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国連海洋会議(2017年6月5日~9日、ニューヨーク)よくある質問

プレスリリース 17-023-J 2017年05月18日

Soft coral colony below mangroves in Raja Ampat

Q:海に関する大規模な会議が必要な理由は何ですか。私たちはなぜ、海に関心を持つべきなのですか。

A:どこで暮らし、何をしているかに関係なく、海はあらゆる人にとって重要です。数十億人が主要な食料源を海に依存しているほか、数百万人が海から生活の糧を得ています。観光や貿易といった重要な経済活動も、健全な海に依存しています。海は地球の気候の重要な調整役でもあります。私たちが吸う酸素の半分を供給し、私たちが作り出す二酸化炭素の3分の1を吸収しているからです。

私たちもまた、海にとって重要な存在であり、その健全性と持続可能性を守るうえで、大きな役割を果たすことができます。例えば気候変動は依然として、海水面の上昇や、小島嶼開発途上国で沿岸コミュニティーの生活を直接に脅かしている異常気象の増大の主因の一つとなっています。海水面が50センチ上昇しただけで、カリブ海やインド洋、太平洋の標高が低い島々に住む120万人が移住を余儀なくされかねないほか、海水面上昇が2メートルに達した場合、この数はほぼ倍増するおそれがあります。

この問題に関する初の大規模な国連会議となる海洋会議は、海の健全性の低下を具体的な解決策によって逆転させるため、緊急かつ目に見える行動を起こす重要な機会となります。それは、私たちが海と地球の未来に向けて、より持続可能な道のりを描くためのチャンスでもあります。

Q:紛争やテロ、経済の低迷に世界が苦しむ中で、海洋問題に緊急に取り組まねばならないのはなぜですか。

A:私たちの海は深刻な状況に陥っています。人間の活動は、海に大きな影響を及ぼし、海洋生息環境の存続可能性から海水の水質と温度、海洋生物の健康、さらには多くの人々にとって主要な蛋白源となっている海産物の継続的入手可能性に至るまで、あらゆる要素を損なっています。

海にとっての困難は人間にとっての困難を意味します。ヒトの健康や経済的な豊かさ、安定的な気候は健全な海に依存するからです。今すぐ、海洋問題に取り組む行動を起こせば、より平等で平和な世界に欠かせない持続可能な開発の促進は、大きく前進することでしょう。

Q:なぜ国連海洋会議はThe Ocean Conferenceと呼ばれるのですか。大海は5つあるのではないですか。

A:世界の海はたった一つです。それは地球の表面の70%以上を覆う巨大な水塊なのです。水は全世界を流れ、混ざり合うからです。ある場所で起きた海洋汚染は、あらゆる場所で姿を見せかねません。

私たちが普通、5大海と呼ぶ北極海、太平洋、大西洋、インド洋、南洋は、それぞれ海洋地域と呼ぶほうが適切です。また、海から湾、河口などへと流れる多数の小水域もあります。

Q:これまで他の海洋会議も開催されてきましたが、国連海洋会議が特に重要なのはなぜですか。

A:海洋問題に対する関心と、これに取り組む活動が盛り上がりを見せています。今後に向けて、この勢いを活用し、維持していくうえで重要な時期が訪れています。国連海洋会議は、各国が初めて、海の健全性に関する持続可能な開発目標(SDGs目標14)の達成を中心に取り扱う国連会議の開催に同意したことを受けて開催されるものです。国連はこの問題を、はるかに幅広いグローバルな次元で考えることになります。

Q:国連海洋会議では何が達成されるのですか。

A:国連海洋会議は、私たちの海の劣化を逆転させるための第一歩になります。国連海洋会議は、各国政府や国連システム、その他の政府間組織、国際金融機関、非政府組織、市民社会団体、学術機関、学会、民間セクター、慈善団体その他の関連主体を含め、海の健全性に利害関係のあるほとんどすべての集団が参集します。

会議は、私たちの海の現状に対する認識を高める場としての役割を果たすだけでなく、グローバルな行動の呼びかけを発し、解決策の実施を目指す新たな対話とパートナーシップを作り上げることにもなります。また、多くの参加者は会議のウェブサイトで、個別またはパートナーシップにより実施される新規の海洋イニシアティブ、すなわち自主的コミットメントを発表、登録することが期待されています。その他、既存のプログラムやイニシアティブの進捗状況や課題について報告する参加者もいるでしょう。

Q:何か具体的な成果やコミットメントは期待できますか。

A:国連海洋会議では、3つの重要な成果が期待されています。まず、国連加盟国は、コンセンサスにより「行動の呼びかけ」を採択します。これは、私たちの海のために、より持続可能な未来に向けた道のりを定める簡潔で焦点を絞った具体的な宣言の役割を果たします。しかし、国連海洋会議は、各国政府がこの問題に対処するために何ができるかということだけを話し合う場ではありません。私たち全員がその規模に関係なく、どのように貢献し、自分の役割を担っていけるのかという課題にも取り組みます。

2017年2月の準備会合では、国連がSDGs目標14の実施に向けた自主的コミットメントをオンラインで登録するプロセスを発足させました。自主的コミットメントとは、各国政府や国連システム、金融機関、市民社会、学術研究機関、学会、民間セクターを含むあらゆる関係者が個別または連携して取り組むイニシアティブを指します。その中には、海洋環境を守るための取り組みから、海洋汚染に歯止めをかけるための取り組み、海洋酸性化の影響に対する取り組みに至るまで、SDGs目標14の異なるターゲットに取り組むさまざまな国内的、地域的、世界的なイニシアティブが含まれる可能性があります。自主的コミットメントの一覧は、国連海洋会議の報告書に盛り込まれる予定です。

国連海洋会議報告書には、パートナーシップ対話に関する共同議長サマリーも含まれる予定です。このパートナーシップ対話は、SDGs目標14の全ターゲットを対象に、協力の強化、すでに成果を収めている取り組みの拡大と反復、および、目標14の実施を前進させる具体的で新たなパートナーシップの発足をねらいとするものです。

Q:前進を図ることが必要な分野としては、どのようなものがありますか。

A:海上を漂うプラスチック廃棄物の山の増大をはじめとする海洋汚染を防止、浄化するための取り組みを含め、今すぐにでも取りかかれる行動は多くあります。最終的には海に流れ込んで、生物が生きられない「デッドゾーン」を作り出している農業排水の削減など、海洋汚染の80%の原因となっている陸上からの汚染を緩和する緊急の措置が必要です。

また、魚の乱獲や違法、無届、野放しの漁業、さらには破壊的な漁法に終止符を打つための対策も必要です。私たちは、地域密着型の保全措置の増大や教育、意識向上により、海洋・沿岸生態系を持続可能な形で管理、保護、保全するためのステップを踏む必要があります。気候変動に関するパリ協定の履行も必要です。私たちの海の姿を変えている排出物を削減する一方で、海洋酸性化や、海水面上昇などの気候変動の影響に対するレジリエンスを構築する措置をとらねばならないからです。SDGs目標14の各ターゲットは、前進が必要な分野の概要を示しています(https://sustainabledevelopment.un.org/sdg14)。

Q:気候変動は私たちの海にどのような影響を与えていますか。

A:気候変動によって、海水面は上昇し、沿岸部は浸食され、沿岸コミュニティーが脅威にさらされています。異常気象や気候イベントがその頻度と激しさを増していることも明らかになっています。海は温暖化し、すでにサンゴ礁をはじめとする海洋の生物多様性に影響が出ています。

海水温の変化も、多くの魚種の移動パターンに影響を与え、より冷たい水域へのシフトが見られます。また、海による二酸化炭素吸収量の増大の結果により生じた海洋酸性化は、甲殻類やサンゴ礁、さらには海洋食物連鎖の基盤となる石灰質プランクトンの消失につながる深刻な脅威となっています。

Q:海洋汚染はどのくらい進んでいるのでしょうか。

A:毎年、800万トンを超えるプラスチックが海に流れ込み、海洋野生生物や漁業、観光に大きな打撃を与え、海洋生態系に80億ドル以上の被害を及ぼしています。プラスチック廃棄物は毎年、海鳥100万羽、海洋哺乳類10万匹、そして数えきれない魚の命を奪っているものと見られます。プラスチック廃棄物は何年も私たちの生態系に留まり、毎日数千の海生生物を傷つけることになります。

私たちは、政策やリサイクルへの取り組み、より責任ある消費手段などを通じ、今すぐ海洋投棄物を廃絶するための取り組みに着手し、私たちの海に取り返しのつかない損害が及ばないようにせねばなりません。私たちが今すぐに行動を起こさず、これまでと同じペースでペットボトルやビニール袋、カップの使い捨てを続ければ、海は2050年までに、魚よりも多くのプラスチックの住処となり、海鳥の99%がプラスチックを摂取することになると見られています。

Q:リサイクルは海のプラスチック汚染緩和に本当に役立つのですか。

A:はい。海洋投棄物の60%から90%はさまざまなプラスチックポリマーでできているため、すべてのプラスチックを使い捨てにせず再利用し、海岸での廃棄物回収を改善することは、海洋汚染に取り組む主な解決策の一つとなるでしょう。

最近の推計を見ても、世界では2015年に約3億2,200万トンのプラスチックが生産され、約800万トンが海に投棄されていることがわかります。リサイクルは、私たち全員がこのグローバルな課題に取り組み、汚染を削減することに貢献できる一つの重要な方法です。プラスチック廃棄物を捨てず、減らす(リデュース:reduce)、繰り返し使う(リユース:reuse)、再び利用する(リサイクル:recycle)の3Rを心がけるとともに、自分自身の消費習慣を見直してください。ゴミの投げ捨ては大問題とはなっても、解決策とはなりません。捨てられたごみが消え去ることはないからです。

Q:国連海洋会議は持続可能な開発目標(SDGs)の達成にどのように貢献するのですか。

A:国連海洋会議は、海洋と海洋資源の保全と持続可能な利用への取り組みを主眼とするSDGs目標14の実施支援を重点的に取り上げます。この目標の達成を目指す行動は、17の目標全体の達成努力を支援することにもなります。健全な海は貧困の根絶、食料の安定確保、健康、安全な水、再生可能エネルギー、持続可能な生活とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、経済成長、気候調整に直接的に貢献するからです。

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海と海洋法