山下所長の国連だより(4月)
2012年04月27日
このコラムでは、国連の発信する様々なメッセージをわかりやすくお伝えしていきます。皆さまに、国連をより身近に感じていただければと願っています。
地球の未来―何を選びますか? (2012年4月)
とても大切だけど一言では説明できない―。「持続可能性」という概念もその一つではないでしょうか。潘基文(パン・ギムン)事務総長が「持続可能な開発」を今後5年間の優先課題のトップに挙げる理由はなぜでしょう? 4月中旬、国連広報センターが共催した「地球の持続可能性に関する公開シンポジウム」は、そんな私の疑問に答えてくれる絶好の機会となりました。
「型破りでもいいから画期的な提言が欲しい」。潘事務総長が「地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル(GSP)」を設置するにあたって呼びかけた相手は、現役大統領や元首相、気候変動、環境、開発担当大臣、財界、市民社会のリーダーなど、世界の最先端で活躍してきた大物22名です。日本からは鳩山由紀夫元総理大臣が加わっています。
2010年にこの「ハイレベル・パネル」ができた背景には、気候変動を一期目の最優先課題に掲げた潘事務総長の苦労の経験があります。気候変動に対するグローバルな対策を求めていく中で、事務総長をはじめ世界のリーダーが直面したのは、気候変動が開発、貧困撲滅、エネルギー、水、食料へのアクセス、社会問題など多くの課題と絡み合っていて、いずれも単独では解決できない、という現実でした。こうした共通認識のもとに、潘事務総長は世界の賢人に対し、「私たちが望む未来」のための実行可能な提言を求めたのです。
グループがまとめ上げた報告書によると、世界人口が70億に達成した今、人類は最も繁栄している一方で10億人以上の人々が貧困状態にあり、2030年には、さらなる人口増のため、食料は今よりも50%、エネルギーは45%、水は30%多く必要になると警告しています。と同時に、人類にはこれらの課題を克服する知識、技術、そして何よりも「選択肢」が与えられているとして、具体的に56項目の提言を示しました。世界の一人ひとりが尊厳をもって生活し、社会が繁栄し、何世代も先まで維持できるような将来を築き上げるためのブループリントができ上がったのです。
「地球の持続可能性」は単なる環境問題ではなく、経済、そして社会問題にも広く関わる課題です。ハイレベル・パネルが強調するように、持続可能性の視点を国家の政策やグローバルな経済政策に組み入れていくことが重要です。6月に開催されるリオ+20では、世界のリーダーが20年ぶりに、私たちの未来に向け、持続可能な開発をいかに実現できるか叡智を絞り、行動計画を世界に約束することが期待されています。「他人を思いやり、地球環境を思いやり、将来の世代を思いやり、新しい公共の概念を追求しよう」とシンポジウムで語った鳩山元総理の言葉が心に残っています。
【これまでのメッセージ】