「国連ミレニアム開発目標(MDGs)報告2011」、発表
プレスリリース 11-044-J 2011年07月07日
MDGs達成に向けた大きな前進の陰で、最も弱い立場の人々が置き去りに
国連事務総長、世界の指導者に目標達成に向けた一層の努力を促す
ジュネーブ、2011年7月7日 – ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けた長足の進歩は見られるものの、全世界で最貧層が置き去りにされているため、2015年の期限までにすべての目標を達成するのは引き続き困難である。国連が発表した報告書は、このように述べています。
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長がきょう発表した『ミレニアム開発目標(MDGs)報告2011』は、世界の指導者が極度の貧困、飢餓、非識字および疾病を減らすため、2000年にMDGsを設定して以来、大きな成果が得られていることは歓迎すべきだとしています。
「すでにMDGsのおかげで、数百万人が貧困を脱出したほか、数限りない子どもたちの命が救われ、その就学も確保されました」潘事務総長はこのように述べています。「MDGsは妊産婦の死亡者を減らし、女性の機会を拡大し、衛生的な水の利用を広げ、多くの人々を致命的な重病から解放しました。報告書はその一方で、女性と女児の地位向上、持続可能な開発の促進、さらには紛争、自然災害、食料価格やエネルギー価格の乱高下など複数の危機による破壊的な影響から最も弱い立場にある人々を保護するという点では、まだ長い道のりが残っていることも示しています」
『ミレニアム開発目標(MDGs)報告2011』は、開発の成功例を紹介し、その多くは開発途上国での経済成長の継続と、保健をはじめとするMDG重要分野での焦点を絞った取り組みによるものであることを指摘しています。報告書は、多方面からの資金の拠出により、HIV感染者やエイズ患者の治療などの様々な重要なプログラムの拡大が見られることについても指摘しています。
「目標達成のためには、公平で包括的な経済成長が必要となるでしょう。それはすなわち、あらゆる人々に届く成長、そして、特に貧しく疎外された人々を含む、すべての人々が経済的機会から恩恵を得られるような成長に他なりません」事務総長はこのように述べています。「私たちは今から2015年までに、約束したことをしっかりと守っていかなければなりません。世界の指導者たちは、その気持ちだけでなく、実際に行動を起こす勇気と信念も示していかなければならないのです」
MDGsを達成するためには、より持続可能な道へと進むことが不可欠だ、と潘事務総長は語ります。生態系を守り、継続的な成長と自然環境を支えていかなければならないのです。2012年にリオデジャネイロで開催予定の「国連持続可能な開発会議」(通称「リオ+20」)は、新たな前進に向けた重要な機会となります。
大きな前進
・世界全体としては引き続き、貧困削減目標を達成できる見込みです。最近の経済、食料、エネルギー危機の影響にもかかわらず、世界全体の貧困率は2015年までに15%未満に低下すると見られ、目標値の23%よりも十分に下回る見込みです。
・最貧国の中には、教育面で最も大きな前進を遂げた国も見られます。例えばブルンジ、マダガスカル、ルワンダ、サモア、サントメ・プリンシペ、トーゴ、タンザニアは、普遍的な初等教育という目標を達成済みか、達成間近の状態にあります。
・5歳未満の幼児死亡者数は1990年の1,240万人から、2009年には810万人へと減少しました。一日当たりの幼児死亡者は、ほぼ1万2,000人減少した計算になります。
・マラリアによる死亡者は、拠出資金の増額と集中的な対策により、2000年の約98万5,000人から2009年には78万1,000人へと、全世界で20%減少しました。
・HIV新規感染者数も着実な減少を見せています。2009年のHIV新規感染者は約260万人と、新規感染がピークに達した1997年の水準を21%下回っています。
・抗レトロウイルス治療を受けるHIV感染者とエイズ患者の総数は、拠出資金の増額とプログラムの拡大により、2004年から2009年にかけ13倍に増えました。
・1990年から2008年までに改良飲料水を利用できるようになった人々は、都市部で11億人、農村部で7億2,300万人に上ります。
最も弱い立場にある人々が置き去りに
一方で報告書は、前進にむらがあり、依然として多くの人々が置き去りにされていることを指摘しています。大きな改善があったにもかかわらず、国内的にも、国際的にも大きな格差が残っているため、さらに集中的な取り組みが必要とされています。
「前進は、経済的に最底辺にいる人々や、性別、年齢、障害、民族などを理由に不利な立場に置かれた人々を素通りする傾向がある」と潘事務総長は述べています。「しかも都市部と農村部との間には、気の遠くなるような格差が残っています」
報告書は、栄養状態の改善と生存という点で、最貧層の子どもたちの状況の改善が最も遅れていることを示しています。2009年の時点で、開発途上国では子どものほぼ4分の1が体重不足となっていますが、その中で最も多いのは最貧層の子どもたちです。開発途上国の最貧層世帯の子どもは、最富裕層世帯の子どもに比べ、5歳の誕生日を待たずに命を落とす危険性が2倍以上高くなっています。
報告書によると、子どもが学校に通えない確率は、貧しいこと、女児であること、または、紛争地帯に暮らしていることによって高まります。世界的に見て、学校に通うことのできない小学校就学年齢の子どものうち、42%に当たる2,800万人は紛争で被害を受けた貧困国に暮らしています。
報告書は、MDGsの達成が女性の地位向上と男女間、そして男児・女児間の機会平等に大きく依存することを強調しつつも、この目標の達成までには、まだ長い道のりが残っていることを示しています。報告書によると、女性が完全な生産的雇用に就ける機会は特に限られています。2008年から2009年にかけての失業急増後、2010年には景気回復による雇用の増大が見られましたが、特に開発途上国では、女性の雇用回復が男性よりも遅れています。
報告書は、衛生状態の改善がしばしば、貧困層や農村部の住民に届かないことも指摘しています。トイレその他の改良衛生施設を使えない人々は、今でも26億人を超えています。また、前進が見られた国々でも、貧困層はほとんど置き去りにされています。例えば南アジアでは、最貧層40%の世帯での衛生施設普及率が、1995年から2008年に至るまで、ほとんど改善を見せていません。
当初、2000年9月の国連ミレニアム・サミットで合意された8つのMDGsは、極度の貧困と飢餓の削減、健康と教育の改善、女性の地位向上、そして環境の持続可能性確保のため、2015年を達成期限とする世界的な目標を定めています。2010年9月の国連MDGサミットでは、世界の指導者たちがこれら目標達成の公約を再確認するとともに、集団行動の本格化と成功法の普及を求めました。これを受けて発足した「女性と子どもの健康のためのグローバル戦略」には、400億ドルを超える拠出が表明されています。
国連経済社会局が作成する『ミレニアム開発目標(MDGs)報告』は、目標達成に向けた地域別の進捗状況を年1回、評価するもので、25以上の国連機関や国際機関が集計した最も包括的な最新データを反映しています。報告書作成に用いた全データは、http://mdgs.un.org でご覧になれます。さらに詳しい情報や報道用資料、各機関のメディア向け窓口の一覧は http://www.un.org/millenniumgoals/ をご覧ください。
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