ユース2030:事務総長、若者が「リード」する大胆な新戦略を発表
2018年11月02日
2018年9月24日-国連事務総長はきょう、全世界で18億人の若者との間で新たなパートナーシップを立ち上げ、「若者のアイディアをアクションに移す」ための支援を表明しました。
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アントニオ・グテーレス国連事務総長は、新たな「YOUTH2030(ユース2030)」戦略を立ち上げるにあたり、国連でこれだけ多くの若者の顔を見られることは「めったにない素晴らしいもてなし」だと述べ、今日の「史上最大の若者世代」が直面する課題を列挙しました。
事務総長は「グローバリゼーション、新たなテクノロジー、避難民の発生、市民が活躍できる場の縮小、労働市場の変化と気候変動の影響」が、あらゆる場所で若者に大きな圧力を加えていることを指摘するとともに、若者の5分の1以上が就職も就学も訓練もできず、4分の1が暴力や武力紛争の影響を受けており、若者は依然として開発プログラムから排除され、和平交渉で無視され、最も国際的な意思決定において発言を認められていないと付け加えました。
同時に、事務総長は若者が「イノベーションやアイディア、解決策の巨大な源」として、技術変革や気候変動対策、包摂性、社会的正義を推し進めていることも指摘しました。
「若者のエンパワーメントと支援を図り、その潜在能力を発揮できるようにすることはそれ自体、重要な目標です。私たちは、あらゆる場所のあらゆる人々にこれを確保したいと思っています」と事務総長は強調しました。
さらに、より平和で持続可能、かつ豊かな世界を目指す2030アジェンダを達成するために「私たちは若者にリードしてもらう必要がある」と付け加えました。
事務総長は「ユース2030:国連ユース戦略」を提示するにあたり、これを「若者の参画、特にそのエンパワーメントを図るための国連の戦略」と呼びました。(日本語訳はこちら)
事務総長は、国連が数十年にわたり、若者のために活動してきたと述べるとともに、今回の新戦略が「若者のニーズを理解し、そのアイディアをアクションに移すのを助け、その見解を私たちのプロセスに確実に反映するという点で」国連を若者と一緒に活動する「リーダー」にするだろうとの期待を表明しました。
「私たちは、自分たちが変わる中で、私たちのパートナーも同様に変化するよう働きかける」とともに、新たなパートナーシップも促進すると語り、事務総長は以下の5つの鍵となる分野を明らかにしました。
- 若者を巻き込み、その声を拡大するための新たな道を切り開く
- 教育や医療への若者のアクセスに国連がさらに注力する
- 訓練と雇用を重視しつつ、若者の経済的エンパワーメントを開発戦略の前面に据える
- 若者の権利や市民的、政治的参画を確保するよう努める
- 紛争や人道危機に見舞われた若者に関し、その和平プロセスへの参加を含めた支援を優先課題とする
きょうは若者にとって、国連での新時代の幕開けにあたります–国連事務総長
事務総長は「きょうは若者にとって、国連での新時代の幕開けにあたります」と述べ、あらゆる人にその前進を促しました。また、加盟国に対しては、国レベルで若者に投資し、そのエンパワーメントを図るよう求め、企業に対しては、若者に技能と機会を提供するよう働きかけ、市民社会に対しては、はっきりと意見を述べ、圧力を維持するよう呼びかけました。
そしてすべての若者に対し、グテーレス事務総長は強く訴えました。「参加してください。自主的に行動してください。投票に行ってください。そして自ら、解決策の一部となってください」
事務総長は「私たちはパートナーとして、そしてリーダーとして、皆さんを必要としています。平和で、より持続可能な世界を構築するためには、皆さんの力が必要なのです」と締めくくりました。
ヘンリエッタ・フォア国連児童基金(UNICEF)事務局長は、若者たちとしばしば膝を突き合わせ、そのアイディアや熱意、将来に向けたビジョンについて聞き、これを共有したことを語りました。
また、失業や教育の欠如、家庭内暴力あるいはオンラインや学校、地域社会での暴力など、若者の心配事にも耳を傾けてきました。
事務局長は「少女たちは、自分が女性であるという理由だけで差別や暴力に遭っていることを不安に思っています」と嘆きました。
2030年までにすべての若者に就学、訓練または雇用を確保することを目指すマルチパートナーシップ型の取り組み「Generation Unlimited(ジェネレーション・アンリミテッド/無限の可能性を秘めた世代)」の発足にあたり、フォア事務局長は政府や企業、財団、学界、NPO、コミュニティー、そしてイノベーターに対して「最新鋭の解決策と新しいアイディア」による支援を呼びかけました。
「私たちの時代、私たちの番、私たちの無限の未来」フォア事務局長は国連本部に集まった聴衆の歓声を受け、このように宣言しました。
「巨大な世代が私たちの世界を引き継ごうとしている」ことを指摘しつつ、フォア事務総長は「若者のために、そして何よりも大切なのは若者と一緒に、希望と機会という遺産」を残そうと述べて締めくくりました。
開会の辞を述べたジャヤトマ・ウィクラマナヤケ・ユース担当事務総長特使は、ユース戦略とGen-Uパートナーシップの発足が「簡単な話ではなかった」としながらも、慣例を破り、若きチェンジメーカーや活動家を受け入れて高官の前で発言するよう促すなどして、直ちに現状を揺り動かすことに着手したといいます。
国際医学生連盟のバトゥール・アルワダニ氏は、ユース代表として発言し、自分の未来について日々考え、常に行動の必要性を意識しながら、型破りな考えで課題の解決に取り組んでいると語りました。
「若者の団体でボランティアに参加したり、身の回りで大きな行動を起こしたり、参画の場を求めたりしています」と語るアルワダニ氏。「私たちには、今ある世界最大の課題でさえ解決して余りあるほどの希望や夢、決意、そしてエネルギーがある」ことを指摘しました。
売春を強要されたり、社会から隔絶されたり、空腹を抱えたり、教育を受けられなかったり、失業していたりしていることで、今日の会合に参加できなかった人々の声も代弁し、アルワダニ氏は若者自身に対し、新たなテクノロジーを用いてイノベーションを起こし、雇用を創出し、教育格差を縮め、人権を擁護するとともに、自助のための静かな革命を起こすよう呼びかけました。
「私たちにリーダーとなる権利があることはわかっています。それは今日だけでなく、明日だけでなく、あらゆる瞬間に当てはまるのです」アッワフダニ氏はこのように語り、参加者全員に対し、その結果を受け入れることになるのも若者であるという点を改めて強調しました。
健康、教育への投資
一方、ジム・ヨン・キム世界銀行総裁は、自らの2人の息子たちがその他数十億人の若者とともに受け継ぐことになるこの世界について、個人的な懸念を表明しました。
キム総裁は、母国である韓国がこの数十年間にわたり遂げてきた成功について触れ、次のように述べました。「夢や希望に見合う機会があれば、力強い経済成長が生まれます」
総裁は、韓国が「健康や教育をはじめ、必要なものすべて」に投資したからこそ、自分自身が世界銀行総裁になれる機会を得ることができたし、イベントに同席した韓国のポップグループBTSが音楽とエンターテインメントの世界で大成功を収められたと説明しました。
キム総裁は「仕事の性質が非常に速く変わりつつあり、これに対応する準備ができていない国が数多くあります」と指摘し、これからの仕事にはさらに高度なデジタル能力や根気強さ、確固たる決意が必要になっていくだろうと語りました。
15歳から30歳までの若者18億人のうち、開発途上国では5億人が失業または雇用不安に陥る一方で、就業も就学もしていない若者が3億人いることを指摘し、「私たちは並外れた人口構造の変化期を迎えている」ことをキム総裁は強調しました。
1960年代と70年代に米国の若者たちが「30歳を超えた人間を信じてはいけない」と言っていたことを引き合いに出し、総裁は若者に対して、「30歳を超えた人々を信頼し、皆さんの未来に影響する最も重要な決定を下して」もらわないよう助言しました。
キム総裁は「健康と教育にどれだけ投資するかを、私たちに決めさせないでください」と述べ、若者に対し、誰もがなりたい自分になれるよう、十分な投資を執拗に求めることを促しました。
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原文(English)はこちらをご覧ください。
「ユース2030:国連ユース戦略」の日本語訳はこちらをご覧ください。