コロナウイルス・パンデミックに乗じた「フェイクニュース」が生命を危険にさらす:UNESCO(COVID-19関連記事・日本語訳)
2020年04月30日
コロナウイルス・パンデミックに乗じた「フェイクニュース」が生命を危険にさらす:UNESCO
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2020年4月13日-全世界で信頼できない情報やデマが広がっており、一部のコメンテーターは、COVID-19パンデミックに伴って生じた新たな誤情報の氾濫を「デマデミック」と呼ぶほどになっています。
また、症状のある一部の人々が病気を「治す」ことを期待し、科学的根拠のない治療法を試す中で、この現象が生命を危険にさらしているという不安も高まっています。国連教育科学文化機関(UNESCO)は、嘘に立ち向かい、ウイルスに関する事実を広めるための取り組みを先頭に立って進めています。
「世界のほとんどがデマに感染」
ウイルスの蔓延以前から、UNESCOは政治的、技術的、経済的、社会的な変革が近年、私たちの情報交換のやり方に及ぼしてきた影響について警告を発し、いくつかの組織的なデマ・キャンペーンが起こした「感染」が、事実に基づくジャーナリズムと、そして特に現在のパンデミック下で、人々の生命に脅威を及ぼしていることにも言及していました。
ガイ・ベーガーUNESCOコミュニケーション・情報関連政策・戦略局長は、同機関でデマ対策を担当する責任者の一人です。UN Newsとのインタビューで、ベーガー局長は、COVID-19のあらゆる側面に関し、嘘が当たり前のように出回っていることを次のように説明しました。
「コロナウイルスの起源から科学的根拠のない予防策や『治療法』に至るまで、政府や企業、著名人などによる対応を含め、COVID-19危機に関連するデマに汚染されていないエリアはほとんどないと見られます」
ベーガー局長はさらに次のように付け加えています。「不安や不透明感、未知なるものへの恐怖が高まると、作り話が生まれ、大きくなる温床ができ上ります。どんな嘘でも、その勢いが強まれば真実を積み重ねることの意義が否定されかねないという、大きなリスクがあります」
「影響力を持つ人々によるものを含め、デマが繰り返され増幅された場合、重大な危険性として挙げられるのは、真実に基づく情報がほとんど影響力を持てなくなるということです」
デマ退治と、根拠のない医学を広めることの危険性
問題の規模が大きくなってきたため、国連のパンデミック対応を主導する世界保健機関(WHO)は、コロナウイルスに関する助言を掲載したウェブページに「デマ退治」のコーナーを設けました。ここでは、アルコール度数の強い酒や、高温に身体をさらすこと、または逆に気温が低いことがウイルスの殺滅に効くという主張を含め、実に多くのデマに対する反証を掲載しています。
ベーガー局長は、若者やアフリカ系の人々がウイルスに免疫を持っている(中には人種差別的または排外主義的な色彩を帯びるデマもある)とか、暖かい気候や夏が近づいている国で暮らす人々はあまり心配しなくてもよいなどという、間違った信念を持っている人がいることを懸念しており、それによって油断が生じる可能性は高く、さらに死亡者が増えかねないと述べています。
また、ベーガー局長はさらに有害なデマの例も指摘しています。他の目的で承認されているものの、まだ臨床面で証明されていない薬剤が、COVID-19に効くとして奨励する情報です。
善人、悪人、そして だまされやすい人
悲しいことに、今回のパンデミックに乗じ、自分たちの主義主張を通すためのデマを広げている人々もいるとベーガー局長は言います。「デマを広げる動機は多くあり、その中には政治的なねらいや自己宣伝、ビジネスモデルの一環として注目を集めることが含まれます。こうした行動に出る者は、感情や不安、偏見や無知に付け込み、複雑で困難、かつ急激な変化を遂げる現実を意味づけ、安心を提供できると主張しているのです」
しかしベーガー局長は、嘘を広めている人にすべて悪意があるわけではないとも付け加えています。善意の人々が疑わしいコンテンツを無批判に拡散していることもあるからです。理由がどうであれ、その結果は同じです。「動機が違えば異なる対応が必要になりますが、その意図がどうであれ、嘘を共有すると一般市民を欺き、無力化するという効果が生じ、その結果が死に至ることもあるという事実から目を逸らすべきではありません」
真実の需要と供給
このような状況で、真実で役に立ち、場合によっては命を救うことにもなりうる情報をさらに広めるためには、何ができるのでしょうか。ベーガー局長によると、UNESCOの答えは真実の情報の供給を改善し、需要の充足を確保することです。「私たちは噂に対処するため、各国政府が知る権利に関する法律や政策に沿い、透明性を高め、さらに多くのデータを積極的に公開すべきことを強調しています。公的なソースからの情報へのアクセスは、このような危機で信頼性を保つうえで非常に重要です」
「しかし、これは報道機関から供給される情報に代わるものではありません。よって私たちは特に、報道機関が公的領域でオープンに活動するのに対し、デマの中には水面下でSNSを通じて広まるものが多いという事情から、自由なプロ意識のあるジャーナリズムをデマ対策の味方として捉えるよう、当局を説得するための取り組みも強化しているところです」
ベーガー局長はさらに続けて、UNESCOは特に各国政府に対して「独立系報道機関の不可欠な役割を損ないかねない表現の自由規制を課すのではなく、権力者にとって不都合な検証済みの情報や、十分な情報に基づく意見を発表することがあったとしても、ジャーナリズムをデマに対抗する勢力として認識するよう」求めていると語っています。「現状を見ても、メディアが政府による認識と支援に値する必要不可欠なサービスであるという主張には、強い根拠があります」
信ずべき事実に対する需要を満たすため、UNESCOはWHOのような機関と連携し、各種のメディアやチャンネルを通じ、公衆衛生に関する信頼できる情報をできる限り多く発信しています。
UNESCOはまた、人々が嘘を信じたり、これを広めたりする可能性を低めるため、オンラインその他で事実として提示された情報に対し、人々が批判的に見れれるよう支援を行っています。また、#ThinkBeforeSharing(共有する前に考えよう)、#ThinkBeforeClicking(クリックする前に考えよう)、#ShareKnowledge(知識を共有しよう)といったハッシュタグを活用し、表現の自由権と知る権利が、デマの危険性に対する最大の防御策になるという観点を普及しようとしています。
ベーガー局長によると、こうした権利により「政府と一般市民は、現実についてエビデンスに基づく決定を下すとともに、科学と人権の価値観に立脚し、最善の形でパンデミックを克服できる対策を採用できるようになります」
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原文(English)はこちらをご覧ください。