DPRKの人権状況に関する国連特別報告者 訪日調査終了にあたっての声明
プレスリリース 12-003-J 2012年01月20日
朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の人権状況に関する国連特別報告者 訪日調査(2012年1月16~20日)終了にあたっての声明
2012年1月20日(金) 於:日本記者クラブ
皆様、こんにちは。本日の記者会見にお越しいただき、ありがとうございます。
私は朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の人権状況に関する国連特別報告者として、2012年1月16日から20日にかけ、日本を公式訪問しました。訪日の主目的は、DPRKにおける人権状況と、日本をはじめとする地域諸国に対する影響を調査することにありました。特に、DPRK工作員による日本人の拉致問題を重視しました。今回の訪日は、2011年11月に私が行った韓国を含む近隣諸国での調査の一環として実施しました。
この5日間、外務大臣、拉致問題担当大臣、外務省総合外交政策局長、国連担当大使、外務省アジア大洋州局審議官をはじめとする政府高官の方々と数回にわたって会談しました。私はまた、国内・国際NGO、外交官のほか、DPRKの人権・人道状況に関する活動を行っている関係者の方々とも交流しました。さらに、拉致被害者家族の方々からも、時間をかけてお話を聞くようにしたほか、1977年から1978年にかけ、5人の日本人が拉致された新潟県の新潟市と柏崎市も訪れました。
新潟市と柏崎市では、新潟県警から、横田めぐみさん、蓮池薫さん、蓮池祐木子さんに対する嘆かわしい拉致行為について、丁寧な説明を受けました。1977年11月15日と1978年7月31日に3人の日本人が拉致された時の模様が、順を追って報告されました。蓮池薫さんと蓮池祐木子さんは2002年10月、日本に帰国しましたが、横田めぐみさん他11人の日本人拉致被害者については、2008年8月の日本・DPRK実務者協議でDPRKが約束した本格的調査の再開に、事実上まったく進展が見られていません。私は拉致問題に関し、DPRKが日本に対する約束を守り、残る12人の拉致被害者に関する調査を再開すべきだという立場を改めて表明したいと思います。拉致被害者も、そして日本で待つ家族の方々も高齢になりつつあることから、問題の緊急性は明らかです。この点については、満足できる成果が得られるまで、DPRKに粘り強く圧力を加え続けることが重要です。
2011年11月の訪韓調査の際にも浮かび上がった人権問題のほとんどが、今回の訪日調査でも指摘されました。日本在住の脱北者との会談で得られた情報は、DPRKにおける悲惨な人道状況、特に深刻な食料不足と厳しい人権状況を強調する数多くの報告を裏づけています。私はまた、一部の近隣諸国がDPRKからの亡命希望者を強制送還していることや、1カ月ほど前から国境警備が強化され、DPRKから逃れることがさらに難しくなっていることを聞き、懸念を深めています。
2011年11月の訪韓以後、DPRK国内では、指導者の交代という大きな動きが見られています。この変化がDPRK国民や近隣諸国にどのような影響を及ぼすかは今後、徐々に明らかになってゆくでしょう。しかし、私としては、DPRKの新しい指導層がこの変化を機に、国際社会との関わり合いを深め、世界的な信頼を確保するものと期待しています。世界はDPRKの今後の動きを注視しつつ、DPRK指導層が国民の人権状況を改善する措置を講じることを望んでいます。
私は新しい指導層に対し、人権に関する全ての疑問と懸念に応え、日本人その他外国人の拉致問題をはじめとする未解決の問題を直ちに解決するよう呼びかけます。ミャンマーでの改革プロセスの導入が広く歓迎され、善意の意思表示や関係正常化の機運が高まっているのと同じように、DPRKの国際社会との積極的な関わり合いが、あらゆる方面から歓迎されるものと私は強く確信しています。
2011年12月の政権継承以後、私はまだDPRKへの働きかけを行っていませんが、ここ数日のうちにDPRK当局に会談を打診し、同国訪問を要請するつもりです。当局が方針を転換し、DPRKの人権状況に関する独立専門家である私との接触を始めることを期待します。
最後になりましたが、私は日本政府による温かい受け入れに、深い感謝の意を表したいと思います。今回の調査中、私は話し合いを行っただけでなく、人脈を確立し、今後の訪日の際にお会いしたい個人やグループを特定することもできました。私はここ日本で、さまざまな関係者がDPRKの人権状況につき、高い関心を寄せていることに勇気づけられました。今回の訪韓・訪日調査の結果は、2012年3月の人権理事会に対する私の報告に反映されることでしょう。
記者会見の動画はこちら(日本記者クラブ YouTubeチャンネル)
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