アフリカで事業を行っている日本企業 シリーズ①:味の素株式会社
2013年06月20日
第5回アフリカ開発会議(TICAD V) が、2013年6月1日から3日まで横浜市で開催されました。国連は共催者として参加し、潘基文(パン・ギムン)事務総長が訪日しました。国連広報センターでは、TICAD V を契機にできるだけ多くの日本の方々にアフリカへの関心を高めていただきたいと願っています。
そこで今回は、国連グローバル・コンパクトに署名している日本企業が、アフリカで行っている事業の一部を紹介します。事例の作成にあたっては、グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク(GC-JN)の協力をいただきました。
アフリカ開発会議(TICAD)とは、1993年より日本政府主導で行われている国際会議です。国連や世界銀行などと共同で開催され、アフリカの開発について5年に1度、首脳級の会合が開かれています。また、首脳級会合の他に着実な実施のためのフォローアップも行われています。
GC-JNとは、国連グローバル・コンパクトの日本におけるローカル・ネットワークです。国連グローバル・コンパクトは各企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組みです。
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味の素株式会社:
「KOKO Plus」を用いたガーナ栄養改善プロジェクト
◆会社概要
味の素グループは、26の国・地域に拠点を置く。調味料をはじめとする食品やアミノ酸、医薬品などの事業を展開し、商品を販売している国・地域は130以上にのぼる。
◆パートナー企業
ガーナ大学、Nevin Scrimshaw International Nutrition Foundation(INF、米国NPO法人)、米国国際開発庁(USAID)、国際協力機構(JICA)
◆プロジェクト期間
2009年~
◆プロジェクト地域
ガーナ
◆プロジェクト
近年、経済発展を続けるガーナも、農村地域は未だ貧しく、低身長・低体重といった乳幼児の発育不全が課題となっている。同国の離乳期の主食は、KoKo と呼ばれる、発酵トウモロコシと砂糖を原料としたお粥である。しかし、これには子どもの成長に必要なたんぱく質や栄養分が不足しており、成長の遅延を引き起こす原因と見られている。このような問題を解消するために、味の素は「ソーシャルビジネス」の確立を通じて問題解決をめざしている。
味の素は離乳期の栄養改善プロジェクトを立ち上げ、様々な団体と以下のようにパートナーシップを結んでいる。
①2009年からガーナ大学および米国 NPO 法人 INF の協力により、伝統的な離乳食 KoKo に添加する栄養サプリメント「KOKO Plus」を開発。これはガーナ産の大豆を主原料に、アミノ酸やビタミン、ミネラルを加えており、1袋で乳児1日分の栄養が補える。
②2011年4月にガーナ保健省と覚書を締結。これにより本プロジェクトの意義を理解してもらい、その効果を確認するための試験の実施や栄養教育などの分野での協働を確認。
③JICA との「BOP ビジネス連携支援」により、ガーナにおける栄養サプリメントに関する市場調査、ビジネスモデル開発、事業計画策定への支援を受ける。USAID からは、「KOKO Plus」の普及促進と利用者拡大を図るための流通モデルづくりの調査に、約60万US ドルの資金およびノウハウの提供を受ける。
④現地生産に向けて、国際連合世界食糧計画(WFP)とのパートナーシップを経験している現地食品会社のYedent Agro Group of Companies Ltd.をパートナーとして選定し、2011年後半から試験的な生産立ち上げを行っている。
◆効果
子どもの栄養状態の改善、現地の農業促進、現地企業の能力向上、雇用創出
◆今後の展望
ガーナなどのアフリカにおける離乳期の栄養不足による成長不良は深刻な問題であり、この「ソーシャルビジネス」モデルを通して、NGOなど様々な社会セクターとWin-Winの関係を築きながら、栄養不足という社会課題の解決を実現できることを証明する。そして「KOKO Plus」のガーナでの本格生産を目指し、同様の課題を抱える他の途上国でも展開を図る予定である。
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【参考資料】