東日本大震災から一年、国連本部でコンサート「震災を乗り越えて」
2012年03月09日
東日本大震災から間もなく一年を迎える3月5日、ニューヨークの国連本部で、震災の犠牲者を追悼し、世界から日本に寄せられた支援に感謝を表すコンサートが、日本政府国連代表部らの主催で行われました。
国連総会の議場では、和太鼓演奏集団「鬼太鼓座(おんでこざ)」の力強いパフォーマンスや、東北地方に伝わる伝統芸能「湧水神楽(わくみずかぐら)」などが披露され、復興に向けて歩む日本の姿を深く印象づけました。
以下は、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長による開会挨拶の全文です。
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「震災を乗り越えて-日本から世界へ感謝をこめて」と題するこのコンサートに参加できることをとてもうれしく思います。
このタイトルそのものが日本の感謝の気持ちを十二分に物語っています。
私は心の底から感動しました。
日本語で一言述べさせてください。
「日本は国連の重要な一員です。そして、また、国連は日本にとっても大事です」
地震が起きたとき、私たちはただちに日本に手を差し伸べました。これまで何度も他の国々に手を差し伸べている国、日本に対してです。
国連を代表し、私は支援のメッセージを送りました。
そして可能な限り早く福島を訪問し、一夜を過ごしました。
避難している家族の方々と話しました。学校の生徒たちとも会いました。そして私は、“日出づる国”である日本が、“若者たちの出づる国”になったと感じました。
そこで出会った若き日本人たちの顔を決して忘れません。地震は瞬時にして彼らの家を破壊しました。友人や親が行方不明、あるいは死亡が確認された人もいました。原発事故は安心感を揺るがしました。
しかし、何ものも彼らの精神を打ち負かすことはできませんでした。
世界は忘れていません。いまだに多くの人が家に帰れないことを私たちは知っています。経済的損失が莫大であることも理解しています。そして、多くの傷は完全に癒えることがないであろうこともわかっています。
これは悲しい事実です。
しかし、希望の兆しも数多く見られます。
東日本大震災の後、日本の人々は立ち上がりました。そして国際社会もまた、立ち上がったのです。
国連はただちに緊急援助を行いました。各国はできる範囲で支援を行いました。学校に通う子どもたちでさえ、世界中から連帯のメッセージを送りました。
福島の人たちと会ったとき、世界が自分たちのために何をしてくれるかという質問を予想していました。しかし私が耳にしたのは、世界のどの国や社会も、自分たちが体験したこのような苦難に遭わないようにと望む言葉だけでした。
私は非常に感銘を受けました。感動しました。
私たちは行動で答えました。
昨年9月、私は原子力安全および核セキュリティに関するハイレベル会合を召集しました。
そして今後も、この問題についてグローバルな進展を促進していくつもりです。間もなくソウルで開催される核セキュリティ・サミットは、この取り組みを推し進める重要な機会となるでしょう。
各国代表の方々、
ご来場の皆様、
そして日本の友人の皆さん、
私は福島で会ったある高校生の言葉を決して忘れないでしょう。
ワタナベ・ミナミさんはこう言いました。「いつも前向きでいることはまだできません。でも、泣いて過ごしたこのつらい経験を受け止め、将来どんな困難も乗り越えられる強い人間になるための、教訓にしたいと思います」
一人のティーンエージャーにとっての真実は、世界にとってもまた真実です。私たちは地震、津波、そして原発事故というこの経験を生かし、より強く、より回復力を持ち、より団結しなければなりません。
今夜の演奏者たちは、この力強い決意を奏でてくれるでしょう。
世界中の自然災害の被害者たちに彼らの決意を示すため、ここに集いました。
今夜のパフォーマンスから励ましを得て、明日の困難を克服しましょう。
(以下、日本語で)
「国連も世界も日本を応援しています。ありがとうございます」
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挨拶のオリジナル(英文)はこちら。