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「平和は依然として実現できていない」と警告し、事務総長が2018年の重点分野を発表

2018年01月23日

総会の非公式会合で、2018年の懸案事項について説明するアントニオ・グテーレス事務総長©UN Photo/Eskinder Debebe

2018116 – 平和への呼びかけを2017年のモットーとして就任したアントニオ・グテーレス国連事務総長はきょう、世界が「その逆の方向へ向かっている」と述べ、新年に当たって対策が必要な重要分野として、気候変動、朝鮮半島の核問題、中東紛争、ロヒンギャ危機などの課題を挙げました。

「昨年、私は就任の際に、2017年を平和の年とするよう呼びかけました。そして1年後、私たちは平和は依然として実現できていないことを認めなければなりません」事務総長は、2018年の最重要懸案事項に関する国連加盟国への非公式ブリーフィングで、このように述べました。

紛争は深刻化し、新たな危険が生まれ、核兵器に対する世界的な不安は冷戦終結以来、最も高まっており、気候変動は私たちの対策を上回る速さで進行している、と述べています。

事務総長はさらに、不平等が拡大し、恐ろしい人権侵害が続き、ナショナリズム、人種主義、そして排外主義が台頭してきていると付け加え、「世界をよりよい未来へとつながる道へと導くための」結束と勇気を固める必要性を強調しました。

「私たちの世界をより安全で持続可能に、そして人々が安心して暮らせるようなものにすることは、誰にでもどこででもできます。逆風や憎悪が吹き荒れる中でも、私たちは国連憲章の価値を堅持しなければなりません」 グテーレス事務総長

事務総長は、国連の優先課題を定めるのは、加盟国の役割であることを指摘したうえで、注視すべき世界のいくつかの地域について触れました。

 朝鮮半島に関し、グテーレス事務総長は、惨禍へと無意識のうちに歩みを進めることを回避する必要性を改めて強調しました。

この関連で、事務総長は、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)による核実験と弾道ミサイル発射に対し、安全保障理事会が断固とした決定を下したことを歓迎する一方で、南北朝鮮間、特に軍事当局間の通信チャネルの再開も歓迎しました。

事務総長はまた、DPRKが韓国で間もなく開かれる冬季オリンピックへの参加を決定したことにも勇気づけられていると述べました。

「私たちは、こうした小さな希望の兆しを積み重ね、地域安全保障の文脈において、朝鮮半島の平和的な非核化を達成するための外交努力を広げていく必要があります」と事務総長は語っています。

イエメン、シリア、イラクを含む中東全域に関し、事務総長は、情勢がゴルディアスの結び目のように複雑化していると指摘し、「混乱の収拾を図る」必要性を強調しました。

事務総長は「相互に関連する火種が多く存在し、紛争が一気に激化するリスクが現実のものとなっています」と述べています。

イスラエル・パレスチナ間の紛争に関し、事務総長は、2国家共存に代わる解決策はないことを強調しました。

事務総長はまた、ヨーロッパに見られるナショナリズムという危険な潮流を逆行させる必要性、および、ウクライナ東部、ナゴルノ・カラバフ、ジョージア、沿ドニエストルに関する調停への取り組みを活性化する必要性も強調しています。

さらに、バルカン西部でも、長期的な安定につながる解決に向けた協調的な取り組みが急務となっていると付け加えました。

グテーレス事務総長は、ミャンマーから国外に逃れた多数のイスラム教徒ロヒンギャの帰還を図る必要性にも触れ、政府に対し、ラカイン州で人道援助の自由なアクセスを確保するよう呼びかけるとともに、国際社会に対しても、バングラデシュに逃れたロヒンギャを支援するよう訴えました。

グローバリゼーションの利益分配は不平等

グテーレス事務総長は、公平なグローバリゼーションを実現するために、真の「ニューディール」を推進する必要性を強調しました。事務総長は「世界で最も豊かな8人が、世界人口のうち貧しいほうの半分の人々と同じだけの富を保有しているとしても、それは単なる偶然ではありません」と述べています。

世界経済と国際貿易のあり方は、人間が行った選択の結果だからです。「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、誰一人取り残すことなく、すべての人にとって豊かで平和な社会を構築するための大胆なビジョンです。「この目標を達成するための資金の調達は欠かせません」事務総長はこのように述べました。

事務総長はまた、気候変動対策における野心をさらに大幅に高める必要性も強調しました。

「2016年には、二酸化炭素の排出量が3年ぶりに増加に転じました。最近の5年間は、史上最も暑い期間となっています」と述べ、温室効果ガス排出量のさらに思い切った削減のほか、気候変動への適応、不可欠なエネルギー転換の実現に向けて国際社会を動員するため、来年、気候サミットを開催する予定であると付け加えました。

移住に関し、グテーレス事務総長は、プラスの効果をもたらすグローバルな現象であるとの見解を示し、その意味で、安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクトの採択は、今年の重要な任務の一つとなると述べました。

技術進歩に関し、事務総長は、第4次産業革命から利益を得ながら、その脅威を防ぐことが重要だと述べました。

技術進歩は、現在の最も差し迫った課題に対する解決策を提供できる一方で、技術は不平等を拡大させるおそれもあります。

グテーレス事務総長は、アフリカ連合(AU)と国連のパートナーシップを強化し、テロ対策に引き続き焦点を絞り、国連平和活動を強化するとともに、人権と国家主権の間にある偽りの矛盾を克服する必要性も強調しました。

事務総長は「事実、人権と国家主権は両立します。人権の実現は、国家と社会を強化することにより、主権をさらに強固なものとするからです」と事務総長は述べました。

女性のエンパワーメント – 分野横断的な課題

事務総長は分野横断的な責務の一つとして、女性のエンパワーメントを挙げました。

事務総長は、国連のあらゆるレベルで職員の男女同数を達成するためのロードマップを発足させ、44人で構成される国連のシニア・マネージメント・グループで、完全な男女同数を達成したことを明らかにしました。

また、女性に対する性的搾取と虐待の予防のほか、セクシュアル・ハラスメントの予防と対策にいかに取り組んでいるかについても説明しました。

「私たちのあらゆる課題に、あらゆる場所で取り組むためには、時間と資金、労力、政治資源その他の投入が必要となります。加盟国はそれぞれリーダーシップを発揮しなければなりません」と事務総長は述べています。

「しかし、私たちの世界をより安全で持続可能に、そして人々が安心して暮らせるようなものにすることは、誰にでもどこででもできます」事務総長はこのように発言を締めくくりました。

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原文(English)はこちらをご覧ください。