寄稿文:「コートジボワール-報復ではなく説明責任を」 シモノヴィッチ国連人権担当事務次長補
プレスリリース 11/025-J 2011年04月13日
国連人権担当事務次長補を務めるイヴァン・シモノヴィッチ氏は混乱の続くコートジボワール情勢を伝える寄稿文を世界のメディアに発表した。昨年11月の大統領選の結果をめぐって武力衝突が続いた同国では多数の市民が犠牲になり、国際社会の支援が必要とされた。犠牲者は1,000人を超え、10万人以上の市民が国を離れたと報告されている。4月11日、バグボ元大統領の身柄拘束により戦闘は収束に向かうと見られるものの、今後ワタラ大統領が説明責任を果たし、事件の関係者を公正に裁くことができるかが注目される。
寄稿文の日本語要約とオリジナル英文は以下の通り。
【日本語要約】
戦闘状態が続くコートジボワールでは、混乱のため犠牲者の遺体収容作業すら難航しているものの、各地で徐々に被害の大きさが明らかになりつつある。3月28日に発生した2回目の大規模な衝突では300人以上が死亡したと見られている。
最大都市アビジャンでの犠牲者数は依然として不明だが、コートジボワールで活動する国連の人権調査団の代表は400人以上が犠牲になった可能性があるとしている。戦闘による混乱のため、病院では基本的な医薬品や食糧の不足が深刻化し、住民を不安に陥れている。国連平和維持活動(PKO)要員は武装した車両を用意し、外交官やジャーナリストの救出に当たっているが、現地の住民にはそのような脱出ルートが無いのが現状だ。
一連の衝突に関して、ワタラ大統領は民族間の暴力という悪循環を断つために全力を尽くす意向を示しており、「調停委員会を立ち上げて関係者の責任を追及し、全ての地域と民族を代表する政府を作りたい」と語った。
バグボ元大統領の拘束によるワタラ大統領への実質的な権力移行を受け、コートジボワール国民の間にはついに平和が訪れるとの期待が高まっている。しかし、その道のりはまだ不確実だ。ワタラ大統領をはじめ同国の政治指導者たちは「説明責任を果たす」という困難な、しかし重要な仕事にただちに着手する必要がある。その際には、いかなる報復も避けなければならない。
今後、バグボ氏は尊厳を持って扱われ、仮に起訴された場合は国際的な人権基準にのっとって裁かれなければならない。バグボ氏にすべての罪をかぶせることなく、関係者全員が公平に裁かれる必要がある。真実と正義は、和平と恒久的平和のための必須条件だ。
現在の戦闘が終結しても、コートジボワールには課題が山積している。同国はもともと強いインフラ基盤を持ち、そのほとんどは損傷を受けていないものの、経済の再建には短期的な人道支援に加えて長期的な支援も必要となる。北アフリカ情勢の混迷や日本の大震災の影響を受け、コートジボワールにとって国際的な関心や支援の確保が困難になると見られている。