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この人に聞く:「どこから見ても、戦争は悪」と語る アミン・アワド 国連ウクライナ危機調整官(2022年6月2日付 UN News 記事・日本語訳)

2022年07月19日

ウクライナでの人道対応のさらなる促進と連携の強化に向けて、同国の政府高官と会談するアミン・アワド国連ウクライナ危機調整官(左)(file photo)

 

2022年6月2日 ― ロシアによるウクライナへの攻撃を受けて、アントニオ・グテーレス国連事務総長は今年2月、アミン・アワド氏を国連ウクライナ危機調整官に任命しました。2月24日のロシアによるウクライナ侵攻から100日を迎えるにあたり、UN News はアワド氏に独占インタビューを実施。アワド氏は、この紛争の終結に向けた国連の取り組み、そして、とりわけ数カ月後に訪れるウクライナの厳寒の冬を考慮し、戦火に巻き込まれた数百万のウクライナの民間人への支援と保護のために国連が行っている活動について、詳しく語りました。

UN News:ウクライナでのロシアによる戦争は悲劇的な節目を迎えています。この戦争が近いうちに終結する希望はありますか。

アミン・アワド:この戦争は終わるだろうという楽観論はあります。なぜなら、ウクライナもロシアも続ける余裕がないためです。ウクライナは人命の損失や、病院、学校、家屋、鉄道の駅や線路、そして輸送部門の破壊に苦しんでいます。また、ロシアは厳しい制裁を受けています。

そして世界も、破壊的な影響を被っています。ウクライナは世界の食料需要の約15-20%を支えています。この食料がせき止められている上に、やがて次の収穫期が訪れます。つまり、食料パイプラインやサプライチェーンの崩壊が目前に迫っているのです。

また、インフレ問題や債務不履行に陥っている国々もあります。例えば、スリランカは融資を返済できていません。世界の状況は良くありません。

切望されている国連と人道支援パートナーからの支援物資を届ける準備を行う支援者たち(ウクライナのセベロドネツクで)© UNOCHA/Ivane Bochorishvili

 

UN News:この侵攻で最も高い代償を払っているのは、民間人です。多くの人々が殺害され、何百万もの人々が近隣諸国に避難しています。今もなおウクライナ国内に留まっている人々は、どのような状況なのでしょう。

アミン・アワド:絶望感が広がっています。ウクライナ国内で約800万人、国外で約600万人が住処を追われています。およそ1,500万人が自宅に留まりましたが、生計手段が失われる事態となり、教育や保健などのサービスやその他の施設を利用できなくなりました。何百万もの子どもたちが学校に通えていません。

社会保障制度がひっ迫し、行政サービスは制限されています。人道コミュニティーについても同様です。本当に悲惨な状況なのです。

UN News:国連と赤十字国際委員会(ICRC)は、ウクライナの港湾都市マリウポリにあるアゾフスタリ製鉄所に絶望的な状況で閉じ込められていた民間人の避難を促進しました。戦火にさらされている地域に残る人々の避難に向けて、国連が現時点で取り組んでいる同様の活動はありますか。

アミン・アワド:マリウポリでの対応のような避難に向けた要請は受けてはいませんが、国連は、人々が食料や医薬品、その他の支援を必要としている地域に入れるよう要請をしています。

国連が主導する避難活動によってマリウポリのアゾフスタリ製鉄所から避難するマリウポリの民間人たち© UNOCHA/Kateryna Klochko

 

さらに、今こそ私たちは冬に十分な注意を向けていかなければならないと考えています。すでに6月に入り、冬が間近に迫っています。この地域では気温が氷点下になります。多くの発電所が破壊され、代替エネルギーの供給も途絶える中、私たちは、この冬に何百万の人々を支援する戦略を、早急に打ち出す必要があるのです。

UN News:しばらくウクライナに滞在され、この戦争の醜悪な様相を目の当たりにされていますが、心を深く揺さぶられたエピソードがあれば教えてください。

アミン・アワド:たくさんの苦しみが溢れていました。破壊された地域のいくつかを車で走っていると、自宅やアパートの破壊を免れた子どもたちを見かけました。しかし、親も保護者もおらず、行くあてもなく、路上に自分たちだけでいるのです。

それは、私たちが止めなければならない戦争が持つ、醜悪な一面だと思います。

UN News:ザポリージャ原子力発電所の安全性については、国連は関係各所と協力しながら起こりうる脅威に対処しているのでしょうか。

アミン・アワド:国際原子力機関(IAEA)は、何度もウクライナを訪れ、すべての原子力発電所を回っています。ザポリージャはロシアに掌握されていますが、IAEAが訪問できるよう、交渉が行われていると思います。

原子力発電所はウクライナだけでなく、大陸全体に危険をもたらす可能性があります。そのため、最大限の注意を払う必要があり、セキュリティーに関する手順や実施要項に従う必要があるのです。

UN News:ウクライナの各地で多くの学校が攻撃されました。あなたは紛争当事者に対して、民間人や民間インフラに危害を加えないよう警告するとともに、国際人道法に基づくこれらの義務に交渉の余地はないことを強調されました。こうした要求に、ロシアが耳を傾けている何らかの兆候はありますか。

アミン・アワド:私たちはロシアに対し、水源や電気、学校、病院などのいわゆる民間インフラには絶対に危害を加えないよう要求し続けています。

こうした攻撃によって避難した人々の数は膨大であり、決して容認できるものではないため、私たちは今後もこうしたことを要求し続けます。

空爆の被害を調査する、ウクライナのチェルニヒフにある学校の校長© UNICEF/Ashley Gilbertson VII Photo

 

UN News:最後に一言、お願いします。

アミン・アワド:私が最後に伝えたいことは、まさにこの戦争の終結です。そこから世界は、多くのものを得られるのです。

約69カ国が、食料不足、インフレ、サプライチェーンの崩壊、失業、そしてその他多くの要素による影響を受ける可能性があります。

世界はすでに、多くの課題に直面しています。その一つが気候変動であり、これもまた、農業やその他の生活上の収入源に影響を及ぼしています。

つまり、戦略面、政治面、経済面のどこから見ても、戦争は悪なのです。

どんな戦争からも得られるものはありません。誰もが失うのです。

このインタビューの文章は、簡潔さと長さの観点から編集されています。インタビューの全音声は、以下からお聞きいただけます。

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原文(English)はこちらからご覧ください。