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地球は“非常事態”にある、と事務総長が各国指導者に警告 米主催の気候リーダーズ・サミットで(UN News 記事・日本語訳)

2021年06月04日

異常気象増加の原因は気候変動にあると科学者たちは考えている© NOAA/Jerry Penry

2021年4月22日-アントニオ・グテーレス国連事務総長は本日、ジョセフ・バイデン米大統領が主催するオンライン形式の気候リーダーズ・サミットで演説を行い、「私たちは奈落に落ちる寸前にいる」ため、世界の指導者は今こそ行動を起こし、地球を環境に配慮した道へと導かねばならないと語りました。

過去10年は観測史上最も暑い10年となり、世界では引き続き海面上昇や猛暑、破壊的な熱帯低気圧や大規模な山火事が発生しており、事務総長は、「母なる自然は待ってはくれない」と警告しました。

「私たちには緑豊かな地球が必要ですが、世界は非常態勢にあります。私たちは奈落に落ちる寸前です。次の一歩が確実に正しい方向に踏み出されるようにしなければなりません。各国指導者は行動を起こさなければならないのです」事務総長はこのように述べています

米国によるコミットメントと投資

事務総長は、バイデン大統領に対し、2日間にわたる気候サミットを主催することについて感謝するととともに、米国による温室効果ガス排出削減に向けたコミットメントを称賛しました。

冒頭挨拶において、大統領は米国が2030年までに排出量を半減させると表明しました。そして、気候変動対策は「並外れた雇用創出や経済的機会」につながると述べ、エネルギー、運輸、建設、農業などの部門への投資を打ち出しました。

バイデン大統領は、いかなる国も一国だけでは気候危機を解決することはできないと語り、世界の経済大国の指導者に対し、持続可能な未来に向けた急務に「力を入れる」よう呼びかけました。

「科学者は、今後10年が決定的な10年だと言います。気候危機による最悪の結果を回避するための決断をしなければならない10年なのです」

ネットゼロ連合

グテーレス事務総長は、今回のサミットの機会を捉えて、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを達成するためのグローバルな協力体制の構築と、気候変動に関する画期的なパリ協定に基づいた各国のコミットメント強化を強く呼びかけました。

2015年に採択されたパリ協定では、世界全体の気温上昇を産業革命以前の水準と比べて1.5℃未満に抑えることを目標としており、各国政府に対し、「自国が決定する貢献(NDCs)」と呼ばれる計画を通じて、一層野心的な気候行動にコミットするよう義務付けています。

米大統領主催の気候リーダーズ・サミットで演説するグテーレス事務総長© UN Photo/Evan Schneider

「主要排出国をはじめ、すべての国が緩和、適応、ファイナンスについてより野心的なNDCsを新たに提出し、2050年実質ゼロの道に沿う今後10年間の行動計画や政策を打ち出すべきです」と語りました。

また事務総長は、こうしたコミットメントを「具体的で早急な行動」に移さなければならないとも述べました。排出量の緩和、大気汚染の削減、自然資本の強化に向けられている予算が、パンデミックからの復興予算の4分の1にも満たないと推計されるためです。

未来からの借金

「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)からの復興には何兆ドルもの資金が必要ですが、それは未来の世代からの借金と同じです。壊れた地球に山のような負債を残し、それを未来の世代に背負わせるような政策に固執してこの資源を使うわけにはいかないのです」

グテーレス事務総長は各国の指導者に対し、課税を通じて「炭素に価格を設定」するよう求めるとともに、化石燃料への補助金を廃止し、その代わりに再生可能エネルギーや環境に配慮したインフラへの投資を強化するよう呼びかけました。

「石炭や石炭火力発電所の新設への融資は止めましょう。最も富裕な国々は2030年までに、それ以外の国々は2040年までに、石炭を段階的に廃止しましょう。影響を受ける人々やコミュニティに対しては、公正な移行を確保しましょう」と事務総長は語りました。

ファイナンスの強化

グテーレス事務総長は、ネットゼロに向けた世界連合を構築するには、ファイナンスと適応の両面で突破口を開く必要があると述べ、ドナーや銀行に対し、あらゆる気候ファイナンスの流れの中で、レジリエンスや適応に向けた比率を20パーセントから50パーセントに引き上げるよう求めました。

「11月にグラスゴーで開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP26)の前に、最も脆弱な立場に置かれた国々に向けたより多くのファイナンスと技術支援へのアクセスを容易にする、具体的な提案が必要です」事務総長はこのように述べました。

「先進国は、6月のG7サミットにおいて、開発途上国における気候行動に対して長らく約束されてきた1,000億米ドルを含め、公的な環境ファイナンスへのコミットメントを果たさなければなりません」

増大する危機

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局のパトリシア・エスピノサ事務局長は、気候リーダーズ・サミットについて声明を発表し、気候変動における地球規模の緊急事態は「この地球上のすべての人々にとって、今そこにある、増大する危機」であると指摘しました。

「この危機に国境はありません。影響は各国によって異なりますが、無関係な国はありません。今こそ世界の指導者たちがリーダーシップや勇気を発揮し、連帯するときです。今こそ、パリ協定の約束を果たし、世界を破滅から遠ざけ、すべての人々にとってこれまでにない成長と繁栄と希望の時代へと導くために必要な、厳しい決断を下すときなのです」

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原文(English)はこちらをご覧ください。