等な機会と能力を発揮できる世界を実現することであると述べ、すべての国と社会、地域社会の人々を一つにまとめて新しい力を生み出していくと決意を述べました。
続いて、宇宙という壮大な夢に家族で挑んだ宇宙飛行士の山崎直子さん、大地さんご夫妻によるドリームトーク「夢をかなえる―宇宙へ、家族とともに」が行われました。進行役の朝日新聞出版AERA副編集長を務める浜田敬子さんが、まず昨年の有人宇宙環境利用ミッションの映像を紹介、続いて山崎夫妻が大きな拍手で迎えられました。
宇宙に関わる仕事を共通の夢としていたご夫妻は、直子さんが宇宙飛行士候補に選ばれて訓練を重ねていく過程で、仕事、育児、介護が重なるという事態に直面し、その都度、様々な選択と決断を迫られた10年を振り返りました。そして、宇宙飛行という国家プロジェクトに関わる中で、家族の問題をできるだけ家庭内で解決しようとしたために生じてしまった困難や不平等感、孤独感など、当時の心境を率直に吐露しました。
夫である大地さんは、直子さんの訓練が行われた米宇宙航空局(NASA)では、宇宙飛行士の家族の抱える重圧を理解しサポートする制度があり、こうした組織や社会の支援は、家族が共に暮らし共に働くスタイルを目指す上で心強く感じたと語りました。また、自らのキャリアを一時中断して主夫という立場になった経験から、「日本社会は子育てや家庭は女性のもの」という価値が今も根強く、女性が育児するための環境ばかりが整っている点を指摘。共に家庭・育児を行っていくためには、男女に関係なく、制度や設備を整えていく必要があると述べました。
直子さんは、「家族と組織の支えがなければ宇宙へ行くことは絶対にできなかった」と振り返りました。そして、共働き、父子家庭、母子家庭の形をとり、試行錯誤しながら家庭を維持してきた自分たちのスタイルは「決して理想的なモデルではない」とし、今後の世代が同じ苦労をしなくて済むように社会環境を整える必要性があると述べました。夫婦が共に夢を叶えることができるような社会を目指して、これからも努力していきたいとのメッセージに、会場からは大きな拍手が沸きあがりました。
2時間半にわたる国際女性の日2011・国連公開シンポジウムは、盛況のうちに閉会となりました。