『持続可能な開発目標(SDGs)報告2021』発表に関するプレスリリース(日本語訳)
プレスリリース 21-037-J 2021年07月22日
パンデミックの厳しい影響を反転させ、主要な目標を達成するための行動を促進する上で、今後18カ月間のグローバルな取り組みが極めて重要
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パンデミックが数十年にわたる開発の成果を帳消しにしているものの、
その対策にはSDGsの前進を加速させようとする新たな決意の兆しも
ニューヨーク、7月6日 ― 国連が本日発表した『持続可能な開発目標(SDGs)報告2021』によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが全世界の人々に大きな犠牲を強いていることを受けて、SDGs達成に向けた取り組みを一層高めることが必要だと認識する国やコミュニティーが増えています。
パンデミックからの復興計画が、経済成長と社会的福祉を高めながら環境を守るために世界が合意した目標を達成する軌道に世界を導けるかどうかは、今後18カ月間になされる決断と行動にかかっています。
SDGs達成のためのグローバルな取り組みを追う同報告書によると、COVID-19は人々の人生や生活に大きな混乱をもたらしました。パンデミック以前からSDGs達成に向けた進捗は遅々としていましたが、2020年には新たに1億1,900万人~1億2,400万人が貧困に押し戻されました。2億5,500万人分のフルタイム雇用が失われ、パンデミック以前からすでに増えつつあった飢餓に苦しむ人は8,300万人~1億3,200万人増加したと見られます。
パンデミックは国内と国家間の不平等を露呈させ、深刻化させました。2021年6月17日現在、欧州・北米では100人当たり約68人がワクチンを接種していますが、サハラ以南アフリカでは2人に届きません。パンデミックの影響により、今後10年間で最大1,000万人の女児が児童婚のリスクにさらされると見られます。国際観光の破綻により、小島嶼開発途上国が不当に大きな影響を受けています。
2020年の景気減速によって気候危機のペースが落ちる効果はほとんどありませんでした。主な温室効果ガスの濃度は上昇し続けており、世界全体の平均気温は産業革命以前の水準より1.2℃高く、パリ協定に定められた1.5℃の上限に危険なほど近づいています。
2020年のグローバルな対外直接投資フローは2019年比で40%減少しました。パンデミックは甚大な財政上の課題をもたらし、特に開発途上国の債務リスクが大幅に上昇しています。
2015年にすべての国連加盟国により採択された2030アジェンダは、現在と将来にわたり、人と地球の平和および繁栄のための共通の青写真です。その中核にある17の目標は、保健と教育の改善、不平等の是正、経済成長の加速を掲げつつ、いずれも同時に気候変動に対処し、私たちの海洋と森林を保護することを目指しています。
報告書によると、SDGs達成の歩みを軌道に戻すには、各国政府、都市、ビジネスと産業が復興を利用することにより、炭素の排出を削減し、天然資源を保護し、より良い雇用を創出し、ジェンダー平等を推進し、拡大する不平等に対処する、低炭素でレジリエント(強靭な)、かつ包摂的な発展の道を選ぶ必要があります。
「私たちは人類史における重要な分岐点に立っています。今日の決断と行動が将来の世代に重大な影響を及ぼすのです」劉振民(リュー・ジェンミン)国連経済社会問題担当事務次長はこう述べています。「パンデミックから得た教訓は、現在と将来の課題に私たちが立ち向かう助けとなります。ともにこの機会をとらえ、SDGsを達成し、パリ協定を履行するための行動と変革、回復の10年にしようではありませんか」
パンデミックに立ち向かう取り組みの中で、計り知れないほどのコミュニティーのレジリエンス、各国政府の断固たる行動、社会的保護の急速な拡大、デジタル変革の加速、そして命を救うワクチンと治療法を記録的な速さで開発するための独自の連携も示されてきました。報告書によると、これらはSDGsの前進を加速する土台となる強固な基盤となります。
主な事実と統計は次の通りです。
- 世界全体の極度の貧困率は1998年以降で初めて上昇し、2019年の8.4%から2020年には9.5%になりました。
- 2020年2月1日から12月31日の間に、世界各国の政府はCOVID-19危機に対応して1,600以上の社会的保護措置を発表しました。その大半は短期的なものです。
- パンデミック関連のショックが発育阻害発生の引き金になる可能性があります。発達阻害の影響は、子ども5人当たり2人以上がすでに受けています。
- パンデミックは保健分野での前進を停滞・後退させており、COVID-19自体を超える大きな脅威をもたらしています。およそ90%の国々が必要不可欠な保健サービスに1件以上の混乱が生じていることを依然として報告しています。
- COVID-19のパンデミックが学校教育に及ぼした影響は「世代的な大惨事」です。新たに1億100万人の子どもと若者が読解力の最低水準を下回り、過去20年間に得られた教育の成果を帳消しにしました。
- COVID-19のパンデミックは、ジェンダー平等に向けた前進にも悪影響を及ぼしています。女性と女児に対する暴力が深刻化し、児童婚の増加が予想され、女性の失業割合は不当に高く家庭でのケア労働が増加しています。
- 2019年には依然として7億5,900万人に電気が供給されておらず、世界人口の3分の1はクリーンな調理用燃料や技術を持っていませんでした。
- 中国と米国が主導する景気回復が進んでいますが、他の多くの国々では、2022~2023年より前に経済成長がパンデミック前の水準に戻ることはないと予想されています。
- 世界は生物多様性の喪失を止めるという2020年の目標を達成できず、2015~2020年までの間に毎年1,000万ヘクタールの森林が失われました。
- 政府開発援助の支出純額は2020年に総額1,610億ドルに増加しましたが、COVID-19危機に対応し、国民総所得(GNI)の7%という長年の目標を達成するために必要な金額には依然としてはるかに及びません
- 2020年には132の国・地域が国家統計計画を実施し、そのうち84の国・地域は十分な資金提供を受ける計画があると報告しました。後発開発途上国(LDCs)46カ国のうち、十分な資金提供を受ける国家統計計画があると報告したのはわずか4カ国でした。
報告書によると、復興の取り組みは政策決定を通知するデータを入手できるかどうかにもかかっています。国内外のリソース双方を動員したデータ収集のために十分な資金を利用できるようにすることが、これらの取り組みに非常に重要になります。
『持続可能な開発目標(SDGs)報告2021』の全文は以下から入手可能です。https://unstats.un.org/sdgs/report/2021/
持続可能な開発目標(SDGs)報告について
この年次報告書では、目標達成に向けたこれまでの世界の取り組みの概要を紹介し、前進が見られた分野と、さらに対策が必要な分野を明らかにしています。報告書は、国際・地域機関と国連システムの機関、基金、計画からの資料提供を受け、国連経済社会局が作成しています。各国の統計学者や市民社会の専門家、学識者も報告書の作成に寄与しています。
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