女性と女児を災害リスク削減の主役に ~「仙台防災枠組」もジェンダー課題をハイライト ~
2016年03月10日
女性差別撤廃に関する画期的な国連条約の履行をモニタリングする国連専門家は2016年2月29日、気候変動のほか、暴風雨や洪水をはじめとする災害の矢面にも立たされることが多い女性と女児を、災害リスク削減の中心に据えるべきだと述べました。
ロバート・グラッサー国連事務総長特別代表(防災担当)は、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)がジュネーブで開催した災害リスク削減と気候変動のジェンダー関連側面に関する特別セッションで、昨年3月、天災と人災から人命を救い、その経済への影響を抑えることを狙いとして日本で採択された国際的な15カ年計画「仙台防災枠組2015-2030」が、ジェンダーの課題にはっきりとスポットを当てていることを強調しました。
グラッサー特別代表は「仙台防災枠組は人権とジェンダーの平等、そして気候変動への適応を極めて重要視しています」と述べるとともに、同枠組が災害の管理からリスクの管理へと軸足を移し、誤った発想による開発政策や慣行、投資に存在する災害の根本原因や助長要因に取り組むうえで、ジェンダーが重要な要素になっていると付け加えました。
そして、取り組みが必要なジェンダーの不平等のうち、意思決定や資源管理への参加のほか、社会的保護措置や教育、保健、早期警報へのアクセスを強調しました。
「女性は災害によって大きな被害を受けるため、対策の改善を図るためには、災害の影響に関するさらに正確な情報と男女別の詳細なデータが必要になります。また、気候変動が気象関連ハザードをさらに激化させており、災害の90%以上は自然ハザード(自然現象に起因するハザード)と関係しています」グラッサー特別代表はこのように述べました。
災害が男性と女性、そして男児と女児に異なる影響を及ぼすことには、様々な理由があります。例えば、UNISDRによると、ジェンダーの不平等は、自らの生活、さらには資源へのアクセスを決める上で女性と女児の影響力とコントロールを制約しており、それによって女性が防災計画の策定から締め出されることがあります。
経済社会的条件や文化的信条、伝統的慣行によって、女性と女児は災害に襲われた際に被害に遭う公算が大きく、災害時やその後に生計手段を失ったり、ジェンダーに基づく暴力を受けたり、さらには命を落としたりすることが多くなっています。よって、エンパワーメントは災害に対するレジリエンス構築に欠かせない要素と言えます。
災害と気候変動に関するCEDAWの活動を率いるナーラ・ハイダル氏は、こうした不利な立場が「主体として認めるべきである女性を、単に弱い立場にある被害者と見ることで、さらに悪化している」と付け加えました。
同じくセッションで発言したエレナ・マナエンコバ世界気象機関(WMO)事務局長補は、2004年のインド洋津波で女性が男性よりも多く死亡したのは、女性の多くが泳ぎ方を知らなかったことと、長い衣服を着用していて動きにくかったことによるものだと強調しました。また、1991年のサイクロン「ゴルキー」による洪水の影響で14万人が死亡したバングラデシュで、女性の死者が男性の14倍に及んだのは、情報と早期警報へのアクセスが不十分だったためでもあることも指摘しました。
「開発途上国では、女性の60%から70%が農業に従事しています。しかし、携帯電話で気象情報を発信するプロジェクトをインドで実施したところ、携帯電話の利用者のうち女性は11%に過ぎないことが判明しました。また、全世界で携帯電話を持たない女性が3億人いることも明らかになっています」マナエンコバ事務局長補はこのように語りました。
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東日本大震災の発生から1年が経った2012年3月、国連広報センターは東北の被災地の女性や支援に携わる方々にインタビューし、「東日本大震災から一年、女性たちは今」と題して5つのストーリーをご紹介しました。被災した女性たちは、どのような環境で、どのような課題に向き合ってきたのか、そして支援する側は何を考え、どう取り組まなければならないのか。震災から5周年を迎えるこの機会に、ぜひご覧ください。
【第1回】もっとジェンダーの視点に立った支援を
【第2回】福島の警戒地域から避難、自分の力を信じて歩み続ける
【第3回】被災した外国人女性、新しい職を得て、自らの生き方と周囲を輝かす
【第4回】真の豊かさを求めて、仕事づくりで地域の活性化を図る
【第5回】雇用対策を初めから復興支援に組み入れる