事務総長が訪日 経済成長のきっかけを作るユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の力を強調(東京、2017年12月14日)
2017年12月20日
2017年12月14日 – アントニオ・グテーレス事務総長はきょう、健康があらゆる人の権利であるとともに、経済発展を推進する要素でもあると強調し、各国の国民皆保険制度に向けた歩みを支援する用意が国連にあることを明らかにしました。
「私たちの目標は、すべての人の身体的、精神的福祉を保護、促進することとせねばなりません。健康は前進の成果であると同時に、これを推進するものでもあります」グテーレス事務総長は、東京で開催中の世界会議「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)フォーラム」で、このように挨拶しました。
また、事務総長は「それは、より持続可能で包摂的、かつ豊かな未来という私たちのビジョンにおいても、中心的な位置を占めています(…)。私たちが健康、特に女性と青少年の健康に投資すれば、より包摂的でレジリエントな社会を構築できます」と付け加えました。
事務総長は、安倍晋三総理大臣が開発途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジのプログラムの資金として29億ドルの供与を表明したことを称賛するとともに、日本が最初にユニバーサル・ヘルス・カバレッジの力を実証した国の一つであり、1961年に導入された国民皆保険制度は、その後数十年間にわたる経済成長のきっかけになったという認識を示しました。
来年9月は「すべての人に健康を」という目標を定めたことで有名な「アルマ・アタ宣言」採択40周年にあたります。
グテーレス事務総長は、最近の数十年間にわたる集中的な投資のおかげで、多種多様な健康面の課題につき、歴史的な前進が見られていることを指摘しました。
事務総長は「近代的な避妊手段を利用できる女性が増えています。予防接種も普及してきました。抗レトロウイルス薬を利用できるHIV感染者も増えました。マラリアの感染リスクにさらされた人々はますます、殺虫剤を塗布した蚊帳の中で眠るようになっています。また、ポリオをはじめとする病気を撲滅する目処も立っています」と述べています。
しかし、大きな不平等によって、最も脆弱な立場にある人々は依然として置き去りにされています。あまりにも多くの人々にとって、健康は物理的または金銭的に手に入れることができないか、まったく手の届かないものとなっています。医療費の自己負担により毎年、およそ1億人が貧困ライン未満に転落していると見られます。
“健康は単に、病気のない状態を指すのではありません。私たちの目標は、すべての国のあらゆる人の身体的、精神的福祉を全体として達成することとせねばなりません” -グテーレス国連事務総長
しかも、抗菌薬耐性や気候変動の影響、非伝染性疾病の蔓延など、新たな脅威も生まれてきています。
そのすべてに対処するためには、各々のコミュニティー独自のニーズに効果的かつ公平に対応できる、さらに統合的な保健制度が必要となります。
グテーレス事務総長は、健康に1ドルを費やせば、1世代のうちに所得が全体として最大20ドルの拡大を遂げることを指摘し、こうした投資を実現するためには、政治的コミットメントが不可欠になると強調しました。
事務総長は「もちろん、万能薬と呼べる解決策はなく、各国はユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に向け、それぞれの道を歩まなければなりません」と述べ、この点に関する国連の支援を約束しました。
「平和が単に紛争のない状態を指すのではないのと同様、健康も病気のない状態を指すのではありません。救急絆創膏や1回分の薬も確かに大事ではありますが、それだけが私たちの目標ではありません。私たちの目標は、すべての国のあらゆる人の身体的、精神的福祉を全体として達成することとせねばなりません」事務総長はこのように結論づけています。
事務総長は2019年、ユニバーサル・ヘルス(UHC)カバレッジに関する総会ハイレベル会合の招集を予定しています。
安倍総理との会談
会議出席後、グテーレス事務総長は安倍総理との会談を行いました。会談後の記者会見に臨んだ事務総長は、日本が国際システムを担う柱の一つであると発言し、政府の国連に対する多くの分野での強力な支援に対し、謝意を表しました。
グテーレス事務総長はまた、予防と持続可能な開発に関する自らの優先課題を反映するものとして、人間の安全保障における日本のリーダーシップを強調しました。
朝鮮半島情勢に関し、事務総長は、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)とその他すべての国が、安全保障理事会決議を全面的に履行する必要性を強調しました。そして、半島の非核化を目指し、安保理メンバー15カ国の結束を求めるとともに、この目標を平和に達成するための外交的やり取りを可能にする必要性を訴えました。
事務総長は「私たちにとって起こり得る最悪の結果は、無意識のうちに、極めて悲劇的な状況をもたらしかねない戦争へと歩を進めてしまうことでしょう」と述べています。
事務総長はまた、上智大学で「グローバル課題~『人間の安全保障』の役割~」と題する特別講演を行い、核の脅威や人々の大規模な移動、不平等の拡大など、現代世界が直面する課題に触れました。
事務総長によると、このような課題への解決策は、予防に強い力点を置きつつ、思いやりのある、合理的で、賢明な利己心に基づくものとせねばなりません。事務総長はその一方で、予防への投資が残念ながら不十分であると付け加えました。
事務総長はこれに続き、国連の「アカデミック・インパクト(UNAI)」プログラム参加大学の学生約40人と対話を行いました。
これに先立ち、事務総長は午前中、国際協力機構(JICA)の北岡伸一理事長とも会談し、JICAの国連との密接な協力に感謝しました。
グテーレス事務総長は、自らの取り組みの重点が予防と持続的平和にあることを強調するとともに、平和、開発、人道援助の関連性に取り組む人間の安全保障というコンセプトの推進で日本が果たした役割に謝意を表明しました。
事務総長は離日にあたり、日本記者クラブで記者会見を行いました。
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