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国連アカデミック・インパクト参加大学に聞く:九州大学編②

2013年05月09日

「使用しなくなったほお紅、ファンデーション、アイシャドウ、といった化粧品が画材へと姿を変え、再利用できます」と楽しそうに循環型社会を語るのはソーシャル・ビジネス「PLUS COSME PROJECT(プラスコスメプロジェクト)」を立ち上げた学生グループの中心人物、坂口翠さんです。

坂口さんたちの調査によると、65%の人は化粧品を全部使用しきれずに捨てており、さらに、そのうち21%の人は7割以上中身を残して廃棄しているということが明らかになっています。「私たちは便利社会において、女性の社会進出の機会が増し、化粧品の活用度が全体的に増した中で,特に流行やファッション性のある化粧品の多くは残ったまま捨てられているのです」と坂口さんは現状に危機感を抱いています。

この現状に注目し、「PLUS COSME PROJECT」では、使わず残っている化粧品を画溶液と混ぜて絵の具に変えるキットを開発し,売り出す活動を始めました。また、環境教育の一環としてリサイクルに対する関心への喚起を目的に、回収した不要な化粧品から画材を作り、アート制作に活用していくワークショップを地元のデパートなどと催しました。「楽しくものづくりを体験しながら、循環型の社会について多くの人に考えてもらいたい」というのが彼女たちの思いです。

坂口さんたちは、このような場で多くの方々との交流を通して、人々の意識の変化に確実な手ごたえを感じています。そして今、彼女たちの思いは、国境を越え、開発途上国の国々にも注がれています。「先進国では、飽きる、似合わない、といって捨てられる様々な化粧品が画材に生まれ変わり、それが開発途上国の教育現場で子どもたちに役立つ商品になっていけば」と、夢はどんどん膨らみます。

自分たちのアイディアから生まれた取り組みが、ソーシャル・ビジネスとして世界の環境問題を解決できる一助になるのでは? この取り組みを今後より具体化するために、メンバーは「PLUS COSME PROJECT」の運営の仕組みについて考えています。「NPOなのか、ビジネスなのか、それとも学生団体なのか…。 現在まだ検討中ですが、半年後を目途に本格的に始動させたいと思っています」。化粧品の回収の対象を同様の問題を抱える先進国と定め、今後グローバルな展開を目指して「楽しみながら、環境活動に関わる」というモットーを掲げ、着実に一歩を踏み出しています。

2012年の秋、「PLUS COSME PROJECT」は、オーストリアのウィーンで行われた国際会議 グローバル・ソーシャル・ビジネス・サミット(GSBS 2013)で取り組みを発表する機会を得ました。来賓のスペイン女王やソーシャル・ビジネス提唱者であるムハマド・ユヌス氏、世界中より集ったソーシャル・ビジネス・リーダーをはじめとする多くの聴衆の前で、「PLUS COSME PROJECT」の活動について紹介しました。

「残念ながらハプニングが起きて、発表は思い通りに進められませんでしたが、私たちの活動と思いは、会場の方にちゃんと伝わったようでした。発表終了後には同プロジェクトに関心を寄せる数カ国の方に囲まれ今後の展開における貴重なアドバイスや大事な機会を得ました。」と、嬉しそうに当日の様子を話してくれた坂口さん。また、サミット前日には彼女たちと同じ思いでソーシャル・ビジネスを立ち上げようと世界から集まった若者と交流するプレ・イベントへも参加し、そこでの経験も彼女たちを大きく成長させたようです。社会問題解決にビジネスの手法で取り組む。何より、プロジェクトを進めるにあたり直面する様々な課題にも、知恵を出し合い楽しみながら挑戦する彼女たちの姿に今後の「PLUS COSME PROJECT」の飛躍を確信しました。

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統合新領域学府・ユーザー感性学専攻・感性価値クリエーションコース修士2年生の坂口翠さん。消費財業界で得た社会人経験や問題意識が、九州大学でソーシャル・ビジネスを学び、「PLUS COSME PROJECT」を立ち上げるきっかけとなった
使われなくなった化粧品がリサイクル利用され、色鮮やかな画材に生まれ変わる
「PLUS COSME PROJECT」を通して、画材が開発途上国の教材として利用されるだけでなく、先進国においても環境への関心が高まることが期待されている
循環型の社会について考えてもらいたいと話す坂口さん(中央)。福岡のデパートでワークショップを開催