国連アフガニスタン支援ミッション (UNAMA)、2011年を振り返る
2012年07月05日
7月8日(日)に「アフガニスタンに関する東京会合」が開催されます。この会議には潘基文国連事務総長も出席予定です。国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の昨年一年間の活動を振り返り、アフガニスタンに対する継続的な国際協力の必要性と今後の課題について考えてみませんか。
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移行期の年における成果と課題
マザリシャリフ(アフガニスタン北部)において事務所が襲撃され、14人が殺害されるなどの深刻な状況がある中で、UNAMAは2011年、アフガニスタン政府の強化のための政治的環境を整えることに貢献しました。
2011年におけるもっとも大きな進展は、7月17日にアフガニスタン国家治安部隊(ANSF)に治安の責任が移されたことです。ANSFは徐々に、国内の多くの県に対する保護する責任を負うことになるでしょう。保護下に入る県としては、バーミヤン、パルワーン、バルフ、ヘラート、サマンガン、ナンガルハール、カブール、ヘルマンドの一部などの地域が含まれます。2011年末までに、人口の51%がアフガニスタンの警察や軍の保護下に入ることを目標としています。
2010年の選挙で選ばれた下院議会(Wolesi Jirga)は、4ヵ月後の2011年1月26日に正式に始動しましたが、選挙結果について論争が起きたため、最終的な解決案が見出されたのは、10月8日になりました。
暴力の追放
アフガニスタン最大の課題は不安定な治安で、市民は今も暴力の矛先になっています。2011年半ばにUNAMAがまとめた報告によると、紛争によって死亡した市民の数は2010年の同時期と比べて15%増えています。これは主に、地雷のような簡易爆発物が原因となっています。
「市民の死傷は、どの政党が責任を負うかは関係なく、遺族や地域社会に悲惨な影響をもたらしています」と、アフガニスタン担当の国連事務総長特別代表(SRSG)を2010年2月から2011年12月にかけて務めたステファン・デ・ミストゥーラ氏は述べています。「アフガニスタン全体で市民の死者数が減ったときに初めて、市民はこの国において”勝利を収める”と言えるでしょう」。
アフガニスタンの政府高官も暴力の対象になっています。和平高等評議会の代表、ブルハーヌッディーン・ラッバーニー氏も脅迫によって殺害された一人です。この事件は、タリバンとその他の反政府側との和平の見通しに重い影を落とすことになりました。
10月にUNAMAの人権部は拷問について報告しましたが、これは、政府、国家治安局、国家警察の迅速な対応につながりました。また、伝統的慣習のいくつかは「女性に対する暴力撤廃法」の活用を妨げると考えられており、それらの追跡調査が翌11月に発表されました。その結果、警察、検察官、裁判官による擁護と監視の強化を促すことになりました。
2011年初め、政府と国連は「紛争下における子どものための安全保障理事会支援行動計画(Security Council-endorsed Action Plan for Children in Armed Conflict)」に署名しました。その目的として、武力紛争でのANSFによる子どものリクルートやその他の侵害、例えば性的暴力、学校や病院への攻撃、人道支援の受け入れ拒否などを撲滅することが挙げられます。
開発支援
アフガニスタンでは現在も干ばつが続いています。国連統一人道アピール(CAP)はこのことを考慮して、2012年9月までに1億4200万ドルの緊急支援を追加するという修正を、国連カントリーチーム主導の下、2011年10月2日に行いました。
これと並行して人道支援と開発支援を行うために、UNAMAと国連カントリーチームは、「包括的な戦略的枠組み(Integrated Strategic Framework)」を立案しました。その主な優先課題となるのが、和平や対話、人権の保護と促進、地方の法整備、妊産婦と新生児の健康、持続可能な生活様式などです。
また、国家優先プログラムは、関係機関への投資を通じて、具体的かつ持続可能な恩恵をアフガニスタン市民にもたらすことにも着目しています。
10月と11月に合同調整モニタリング理事会(Joint Coordination and Monitoring Board: JCMB)は社会経済開発、統治、人権促進のモニタリングについての9つの国家優先プログラムを満場一致で承認し、JCMBはその重要性を高めました。JCMBでは、UNAMAがアフガニスタン政府やすべてのドナーの代表と共同で議長を務めました。カブール銀行にまつわる論議はあったものの、議会では、中央銀行に資本を投入することが承認されました。この決定は、IMFプログラムによる支援を受けるための主な前提条件を満たすものであり、ドナーへの門戸を新たに開くきっかけになりました。
11月には、トルコのイスタンブールで行われた国際会議で、地域の治安と経済開発への協力が明言されました。
また、12月5日、国際アフガニスタン会議がドイツのボンで開催されました。「移行(transition)から変革(transformation)へ」というテーマのもと、100の国と組織が参加しました。この会議では国連のアフガニスタンでの役割、また、移行期間に加えて2014年以降もアフガニスタンを支援するという国際社会の政治的コミットメントも再確認されました。
一方、国連の支援によって職員の犠牲も出ています。2011年4月1日、マザリシャリフのUNAMAオペレーションセンターへの攻撃で、国連は職員数名の命を失いました。3人の国連スタッフが殺害され、同様に、射撃中止を促していた4人のネパール人の警備スタッフも群集の中で命を落としました。また、10月31日には、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の職員3名および現地警備員2名がカンダハールで死亡しました。
今後の舵取り
ステファン・デ・ミストゥーラ氏に代わってヤン・クビシュ氏がUNAMAのSRSGに就任したのが、2011年末です。アフガニスタン政府の要請を受けて、UNAMAの委任統治活動および国連のアフガニスタンでの支援は、現在、安全保障理事会の審査の対象となっています。
国連スタッフはより意欲的な計画に着手し、成果を上げ続けています。これについて潘基文事務総長は「非常に困難な状況下での不断の努力である」との賞賛を述べています。
本仮訳は、国連広報局(DPI)が発行した『Year in Review 2011』からの抜粋です。原文(英語)は下記URLをご覧下さい。
http://www.un.org/en/peacekeeping/publications/yir/yir2011.pdf
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