ボランティアリズムを通じて、インクルージョンを妨げる障壁を乗り越えよう(UN Chronicle 記事・日本語訳)
2022年01月24日
『UN Chronicle(ユーエヌ・クロニクル)』は2021年の国際障害者デーを記念し、国連事務局のマーサ・ヘレナ・ロペス人的資源担当事務次長補と、国連ボランティア計画(UNV)のトイリー・クルバノフ事務局長による2つの寄稿をご紹介します。両氏からはそれぞれ、国連システムへの障害者インクルージョンと、その早期実現のために乗り越えなければならない障壁について自らの意見を共有してもらいました。ロペス人的資源担当事務次長補による寄稿(日本語訳)はこちらをご覧ください。
国連ボランティア計画(UNV)は、ボランティアリズムを通じて平和と開発に貢献することを使命としています。UNVは、国連システムのパートナーや国連加盟国と協力しながら、ダイバーシティー(多様性)やインクルージョン(包摂性)のアジェンダを展開しています。具体的には、ボランティアリズムを通じて障害のある中堅のプロフェッショナルを国連内でより積極的に採用することを主流化させるという緊急の課題に取り組んでいます。
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2021年12月1日
ボランティアリズムは、開発プロセスにおいて、依然として慣習的に社会から取り残されている人々を包摂するための強力な手段です。障害者との関わりを通じて、誰もが学び、誰もが成長する機会を持つことができます。
国連ボランティア計画(UNV)は、国連システム全体にサービスを提供しています。UNVの任務は、国連システムが持続可能な開発のための2030アジェンダを実現することを、有能で献身的なボランティアが支援できるようにすることです。
その際に、私たちは障害のあるボランティアを意識的に採用しています。長年にわたって、UNVはパートナーと共に、より包摂的な開発成果の達成に取り組んできました。さらに現在は、国連システムそのものがより包摂的で多様なものになるよう取り組んでいます。
UNVは近年、「障害者のための包摂的な国連システムの実現に向けた才能・能力開発プログラム」を実施してきました。私たちは、ボランティアリズムを通じた組織の能力強化、組織的知識の向上、障害者の権利保護において成果を上げています。
そして、この評価が高まっているようです。より多くの国連ボランティアの候補者が障害を自己申告し、受ける必要がある支援を要求するようになっています。
「障害のある候補者は、国連ボランティアとして活動することによって実務経験を積み、国連システムに関わる機会を与えられます。これはキャリア学習やキャリア開発に役立つと同時に、これまでアクセスできなかったかもしれない道も開きます。ボランティア活動は、障害者が政治的、経済的、社会的、そして文化的生活に参加することを促進します」
― ヴィブフ・シャーマ氏(国連事務局管理戦略・政策・コンプライアンス局人事政策部に所属する国連ボランティア・アソシエイト・ポリシー・オフィサー)
2020年だけでも、91名の障害のあるボランティアが18の異なる国連機関で50を超える様々な任務に就きました。2021年には、これまでに150名の障害のあるボランティアを動員しています。こうした実績は、国連システムというさらに大きな背景の中では小さく見えるかもしれませんが、UNVの活動範囲の規模を物語っています。私たちは、UNVの人材プールを通して障害のある候補者を募集し、国連の姉妹機関と連携して候補者たちを国内外の多様な任務や場所に配置できるのです。
障害者の雇用を促進するため、UNVは適切な環境整備を図るように努めています。私たちは、アクセシビリティーやモビリティー(移動性)促進スキームによってパートナーを支援します。そして、インクルージョンを擁護するUNVの資金調達パートナーから寄付を募るために、UNV特別基金内に「適切な環境整備のための基金」を設立したばかりです。
国連合同監査団(JIU)は、国連組織がさらに行動する必要があることを指摘しました。国連組織は、障害者のためのアクセシビリティーに関するさらに優れた政策を策定して実施すべきです。私たちの労働環境は、アクセシビリティーをさらに高めるための改善を必要としています。そのためには、全体的な意識の向上とトレーニングの増加が必要です。組織的コミットメントを真剣に達成しようとするなら、私たちは自らの取り組みを強化しなければなりません1。
UNVでは、継続して学び、改善を試みています。道はまだ続きますが、それでも私たちは信頼でき、信用するに足る障害者インクルージョン・モデルをパートナーに提供できると確信しています。ドナー国であるドイツとスウェーデンからの寛大な財政支援に支えられた試作プログラムにより、私たちは実践を通して学ぶことができたほか、自らの活動内にある障壁を含め、障壁を特定できました。
2020年に実施された独立レビューにおいて、UNVの才能・能力開発プログラムの主な強みが、障害者の採用を拡大するために有効かつ効率的であることがわかりました。そして、私たちにはいくつかの宿題も課されました。
UNVはその評価結果を活用して、ボランティアの任務と採用ツールを改善しました。UNVはまた、障害に対する意識と対応力を向上させる組織内研修も行いました。私たちは、障害のあるさらに多くの候補者がこれによって刺激され、UNVの人材プールに登録したり、ますます増える機会に応募したりすることを期待しています。
UNVは、障害者インクルージョンに取り組む国連機関やドナー国に「私たちのパートナーになりませんか」と呼びかけています。
「誰一人取り残さない」は空虚なスローガンではなく、私たちの連帯責任と説明責任を表明するものです。国連ボランティアは、持続可能な開発に価値ある貢献をするという決意と専門性を持っています。
そうしたボランティアの一人の言葉を引用すれば、「障害は無能を意味するのではない」2のです。
注
1 国連システムの会議と会合への障害者のアクセシビリティーの向上。https://undocs.org/en/JIU/REP/2018/6をご覧ください。
2 「障害は無能を意味するのではない」 – ナミビアで考え方を変える。ナミビアでの国連開発計画(UNDP)のプロジェクトにおけるプロジェクト・オフィサーであり、UNDP/UNV障害のあるヤング・プロフェッショナルのためのタレント・プログラムで活動するペルグリナ・シマヌ氏による寄稿。https://www.unv.org/Success-stories/disability-does-not-mean-inability-changing-mindsets-namibiaをご覧ください。
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執筆者について
トイリー・クルバノフ
トイリー・クルバノフ氏は、国連ボランティア計画(UNV)の事務局長です。
UN Chronicle(ユーエヌ・クロニクル)は、公式記録ではなく、国連の高官や、国連システム以外の著名な寄稿者が意見を述べる場であるため、ここで表明された意見は必ずしも、国連の立場を示すものではありません。同様に、地図や記事に示されている国境や名称、呼称は、国連による支持や承認を受けて使われているものとは限りません。
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原文(English)はこちらをご覧ください。