中央アフリカ共和国から国連へのメッセージ:「欲しいのは平和だけ」
2017年10月27日
2017年10月23日 – ここはかつて「死の橋」と呼ばれ、中央アフリカ共和国(CAR)の首都で敵対勢力が激しい戦闘を繰り広げていた場所です。橋が血で真っ赤に染まったという話も語り広められ、政府の治安部隊さえ、足を踏み入れるのに躊躇するようなところでした。
その後2014年になり、国連平和維持活動が同国に展開されると、民兵組織を集め、コミュニティの和解を図ろうとする取り組みが始まりました。しかし、地域のリーダーが国連の平和維持要員と力を合わせ、民兵組織に武装解除と橋の再開通を呼びかけたのは、2016年10月になってからのことでした。
この橋は現在、単にヤキテ橋と呼ばれています。国連平和維持ミッションによる安定化への取り組みもあり、激しい紛争で疲弊した首都バンギのPK5(ペーカーサンク)地区にあるこの橋は、多くの車と、現地のキリスト教徒、イスラム教徒双方の商人でごった返しています。
バンギ郊外のこの商業地区はいま、普段の仕事に戻ろうと努める零細商人であふれています。カメルーンやチャド、コンゴ民主共和国など、暴力を逃れて避難していた近隣国から帰って来た商人も多くいます。
地区代表者のひとり、ラワディ・イスマエルさんは「私たちは平和を求めています。和解したいとは思っていますが、イスラム教徒殺害はまだ続いています」と語りました。また、イスマエルさんは「2013年に戦闘が始まってからも、私はここを離れませんでした。今は徐々に仕事を再開できていますが、こうしたイスラム教徒への攻撃を止めなければなりません」と付け加え、政府の姿勢を消極的だと非難する一方で、国連平和維持ミッションのMINUSCAに、保護の強化を要請しました。
動画:中央アフリカ共和国での平和維持活動
私たちは、国連中央アフリカ多面的統合安定化ミッション(MINUSCA)の合同パトロールに同行し、PK5地区に向かいました。2013年に勃発した内戦で、イスラム教徒を主体とする反政府勢力「セレカ」と、キリスト教徒を主体とする民兵組織「アンチバラカ」が何度も衝突を繰り返した場所です。
ここでは、特殊な空撮監視ユニットが、生の情報収集能力で巡視を支援しています。気球に取り付けられたカメラと、車両搭載型の無人機3機が、統合作戦センターにリアルタイムで画像を送信し、群衆の動きや潜在的脅威を知らせています。これを用いることで、パトロール部隊を治安維持が必要な場所に展開しつつ、そのメンバーを守ることもできます。
テクノロジーが平和維持要員を支援しているにもかかわらず、特に最近では国内の南東部と中部で、しばしば少数者のコミュニティを狙った攻撃が生じているため、和解はなかなか進んでいません。
36人規模のルワンダ小隊を率いるジャンマリー・ビアンネイ司令官は「警察要員はほとんど、私たちが容疑者を捕まえた時に支援に駆けつけます。武力行使が必要な際には、軍事要員が主導権を握ります」と説明しながら、12人のカメルーン警察部隊(FPU)とともに、PK5に向かいます。
「私たちは住民を安心させ、無法者の出鼻をくじく必要があります」こう語るのは、カメルーンから派遣されたMINUSCA警察要員エプバ・マーティーン・マーシャル巡査部長です。
著しい前進と選挙の成功、そして、安定度を高め、ガバナンスを支援し、人道援助を提供する国連要員の駐留にもかかわらず、CARでは情勢不安と散発的な騒乱が続いています。
情勢の悪化により、国民の約4分の1が自宅からの避難を強いられており、2017年初以来、国内避難民(IDP)の数は60万人に達する一方、近隣国に逃れた難民の数は50万人を超えています。
中央アフリカの国内、国外の避難民が100万人を超える中で、バンガスーでは、国内避難民キャンプで暮らす人々の数が1,800人に達し、さらに増加を続けています。
「国連デー」にあたる10月24日、この地を訪れるアントニオ・グテーレス事務総長は、2017年1月以来、武力攻撃を受けて殉職した平和維持要員12人を追悼する予定です。
グテーレス事務総長は「国内全土で、異なる集団間の緊張が高まり、暴力が広がり、人道状況は悪化しています」と語り、世界でも有数の危険地域の最前線で活動する平和維持要員とともに「国連デー」を記念することを約束しています。
事務総長は安全保障理事会に提出した同国に関する最新報告書の中で、900人のMINUSCA兵員増強を要請しています。
MINUSCA部隊司令官を務めるバラ・ケイタ中将は、この兵員増強がミッションによる状況安定化に資することを明言しつつ「平和維持活動にとって、軍事的な解決策はありません。全当事者の真摯な交渉による政治的解決が必要です」と指摘しています。
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