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気候変動対策合意は「不可欠な出発点」と潘事務総長

プレスリリース 09-071-J 2009年12月22日

潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は2009年12月19日、世界の指導者がコペンハーゲンにおける国連のサミットで達成した合意を、あらゆる重要な側面での前進を取り入れた「不可欠な出発点」として歓迎しつつも、今後はこの合意を法的拘束力のある条約に作り変えるよう、集中的な取り組みを行わねばならないと付け加えました。

コペンハーゲン会議に参加した194カ国の代表は、夜を徹した話し合いの結果、世界数カ国の指導者がこぎつけた合意の実施に向けて取り組むことに同意しました。この合意は、デンマークの首都コペンハーゲンでの2週間にも及ぶ交渉の末に成立したものです。

「ついに合意ができ上がりました。それも実質的な合意です。世界の指導者が一堂に会した甲斐はありました。温室効果ガスの排出量を抑制、削減し、もっとも弱い立場にある人々の適応を支援し、新たなグリーン成長の時代を切り開く、真にグローバルな合意に向けた基盤が固まったのです」。潘事務総長は19日、議場に集まった記者団にこう語りました。

「コペンハーゲン合意は誰もが望んだことをすべて実現できたとはいえませんが、締約国会議のこの決定は一つの出発点、それも不可欠な出発点だといえます」

事務総長は、9月にニューヨークで開かれた気候変動に関する特別サミットで定めた4つの成功基準に触れ、そのすべてについて成果が得られたと述べました。

「すべての国々は、地球の気温上昇を摂氏2度未満に抑えるという共通の長期目標達成に取り組むことで合意しました。多くの政府は、排出量の削減または抑制に向けて重要な公約を行いました。森林保全で大きな前進を遂げた国もあります。そして各国は、もっとも弱い立場にある人々が気候変動に対処できるよう、包括的な支援を提供することでも合意しました」

事務総長は、これら公約の裏づけとして、より貧しい国々の短期的な適応と軽減措置の支援に向け、300億ドルの拠出誓約が行われたほか、これら目標達成のために、2020年までにさらに1,000億ドルの資金拠出が約束されたと述べました。

合意では、多くの国々が発表した気候変動対策目標を国際的合意に作り変えるメカニズムも定められています。付属書では、先進国がその温室効果ガス排出量削減目標と資金供与額を掲げる一方で、開発途上国は監視または審査が可能な軽減・適応プロジェクトを登録することになります。

しかし事務総長は、コペンハーゲン合意を法的拘束力のある条約に作り変えるためには、これから重大な作業が控えていると強調した上で、その実現に向け、世界の指導者たちと密接に連携してゆくつもりだと述べました。

貧しい国々が気候変動に適応し、その影響を軽減する手助けとして定められたいわゆる「コペンハーゲン・グリーン気候基金(Copenhagen Green Climate Fund)」をできるだけ早く発足させることで、必要な国々への援助提供を開始し、クリーン・エネルギー・プロジェクトに着手できるようにせねばなりません。

潘事務総長は、各国による現状の軽減公約が「科学的な結論に見合わない」ことを認めました。ノーベル平和賞を受賞した気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の研究結果によると、地球温暖化の最悪の影響を回避するためには、先進工業国が2020年までに、その排出量を対1990年比で25%から40%削減するとともに、全世界の排出量を2050年までに半減させねばなりません。

「私たちは依然として、深刻な現実に直面しています。ですから私は、コペンハーゲンで合意ができたことに満足しつつも、これが出発点にすぎないことを認識しています。気候変動に決定的な手を打つためには、これ以上の取り組みが必要ですが、それでも正しい方向への一歩が踏み出されたことに違いはありません」

ロバート・オア国連事務次長補はコペンハーゲン会議について、複雑性という点では「断トツ」ではないかと述べました。

実際の交渉には、重要な国々または様々な国家グループを代表する首脳28人が積極的に参加しました。コペンハーゲン合意はコンセンサスにより認識されたもので、個々の国々が合意に関わるための手続きも設けられています。

オア事務次長補は、この合意には欠陥が多いとする向きも各国代表の中にはあるものの、これが気候変動交渉の進展につながるだろうと信じる国々のほうが圧倒的に多いとも述べました。

アッヘム・シュタイナー国連環境計画(UNEP)事務局長は、この合意が「おそらく一部が期待した大きな突破口には当たらないものの、時には可能性として浮上した交渉の決裂にも当たらない」と述べています。

「先進国の意欲を測るリトマス試験はある意味で、この後すぐにやって来るでしょう。合意で約束された資金が迅速に、かつ、発表された規模で流れ始めれば、新しい国際的な気候変動対策が生まれたのも同然だからです」

シュタイナー事務局長は、最終合意が大小、貧富を問わず、各国の異なる国益や経済的利益の妥協の産物であることを強調しました。

「190カ国以上の国々を、より包括的な地球温暖化対策へと同じドアから導き入れることには、多くの困難が伴ったものの、最終的にこれは可能であることが判明しました。2009年12月19日がまさに、危険極まりない気候変動への対策を加速し、森林をはじめとする経済的に重要な生態系の持続可能な管理を実現するうえで歴史的な日であったかどうかは、やがて時が判断することになるでしょう」