グテーレス事務総長、宗教的施設の「神聖さを改めて確認」し、「憎悪と暴力に立ち向かう」ための新たな計画を発表(UN News記事・日本語訳)
2019年09月12日
2019年9月12日-アントニオ・グテーレス国連事務総長が宗教的施設の「神聖さを改めて確認」し、礼拝者の安全を守るよう世界に呼びかける中で、国連「文明の同盟」(UNAOC)は本日、「全世界で憎悪と暴力に立ち向かう」ための新たな行動計画を発足させました。
「宗教的施設は、私たちの団結した意識を力強く象徴するものです。宗教や信条を理由に人々が攻撃を受ければ、社会全体が衰退します」事務総長はこのように述べています。
グテーレス事務総長は、礼拝所が「内省と平和のための安全の場所でなければならず、これを流血やテロの場としてはならず」、また、すべての人々が「平穏にその信仰を守り、実践できなければならない」ことを強調しました。
ニュージーランドのクライストチャーチのモスク2カ所、ピッツバーグの「生命の樹」シナゴーグ、さらには復活の主日にスリランカのカトリック教会3カ所で起きた恐ろしい攻撃をはじめ、全世界で憎悪を根底に宗教的施設を狙った攻撃が増えていることを受け、UNAOCは事務総長から、本日発表された行動計画の策定を要請されていました。
事務総長によると、今回の行動計画は、扇動的な発言の根本的原因に取り組み、効果的な対応を図るため、国連システム全体の努力を調整する ヘイトスピーチに関する行動計画によって補完されます。
事務総長は「2つの計画は全体として、不寛容と闘い、平和的共存を促進するための重要かつ相互補完的な新しいツールを提供しています」と語っています。
また、武力紛争下において「宗教目的にのみ使われる建物は、国際人道法によって特定的に守られ」ており、これに対する意図的攻撃は、戦争犯罪にあたることを指摘しています。
「宗教と信仰の許しがたい歪曲に基づく暴力の脅威を克服する最善の方法は、善のために私たちの声を一つにし、平和のメッセージをもって憎悪のメッセージに対抗し、脅威ではなく豊かさとして多様性を受け入れ、社会的一体性に投資し、人権を擁護することです」グテーレス事務総長はこのように強調しました。
さらに、「私たちが協力すれば、宗教的施設に対する攻撃の予防に寄与するとともに、信徒たちが平穏に礼拝するための安全を保障する役割を果たせる」としています。
行動計画を通じ、国連は「この重要な目標の実現を図り、私たちの時代で最大の世界的課題の一つに取り組むため、大きな一歩を踏み出している」と事務総長は強調しました。
「この混沌とした時代に、人類という一つの家族として私たちを結びつける価値を守るため、引き続き力を合わせていこうではありませんか」事務総長はこのように発言を締めくくっています。
すべての人に「果たすべき役割」
一方、ミゲル・アンヘル・モラティノスUNAOC担当上級代表は、行動計画が「包括的アプローチの重要性に留意しつつ」策定され、「すべての関連主体に果たすべき役割」があることを説明しました。
包摂的な協議プロセスを経て、上級代表は参加者に対し、「全面的な支援を心強く感じ」ており、その貢献に感謝していることを伝えました。
モラティノス上級代表は、加盟国がどのような要素を盛り込むよう主張したかについて、詳しく述べました。その中には、行動計画が「グローバルな性格」を持つこと、特にオンラインでのヘイトスピーチと闘い、女性と若者の役割のほか、すべての重要な主体の実質的な関与を定め、「関連の総会と安全保障理事会の決議の文脈」を枠組みとしていることなどが含まれています。
上級代表は続けて、行動計画が「成果志向の文書」となることと、「宗教的施設に対し起こりうる攻撃への準備態勢と対応を改善」することを目指していると述べるとともに、行動計画の成功は「その実施」と、すべての加盟国が宗教的施設を守るために積極的に行動するという「決意の持続にかかっている」と語りました。
最後に、上級代表は「行動計画に盛り込まれた提言の実施を支援し、安全かつ平穏に崇拝ができるよう、皆様全員と密接な連携を続けていくため、一切の努力を惜しまない」ことを改めて表明しました。
行動計画は、国連が相互の尊重と理解の促進のために世界的なコミュニケーション・キャンペーンを展開すること、各国が暴力的過激主義を防ぐため、持続可能な開発目標(SDGs)に根差す分野横断的な国内計画を策定すること、宗教指導者が定期的に異教徒間対話に参画することなど、幅広い一般的な提言を示しています。
提言の全文は、こちらの14頁をご覧ください。
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原文(English)はこちらをご覧ください。