国連、シリア紛争に関し、史上最大規模の人道援助アピールを発表
プレスリリース 13-031-J 2013年06月14日
国連は2013年6月7日、シリア危機の影響を受ける人々が増大していることを受け、44億ドルという国連史上最大規模の援助要請を発表しました。2年前、平和的なデモに始まったシリア紛争はそれ以来、流血の事態へと発展しています。
「もう二度と繰り返したくないと思っていましたが、私たちはきょう、2013年全体につき、さらに44億ドルの拠出をお願いしなければならなくなりました」ヴァレリー・エイモス人道問題担当事務次長は、ジュネーブで他の国連高官とともに共同記者会見に臨み、このように語りました。
「この金額は、アフガニスタンからソマリアに至るまで16カ国を対象に私たちが発したアピールをすべて足した額の半分以上に相当します」
今回のアピールは、1月の15億ドルから上方修正されたもので、「シリア人道支援対応計画(SHARP)」と「地域対応計画(RRP)」に関する救援活動を対象としています。
44億ドルのうち14億ドルは、SHARPによる国内のシリア人に対する援助に向けられ、残りの30億ドルは、RRPによる隣接地域の難民に対する救命援助と保護の提供に充当されます。現在までに12億ドルの拠出が得られています。
これに加えて、レバノン、ヨルダン両国政府は、自国内に逃れてきた難民への教育、保健その他のサービス提供を支援するため、それぞれ4億5,000万ドルと3億8,000万ドルの拠出を募っているところです。
「私たちは現時点で、680万人が緊急に支援を必要としていると見ています。つまり、シリア国民の3人に1人に緊急人道援助が必要だということです」エイモス氏はこう語るとともに、1月から4月にかけ、シリアの国内避難民が倍以上に増えていると付け加えました。「これ自体、とてつもない数字ですが、人的な悲劇は、こうした数字で語り尽くせません」
2011年3月以来、シリア政府と、バシャー・アル=アサド大統領の退陣を求める反政府組織との戦闘で、8万人以上が死亡しています。また、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、シリア国民およそ160万人が紛争を避けるために祖国を脱出したという推計を示すとともに、その数がまだ急増を続けていると指摘しています。
「年末までに、難民の数は350万人に及びかねないと見ています」アントニオ・グテーレス難民高等弁務官は記者団にこう語っています。「私たちが拠出を要請している資金は、シリアの被災者の生存にとっても、難民を受け入れている近隣国にとっても、欠かすことのできない資金なのです」
グテーレス氏は、シリアからの難民の半数以上が子どもであるという事実を強調するとともに、中程度から重度の栄養不良の兆候を示し始めている子どもも多いことを指摘しました。
拠出要請額には、世界食糧計画(WFP)がシリア内外での食料配給規模を拡大するための資金10億ドルが含まれています。WFPは現在、シリア国外の80万人に加え、国内の250万人にも食料を配給しています。追加の資金が得られれば、2013年暮れまでに計700万のシリア人に食料が提供できるのではないかとWFPでは見ています。
また、WFPによると、修正後の計画では、基礎食料に加えて小麦粉も配給し、家庭でパンを焼くことができるようにすることで、多くの地域での深刻な食料不足解消を図ることになっています。さらに、弱い立場にいる30万人の子どもたちを対象に、ニュートリバター(Nutributter)やプランピードーズ(Plumpy’doz)など、ペースト状でそのまま食べられる栄養補助食品を提供することで、栄養不良の治療と予防も図ります。
近隣国でも、WFPは主として現地の店舗で利用できる食料引換券の配布により、2013年暮れまでに食料援助を拡大し、レバノン、ヨルダン、トルコ、エジプト、イラクに逃れた難民270万人のニーズに応えます。
「国内、国外を問わず、シリアの家庭、特に子どもたちは、この重大な危機で大きな打撃を受けています」こう語るのは、WFPのアーサリン・カズン事務局長です。「誇り高い人々の命と暮らしが、この紛争で粉々にされたのです」
エイモス氏は、国内情勢の悪化により、援助の送達がますます難しくなっているとして、加盟国に対し、紛争終結に向けた危機の政治的解決を模索するよう強く促しました。
「私たち国連は、高まる一方のニーズに対応しきれていないことを懸念しています。私たちは現地の治安情勢を含め、多くの制約を受けながら活動しています。この危機は人道的取り組みで解決できるものではありません」
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