2013年は国際キノア年:優れた栄養価の穀物「キノア」に世界が注目
2013年04月17日
「国際キノア年」をご存じですか? アンデス地方で伝統的に培われてきた穀物「キノア」の優れた栄養価、経済性、環境および文化的価値についての認識を高めようという目的で、2013年の国際年に指定されています。今年2月には正式なスタートを記念する行事が行われ、今後の活発な取り組みが期待されています。
国際社会が一年を通じて共通の問題に取り組む国際年は、グローバル社会が抱える大きな課題について、「相互依存」の精神に基づいて考え、それぞれの地域で行動を起こすことを目的としています。国際キノア年が制定された背景には、どのような課題があるのでしょうか。一緒に見てみましょう。
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国際キノア年
International Year of Quinoa 2013
国連およびボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルーのアンデス共同体の高官は2013年2月20日、「国際キノア年」を正式に開始しました。何千年もの間、伝統的に培われてきた食料「キノア」の栄養価、経済性、環境および文化的価値についての認識を高めることが、国際年に制定された目的です。
「国際キノア年が、食料と栄養の安全保障、特に世界の小規模農家における貧困の削減、そして環境的に持続可能な農業をめざす上で、キノアの可能性について知るきっかけとなることを期待します」と潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は、国際年の開始にあたり国連本部で述べました。
潘事務総長はキノアがアンデス地方の「たぐいまれな」、「文化的よりどころ」であるとし、キノアがすべての必須アミノ酸、微量元素、ビタミンを含む一方、グルテンは含まないことを説明しました。
この小さな穀物は適応性が高く、気温摂氏マイナス8度から38度、海抜ゼロメートルから4,000メートルまでの高地でも生育し、水分が少なくても影響を受けません。
このように高い適応力を備えたキノアは、農地が不毛で、栄養不良率の高い地域において現実的な代替食料であるといえます。国連食糧農業機関(FAO)の試算によれば、2010年には栄養不良に苦しむ人の数は10億人に上り、その大半が開発途上国に暮らす人々であるとされています。
世界の飢餓人口を半減させることは、2015年を達成期限とする国際的に合意された貧困対策目標である国連ミレニアム開発目標(MDGs)の一つです。
食料生産の増大、貧困の削減、キノアなどの栄養価の高い食料へのアクセスを高めることにより、「南米の多くの国が、MDGsの達成に向け大きく前進しています」と事務総長は述べています。
FAOによると、年間70,000トンのキノアの生産量のうち、ボリビアとペルーで半分以上の割合を占めています。ケニア、インド、北米、欧州など、キノアの栽培は拡大していますが、キノアの大半は、アンデスのアルティプラーノ(高原地域)において伝統的な方法で栽培されているのです。
2011年の国連総会において、国際キノア年を定めることでキノアの価値を称えようとの決議が採択されました。これは、193の加盟国からなる国連として、アンデスの先住民族が「代々続けてきた自然との調和を前提とする暮らしを通じ、キノアを現在と将来世代のための食料として自然な状態で保存しようと取り組んできた」ことを認識しようとしたものです。本国際年のテーマは、「何千年も前に種をまかれた未来」です。
自らも農民出身である、ボリビアのエボ・モラレス・アイマ大統領は、国際キノア年のスタートにあたり、世界の人々は現在に至ってようやく「キノアの真価に気づいた」のであり、これは先住民族の食料や伝統的な生活様式に対する植民地主義的な軽視とは対極の意味を持つものであると述べました。
大統領はまた、キノアの需要の高まりにしたがい、世界市場においてその価格が上昇しており、キノアの伝統的な栽培・収穫方法を変えることに意欲を示す大企業にとっていっそう魅力的な作物になりつつあることを指摘しました。
モラレス大統領は、母子の栄養改善を提唱するペルーのエレディア・ウマラ大統領夫人とともに、FAOの国際キノア年特別親善大使に任命されています。
国際キノア年ウェブサイト(英語)
http://www.fao.org/quinoa-2013/home/en/
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