気候変動とCOVID-19:国連、各国に「より良い復興」を求める(COVID-19関連記事・日本語訳)
2020年05月28日
2020年4月22日 ー 世界が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後の復興計画に着手するなかで、国連は各国政府に対し、この機会を活用して、より持続可能でレジリエント(強靭な)かつ包摂的な社会を作り上げることで「より良い復興(ビルド・バック・ベター)」を遂げるよう呼びかけています。
「現在の危機は、これまで経験したことのない私たちへの警鐘です」アントニオ・グテーレス国連事務総長は、国際マザーアース・デーに寄せるメッセージの中で、このように述べています。「私たちは、この復興を、未来のために正しいことをする真の機会とする必要があります」
国連は、誰一人取り残さない、より健全な地球と社会に向けた青写真を作っているところです。国連システム全体で、よりレジリエントな未来を確保するための対策が展開されています。
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事務総長のイニシアチブ
グテーレス事務総長は、復興を形づくる6つの気候関連対策を提案しました。
第1に、COVID-19コロナウイルスからの復興への取り組みに費やされる多額の資金は、環境に配慮したグリーンな方法で新しい雇用やビジネスを提供しなければなりません。
第2に、税金による事業救済措置は、環境に配慮した雇用と持続可能な成長の達成に関連づけられなければなりません。
第3に、財政支援策は、CO2を排出する経済からグリーン経済への転換を促し、社会や人々をよりレジリエントにしなければなりません。
第4に、公的資金は過去ではなく、未来のために投資されるべきであり、環境・気候変動対策に寄与する持続可能な経済部門やプロジェクトに向けられるべきです。化石燃料への補助金は撤廃し、汚染に加担している者は代償を払わなければなりません。
第5に、気候リスクや機会は金融制度、また、公共政策の立案、そしてインフラにも含まれるべきです。
第6に、すべてのアクターは、国際社会として協力し取り組む必要があります。
事務総長は政策概要の中で、人権をCOVID-19対策と復興の指針とすることができ、また、そうしなければならないと述べました。復興にあたっては、将来世代の権利も尊重し、2050年までにカーボン・ニュートラルを達成するとともに、生物多様性を守ることをねらいとする気候変動対策を強化しなければなりません。「私たちは『より良い復興』を果たし、人権を中心に据えながら、国際協力の勢いを維持していく必要があります」事務総長はこう語っています。
報告書は、各国と地方の対策で、移民や避難民、難民、貧困層、水と衛生や適切な住宅を手に入れられない人々、障害者、女性、高齢者、LGBTIの人々、子ども、拘留者または施設収容者を含む一定の集団や個人に対するウイルスの過度の影響に対しに、集中的に取り組む措置を確実に導入するよう求める必要性も強調しました。
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局
「再出発にあたり、希望と機会の窓が開きます…。それは、各国が総合的な復興策を環境に配慮したものとし、クリーンでグリーン、健全で安全、かつさらにレジリエントな方法で、21世紀の経済の姿をつくり上げていく機会です」パトリシア・エスピノサUNFCCC事務局長は、国際マザーアース・デーに寄せる自身のメッセージでこのように述べています。
気候変動交渉に携わる主な関係者が参集し、4月20日にオンラインで開催されたハイレベル会合プラセンシア・アンビション・フォーラムで挨拶したエスピノサ事務局長は、野心を高めるとともに、2015年パリ協定の目標を守るため、各国の気候変動対策計画をできるだけ厳格なものにする必要性を強調しました。
国連気候変動会議(COP26)とその補助機関の会合は、COVID-19の影響によって延期となりましたが、2020年末までに各国の気候変動対策計画を提出する必要性に変わりはありません。エスピノサ事務局長は、その他の手段を通じて気候変動対策をそのまま続けることが緊急に必要なことを強調し、次のように断言しました。「私たちの2020年の作業は、いかなる形でも停滞することはありません」
世界気象機関(WMO)
ジュネーブに本部を置くWMOによると、COVID-19によって一時的に温室効果ガス排出量の削減がもたらされることはあっても、これを持続的な気候変動対策に代えることはできません。主要な観測地点では、二酸化炭素(CO2)濃度が依然として記録的水準にあるからです。
これまでの経済危機に続く「復興」段階では、危機以前よりも排出量が増えてしまうことが多くありました。よって、ポストCOVID-19の景気刺激策では、経済回復の「グリーン化」を支援することが重要となります。
「私たちは、今後の数週間、数カ月ではなく、数世代にわたって、人類の健康と福祉の利益となるよう、ともに取り組んでいく必要があります」ペッテリ・ターラスWMO事務局長は4月22日、アース・デーを祝うプレスリリースで、このように述べました。
国連環境計画(UNEP)
COVID-19は決して環境にとっての「希望の兆し」ではありません、と述べるのはインガー・アンダーセンUNEP事務局長です。UNEPは人獣共通感染症を含め、生態系の安定と環境、人体の健康の関連性に関する科学的知見を構築するため、パートナーと密接な連携を行っています。野心的なポスト2020生物多様性枠組みが極めて重要なのは、まさに地球上の全生物がこのように互いにつながっているからに他なりません。
各国政府が、雇用創出と貧困削減、経済成長を支援する刺激策を承認するなかで、UNEPは、加盟国が「より良い復興」を果たすとともに、持続可能な生産と消費の原則や基準を指針としつつ、再生可能エネルギーやスマート住宅、環境に配慮した公的調達、公共交通機関へのグリーン投資へと一気にレベルを上げる機会を捉えられるよう支援していきます。こうした行動は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成にも不可欠です。
グリーン経済行動パートナーシップ(PAGE)は、5つの国連機関の専門的ノウハウを結集することにより、各国が包摂的なグリーン経済、すなわち、すべての人に経済成長や雇用、豊かさを生み出しながら、地球への圧力を減らす経済への移行を遂げられるよう支援するための道に、一歩を踏み出しました。
国連防災機関(UNDRR)
ジュネーブに本部を置くUNDRRは、そのアジア太平洋地域事務所が作成した政策概要を発表し、COVID-19の予防、対応および復興への取り組みにおいて、誰一人取り残さないようにするための提言を示しています。UNDRRは国連システムその他と連携し、パンデミック(世界的大流行)を含むあらゆる危険が、災害へと発展することのないよう対応しています。
世界保健機関(WHO)
WHOによると、世界は教訓からの学びを確保しなければならず、今回の危機は、健康危機に対する備えと、21世紀に不可欠な公共サービスへの投資という点で、重大な分岐点となります。
UN Women
ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのために活動する国連機関のUN Womenは、各国政府に対し、対応と復興に関する政策決定に女性を参画させるよう強く促しています。地方、市町村、国のいずれのレベルでも、女性の声を政策決定に取り入れることが成果の向上につながります。また、政策立案者は女性団体の能力を活用すべきです。実際に、女性団体の関与はエボラ対策にも貢献しました。
国連開発計画(UNDP)
「私たちがパンデミックへの対応と、そのショックからの復興に取り組む中で、持続可能な開発目標(SDGs)は、グローバルな復興のDNAにも組み入れる必要があります」アヒム・シュタイナーUNDP総裁は、これらグローバル開発のターゲットがCOVID-19の時代にさらに重要性を増す理由を説明し、このように述べました。
UNDPのエリザベス・ボッグス・ダビドセンSDGインパクト部長は「A pandemic gives permission for change(パンデミックは変革へのゴーサイン)」と題する記事の中で、投資家は一般的に、企業の金銭的評価や投資といった取り組みがSDGsまたは経済的、社会的および環境的成果にどのような影響を与えるかよりも、環境、社会およびガバナンスの要因がそれぞれの企業の金銭的評価や投資にどのような影響を与えうるかを注視していると指摘しました。
ダビドセン部長によると、SDGsは異なる決定を下すためではなく、単に既存の活動を異なる軸で発信するための別の報告用観点として用いられています。SDG Impactは、民間の資本をSDGsの実現に振り向けるとともに、投資家と企業に対し、その寄与度を一貫した透明な形で測定、管理、発信するためのパラメータを提供するために設立されました。
世界観光機関(UNWTO)
マドリードを本部とするUNWTOは、グローバルな観光部門がCOVID-19から単に立ち直るだけでなく、「より良く復興する」ための援助として、緊急の強力な支援を求める一連の提言を発表しました。また、雇用を持続させ、リスクにさらされた企業を支援するための措置のチェックリストも提供しています。「雇用と流動性に対する影響を緩和すること、最も脆弱な立場に置かれた人々を保護すること、復興に向けて準備することはいずれも、私たちの重要優先課題としなければなりません」ズラブ・ポロリカシュヴィリUNWTO事務局長は、こう語っています。
国連貿易開発会議(UNCTAD)
COVID-19によって、投資促進機関は危機管理モードに突入し、各国政府の緊急措置について投資家に通知したり、危機支援サービスを提供したりしています。新たなUNCTAD報告書のねらいは、投資促進機関がこのような課題を克服するための支援を行うことにあります。また、COVID-19後の時代には、投資促進機関業務のデジタル化が加速し、多くの場合、保健や農業、デジタル産業が加わる形での対象部門のシフトを含め、恒久的な変化が生じることになると見ています。
執筆者について
グローバル・コミュニケーション局
国連グローバル・コミュニケーション局(DGC)は、国連の活動に対するグローバルな認識と理解を推進します。
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原文(English)はこちらをご覧ください。