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【シリーズ第1回】 「国際女性の日」2013 未来を担う女性たちと教育 ~日本にある国連アカデミック・インパクト(UNAI)参加大学で学ぶアフリカ大陸からの女子留学生の声~ 

2013年03月06日

国連では1975年に3月8日を「国際女性の日」と定めました。毎年この日には、世界中でジェンダーの平等や女性の地位向上の取り組みにおける成果を振り返り、今後のさらなる前進に向けた話し合いが行われます。女性のエンパワーメントは国の経済発展に大きく寄与するだけでなく、公平な社会づくりにつながります。とりわけ、女性の社会参画やエンパワーメントを進めていく上で、女性に対する教育は重要な鍵となっています。

今年の「国際女性の日」に向けて、国連広報センター(UNIC)で働くインターンはアフリカ大陸からの女子留学生の方々にインタビューを行いました。彼女たちは日本の国連アカデミック・インパクト(UNAI)参加大学で学ぶ女子留学生です。「教育と女性のエンパワーメント」をテーマに語って頂きました。

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変化する社会における女性の教育

2013年の「国際女性の日」を記念して、国連広報センターは日本の大学で勉強しているアフリカ人女子留学生の声をお届けします。UNICインターンは、国連アカデミック・インパクト(UNAI)に参加している九州大学の協力を得て、同大学で学ぶ6人のエジプト人女子留学生にインタビューを行いました。アフリカにおける女性の現状と課題、2010年以降アラブ諸国で続いている民主化を求める運動、そしてそれが波及しているエジプトに注目し、インターンと留学生が対話形式で活発な意見交換を行いました。女性の教育やエンパワーメントの重要性、エジプトのより良い未来に向けた彼女たちの貢献などがトピックの中心となりました。

【九州大学参加者(計6名)】
ワラ・ハサン
九州大学大学院 医学系学府 博士4年生
マヒタブ・エルザイェッド
九州大学大学院 薬学府 博士後期1年生
モハメッド・イマン・アハメッド
九州大学大学院 理学府 博士後期2年生
ノハ・ゾマラ
九州大学大学院 システム生命科学府 一貫性博士1年生
ラシャ・モハメド
九州大学大学院 医学系学府 博士1年生
ノハ・マシアアル
九州大学大学院 理学府 特別研究学生

上記6名の学生が、今回のインタビューに参加してくれました。その中でも特にワラ・ハサンさん(医学系学府博士課程2年)とマヒタブ・エルザイェッドさん(薬学府博士課程1年)が、自身の考えや感じていることを詳細にインタビューの中で伝えてくれました。

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エジプトにおける女子教育
UNICインターンがまず注目したことは、「エジプトと日本で勉強する中で、何か制約などを受けたことがあるか」です。留学生6名は口を揃えて「家族や夫は、私たちの勉強する意思を尊重してくれました」と答えました。ただ、都市と地方によって格差が見られるようです。都市部では理解や応援が得られやすいものの、地方では時に制約があるとのことでした。その一方で、郊外出身というノハ・ゾマラさん(システム生命科学府一貫性博士課程1年)は、自らの経験からこう述べました。「必ずしも制約が厳しいわけではなく、高いスキルを持つ女性はたくさんいます」

日本で学んで、自国の発展に貢献したい
メイン・インタビュイーのマヒタブさんとワラさんは「現在の生活に満足しており、日本の人々と良好な友人関係も築けて嬉しいです」と語りました。しかし、職場や日常生活において、言葉の壁が立ちはだかることが多いようです。医学府でC型肝炎ウイルスを研究するワラさんは、日本人の患者の方々と円滑なコミュニケーションをとるために、高い日本語能力の必要性を感じています。続いて、将来についての質問もしてみました。そこで印象的だったのは、「自国の人々の役に立つために、日本で培った知識を最大限に活かしたいです。そのために将来は自国に戻るつもりです」と話す彼女たちの姿でした。2人の子どもを育てながら膵臓(すいぞう)がんの治療法を研究するマヒタブさんは、知識とスキルの向上のため、日本でのほとんどの時間を研究に費やしているそうです。

女性の教育は社会発展の鍵
教育を受けた女性は社会にどのようなインパクトを与えられるかという質問に対し、「まずは自らの権利を主張することに自信を持つことが大切です。そして、それができるような環境を整えることが基本だと思います」という一致した意見が彼女たちから戻ってきました。これについて、モハメッド・イマン・アハメッドさん(理学府博士後期課程2年)はこう述べています。「女性は世界人口の半分を占める存在です。女性が教育を受けることは、社会全体を発展させる道のりをより強固なものにします」

社会における女性の役割
UNICのインターンは、エジプトを含むアラブ諸国に広がっている民主化に向けた運動と現地や本部における国連の動きについて、強い関心を示しています。エジプトの現状について尋ねてみたところ、九大の留学生によれば、エジプトの一般の学生は民主化運動の後、考え方に深い影響を受けたといいます。前ムバラク政権時代と異なり、今は学生たちや一般市民が通りに出て、人権を侵害する人や団体に対して反対デモを行うことができるようになりました。が、こうも付け加えています。「どのデモ活動に参加するか選ぶことに対し、とても慎重でした。」つまり、あくまで平和的に平等や正当性、表現の自由の意志を表明するために、平和的な抗議活動に参加したいという意図が学生側にあるということでした。幼稚園と小学校の約8年間を日本で過ごしたゾマラさんは語ります。「今回の動きが新旧エジプトにおける大規模な変革と認識するにはまだ早いでしょう。しかし重要なことは、人々が政府に自分たちの要望を恐れることなく伝えられるようになったことです。このようなことは今までありませんでした」

エジプトのこれから
ラシャ・モハメドさん(医学系学府博士課程1年)の願いは、エジプトが科学技術のような最先端分野で世界の中心となることです。ワラさんは、伝統や慣習への人々の関心を維持することも、国のバランスを保つために必要だと語ります。日本人の東日本大震災での対応に感銘を受けたと語るノハ・マシアアルさん(理学府特別研究学生)は、こう言います。「民主化とは、表現の自由のみならず、他人を人間として尊重することです。これが社会に浸透すると生活に『尊敬』という概念が定着してくるはずです」

政治分野における女性の役割
エジプト国内の政治分野においても女性の役割は増し、政府省庁でも女性の登用数は増えているとワラさんは指摘します。しかし、課題も残ります。多くの国民が選挙で女性に投票しているか、そして、女性候補者が国民と確かな信頼関係を築いているかということです。この点について、イマンさんが付け加えました。「若い世代や子どもたちが女性をもっと尊重することが必要です。そうすることで、社会全体に良い方向での意識改革がもたらされます」

学生からのメッセージ
「声をあげることを恐れてはいけません。そしてその声は大きな声でなければなりません」
「すべての女子、すべての女性、そして、すべての人が夢を持つべきです」
「女性同士でもっと語り合いたいです」
「私には一つの願いがあります。それは、これからのエジプトが女性を取り巻く環境を改善していくことです。そう願っていますし、期待しています」

これらのメッセージを受け、UNICインターンは変化するエジプトの状況において、彼女たちがいかに強く真の変化を望んでいるのかを痛感させられました。

また、このインタビューでとても印象に残ったことは、彼女たち6名全員の夫を含む家族が今回の留学に理解を示し、とても協力的だということです。子どもを育て、家事をしながら勉強を進めなければならない状況の中で、このような周囲のサポートは彼女たちにとって大きな心の支えとなっているはずです。これは日本社会が理想とするワーク・ライフ・バランスなのではないでしょうか。そして、将来は祖国で人々のために働きたいと語るその姿には、少しの迷いも見られませんでした。女性や社会について冷静に自らの考えを述べる彼女たちの姿に、女性のエンパワーメントを感じることができました。

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【シリーズ第2回】もお楽しみに!

3月8日は「国際女性の日」。女性のさらなる前進に向けて考えるこの日、世界各地で毎年、様々なイベントが催されます。写真は「国際婦人年」の1975年、メキシコで開かれた世界会議の開会式 © UN Photo/B Lane
今回協力してくれた九州大学大学院に留学中のエジプトからの学生の皆さん。TV会議システムを通してインタビューが実現しました
今回のTV会議によるインタビューを企画したUNIC インターン5名
進行役を務めたインターン2名。インタビューは全て英語で行われました
国連広報センターの妹尾靖子広報官。お礼と励ましの言葉でセッションを締めくくる