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山下所長の国連だより(6月)

2012年06月14日

このコラムでは、国連の発信する様々なメッセージをわかりやすくお伝えしていきます。皆さまに、国連をより身近に感じていただければと願っています。

国連トップクラスの人事、どう決まる? (2012年6月)

潘基文(パン・ギムン)事務総長が今年から任期2期目に入り、それに合わせて事務局での幹部人事も総替わりしつつあります。今回は、一般的になじみの薄い国連の人事についてお伝えします。

国連で、いわゆる「幹部クラス」に相当するのは事務総長、副事務総長、そしてその次のランクにあたる事務次長レベルの高官ですが、実はこの人事が決まるまで、舞台裏では熾烈な国際競争が繰り広げられるのです。

冷戦当時、米国は総会担当局、旧ソ連は安全保障理事会担当局に、それぞれ政府お墨付きの高官を送り込みました。その後、世界情勢の変動に伴って、世界のアクターとしての国連の役割が大きく変わりました。事務局には新たに政治局、平和維持活動(PKO)局、国連人道問題調整事務所(OCHA)が設置され、現場主義へと移行していきました。そして、その中でも最も重要と思われるポストに自国推薦の高官を付けようと、各国政府は激しい外交交渉を展開するのです。

さて、潘事務総長は職員のモビリティ(職場流動性)を高めることを重視し、現場も含め、5年に一度をめどに幅広い人事異動を奨励しています。事務総長の側近人事も例外ではありません。一方、一般職員にとっては、自分の所属する部局のボスが誰になるかは仕事にも直接影響するので、とても気になるのが正直なところです。最終人事が発表される直前まで、「英国が事務総長に最も近い官房のポストを狙っているらしい」「日本はOCHAでは?」、「米国はPKOにも興味があるらしい」など、様々な噂が飛び交いました。

これまでに発表された新しい幹部の顔ぶれはざっと次のようになっています。副事務総長にはスウェーデンの元外務大臣、事務総長官房にはアルゼンチンの民間企業出身で元国連世界食糧計画(WFP)高官、PKO局には1997年以来フランスがベテラン外交官を送り込み、OCHAには英国が元国際開発大臣を、軍縮室にはドイツが国連高官を投入しています。2007年から政治局トップのポストを保持する米国は、26年のキャリアをもち、主に東欧・中東問題を扱ってきた外交交渉のプロを据えました。また、世界63カ所にある国連広報センターを束ね、国連の広報活動全般を指揮する広報局トップには、オーストリア政府で報道官を務め、情報コミュニケーション分野で豊富な経験をもつ高官が選ばれています。

そして、管理局トップに任命されたのが日本の高須幸雄元国連大使【写真・右】です。国連の予算、人事等を含むマネージメント全般を担当する重要なポストで、これまで長年、米国が保持していました。高須事務次長は8人目の日本人事務次長となりますが、このポストに日本人が就くのは初めてです。国連の財務官を務めた経歴も持つ高須事務次長の、更なる活躍に期待が集まっています。

【これまでのメッセージ】

固い握手を交わす新旧の国連副事務総長。次期副事務総長のヤン・エリアソン氏は、第60回国連総会議長も務めたスウェーデン出身のベテラン外交官。2007年に就任したミギロ副事務総長(右)に替わって、7月1日から副事務総長の職に就く(ニューヨーク、2012年4月) © UN Photo/Paulo Filgueiras
新たな事務総長官房となるスザンナ・マルコーラ氏。前職は世界30カ所で展開する平和維持ミッションを管轄するフィールド支援局担当の事務次長。IBMやアルゼンチン・テレコムなど、民間企業で管理職の経歴も(写真は2010年3月、ニューヨーク) © UN Photo/Devra Berkovitz
管理局を担当する国連事務次長に任命された高須幸雄氏。国連本部で行われた宣誓式から(ニューヨーク、2012年5月18日) © UN Photo/Evan Schneider