コロナウイルス・パンデミックが続く中、持続可能な開発に向けた「行動の緊急性」は、かつてないほど高まる(UN News記事・日本語訳)
2020年06月01日
2020年5月11日-新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が地球規模で生活や暮らしを奪っているなか、国連は本日、その世界的大流行を抑えるための広範な多国間協力を進めつつ、17の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた歩みを再び進めることを強調する幅広い政策議論を行いました。
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「SDGsを達成するという私たちの決意は変わっていません。変わったのは行動の緊急性です」モナ・ユール経済社会理事会(ECOSOC)議長は「Joining Forces: Effective Policy Solutions for Covid-19 Response(力を合わせて:COVID-19対策に向けた効果的な政策措置)」に関するオンライン会議の冒頭で、このように述べました。
議長はワクチンを含め、世界が健康上の緊急事態を克服する上で役立つ突破口の発見に取り組む中で、「今後の社会的、経済的危機の真の規模について、やっと認識し始めたばかり」だという見解を明らかにしました。
世界の全労働者の半分近くは、直ちに失業する危険を抱えている一方で、世界の貧困が1998年以来初めて増加に転じるなど、他のSDGsの目標についても後退が見られ、地域によっては30年前の水準にまで逆戻りしているケースも見られます。
マラリアによる死亡率が20年前の水準に戻りかねない状況にあり、女性と女児に対する暴力は「影のパンデミックと化し、被害者の数は全世界で数億人にまで増えている」ユール議長はこのように述べ、現状を嘆きました。
「私たちが必死で勝ち取ってきた開発の前進に、このような理解し難い挫折が生じています」ユールECOSOC議長はこのように強調しつつ、「出現しつつあるニューノーマルにしっかりと足場を築くためには、どうしたらよいかを自問自答しなければなりません」と述べました。
「より良い復興(ビルド・バック・ベター)」
コロナウイルスはすべての人に影響をあたえているものの、その影響は均一ではなく、むしろ社会で拡大している不平等を白日の下にさらすことになりました。ユール議長は「こうした格差は、より良い復興を目指すためのきっかけや呼びかけとみなすべきです」と語り、各国の対応は人権を念頭に置くべきであり、各国独自のグローバルな行動では、特殊な事情に配慮すべきだと主張しました。
ユール議長は、今回のパンデミック(世界的大流行)によって「多国間協力、ガバナンス、そして何よりも地球規模の連帯を強化する必要性が明るみに出た」という見解を示しました。
「私たちは今まさに、危険水域で荒波に揉まれている状態にあります」ユール議長はこう指摘し、SDGsを「私たちが嵐を乗り切るための海図」に例えました。
ユール議長は「今こそまさに、誰一人取り残さないという私たちの約束を果たすべき時なのです」と締めくくりました。
SDGsは「明確な羅針盤」
アミーナ・J・モハメッド副事務総長はこの会合で、あらゆる場所の生命と暮らしが、この「未曽有の保健・人道・社会経済危機」に取り組む各国政府に対する国連の支援能力にかかっていると発言しました。
SDGsを、私たちを導く「明確な羅針盤」と形容した副事務総長は、2030アジェンダ、気候変動に関するパリ協定、開発資金に関するアディスアベバ行動計画を、世界が従うべき海図として挙げました。
「パンデミックの影響を迅速に食い止めながら、各国政府と人々がより良い、よりレジリエント(強靭)な未来へと復興を遂げられるように対策をとることを支援するという、二重の責務を心に留めておく必要があるでしょう」副事務総長はこのように注意を喚起しました。
影響は私たち全員に及んでいるものの、副事務総長は、取り残されるおそれがある最も脆弱な国とコミュニティーのニーズに取り組むことが「当面の優先課題」であることを強調しました。
モハメッド副事務総長によると、資源を配分する際には、紛争や災害の被災国、後発開発途上国、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国のニーズに細心の注意が払われることになります。
危機をバネに
モハメッド副事務総長は、最も脆弱な国やコミュニティーの現場で、共同行動を触発するために国連が設けたCOVID-19対応復興基金に触れ、「私たちは数十億ドルの拠出を見込んでいましたが、まだ数百万ドルしか集まっていません」と明言しました。
最後に、副事務総長は「命が救われ、暮らしが元に戻り、資金が動員されるとともに、グローバル経済と私たちが奉仕する人々がこの危機からより強くなれる」よう、国連が各国政府を支援していくことを「確約」しました。
その他の主な発言
国連経済社会局(DESA)を率いる劉振民(リュウ・ジェンミン)事務次長は、コロナウイルスの世界的大流行を「歴史的規模の人類の危機」と表現し、これによって「グローバル経済の成長は不安定化」し、世界はすべてのSDGsの達成を脅かすグローバル不況に陥ったと述べました。
DESA局長は、今回の危機で得られた教訓を基に、「行動の10年」の中で前進と持続可能な開発の実現を加速化させるとともに、不平等の広がりを逆転させる必要性を強調しました。
国際労働機関(ILO)のガイ・ライダー事務局長は、まず最も脆弱な立場に置かれた人々を守るという最も効果的なCOVID-19対策を取るためには、保健・社会・経済政策に関する国際的調整を伴う地球規模の連帯と多国間での行動が必要だと主張しました。
一方、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官は、COVID-19の中核には人権があるとして、誰一人取り残さないための取り組みを一段と強化すべく、支援の声を上げるよう促しました。
屈冬玉(チュー・ドンユイ)国連食糧農業機関(FAO)事務局長は、今回のパンデミックが食料の安定確保と栄養に及ぼしている影響を強調し、COVID-19への対応に向けた効果的な政策措置を求めました。
国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)のアルミダ・サルシア・アリシャバナ事務局長は、今回のパンデミックが社会と経済、財政に及ぼす悪影響に対する調整と整合性の取れたグローバルな対応を促しました。
また、テドロス・アダノム・ゲブレイェスス世界保健機関(WHO)事務局長も議論に加わり、「従来どおりのやり方に戻ることはあり得ない」と明言しました。
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