グテーレス事務総長、COVID-19からの復興を人々と地球にとって「真の転換点」とするため、G20に協調行動を呼びかけ(UN News記事・日本語訳)
2020年09月08日
2020年9月3日-国連のアントニオ・グテーレス事務総長は各国政府に対し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)からの復興において、あらゆる側面に「有意義」な気候変動対策を取り入れるよう呼びかけました。
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きょう開かれたCOVID-19からの復興に関するオンライン閣僚会合の席上、事務総長は世界がCOVID-19と気候変動という、2つの切迫した危機に直面していることを指摘しました。
「この両方に取り組むことで、将来の世代に対し、この瞬間が人々と地球にとって真の転換点であるという希望を与えようではありませんか」事務総長はビデオ・メッセージで、このように述べています。
日本政府の主催による今回の閣僚会合には、数カ国の政府高官のほか、ユース団体、市民社会組織、企業、地方自治体からも代表が参加しました。
これと並行して、気候と環境に関する政策と、COVID-19からの復興策を共有するオンライン・ポータルも発足しました。この Platform for Redesign 2020は、気候変動対策の進捗状況を評価するために2021年に開催される国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)に向けた弾みをつけることにも役立ちます。
再生可能エネルギーはより安価で効率的に
事務総長は、持続可能な復興を図る気候に配慮した対策として、グリーン・ジョブに投資すること、汚染産業を救済しないこと、化石燃料への補助金を打ち切ること、あらゆる財務・政策決定において気候変動リスクに配慮すること、ともに力を合わせること、そして最も大事な点として、誰一人取り残さないことの6つを挙げました。
“いかなる投資計画においても、石炭火力発電を擁護できる合理的な理由は一切ありません”
– グテーレス事務総長
グテーレス事務総長は、クリーン・エネルギーがより多くの雇用を生み、大気を浄化し、健康を増進し、経済成長を強化するという認識の下、政府や企業がこうした対策に舵を切り始めていることについても触れました。
「日本の投資家を含め、世界の名立たる投資家たちは、再生可能エネルギーがより安価で効率的であるという理由から、化石燃料に見切りをつけています」事務総長はこう続け、次のように付け加えました。
「間もなく座礁資産になることがわかっている石炭火力発電所に大金を費やすことが、経済的にまったく理に適わないことを理解しているからです」
事務総長はまた、各国、特に主要先進国グループであるG20のメンバーに対し、2050年までにカーボンニュートラルを達成するよう呼びかけました。そして、COP 26までに、地球温暖化を1.5˚Cに抑えるという目標を踏まえつつ、「さらに野心的な」自国が決定する貢献(NDCs)と、長期的戦略を提出するよう強く訴えました。
日本は世界のリーダーになれる可能性がある
事務総長は、多くの分野で技術発展を遂げている日本が、持続可能で強靭な復興においても、世界のリーダーとなることができると述べました。
そして日本に対し、石炭火力発電所への投資を止め、再生可能エネルギーの割合を高めるよう呼びかけました。
「私は、日本が海外の石炭火力発電所に対する融資に終止符を打ち、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを約束し、国内の石炭使用の段階的廃止を早期に進めるとともに、再生可能エネルギーの割合を大幅に高めることを心から期待しています」グテーレス事務総長はこのように述べています。
絶好のチャンス
同じく会合で挨拶したパトリシア・エスピノーサ国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長は、COVID-19が気候危機に重なったことで、COVID-19パンデミックからの復興を果たすだけでなく、より良い未来をつくるための絶好のチャンスが訪れたと述べました。
そして、各国政府に対し、炭素集約的インフラの新設を取りやめるよう呼びかけました。そうすることにより、今後数十年にわたって温室効果ガス排出量の削減に役立つからです。
「コロナウイルスの蔓延防止が、今回のパンデミックに対して最も有効なアプローチであるのと同様、将来の排出防止は、気候変動に取り組むうえで最も効果的なアプローチなのです」事務局長はこう述べています。
エスピノーサ事務局長は、グローバルな協調的取り組みの重要性を強調しつつ、COVID-19からの復興を遂げ、気候変動対策で前進を遂げ、より持続可能な未来を構築するため、あらゆる人に「マルチラテラリズムの強みを活用する」よう強く訴えました。
G20向け5項目の重点項目
COVID-19危機に関するG20緊急外相会合にも出席したグテーレス事務総長は、パンデミックによって「未曽有の都市封鎖(ロックダウン)と渡航の停止、国境をまたぐ移動の制限」が強いられたことを指摘するとともに、「現在の移動制限の中には、当面の危機が去った後も続くものがあるのではないかとの懸念が高まっている」と付け加えました。
事務総長は、議論に向けた「5つの重点項目」を示し、その1つ目として、渡航制限解除に関し、科学的根拠に基づく共通の客観的判断基準に関する合意を探るよう、強く訴えました。
第2に、事務総長は「民間セクターとの密接な連携により、安全な渡航に役立つシステムや方法への投資」を求めました。
第3に、事務総長は予防措置に関する調整改善として「特に、検査や追跡その他、ウイルスの蔓延を回避し、移動性の高まりがもたらし得る悪影響を効果的に抑え込める実証済みの対策をより組織的に採用」するよう求めました。
事務総長は次に、国際人権・難民法の全面的な尊重の重要性を明らかにするとともに、今後開発されるワクチンをグローバルな公共財とみなし、これを「どこでも物理的にも価格的にも入手可能にすることで、グローバル・ヘルス、地球規模の移動性、そしてグローバルな経済復興を支援する」という合意も求めました。
「どのような対策を取るにせよ、人間の尊厳の堅持を国境管理政策の指針として認識しなければなりません」
一緒に同じ方向へ
事務総長は、2つの点で「これからの道のりは長い」と述べました。「第1点として、私たちがCOVID-19パンデミックに対してともに闘う能力が挙げられます。各国が世界保健機関(WHO)の助言を全面的に軽視し、独自の戦略を追求するとどのようになるか、その結果はご覧のとおりです」
「各国の方向性が違えば、ウイルスはあらゆる方向に広がります」事務総長はこう付け加えました。
「第2点として、私たちにはまだ、COVID-19パンデミックによる経済と社会への影響や、それによって明らかとなった根本的な脆弱性に対処するための有効な国際的連帯が欠けています」
事務総長は、こうした重点分野で前進を図り、誰にとってもより包摂的で強靭、かつ持続可能な世界を構築する上で、有効な国際的連帯とG20による協調行動が、これまで以上にカギを握っていると述べました。
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原文(English)はこちらをご覧ください。