世界はより持続可能な未来のための青写真を採択し、 汚染で劣化した地球を保護すると約束
プレスリリース 19-019-J 2019年04月09日
UNEPプレスリリース
ナイロビ、2019年3月15日 – 世界はきょう、環境課題への取り組みにイノベーションが活用され、使い捨てプラスチックが大幅に削減され、開発が地球に負担をかけなくなるような、より持続可能な未来への根本的なシフトを図るための基盤を整備しました。
ナイロビで開かれた第4回国連環境総会での5日間にわたる話し合いの末、170を超える国連加盟国から出席した閣僚は、大胆な変革の青写真を採択し、2030年を達成期限とする持続可能な開発目標(SDGs)で定められたビジョンを実現するためには、世界が新たな開発モデルに向けた動きを加速する必要があるという点で合意しました。
地球はますます汚染され、急激に温暖化し、危険な枯渇状態にあることを示すエビデンスの蓄積に深い懸念を表明しつつ、各国閣僚は、革新的な解決策を前進させ、持続可能な消費と生産のパターンを採用することにより、環境課題に取り組むことを約束しました。
「私たちは、貧困を根絶すること、持続不可能なパターンに代えて、持続可能な消費と生産のパターンを促進すること、および、経済・社会開発の天然資源の基盤を管理することが、持続可能な開発の全体的な目的であるとともに、そのための不可欠な要件であることを改めて確認する」各国閣僚は最終宣言でこのように述べました。
宣言はまた、「私たちは、統合されたライフサイクル全体的アプローチと、資源効率の高い低炭素経済を達成するための分析により、国内の資源管理戦略を改善していく」とも述べています。
ナイロビで開かれた環境総会には、環境大臣や科学者、学識者、ビジネス・リーダー、市民社会の代表を含む4,700人以上の代表が集いました。環境総会は世界最高レベルの環境会議で、その決定は特に9月の国連気候行動サミットに先立ち、グローバルな議題を定めるものとなります。
各国閣僚は、レジリエントな農作業を奨励することにより持続可能な食料システムを促進し、天然資源の持続可能な管理を通じて貧困に取り組み、環境データの利用と共有を促進することを約束するとともに、使い捨てプラスチック製品を大幅に削減することも明らかにしました。
「私たちは、2030年までに使い捨てプラスチック製品を大幅に削減することなどにより、プラスチック製品の持続不可能な利用と廃棄に起因する生態系への損害に取り組むとともに、民間セクターと連携し、手ごろな価格で環境に優しい製品の発掘に努めていく」最終宣言はこのように述べています。
重大な知識格差に取り組むため、各国閣僚は、比較可能な国際環境データの作成に努めつつ、国内の監視システムや技術を改善することを約束しました。また、2025年までに世界的な環境データ戦略を策定するための国連環境計画(UNEP)の取り組みにも支援を表明しました。
「世界は岐路に立っていますが、私たちはきょう、前に進む道を選択しました。私たちは、これまでと違うやり方を決定しました。使い捨てプラスチックへの依存度を削減することから、将来のあらゆる開発の中心に持続可能性を据えることに至るまで、私たちは自らの暮らし方を変えていきます。私たちに必要な革新的な解決策はあります。今こそ、その実施を可能にする政策を採用しなければなりません」第4回国連環境総会で議長を務めたエストニアのシーム・キースラー環境大臣は、このように語っています。
環境総会は、アディスアベバからナイロビに向かっていたエチオピア航空機の墜落事故を受け、重苦しい雰囲気の中で開幕しました。この事故では、乗客・乗員157人全員が命を失いましたが、その中には環境総会に向かっていた国連職員やその他の代表も含まれていました。開会式では、犠牲者に1分間の黙祷が捧げられたほか、国連職員も同僚たちの活動を称えました。
総会閉幕にあたり、各国代表は、これまでとは違う開発モデルへのシフトを図るための作業計画となる一連の拘束力のない決議を採択しました。
その中には、物品を再利用または目的変更可能とし、かつ、できるだけ長く流通の枠内に残すことができる、より循環的なグローバル経済が、持続可能な消費と生産に大きく貢献しうるという認識も含まれています。
その他の決議の中には、加盟国が持続可能な公的調達を通じ、それぞれの経済を転換できるとしたうえで、各国に対し、食品廃棄物に取り組むための措置を支持するとともに、省エネ型の安全なコールドチェーン・ソリューションズに関するベストプラクティスを開発、共有するよう促すものもあります。
また、金融措置を含むインセンティブを用いて、持続可能な消費を促進しつつ、加盟国に対し適宜、持続不可能な消費や生産に対する優遇措置を廃止するよう促す決議もあります。
「私たちの地球はもう限界に達しており、私たちは今すぐ行動を起こす必要があります。世界がここナイロビで、持続可能性が私たちの行動すべてを規定する目的となるような未来を築くという固い決意を持って、この要請に応えたことを嬉しく思います。各国がここで合意したことをすべて実行に移し、決議を履行すれば、私たちは自然を犠牲にする成長を止め、人間と地球がともに繁栄できる新たな世界秩序に向け、大きな一歩を踏み出せる可能性があります」ジョイス・ムスヤUNEP事務局長代行は、このように語っています。
今回の環境総会では、海洋と脆弱な生態系を守る必要性が集中的に議論されました。各国閣僚は、海洋へのプラスチックごみやマイクロプラスチックの投棄に関し、数多くの決議を採択しましたが、その中には、プラスチックごみとマイクロプラスチックの長期的撤廃に向けて直ちに行動を起こすためのマルチステークホルダー型プラットフォームをUNEP内に設置するという公約が含まれています。
さらに別の決議は、加盟国やその他のアクターに対し、製品のライフサイクル全体を検討し、資源効率を高めることにより、海洋へのごみ投棄の問題に取り組むよう呼びかけています。
首脳会合では、アンティグア・バーブーダ、パラグアイ、トリニダード・トバゴがUNEPの「クリーン・シーズ」キャンペーンに加わりました。海洋のプラスチック汚染に取り組むこの世界最大の連合に参加する国は、ラテンアメリカ・カリブ地域の20カ国を含め、これで60カ国となりました。
生死にかかわる環境課題に迅速に取り組む必要性は、総会中に発表された一連の包括的報告書によっても強調されました。
中でも最も衝撃的なのは、北極圏の変化に関する最新報告書で、これによると、世界がパリ協定に沿って温室効果ガス排出量を削減したとしても、北極圏の冬の気温は2050年までに3~5°C、2080年までに5~9°C上昇し、この地域に破壊的な影響が及ぶだけでなく、全世界で海水面の上昇が引き起こされることになります。
「Global Linkages – A graphic look at the changing Arctic(グローバルな連関 – 変わりゆく北極圏の実態)」と題するこの報告書は、永久凍土層の急激な融解が気候変動をさらに加速し、これによって地球の気温上昇を2°Cに抑えるという、パリ協定の長期的目標達成に向けた取り組みが頓挫しかねないと警告しています。
一方、地球の現状を最も包括的かつ厳密に評価する報告書とみなされている「第6次地球環境概況(GEO6)」は、緊急な対策が取られなければ、2050年までに水質汚染や大気汚染で数百万人が早死しかねないと警鐘を鳴らしています。
70カ国を超える250人の科学者と専門家が作成したこの報告書によると、世界には、より持続可能な開発への道を進むために必要な科学技術と資金があるものの、政治家やビジネス界の人々、一般市民が変革を支持することが必要となっています。
3月14日の首脳会合に出席したアミーナ・モハメッド国連副事務総長は、持続不可能な資源利用への対策はもはや選択肢ではなく、絶対に必要な施策だという認識を示しました。
「活発な議論の中で、加盟国が市民社会や企業、科学界、その他ナイロビに集まったステークホルダーと異口同音に語ったとおり、気候変動の緩和、資源効率、生物多様性保護を目指す政策を賢く組み合わせれば、私たちの福祉を増大させると同時に、経済成長を維持することはまだ可能です」モハメッド副事務総長はこのように語りました。
人間の活動が地球の健全性に与えている壊滅的な影響を示す証拠が続々と出てくる中で、全世界で迅速な対策を求める声が大きくなっています。各国代表がナイロビを発とうとしていた3月15日の金曜日には、スウェーデンの学生グレタ・トゥーンベリさんに同意したおよそ100カ国の学生数十万人が街頭に繰り出し、グローバルな抗議運動を展開しました。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は14日に環境総会で演説し、若者の抗議は当然であり、世界はその怒りを糧として、より迅速でより断固とした行動へと移る必要があると発言しました。
「現在の暮らしの在り様を見る限り、必要なのは拘束力を持ち、国際的に採択された法規であると私たちは確信しています。私たちの生物圏は破滅に直面しています。人類自体が脅威にさらされているのです。私たちはリアルな効果の全くない、口先だけの原則で対応することなどできません」マクロン大統領はこのように述べています。
ケニアのケニヤッタ大統領も、世界は記録的な環境破壊や食料不安、貧困、失業に今すぐ取り組む必要があると発言しました。
「世界統計の現状は厳然たる事実を突きつけています。将来の世代にとっての見通しは恐ろしく暗く、政府やコミュニティー、企業、個人による緊急の対応が必要となっています」ケニヤッタ大統領はこのように述べました。
編集者の方々へ
国連環境総会について
国連環境総会は、世界最高レベルの環境フォーラムで、各国の首脳、環境大臣、多国籍企業のCEO、NGO、環境活動家などが出席し、環境保護について議論したり、そのための世界的な公約を行ったりしています。第4回国連環境総会は、環境課題に対する革新的な解決策、持続可能な消費と生産という2つのテーマで開催されましたが、そのねらいは、各国や企業、個人に#SolveDiffernt(違った解決を)と呼びかけ、自分たちの生産と消費のやり方に批判的な眼差しを向けさせることにありました。
詳しくは下記にお問い合わせください。
Shari Nijman, UN Environment News and Media, Nijman@un.org, +254 720673046
Moses Osani, UN environment News and Media, moses.osani@un.org
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